944:名無しNIPPER[sage]
2017/12/10(日) 21:22:59.39 ID:yXp2Ooj6o
「アイドルの気持ちがわかるのか」
今西部長にそう問いかけられた時、私は返す言葉を持たなかった。
部長の言葉が、私の心に突き刺さった。
私はあくまでもプロデューサーで、アイドルの、年頃の少女達の気持ちはわからない。
無言で首を横に振る私に、部長は言った。
「ならば、やってみると良い」
その時の私には、部長の言葉の意味がわからなかった。
だが、翌日からアイドル達のレッスンに半ば無理矢理同行させられ、
彼女達と同じようにボイスレッスンやダンスレッスンを受けさせられ、すぐに理解した。
部長は、私をプロデュースしようと言うのだ。
私の抵抗も虚しく、日々は過ぎていった。
始めた当初は踏めなかったステップも今では得意だし、
ボイスレッスンに関しては元々才能があったのか他のアイドル達からも賞賛を浴びる程だった。
レッスンを続ける中、しばしば専務が顔を見せるようになった。
私が懸命に頑張る姿をジロジロとひとしきり眺めたらポエってくるので、
嫌々ながらもポエり返すと満足そうに微笑んで帰っていった。
そして、遂に今日は私のデビューLIVE当日で、なんとセンターを務める事になっていた。
アイドルの衣装に身を包んだ私を激励するアイドル達。
そんな私達を良い笑顔で見ながら、部長は言った。
「やってみて、どうだったかね」
無言で首を縦に振る私に、部長は言った。
「アイドルの気持ちはわかったかね?」
今西部長にそう問いかけられた時、私は返す言葉を持たなかった。
私の拳が、部長の頬に突き刺さった。
衣装のスカートが、フワリと揺れた。
おわり
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