白菊ほたる「好きあったまま別れるよりも嫌われてでもいっしょにいたい」
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6: ◆agif0ROmyg[saga]
2017/08/26(土) 00:08:53.82 ID:VVa+UHSM0
それ以来、プロデューサーさんは二度と仕事を辞めるなどと言いません。

事務所でこっそりお酒を飲むこともありません。

彼が傷ついて、逃避したくなった時にはいつでも私がそばにいて、荒んだ欲望を全部受けとめてあげるのですから。

私を抱いているときだけ、余計なことを何も考えずに済んで、何もかも忘れてくれるというなら……毎日でも、何回でも、してもらいたいんです。

それでも……いえ、そのせい、かもしれませんが。

プロデューサーさんにはまだ泣き疲れたような雰囲気が色濃く残っていて、他の人とは余り会話もせず、どこか遠巻きにされているような雰囲気。

「ずっと前から一緒にいた担当アイドルならなんとかできるだろう」って、信頼半分丸投げ半分な感じが事務所に広がっています。

好都合です……私とだけ関わってくれるのなら、プロデューサーさんに余計な心労を負わせることもありませんし。

ほんの少しだけ、色んな人に「しばらくそっとしておいた方が」って進言してみただけで、ここまでになるなんて。

前までは、いつも元気に仕事をしていて、執務室にいても常に誰かが近くにいるような感じだったのに。

でも、今の彼にはきっと静かな環境のほうが好ましい。

そばで安らいでいてほしいし、そのためには余計なこと言う人なんていない方がいいに決まっています。

彼のことを一番わかってあげられるのは、きっと私なんですから。



今日は撮影のお仕事。

それも、ウェディングドレスを着てのお仕事です。

よりによって、と言いたくなるところですが、オファーを受けたのは二人で話し合った結果です。

しっかりこなさないと、なんて思っている時に限って機材のトラブル。

最近はあまりなかったので忘れかけていましたが、そう言えば白菊ほたるのアイドル活動にはこの手の事故がつきものでしたね。

やむをえず控室へ戻り、復旧を待つこととなりました。

もしかしたらすぐにでも再開できるかもしれない、とのことで、ドレス姿のまま。

撮影用とは言え、純白で、綺麗なフリルやなんかの装飾もあって、なかなか本格的な衣装です。

このまま結婚式場へ行っても違和感無さそう。

新郎のための服もないのに、新婦だけいたってしかたないんですけどもね。

……プロデューサーさんは、例の婚約者の方と、結婚式の日取りを決める程にまで話を進めていたとのこと。

どんなドレスが良いとか、二人で選んだりしていたんでしょうか。

悲しいことを思い出してしまったり、していなければいいんですけれど。

今着ているようなのと、似た感じのドレスでしょうか。それとも全然別なデザインの……?

考えていたら、落ち着かなくなってきました。

なんとなく気まずくて、立ち上がって壁の方へ。

大きめの鏡に向き合って、身だしなみチェック。

別に体を大きく動かす仕事でもなし、特に服が乱れることもありません。

乱れているのは心です。

プロデューサーさんのことを考えると、今の私は全然落ち着いていられません。

どんなに悲しいことがあっても、時間が経てばいずれは立ち直れるもの……私は、そのお手伝いをしたいと思っているのです。

それで、時間をかけて元気になったプロデューサーさんは……また新しく伴侶になる方を見つけるのでしょうか。

辛い時期を支えたわけでもない、今この瞬間には別の男と愛し合っているかもしれない、そんな女と、また改めて結婚式をあげることになるのでしょうか。

もしそうなったとしたら、その時私は。

まさかそんな、でも……いえ、今私がやっていることだって、本当は……立ち直って欲しくなんか……

なんて、とりとめもないことを考えかけて、慌てて打ち消して。

振り返って椅子へ戻ろうと仕掛けた時、急にお尻を触られました。


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