992:名無しNIPPER[sage saga]
2019/01/30(水) 21:09:22.91 ID:Bo1GBMA1o
・ ・ ・
「ごめん、お待たせ」
走ったせいで、少し弾む息を整えながら言う。
座るのは、今日は後部座席じゃなく、助手席。
道中、少し話したい事もあるしね。
クラスメイトが、プロデューサーのあだ名を「不審者」にしてた事とか。
「いえ、問題ありません」
低い声でそう答えながら、私の準備が終わるのを待っている。
シートベルトを締める前に、鞄は後部座席に置いておこうかな。
「あ、そうだ。ちょっと良い?」
鞄を膝の上に置き、携帯を取り出す。
電源は入ったままで、暗証番号を打ち込むだけ。
ちょっと、わからない事があったから。
プロデューサーなら、わかるかも知れないし。
「ねえ、この写真なんだけど」
プロジェクトメンバーとプロデューサーが一緒に写ってる写真。
それをプロデューサーに見せて、聞く。
「はい」
「何か、変な所ある?」
「変な所……ですか?」
少しだけ目を細めて、プロデューサーは写真を確認している。
だけど、私と一緒で、おかしな所は見当たらなかったようだ。
「皆さん、良い笑顔をしています」
「……だよね、ありがと」
携帯を手元に引き寄せた時、親指が画面に触れた。
そして、スライドしたアルバムは、皆で撮った後、
プロデューサーと二人で個別に撮った写真を映し出した。
「……」
その写真の中の私は、良い笑顔をしていた。
勿論、皆で撮った写真もそうなんだけど。
私は、あの時こんな笑顔をしていたのか、という思いに駆られる。
クラスの友達は、きっと、この写真を見たのだろう。
「? どうか、しましたか?」
いつまで経ってもシートベルトを締めない私に、声がかかった。
慌てて携帯の画面を鞄にしまい込み、後部座席へ。
顔を合わせないようにして、シートベルトを締める。
今晩にでも、皆にLINEをして誤解を解いておかないと、なんて考えながら。
「……別に、何でもない」
窓枠に肘をついて、外の景色を眺めるフリ。
プロデューサーは、不審げな視線を私に向けていた。
おわり
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