過去ログ - 【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―6―
1- 20
988: ◆P2J2qxwRPm2A[saga]
2019/10/10(木) 20:49:22.54 ID:0n10eZ/T0
 ピエリリス 短編2
『私はあなたの痕になる』

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 小さな圧力で目が覚めた。
 それはとてもか細いけれど、なんだか逃がさないという意思を示すみたいに私の体を引き寄せている。
 自身の人ならざる竜の体を包む交差した二つの腕、その束縛から逃れようと身を捩る。
 抜けられない、どうやら尾鰭があの子の下敷きになっているようだ。下敷きになっているけど痛くないのは、この高級なベッドのおかげでしょう。決して、下敷きにしている存在の体重が軽いからではないと思う。あんなに大きくご立派なものを二つも持っているのに、これで軽かったら不公平です。一説にはカミラ様と同じくらいだともいうし、そんな人が体重まで軽いなんて言語道断許されない。
 そんなことを思いながら私は逃げることのできない体をそのままに、拘束主であるピエリさんの目覚めを待つ。
 少しして、カーテンの隙間から差し込む太陽の光が瞼に掛かった。眩しさに顔をしかめていると、背後から怪訝な声が聞こえてくる。同時に二つの腕の力が弱くなった。
 尾鰭に感じていた重みがゆっくりと緩和されていき、やがて消え去る。ようやく自由になった尾鰭を動かそうとしたけれど、ずっと下敷きになっていた所為か思ったよりも動いてくれない。そして、腕の拘束はまだ解かれていない。
「んー……。眩しいの」
 ピエリさんが私の体を無理矢理起こす。その結果、お腹をデカデカと晒される形になってしまって、これはセクハラではないかと私は訝しんで、やっぱりセクハラだと理解する。
『セクハラを止めてくれませんか、ピエリさん』
「あ、リリスなの……。おはようなの……ん、やわらかいの〜」
『さらにお腹摩るのを止めてくれませんか』
 言葉を思考して相手に伝える。こんなことをする相手はカムイ様しかいなかったけれど、今一番こうして話をしているのはピエリさんだと思う。ピエリさんはもう慣れてしまった私の声を聞いて、その寝ぼけ眼を数回擦った。
 いつも二つに結んでいる髪も、今だけは解かれて背中に届くほどある。蒼の根元が行き着く先は薄桃の毛先で、それがあどけない子供のような表情と成熟した見た目のアンバランス差をさらに強調しているようだった。
 ようやく拘束が解かれた私は、フワフワとピエリさんの前に浮遊する。
「リリス、服取って。早く取ってなの」
『はいはい、ちょっと待っててくださいね。人の姿になりますから』
 子供のように服を強請るピエリさんに軽く返事をして、私は竜の姿から人の姿に戻る。自分の体が人の形に変化していくのは何とも不思議な感覚で、こればかりは幾度と熟してもなれない。浮遊感が消え、綺麗に敷かれた絨毯の感触を足が覚える。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
1002Res/1215.44 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice