57: ◆wOrB4QIvCI[saga]
2016/07/17(日) 03:28:29.89 ID:Os4DEw890
◇――――◇
梨子「んー……」
つーっと、グランドピアノの鍵盤蓋の表面を、指でなぞる。ここにきて最初にそうやった時、埃がかぶっていたのを覚えている。このピアノは授業でしか使われてなかったんだね
でも、今はかなりの頻度で使ってあげられてる。この子も、嬉しいって思ってくれるかな。
善子「今日はなにを弾くの?」
梨子「そうだなあ、よっちゃんがいっつも口ずさんでる曲、にしようかな」
善子「え?」
椅子に腰を下ろして、鍵盤に指を滑らせる。ふっと、息を吐く。
梨子「なにかわかる、かな?」
指先に、体重を少しだけかける。鍵が沈み込んで、音が私の中に響き渡る。ふっと、肩が軽くなる。全身が軽くなる。
続けて、音色を紡いでいく。身体全体が軽くなる。
善子「!!!」
気がついたみたい。
梨子「ね、好きでしょ。――歌ってみて」
善子「え」
梨子「ね?」
善子「ごく……」
善子「――――」
大切な人の声と、私と人生を共にしてきた音色が混じり合って、そう……これは、まるで空を飛んでいる感覚。私はきっと何度でも、この感覚を――。
おわり。
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