3:名無しNIPPER[saga]
2016/11/12(土) 01:43:00.89 ID:/QnXmBJo0
あれはとても美味しかった、
この間のそれはお客様に褒めていただいた、
今度はどれにしようかしら。
他愛もない話ばかり。それでも、僕に分不相応な期待を抱かせるには十分すぎるくらいだった。
歳は同じか、ひとつふたつ向こうが上か。
上品で包容力に溢れた表情、腰まで伸びた栗色の三つ編み、落ち着いていて心に染み渡るような声。
紅茶とお菓子だけ食べて生きているんじゃないかっていうくらい、甘さで満たされた雰囲気。
憧れ、という感情では、もう片付けられなかった。
するとどうしても、考えてしまう。
彼氏は(本人はこんな言い方しないだろう)いるのかな、なんて。
これまでの素振りから、そんな様子はなかった。
もしかしたら付き合った経験もないのかもしれない。いかにもお嬢様の女学校なんてお似合いだし。
わきまえているつもりだけど――もし、そうだとしたら?
外はもう暗い。駆け込みのお客なんて普通は願い下げだ。
でも、それでも――僕は店のロゴの入ったすりガラス向こうの夜を、じっと見続けていた。
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