45:名無しNIPPER[sage saga]
2018/12/10(月) 21:12:58.77 ID:jw/TSgdjo
  
 「双葉さん」 
  
  
  歌番組の収録が始まる、ほんの十分前。 
  椅子をいくつか並べて寝てたんだけど、声をかけられた。 
  その低い声の主は、プロデューサー。 
  杏とは対照的で、仕事一筋の真面目人間。 
  
  
 「ん〜……あと五分〜……」 
  
  
  枕代わりにしていたウサギに顔を埋める。 
  人間って、五分だけでも寝たら違うんだよ? 
  だからさ、五分と言わず五十分は寝かせて欲しい所だよね。 
  そしたらさ、寝てる間に収録も終わってるだろうしねー。 
  
  
  
 「――すみません……少し、席を外します」 
  
  
  
  いつもの様でいて、いつもとはまるで違う。 
  普段だったら、収録は見ててくれるもんね、プロデューサーは。 
  そりゃあ、いつもって訳じゃないけどさ。 
  今日は、朝のミーティングの時に「見る」ってハッキリ言ってた。 
  
  
 「……はいは〜い」 
  
  
  なのに、席を外すって事は……ま、そういう事だよね。 
  
  
 「後の事は、お願い出来ますか?」 
  
  
  プロデューサーのその言葉に、ウサギに顔を埋めたまま、 
 片手を上げてヒラヒラと返事をする。 
  
  
  
  ――これから、命賭けの戦いに行ってくる。 
  
  
  
  ……なのに、担当しているとは言え、アイドルの心配をする仕事人間に向かって。 
  そりゃ、プロデューサーはプロデューサーだけど、働きすぎだよね。 
  それにさ、杏だって十七歳の乙女なんだから、気を遣って欲しいよ。 
  
  
 「ありがとうございます」 
  
  
  めんどくさいから、笑顔で見送りはしないからね。 
  杏は、アイドルだからさ。 
  ここで笑顔をすると、収録の時に笑ってられなくなっちゃうし。 
  
  
 「……では、失礼します」 
  
  
  ……はーあ、たまには怪人も引きこもってて欲しいよ。 
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