576:名無しNIPPER[sage saga]
2019/01/12(土) 21:35:59.58 ID:OWaII7a+o
#有名人
「……」
頭の中にそんなハッシュタグが浮かんでいる。
棚の向こう側、服の隙間から見えるのは、知ってる顔。
自分は知ってるけど、向こうは知らない。
そーゆーの苦手そうな感じがする。
「これなんか、どうでしょうか?」
何を着ても映えそうだけど、それだとコーデムズくない?
……あ、似合う。
背が高いからどうかと思ったけど、雰囲気出てる。
売れ残りそうだったから、買ってくれないかな。
「似合っていると思います」
弾む様な声とは反対の、低い声。
どんな顔をしてるかは、隠れてて見えない。
でも、あんまり楽しそうじゃないのは、わかる。
声の調子とかじゃなく、
「あの……そろそろ、時間が」
店に入って来てから、ずっとこの調子なんだもん。
服をゆっくり選ぶ暇すら無いのかな。
だったら、手に取ったのは全部買ってくれた方が自分的には嬉しい。
お客サン来なくて暇だから、気分転換にレジ打ちたい。
「それなら、まだ大丈夫な筈ですけど?」
ニッコリ笑ってるのに、#怖い。
SNSにアップ……しちゃ、マズいか。
お客サンの写真を勝手に撮るのは、さすがにね。
それに、バズるだろうけど、炎上とセットかな。
「……」
言い返せない男の人は、右手を首筋にやって押し黙った。
#暇ではないけど、#余裕ではあるんだ。
良いデスよー、ゆっくり買い物してってください。
確か元モデルだし、参考になるコーデあるかも知れないから。
「ふふっ! あのニット、きっと似合うと思うんです」
さっき広げて見せた服を手に持ち、鼻歌を歌いながら歩き去る。
自分より年上で、大人なのに、#子供っぽい。
残されて、立ち尽くす男の人。
ポツリと聞こえる、低い、
「……どうしようもない人だ」
#優しい声。
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