過去ログ - 【オリジナル・安価&コンマ】宇宙を駆ける者たちの物語
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22:名無しNIPPER[saga]
2019/01/21(月) 23:22:07.60 ID:OBu1iGxQ0
月面都市の大きな病院。その一室に、少女は臥せていた。

テレビを点けるが、くだらないニュースばかり。興味を惹かれるものも無く、溜め息を吐きながら消す。

ポフン。

枕に顔を埋め、目を閉じる。友人などいない自分を見舞う人は、誰一人存在しないのだ。

「リーゼ、起きてる?」

「………!」

彼、少女――リーゼ――の兄、たった一人の家族、リヒトを除いては。

反射的に飛び起き、ドアの方を見る。そこには、確かに兄がいた。

「…お兄ちゃん」

手を伸ばし、触れようとする。だが、決して届かない。届いてはいけないのだ。

今彼女がいるのは無菌室。ビニールで覆われた小さな部屋の中に囚われている。

薄い薄い膜一つで隔てられているだけ。それだけなのに、その膜はどんな壁よりも分厚く、兄は遠くにいた。

「よかった。身体は大丈夫そうだね」

クスリ、と微笑み、リヒトは本を幾つか椅子に置く。暇つぶしになればという配慮だ。

「先生に訊いたけど、まだドナーは見つからないらしいんだ」

「そう」

表情は変わらないが、あからさまにリーゼは落胆したように、視線を落とす。

リーゼは、常人が持っているはずの免疫を殆ど持たない。

それ故、今も無菌室にいる。医療技術が発展した今でも、治療法は唯一つ。骨髄移植だけだ。

リヒトと適合するなら既に完治しているのだが、1/4の確率で当たるくじで、残念なことにはずれを引いていた。

だから、二人が出来るのは待つことだけなのだ。

僅かな可能性を信じ、鳥籠の中で待つ。それしか出来ない。


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