812:名無しNIPPER[sage saga]
2019/01/22(火) 23:35:46.26 ID:gNI1FyNyo
・ ・ ・
「……アンタが居て、ホント助かった」
私の前に置かれたコップには、オレンジジュースが注がれている。
それは、さすがにそのまま帰すのも、と、
彼女が出してくれたものだった。
コップと手に取り、軽く一口だけ飲み、喉を潤す。
「いえ、ご自宅で起きた事なので」
後処理は楽でした、などとは言うまい。
この様な作業に、苦楽の判断をつけるのは、違うと思うのだ。
比較的速やかに、安全に事が運べた。
……ただ、それだけだ。
「それでは……私は、これで失礼します」
今、彼女はシャワーを浴びている。
出てきた時に、いかに担当プロデューサーとは言え、
事件の全貌を知る私と顔を合わせるのは気まずいだろう。
まだ幼さが残るとは言え、彼女は、女の子なのだから。
「う……うん、そうだね」
それは十分に理解されているのだろう。
一瞬引き止めようとしたのか、伸ばそうとした右手は引き戻され、
キュッと握りしめられて彼女の胸元に収まった。
もしも止められても、問答無用で帰っていましたが。
「……あ、あのさ!」
リビングのドアに手をかけた時、声がかかった。
ドアノブは回され、あとはもう、引くだけで開く。
「……何でしょうか?」
何を言おうとしているのだろうか。
此処に居続けては、シャワーを浴び終わった彼女と鉢合わせてしまう。
そうなっては、元も子もない。
それに何より、私も早く帰ってシャワーを浴び、寝て、今日の事を忘れたい。
「もし、アタシがああなった時も……助けてくれる?」
ゆっくりとドアを開け、一歩踏み出す。
「……頑張ってください」
振り返って、彼女を顔を確認はしない。
「担当じゃないアタシは、助けてくれないの!?」
違います。
……そもそも、ですね。
「――ああいった事態にならないよう、頑張ってください」
おわり
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