3: ◆JfOiQcbfj2[saga]
2017/05/07(日) 01:03:18.77 ID:upUN87ha0
響子は従順だった。その唇は少しも抵抗を見せずただ受容してくれる。嫌がっているだとかそんな雰囲気を微塵も感じさせない。いや、きっと嫌だとしてもそれを表に出すことはしないのだろう。
(どっちなんすかね……)
唇を重ねたまま、沙紀は確かに興奮しながらもそんなことを考えていた。
(出来れば響子ちゃんも同じ思いだと――)
そう思いたかったしそうであって欲しかった。そうでないと今日を境に彼女との関係が崩れてしまうことが沙紀にはわかっていたのだ。
出来るだけ貪りたい感情を必死に抑え込んで優しめのキスをしていたのも、拒否されたくない恐怖心が混じっているからだと言われても沙紀は否定できなかった。
そんな思考を脳内でグルグルとさせていた沙紀は、不意に響子の唇が震えていることに気が付いた。そして、その震えの意味を理解した瞬間――
「……?あっ」
慌てて沙紀は唇を離して、響子を抑えていた腕も解放した。その瞬間、彼女は口元を手で隠しながら少し苦し気に咳込んだ。
「だ、大丈夫っすか……?」
「ご、ごめんなさい。息、続かなくって……」
荒い呼吸を繰り返しながら響子は息を整えていた。その瞳が潤んでいることを確認して、沙紀はしまったと内心猛省していた。彼女の唇に夢中になってしまったせいで逆に彼女のことを全く考えることが出来ていなかった。
「謝るのはアタシの方っすよ。無我夢中になってしまって申し訳ないっす……」
沙紀はそう言って気落ちするように表情を曇らせる。しかし、対する響子の表情は沙紀からすれば不思議なほど微笑んでいた。
そして、ある程度呼吸を整えてから響子は口を開く。
「それだけ、私に夢中になってくれたってこと、ですよね……?」
「…………」
潤んだ瞳に見つめられ、吸い込まれそうになりながら沙紀は頷くことを返事とした。そうすると響子は益々表情を明るくさせていた。
沙紀はそれに怪訝にしながらも恐る恐る聞く。
「お、怒ってないんすか?自分勝手だって……」
「確かに少し苦しかったです」
少し咎めるような声。
「ごめんなさい、本当」
深々と自分の真上で頭を下げる沙紀の顔を響子は手で包み込むように優しく上げた。
「ふふっ、でもそれだけ求めてくれたって思ってもいいんですよね?」
「そ、それはもちろん」
「なら、いいです。許してあげますっ。なんて、えへへ」
沙紀の顔を包んでいた手を離すとそのまま背中に回す。
「響子ちゃん?」
いまだに馬乗りの姿勢のまま、沙紀の背中に響子の柔らかい手の感触が伝わる。響子が腕をまわして抱き着いてきたことぐらいは当然、わかる。
「え、っと?」
しかし、その行動の意味がわからず沙紀は困惑した。固まってしまった先に響子は顔を赤らめながら恥ずかしげに呟く。
「続き、しないんですか……?」
ぞくりと沙紀の身が興奮に震えると同時に、彼女の濡れた瞳、ほんのりと上気した顔、そして柔らかい唇の感触が脳内にフラッシュバックする。
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