996:名無しNIPPER[sage saga]
2018/03/20(火) 21:44:49.64 ID:t0wqhM/bo
「……あの」
いつまでも手を離さない私に、低い、戸惑う声がかけられました。
慌てて両手を離し、銃を向けられているかのようなポーズを取ります。
今のはわざとではありません、違うのです、と、無言の弁明のつもりで。
「……」
そんな私の驚きように、目の前の人は、ふと、少しだけ考え、
「どうぞ」
と、手に持っていたペットボトルを差し出してきた。
混乱する私は、目を見開いたまま、カクカクと首を上下させ、それを受け取りました。
思考をかき乱された理由は……わかっています。
この人が、とても優しい、笑顔をしていたから。
「……ありがとう……ござい、ます」
今にも消え入りそうな、感謝の言葉。
目を見て言わなければと思うのですが、今は、とても顔をあげられません。
だって、こんなに紅潮した顔を見られたら、余計に……いけません、考えたら、駄目。
「申し訳ありません。丁度、貴方の動画を確認していて――」
気付くのが遅れてしまいました、と、言われた所までは聞こえていました。
けれど、それに続く言葉は、私の耳には入ってきませんでした。
心臓の音がうるさすぎて、それが彼に聞こえてしまわないか気が気でなくて。
おわり
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