906:名無しNIPPER[saga]
2017/12/28(木) 15:43:45.52 ID:xOgRNUoX0
「あの、白石くん」
不意に耳元で名前を呟かれて、はっと我に帰る。数秒経ってその近さに驚いて、慌てて片手を手すりから離して距離を取ると、胡依先輩は心配そうにこちらを見つめていた。
「いや、なんでもないです」
何かを訊かれる前に答えていた。
いまはどうしても、出来合いの言葉を並べられる自信がなかった。
うん、と先輩は伏し目がちに頷く。
「さっきの続き、って言っても、ちょっと違う話になっちゃうかもしれないけど、聞いてくれる?」
「違うんですか」
「えっと、駄目……かな?」
「……別にいいですけど」
「……けど?」
胡依先輩の様子が、明らかに普通ではなく見えて。
何か悪いことをして怒られることを怖がっている子供のような、おもねるような表情と声音は、どこか冷静さが抜け落ちている印象を受ける。
そしてそれは、ほんの数日前に見た所作と酷似していて、
「東雲さんの話ですか?」
確信はないのに、そう訊ねていた。
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