102:名無しNIPPER[saga]
2018/02/16(金) 22:42:29.00 ID:WhUJKF2CO
動け、動けよ、動いてよ……!
私の愛が歪んでいるなんてことは生まれ落ちたときから知っているんだ。
自分の感情が所々抜け落ちた欠陥品だなんて知っているんだ。
それでも、それでもこんなときに動けない女に何の価値があるっていうんだろう。
愛した男の生と意志を信じることができずして。
感情を、痛みさえも共有した唯一無二を探し当てることができずして。
「何をッ……! 」
「……あぁん? 」
「あのクズ、割に頑丈だし何とかなってるでしょう」
「出撃させた女の子全員生還からのバッドエンドなんて誰得ってやつだしね〜 」
心底から、同意できるのに、動かない。
奥底から、衝動は湧き上がるのに、一歩が無い。
人間は弱いんだ。
生きている筈がない。
そんなことは考えたくないのに。
こんな自分は嫌いなのに。
ある意味で最大の敵であるあきつ丸。
憎らしいけれど大切な約束をしていた愛宕。
それから、単に甘味で餌付けされただけのようなRoma。
そんなやつらですら。
それなのに、この世で最も尊い契りを交わした自分は、何だろう。
徒らに時を浪費して瓦礫を前に突っ立って。
化け物らしい怪力で鉄筋やコンクリートを持ち上げる同輩を目に写しただけで。
それだけショックだったんだ、なんて。
馬鹿馬鹿しいくらいに乙女な無様に少しだけ安心して。
自分の愛の深さに安心するなんてあっちゃいけないことなのに、私は、私は。
117Res/72.85 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20