8: ◆JfOiQcbfj2[saga]
2017/05/07(日) 01:08:18.17 ID:upUN87ha0
彼女の言いたいことがわからないほど沙紀も鈍くはない。しかし、あまりにも突然であったためか聞き返す形になってしまった。
「で、ですから、えっと、あの私が、あの、その……」
ぷしゅー、と湯気の立つ音が聞こえそうなほど響子は顔を赤くしていた。流石に沙紀もこれはいけないと思ったのか慌てながら口を開く。
「あ、ああ、えっと、可愛いっすよ!すっごく!そりゃもうアタシが男だったら間違いなく年中無休で詰め寄ってるっす!」
そんな調子のせいか言っていることは支離滅裂、というほどではないがとにかく滅茶苦茶だった。
しかし、響子はそんな言葉を聞いてハッと顔を上げた。
「ほ、ホントですか?」
「ほ、ホントっす」
「そ、それじゃ、あの、雑誌に書いてあったこと……」
「え?」
「今度わ、私とその、デート、してくれませんか……?」
最後の方は消え入るような声だった。それでも事務所が珍しく静かだったおかげかその声は沙紀によく聞こえた。
沙紀が沈黙していると響子は慌てながら言葉を付け足した。
「あ、あの、本当のデートってことじゃなくて、そのそういう体験をしてみたいというか、あの、その……」
(あー、なるほど。そういうことっすね)
沙紀はひとり納得していた。どうやら彼女は理想のデートというものを経験したいらしい。
「つまりアタシが彼氏役みたいな感じで、ってことっすよね?」
「え……あ、えっと、そ、そうです!そんな感じで!」
確かに彼氏は作れる立場でない以上、”ごっこ”という形になってしまうがそれでも彼女がしたいというならば沙紀に断るつもりは微塵もなかった。
「もちろんいいっすよ。女子寮の響子ちゃんの部屋かアタシの家ってことっすよね?ああー、でもアタシの部屋はちょっと今散らかってるんすよねー……」
「じゃ、じゃあ私の部屋に来てください。その方がおもてなし出来ると思いますし!」
「じゃあ、次にお互いのオフが重なる日でいいっすか?」
「は、はいっ。あの、その、よ、よろしくお願いします!」
「あはは、そんなかしこまらなくても大丈夫っすよ」
形だけのつもり。と沙紀はそう思っていた。それがとんでもない間違いだと気づいたのはそれから三日後の当日だった。
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