37:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/15(木) 23:36:58.82 ID:z0ZlMvOIo
・ ・ ・
子供というのは、純真で――残酷だ。
無邪気さというものが、必ずしも良い事だとは限らない。
小さい頃に、瞳の色を指摘された時……私は恐怖した。
それまでも、父や母、祖父母には「綺麗だ」と褒められる事はあったのに、だ。
お友達と言っても、やっぱり、他人。
家族は私を無条件に受け入れてくれると、そう思うだけの愛情を向けてくれていた。
けれど、他の皆は?
私の瞳の色が左右で違う事によって、私は集団から排斥されてしまうのでは。
幼心に、私はそんな風に思ったのだ。
だから、小さい頃は瞳が隠れるように、前髪を伸ばしていた。
他人と明らかに違う、異質な、この左右で違う色を放つ瞳を隠すために。
幸い、それの効果かはわからないけれど、幼少時代は平穏に過ごす事が出来た。
そして、大きくなっていくにつれて、瞳の色を気にする事はなくなっていった。
私は、とても恵まれていたのだろう。
それには今でも感謝しているし、今もまた、周囲の人たちには恵まれている。
「……」
だけど、たまに……やっぱり、ちょっと怖くなっちゃう。
モデルとしてやってきた経験もあり、容姿にはそれなりに自信がある。
モデルを辞めて、アイドルとして活動している今も、それに変わりは無い。
「……」
洗面台に立ち、目の前の鏡のジイッと見つめる。
鏡の向こうから見つめ返してくる二つの瞳の色は、やっぱり左右で色が違う。
これも個性だ、と言ってしまえばそれまでの話なのに。
昔の夢を見たせいか、今は、その違いがとても気になった。
「……ふぅ」
しかし、今はそんな事を気にしている場合ではないと、息を吐いた。
ゆっくりしすぎたせいで、急がないとお仕事に遅れちゃうもの。
冷たい水で顔を洗って、切り替えよう。
「……」
私は瞼を閉じ、見つめてくる鏡の中の私から強引に逃げ出した。
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