過去ログ - 【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―6―
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986: ◆P2J2qxwRPm2A[saga]
2019/10/10(木) 20:40:28.90 ID:0n10eZ/T0
 ピエリリス 短編1
『暗夜の寒さも悪くない』

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「白夜に比べて暗夜は寒くて嫌だねぇ」
 そんな声が耳に入って来た。確かに白夜と比べれば暗夜は寒いですよね、なんて暢気に思う。白夜にも寒い場所はあるだろうけれど、あまりにも陽の光が入らない暗夜の大地はもっと寒い。
 本格的な冬の到来はまだ先ですが、徐々に寒さが磨かれつつあって、外を出歩く人たちが羽織る外装も厚くなっている。もちろん、例に漏れず私も少し厚手です。
普段のティアンドルだけでは肌寒いからと羽織ったコートは、寒さを忘れさせてくれるほどに暖かかくて、ホッと息が漏れた。
凍えた世界に飛び出た安堵が靄になって消えていくのを眺めていると、視線の端に同じような靄が浮かんで私の靄に交じっていく。
「えへへ、リリスの吐息にピエリのも混じっちゃったの」
それが溶けてなくなるのを、隣にいたピエリさんは楽しそうに眺めていた。私の吐息とピエリさんの吐息、それは僅かな時間を共に過ごして消えていった。
「消えていくのを見るのが楽しいんですか?」
「ちがうの、リリスと同じことをしたから楽しいのよ」
 隣を歩くピエリさんも、今日は寒いからと厚着をしている。だけど、お気に入りのリボンは変わらず付けていた。左右にそれぞれ纏めた髪は楽しそうな彼女に連動するように上下に揺れて、それを眺めながら私は歩くのを再開する。
「うう、白夜から帰って来たばっかりだから、とっても寒いのよ」
「今回はイズモ公国とテンジン砦付近で白夜との合同演習でしたっけ? あの地域はこの時期でも暖かいですから、そこから帰って来たとなると暗夜の寒さは堪えますよね」
「うう、殺人的なの。白夜はもっとポカポカしてたのに、こっちは寒いから体が壊れそうだから、今日は体が温まるスープを作るのよ」
 ピエリさんの手提げ袋には、多くの具材が入っている。久しぶりにピエリさんが帰ってくるという事で、屋敷にお邪魔していた私はスープの材料の買い出しで一緒に来たというわけである。
「結構な量を作るんですね」
「うん、久しぶりだから、いっぱいお料理するの。あ、従者のみんなにも手伝ってもらう予定なのよ」
「ふふっ、良かったですね」
 そう笑いながら話しているという事は、多くの従者がピエリさんの提案に賛成してくれたのだと思う。それが受け入れられたのは、ピエリさんが変わったからだと思う。
従者を気分次第に殺していたピエリさんを変えたのは、あの戦いで出会った多くの人々との交流でしょう。それがピエリさんを変えていったのだと思います。
そして、それは私も同じだった。


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