31:名無しNIPPER[saga]
2017/06/18(日) 17:03:36.25 ID:Esi2W0mL0
――――――――――――――――――――――――――――――――
「そこで波がぐぅわぁーなってなー? 瑞樹はん流されながらもガッツリポーズ決めててぇ……」
昼休みの教室で、大阪弁と笑いが響き渡る。それは学校中に届いているはずで、まるで学校の中心がココみたいになってるかもしれない。
それを遠巻きに眺める男三人。
「あーあー、今日もアイツ大人気だな。あの関西人」
俺の右のメガネが言う。いかにもうんざりした口調だが、それは言った本人にだって負け惜しみと分かっているだろう。
「ま、まあアイドルだしな、難波。有名人だし」
俺の右のデブが背中を丸めて小声で続ける。無駄に小さな弁当を拝み込むようにしてつついている。
もうおわかりだろうが陰キャ三人衆である。
「…………」
俺は沈黙を保っている。さも興味が無いと完璧に態度で示している。
というのは見せかけで、俺の集中は一点、机に腰掛けた難波のスカートに、その際の肉付きのよい太ももに注がれている。
あんな短いスカートで足組んで落ち着きがなくて、それでいて不思議とあざとさや下品さを一切感じさせないのは本人の陽気がなせる業なのか。
色気も皆無だから、幸か不幸か、と言わざるを得ないだろうけど。そんなこと言う勇気はとてもじゃないが、ないけれど。
できるのはせいぜい、取り巻きの隙間からばれないようにスケベ丸出しの視線を差し込むことくらいだった。
「あの人プロ意識高すぎるやろ! てもーウチら全員腹抱えて笑ってもーたわー! …………んー? なんやなんや? 熱い目線を感じるでぇ?」
難波の声が聞こえ、俺は自分の血の気が引く音を聞いた。どっと湧いていた笑いは止んでいた。
気が付けば教室中の視線が俺たちに集中し、その中心に、難波がいた。デブもメガネももちろん俺もしばりつけられたように動けなかった。
脚から視線を引き剥がした俺は、今度は難波からの顔から目が離せなかった。少し真顔になった難波は――そんなこと言っている場合じゃないけど――間違いなく可愛かった。
公開処刑を待つ陰キャ三人衆の前で、彼女の表情が再び笑みに変わった。
「あ! もしかして昼のたこ焼きの青のり歯についとるんかな? んもーはよ言ってや!」
素早くポケットから手鏡を出す様に、再び教室が笑いに包まれた。
もーかなわんわとか言いながら鏡を仕舞うが、難波は続けざまに自分の太ももと膝の間くらいをぺちぺちと叩く。
「ほらほら、そんな離れてへんでコッチ来てーな。ウチのお顔のチェック任しますから!」
言うが早いが、うすら笑いを浮かべてのこのことデブとメガネが立ち上がる。お前らにはプライドってものが……
――意地を張っても仕方ないので、仕方なく俺も立ち上がり、取り巻きの一番外側に腰掛ける。それでもさっきよりはずっと近い。
さすがにこの距離で太ももを見続けることは出来ないから、俺は難波の顔を見た。
満足そうな顔で話を再開する難波は、その顔は――眩しすぎて、だから今まで遠くで見ることしかできなかったのだと気付いた。
難波の話は、全部が全部面白いかと言われれば多分違うだろう。でも俺はきっと、アイツの思う通りに笑っていた。
43Res/41.35 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20