830:名無しNIPPER[sage saga]
2018/08/12(日) 21:54:56.36 ID:lSjNYocCo
点々と続く足跡。
プロジェクトルームへと続くそれは、茶色く、異臭を放っている。
「……」
一瞬だけ、思考する。
結果辿り着き、私が取るべきだと思った行動とは、先ず、それらの隠滅。
幸い、プロジェクトルームの外の足跡は、数歩分しか無い。
これならば、鞄の中のウェットティッシュで事足りるだろう。
「……」
鞄からウェットティッシュを取り出し、ルームのドアから一番遠い足跡の近くに、しゃがみ込む。
足跡からわかるのは、これを残した人物が、特徴的な靴を履いているという事だ。
ローファーやスニーカーでは無い、また別の形状の物。
誰も望まない置き土産の擦り跡から察するに、ヒールが少し高い。
「……」
直接は触りたくないので、ウェットティッシュを三枚重ね、それに手を伸ばす。
――柔らかい。
それ――まあ、言ってしまえば大便なのですが――は、まだ、乾いてはいなかった。
床にへばりつく事なく、軽く擦っただけで、そのほとんどが拭き取れた。
「……」
その事から、この足跡を残した人物は、まだ、プロジェクトルームの中に居ると推測される。
そして恐らく、あのドアの向こうには、恐ろしい光景が広がっているだろう。
しかし、私は止まれない。
例え、どんな地獄が待ち受けていようとも。
「……」
左手を膝につき、立ち上がろうとした時、
「ん」
ポケットの中の携帯が振動した。
現在、取り込み中なのですが……確認だけ、しておきましょうか。
「……」
使用済みのウェットティッシュを床に置いたまま、立ち上がる。
新しいウェットティッシュを引き抜いて指先を拭き、携帯を取り出して、見る。
「……」
それは、謝罪のLINE――懺悔の言の葉。
魔王の行進によって災い――大便を撒き散らしてしまった、と。
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