820:名無しNIPPER[saga]
2017/12/05(火) 00:37:20.08 ID:HHfyV3AE0
目を開けると、唇はすでに離れていた。そういう感覚も、頭から抜け落ちてしまっていた。
奈雨は心配するように俺の顔を覗き込む。
ひょっとしたら、結構な時間ぼうっとしていたのかもしれない。
「……もうちょっとだけ、近付いてもいい?」
目を合わせると、彼女は視線を逸らして俯きがちにそう言った。
頭がくらくらする。意識がぼんやりとしている。
本当に、彼女とこういうことをしていていいのだろうか。
逡巡しているうちに、彼女は距離を肩が触れるまで詰めてくる。
「なんでこんなに近付くんだよ」
「……だめ?」
堕ちてしまいそうな甘ったるい声。
肩に手を置かれる。その部分だけ、さーっと熱が冷めていく感覚を得る。
「もし俺が押し倒したらどうするんだよ」
離れてほしい、と言おうと思った。
けれど、それを言うだけの勇気がなかった。
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