20:名無しNIPPER[saga]
2017/05/18(木) 02:28:25.24 ID:5c9LcRy70
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「ちょっとハナシあんだけど」
放課後、カバンを掴んだ瞬間、城ヶ崎に呼びとめられた。
なんだよと、精一杯強がってみせる俺を無視するように、城ヶ崎は俺に背を向けて教室の外へ歩み出した。
顔はよく見えなかった。でもその背中がいつも以上に小さく見えて、俺は付いてゆく以外の行動を取りようがなかった。
ずんずん進む城ヶ崎は――なんどかこちらを一瞬だけ振り返り――じめじめした体育館裏に行き着くまで頑なだった。
その小さい歩幅は、むしろ俺がアイツを追い越さないように苦労したくらいだったが、それを茶化すことはできなかった。
高なる心臓は俺自身が一番感じていた。
「で――なんなんだよっ」
自分を奮い立たせるために先手を打った。その声は思いのほか強く響いた。
今日は体育館の運動部は休みの曜日みたいだった。それか、特に熱心でも無い部員がまだ到着していないだけか。
一拍置いて、城ヶ崎は振り返る。夕日がもろにその顔にあたる。
久しぶりにまともに見た気がする。
「最近、アタシのこと避けてない?」
イキがった態度は一瞬でその中心を打ち抜かれる。
『お前は姉ちゃんみたいにはなれない』
――悔し紛れと、それ以外の理由で言ったことば――は、燃えカスとなって自分自身を苦しめていた。
結果アイツは、アイツがあれほどあこがれ続けた姉ちゃんと、まったく見劣りしないくらいのアイドルとなった。
みじめ過ぎて、情けなくて、俺は前みたいに、アイツに絡めなくなった。
きっとアイツは、前みたいに俺に絡まれなくなったと思ったんだろう。
「そーゆーの、イヤなんだけど」
イヤ……嫌、なのか。
「まーアンタが色々言ってくれたのはモチ覚えてるけど、もうアタシもコドモじゃないしー? それくらい気にしなくったってぜーんぜん問題ないんだから!」
かちん、ときた。
それは久しぶりで心地いい音だった。
「はあ? こっちこそぜんっぜん気にしてねえし! ってかお前まだまだガキっぽいっての!」
自然と出てくる悪態に、城ヶ崎はむしろ嬉しそうな顔をした。
そんな顔するなよ。頼むから。冷静ぶってた頭が押し流される。
今まで通りを。それよりもっとを、考えてしまう。
テレビで、雑誌で、映画で見るより、活き活きとした顔をみせられたら、どうしても。
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