【モバマス】響子「理想のデート」
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16: ◆JfOiQcbfj2[saga]
2017/05/07(日) 01:15:48.11 ID:upUN87ha0
 沙紀の腕に抱かれたまま、響子は顔をあげた。当然見上げる形になる。

「沙紀さんは絵とかダンスとか色々教えてくれましたけど、それだけじゃなくって、日頃一緒にいるときの細かい気配りとか私はそんなところも凄いと思ってるんです」

 そこまでべた褒めされると流石に沙紀も恥ずかしい。そ、そうっすかねーと濁すように頭を掻いた。そして響子の言葉を訂正するように話す。

「でも、アタシあれっすよ?結構適当なところがあるし、部屋を散らかしたままにすることもあるし、響子ちゃんの知らない悪いところだっていっぱいあるし……」

 しかし、そんな沙紀の言葉を打ち消すように響子は首を横に振った。

「それは私だってそうです……家事は好きですけどそれをしている時はたまに周りの事に気が向かなかったり、家事の事でついつい熱くなっちゃうこともありますし……」

 でも、と響子は前置きする。

「悪いところがあるとかないとかじゃなくって……好きなんです。沙紀さんが」

 細かい震えが沙紀の身体に伝わっている。緊張の度合いが沙紀にも伝わる。本当は何も言わず泣き出したい気持ちがありながらも響子は思いを言葉にしていた。

「わかってました。言ったら終わりだって……沙紀さんとの関係を壊したくないならずっと心に留めて置かないといけないって……」

 響子の瞳は今にも零れんばかりに潤んでいた。それでも沙紀から目を離さない。

「でも、もう辛かったんです。自分を偽って沙紀さんと過ごすなんて耐えられなくて……」

 響子はそこまで言うと、弱く抱かれていた沙紀の身体から離れた。そして、悲しそうに笑った。

「自己満足でしかないですけど、でも、伝えられてよかったです……ごめんなさい、もう変に近づいたり――」

 実際に嫌われる前に対象から離れようとするのは響子にしては珍しい防衛本能か逃走心理なのか。とにかく、別離にも近い言葉を吐こうとしていた途中だった。

「ひゃっ!?」

 響子の視界がグラッと揺れた。それは彼女が倒れたわけではない。

「沙紀、さん?」

 先程の優しい抱き方ではなく、力強く抱きしめられていることに響子が気づいたのは背中に回された沙紀の手と、身体同士が触れ合う柔らかさを感じたからだった。

「自分だけ言いたいこと言って勝手に終わらせるのはちょっとずるいっす」

 沙紀の声色は少し咎めるような、ちょっとだけ怒っているようなものだった。響子は抱きしめられながら弱々しく顔を伏せる。

「だって……」

 歯切れが悪い。沙紀は軽く息をつくと響子を抱きしめたまま一転、少し申し訳ないような口調で話し出した。

「いや、意気地がなかったのはアタシのほうなんすけどね」

「え?」

 沙紀は抱く力を緩め響子の肩に手を添える形になった。自然、お互いの熱い視線が交差しあう。

「響子ちゃんがアタシとの関係を友人だと思っているなら、って考えるとどうしても伝えようと思っても躊躇しちゃうばかりで」

 はぁ、と再びため息をつく彼女。響子は肩に手をおかれながっら胸の鼓動が早まっていく感覚に襲われる。それはある種の期待に対する興奮だった。

「情けないっすよね。そんな変わらないけど一応年上なのに」

「え、えっと……?」

 響子は先程よりは落ち着いたにせよ、いまだ思考は完全に整理しきれていない。ゆえに沙紀が言わんとしていることを理解するのに時間がかかっていた。

 沙紀はそんな様子の響子を見て、ついに決心したように告げた。



「好きっす」


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