過去ログ - 【オリジナル・安価&コンマ】宇宙を駆ける者たちの物語
1- 20
68:名無しNIPPER[saga]
2019/01/22(火) 18:23:57.07 ID:dw0sjwyM0
重い足取りで廊下を歩く。いつも通っているのに、妙に長く感じた。

「…ただいま」

「おかえり。…十時間ぶりね」

パタン。

本を閉じて、リーゼは暗い表情の兄を見る。生きていることに喜びを感じたが同時に、何故そんな顔をしているのか気になった。

火星に行くと言ったのに、すぐ戻ってきた。それだけで、何があったか察することは出来る。だが、本人の口から訊きたかった。

「…ごめんな。お兄ちゃん、仕事が無くなるかもしれない」

「そう」

「…そうしたら、リーゼの治療も続けられなくなるかもしれない」

「そう」

厳しいことを言われているのは分かっている。だからと言って、兄を責める気にはなれない。

今まで死に物狂いで自分を養ってくれたのは、他でもないこの兄だから。感謝こそすれ、恨みなどしない。

「お兄ちゃんが頑張ってくれてるのは分かってる」

「だから。大丈夫」

リーゼは初めて、笑顔を見せた。今言った言葉に嘘偽りは無い。そう示すために。

「…俺、また頑張るからさ…。だから、ちょっとの間だけ、我慢してくれるか…?」

「うん。いつまでも待つ」

その言葉を聞いたリヒトは、感情を抑えることが出来ず、泣いた。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
1002Res/600.32 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice