勇者(Lv99)「誰が僧侶を殺したか」
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87:名無しNIPPER[saga]
2016/08/05(金) 21:37:38.52 ID:jbWZ7of70
第7話 始まり

 城内のある個室

賢者「……勇者の剣に組み込んだ女神を模した心理テストなんだが、本当にこの性格設定でいいのか?」

初代勇者「迷宮実験の結果から割り出した結論だ、実績は十分だと思うが?」

賢者「しかしこの性格はあまりに勇者像からかけ離れていないか?」

初代勇者「こういう人種は周りの目を異常なまでに気にするがゆえに自分をうまく取り繕おうとするからな、多少の粗は勇者の肩書きがごまかしてくれるだろう」

賢者「……嫌いなタイプの人間なら、多少は罪悪感が薄れるか?」

初代勇者「言っている意味がわからん。 このシステムを定めるまでに、何人の人格を破壊してきたと思ってる。いまさらそんな感情は捨てている」

賢者「……疑似加護の最大出力は迷宮を破壊できないレベルと言っていたが、それでも世界に及ぼす影響は小さくないぞ、いくら俺たちの100分の1の出力と言ってもこの勇者モドキが暴走したらどうするつもりだ?」

初代勇者「この人種が暴走なんて考えられんが、まぁこの人格の傾向は割り出せているんだ、そこから導けるケースに対してアレが対応できるように心に組み込んでおけばいいだろ」

賢者「あまり複雑な呪いは効果を弱めるかもしれないぞ」

初代勇者「最悪の保険だ、俺の見立ててでは1パーセントも可能性はない、そういうやつだからこそ選ばれるわけだしな。そこに割り当てるリソースは少しでいい、あとは実践の中で微調整していけば問題ないだろ」

賢者「……しかし」

初代勇者「ここでグダグダ机上の空論を並べ立てても意味ないだろ? 実際稼働させてみなきゃわからない問題も必ず出てくる、何をそんなに躊躇する?」

賢者「アレはどうしても使わなきゃダメだろうか?」

初代勇者「そのために世界にふくろを普及させたんだ、今更怖気づいてどうする」

賢者「……そうなんだが……危険じゃないか? せめてヒントは排除すべきだと思うんだが」

初代勇者「このヒントが、後々必ず効いてくるのは間違いない、その結果起こる極限状態は貴重なデータだ。 今後のフィードバックも考えればあった方がいいだろ」

賢者「俺が言ってるのは、その言葉が分かりやすすぎるってことなんだが、迷宮までは持つかもしれんが……その先はやはり不安が残る」

初代勇者「……ずっと冒険を共にして日常となっているんだぞ? これは人間の本能の問題だ。げんに1000人の人間を対象にテストした結果はお前も見ただろう? 俺たちの心はそういう風にできているんだよ、……強迫的にそう思いたいんだ」

賢者「……まぁ……俺もそう思うが」

初代勇者「仮にその発想が浮かぶほどの人物ならまず勇者の選定からはじかれる。何度も言うがこの勇者は短絡的に物事をとらえるからな。 そこまで深く考えないし、理屈に沿わなくても行動を起こせるんだ。そしてこのトリックは日常的な時間が経てば経つほど発見が難しくなる。」

 賢者の男はそこでハッとしたように視線を勇者の後ろに向けた。

賢者「おい、勇者」

 賢者は声を潜めて勇者を廊下へ誘う。

 勇者とともに廊下に出た賢者は、顔を青くして勇者を見つめる。

賢者「奥の扉の隙間から見えたものについて説明しろ」

勇者「今回の会話を聞かせたかったのさ」

賢者「!?」

勇者「いろいろ考えられると面倒なんでな。単純な希望があると、思考はそこにしか向かなくなるだろ?」

賢者「……ッ」

 絶句する賢者の前で勇者はニヤリと笑った。

勇者「さて、さっきの話だが少し訂正がある、勇者選定の件だが、心理テストに加えて100通り以上のランダムな実践試験を加えてくれ」




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