過去ログ - 武内P「キスします」
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977:名無しNIPPER[sage saga]
2019/09/25(水) 00:21:51.28 ID:pITwjxgEo

「私は、貴女のプロデューサーです」


 ――アイドルは、ウンコなんかしない。
 彼女とて、それが幻想である事は重々承知しているのだろう。
 アイドルも人間だ。
 時に笑い、泣き、怒り、悲しみ……トイレにも行く。


「今までも」


 しかし、彼女はその幻想を追い求めた。
 届かぬ星に手を伸ばすその行為は、人々に笑われるかも知れない。
 だが、私は彼女のプロデューサーだ。
 自らが描く理想のアイドルを目指す事を、決して笑わない。


「そして……」


 ……一瞬、考える。
 私は、そろそろ転職をしても良いのではないだろうか?
 業務内容から逸脱した事態に遭遇する職場は、劣悪過ぎる環境ではないか?
 ……いや、そうではない。



「これからも」



 きちんと、トイレに行って頂く。
 目の前に居る、理想を追い求める彼女に、現実との折り合いをつけて貰う。
 アイドルとしての尊さを優先するよりも、人間としての尊厳を大事にして欲しい。
 苦しくて階段を登れない時は……エレベーターを使ってでも、トイレでして欲しい。


「Pサマ……」


 微かな、輝き。
 悪臭が支配するこの空間で、その輝きはそれを一瞬忘れさせ……いや、臭い。
 まずは、この部屋の空気を入れ替えよう。
 ドアを開けたら臭いが外に出て被害が拡大するバックドラフトが起きるので、窓のみを。


「へへ……嬉しい! よ!」


 ……良い、笑顔です。
 笑っていられるような、そんな能天気な状況ではないので、少し腹立たしいですが。
 一先ずは、この場を離れても大丈夫なようだ。
 片付けのために必要な道具を持ってこなければ、事態は何一つ好転しない。


「でも、お気にのシャツだったのに……はぁ、やむ」


 気にする所が、おかしくはありませんか?
 ……と、言いかけて止める。
 少し気色ばんでしまったため、鼻で呼吸して臭いを吸い込んでしまったため、気分が悪い。
 今の言葉に対する複雑な感情も相まって、続けざまに罵詈雑言が飛び出してしまう恐れがある。


「あ! 帰りの服は! どうすれば!?」


 悩む彼女を置いて、掃除道具を取りに行くため、歩き出した。
 返答をしない理由は、いくつか挙げられるが……その全てが、一言に集約される。




 ……さすがに、付き合っていられない。



おわり


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