イタリア百合提督(その2)「タラントに二輪の百合の花」
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923: ◆b0M46H9tf98h[sage saga]
2024/04/27(土) 00:49:53.25 ID:Vpqh/dsf0
…一方・提督の実家にて…

提督「ふわ……ぁ」

…午後の日だまりを浴びながら猫のように伸びをすると、ベッドに寝転がり文庫本をめくり始めた……と、ベッド脇のテーブルにある携帯電話が震えだし、提督は本を閉じるとせかせかと携帯に手を伸ばした…

提督「……もしもし?」

ミッチャー提督「ハーイ、フランチェスカ。いま大丈夫?」

提督「あら、ジェーン♪ ええ、大丈夫よ。貴女の声が聞けて嬉しいわ♪」

…電話口の向こうから聞こえてきたキレの良いアメリカ英語の主は、かつて提督と付き合いがあったアメリカ大西洋艦隊のジェーン・ミッチャー提督……グラマーで褐色の肌、黄色の1971年型「バラクーダ」を乗り回し、コルトM1911「ガバメント」のカスタムピストルで射撃にいそしみ、アメリカ人らしいスタンドプレーと多彩な悪口、それにタフさと知性を兼ね備えた実力派の提督で、穏和な提督とは正反対に近い勇猛果敢なタイプだが、映画という共通の趣味もあってか意外なほど仲が良い…

ミッチャー提督「そいつはこっちも同じよ……ところで一つ貴女に言いたいことがあるんだけど」

提督「……ええ、どうぞ?」思い詰めたような声の響きに思わず姿勢を正し、何を言われても驚かないように身構えた……

ミッチャー提督「それじゃあ言わせてもらうわ……メリークリスマス♪」

提督「もう、ジェーンったら……真剣な口調で言うから何かあったのかと思ったじゃない」身構えていたぶん拍子抜けで、笑い出しながらベッドの上にひっくり返った……

ミッチャー提督「あははっ、ソーリィ♪ なにせこっちはターキーを食ってクリスマスポンチを飲んで、すっかりご機嫌だからね、ちょっと驚かせてみようかと思ってさ……今はガールズたちにクリスマス映画を見せてるとこ」確かに電話口ごしに映画のものらしい音声や曲が聞こえてくる……

提督「いいわね。それで、映画は何を流しているの?」

ミッチャー提督「心暖まるクリスマス映画の定番よ「ホワイト・クリスマス」に……」

提督「ビング・クロスビーの? 曲も名曲で、映画自体も素敵よね」

ミッチャー提督「でしょう? あとは1947年版の「三十四丁目の奇蹟」と「素晴らしき哉、人生!」、それから「スクルージ」ね」

提督「スクルージだけはイギリス映画ね?」

ミッチャー提督「そ、ハリウッドにも「クリスマス・キャロル」を映画にした作品はいっぱいあるけど、私の中じゃこれが一番イメージにピッタリだから。1935年の映画だけど、時代がかった感じが逆に文学作品っぽくていいわ」

提督「そうねぇ。それにどの映画もみんな心暖まる映画で、クリスマスにふさわしいと思うわ」

ミッチャー提督「でしょ? なにしろ任務に次ぐ任務じゃあ気持ちがすさんでくるし、うちのガールズにもクリスマスくらいは幸せな気持ちでにこにこ笑っていてもらいたいからね。テーブルにはキャンディとチョコレート、デコレーションケーキにローストターキー、頭にはパーティ帽……ヤドリギの下ならキス御免で、ベッドに吊るした靴下の中やツリーの前にはリボンのかかったプレゼント……これならハッピーな気分になれるってものよ」

提督「いい考えね♪」

ミッチャー提督「サンクス、そっちは何してるの?」

提督「今は実家でベッドに転がって読書中……海軍士官になるまでは考えもしなかったけれど、何も考えずにベッドでごろごろできるのって最高の娯楽ね」

ミッチャー提督「しかもクリスマスのごちそうとワインを腹いっぱい詰め込んでから、でしょ? たしかに最高だけど、ずっとそんなことをしていたら、また太ももにぜい肉が付くわよ?」電話越しにクスクスと笑っているのが聞こえる……

提督「ええ、でもクリスマス休暇の間はそれも考えないことにしているの♪」

ミッチャー提督「スラックスがキツくなっても知らないわよ?」

提督「その時はスカートにするわ……それでジェーン、貴女自身のご予定は?」冗談めかしてたずねる提督……

ミッチャー提督「ごあいにくさま、フランチェスカと違ってサッパリよ」

提督「あら、意外……ジェーンなら一人で「ダイナ・ショア・ウィークエンド」を開催出来るほどだと思っていたわ」

(※ダイナ・ショア・ウィークエンド…往年の名女性歌手ダイナ・ショアがゴルフ・コンペを開いた際、クラブハウスに女性たちが集まったことに由来するという全米最大のビアン・イベント。カリフォルニア州パームスプリングスで開催される)

ミッチャー提督「そうだねぇ……私だってアレサ・フランクリンみたいに歌って、フレッド・アステアのように華麗に踊れて、おまけにハンフリー・ボガードみたいに気の利いた台詞が言えれば良かったんだけど、残念ながらそうはいかないもんでさ♪」

提督「ふふ……それを言ったら私だってオードリー・ヘップバーンみたいな顔が欲しかったわ♪」

ミッチャー提督「お互いないものねだりってわけね……でもフランチェスカは綺麗だと思うわよ。脚はまるでシルヴァーナ・マンガーノかジェーン・フォンダかってところだし、胸だって全盛期のころのジーナ・ロロブリジーダみたいで……それでいて顔は柔和で優しげ。パーフェクトじゃない」

提督「あら、ずいぶん褒めてくれるのね……おだてても何も出ないわよ?」

ミッチャー提督「そいつは残念」

提督「くすくすっ……相変わらずみたいね♪」

ミッチャー提督「まぁ、ノット・バッド(悪くはない)ってところよ。どいつもこいつも責任逃れしようとのらくらしているし、何をするにも申請書類をレーニア山くらい積み上げないと許可されないけど」

提督「ふふっ、お役所仕事はどこも同じね」

ミッチャー提督「そういうこと……ともかく、クリスマスカードとプレゼントをありがとね。うちのガールズも喜んでたわよ」

提督「それなら良かったわ。それから貴女のカードもこっちに届いたわ……またこっちにくる機会があったら教えてね? うんと歓迎するわ♪」

ミッチャー提督「サンクス、いいクリスマスをね♪」

提督「ジェーン、貴女もね」


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