過去ログ - 【オリジナル・安価&コンマ】宇宙を駆ける者たちの物語
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名無しNIPPER
[saga]
2019/01/22(火) 18:23:57.07 ID:dw0sjwyM0
重い足取りで廊下を歩く。いつも通っているのに、妙に長く感じた。
「…ただいま」
「おかえり。…十時間ぶりね」
パタン。
本を閉じて、リーゼは暗い表情の兄を見る。生きていることに喜びを感じたが同時に、何故そんな顔をしているのか気になった。
火星に行くと言ったのに、すぐ戻ってきた。それだけで、何があったか察することは出来る。だが、本人の口から訊きたかった。
「…ごめんな。お兄ちゃん、仕事が無くなるかもしれない」
「そう」
「…そうしたら、リーゼの治療も続けられなくなるかもしれない」
「そう」
厳しいことを言われているのは分かっている。だからと言って、兄を責める気にはなれない。
今まで死に物狂いで自分を養ってくれたのは、他でもないこの兄だから。感謝こそすれ、恨みなどしない。
「お兄ちゃんが頑張ってくれてるのは分かってる」
「だから。大丈夫」
リーゼは初めて、笑顔を見せた。今言った言葉に嘘偽りは無い。そう示すために。
「…俺、また頑張るからさ…。だから、ちょっとの間だけ、我慢してくれるか…?」
「うん。いつまでも待つ」
その言葉を聞いたリヒトは、感情を抑えることが出来ず、泣いた。
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