過去ログ - 武内P「あだ名を考えてきました」
↓ 1- 覧 板 20
911:名無しNIPPER[sage saga]
2018/05/22(火) 00:15:51.13 ID:IjUSJCFQo
「……禁酒、ですか?」
ふふっ! 彼ったら、本当に驚いちゃってるわ。
ソファーに座ったまま、信じられないものを見るような目でこっちを見てる。
その顔がおかしくって、思わず笑みがこぼれる。
そんな彼の前に、コーヒーが入ったマグカップをコトリと置く。
「お酒を……ふふっ! 避けようと思って」
そして、その正面の位置には、私の分を。
それぞれに黒いラインと、緑のラインが入った、お揃いのマグカップ。
貰い物だけれど、湯気を立てるコーヒーの薫りが鼻をくすぐる。
私もコーヒーを飲みたいけれど、我慢我慢。
「あの……何故、でしょうか?」
小さな、可愛らしい銀のスプーンで、マグの中身をかき混ぜる。
漂ってくる、柚子の良い香り。
爽やかなその香りと湯気に包まれながら、彼の様子を伺う。
マグの中身――お湯で割ったゆず茶――をそっと一口。
「さあ、どうしてでしょう?」
私の笑みが深まったのは、初めて飲んだ柚子茶のお湯割りが美味しいから、だけじゃないのよ?
もっと他に、理由があるの。
とっても幸せで、素敵で、嬉しい理由が。
ねえ、なんだと思う?
大好きなお酒を我慢しよう、っていい出すほどの、そんな理由って。
それを知ったら、きっと、貴方もとっても喜んでくれるわ。
「……」
彼は、無言で立ち上がると、テーブルの反対に居る私の所まで歩み寄ってきた。
フローリングと、可愛いぴにゃこら太のスリッパ――これもお揃い――が、パタパタと音を立てる。
そして、私の隣に来た彼は、腰を曲げて、私の顔を間近で覗き込んできた。
あの……どうして、そんな真剣な顔をしてるんですか?
「……失礼します」
響く、低い声。
そして、大柄な彼の身長に見合った、大きな手が私の額と、彼の額にそれぞれ当てられた。
手が冷たい人は心が温かいって言うけれど、それって、それだけじゃないと思うの。
だって、彼の手は温かくて、そして、心はもっと温かいから。
「熱が……少しだけ、あるようですね」
でも、こういう所は、本当に失礼しちゃうわ。
察しが悪いのはわかってましたけど、私が、熱のせいで禁酒を自分から言い出すとでも?
ちょっと熱が出たくらいで、禁酒するなんて冗談でも言いません!
「待ってください。すぐに、薬を」
……と、抗議をしようとしたら、パタパタと音を立てて行っちゃった。
まだ、何も言ってない……言えてないのに。
1002Res/553.82 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。