【悪魔のリドル】兎角「一線を越える、ということ」
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50:名無しNIPPER[sage saga]
2017/08/22(火) 00:05:46.66 ID:xiHy4lmiO
「は……る……?」
晴はその表情のまま兎角に尋ねた。
「兎角さん、気持ちいい?」
兎角は回らない舌で答える。
「あ、あ……きもち、いい、ぞ」
しかしこれは半分は嘘であった。
確かに先ほどまで最上の快楽の中にいた。しかし晴の悲しげな表情を見るや、急に胸が締め付けられ快楽がもやの中に隠れたように遠くなった。
「は、る……?」
不安げに晴を見る兎角。すると晴はハッと我に返ったような顔をして兎角の体を撫で始める。
「ほら、兎角さん!もっと、もっと気持ちよくなってね!」
そう言って手を動かす晴であったがその表情にはなにか悲痛さのようなものが見え隠れしていた。
いたたまれなくなった兎角が再度「晴っ!」と呼ぶと、晴はもう一度我に返ったような顔をして、そして一言、「ごめんね」とつぶやいた。
急なつぶやきに困惑する兎角。そんな兎角を見てか見ずにか、ぽつりぽつりと晴がつぶやく。
「ごめんね、兎角さん……晴、ずるいよね……」
「はる?」
「ごめんね、兎角さん。実はこれは罰じゃないの。全部晴がしたかったことなの」
晴は目に涙をためたまま懺悔を始めた。
「晴はね、ずっと兎角さんにこんなこと、めちゃくちゃにしたかったんだ。ううん、これだけじゃない。エッチな声を出させたり、恥ずかしい格好をさせたり、ローターを入れたエッチな散歩だってしたかったし、映画館でのエッチも前からしたいことだった……。でも、言えなかったんだ。こんなこと言ったら兎角さんに嫌われるんじゃないかって思って……」
晴が涙を流す。
「そんな時、兎角さんと生田目さんのことがあった。知ったときはとっても悲しくって、苦しくって……でも話を聞いたら思ったの。もしかしたら晴が恥ずかしがらずに言っていればこんなことにはならなかったんじゃないかって。そう考えたら怒ってた気持ちはなくなって、それから、やっぱり兎角さんとエッチなことがしたいって改めて思ったんだ。……でも、それでも怖くて言い出せなかった。嫌われたり、変な娘だと思われたらどうしようって思って……だから罰にかこつけて、晴は……」
「晴……」
ようやく兎角は今回の件の全てを理解した。不満があったのは自分だけではなかったし、それを言い出したら嫌われるのではないかと恐怖したのも自分だけではなかった。要はそんなすれ違いがさらにねじれたのが今回の話だったのだ。
不甲斐ない話だが兎角は今初めて晴の本当のところに触れた気がした。そして晴が今までより一層いとおしく見えた。
兎角は首を伸ばして晴の唇に軽くキスをした。
もう兎角に恐怖はなかった。
「晴……」
「兎角さん……?」
「晴。私はお前が好きだ。愛してる。お前にめちゃくちゃにされたい。晴。好きだ。私を愛してくれ」
兎角がほほ笑むと晴は大粒の涙をこぼした。それは悲しみや苦しみから出たものではなく歓喜から流した涙であった。
「兎角さん……!」
「晴っ……!」
二人は再度口づけを交わしそして舌を絡め合う。今度こそ二人で上り詰めた最上級の快感でった。
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