ドロシー「またハニートラップかよ…って、プリンセスに!?」
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494: ◆b0M46H9tf98h[sage saga]
2020/12/31(木) 02:09:10.93 ID:FlOthHET0
…翌晩・とあるパブ…

きつい目つきの男「…見回りご苦労さん」

ごつい男「ああ……それにしても今夜は馬鹿に冷えやがるな」

鋭い感じの男「…一杯やって温まったらどうだ?」

ごつい男「そいつはいいな……おい、ウィスキーをくれ」

店主「はいよ……」


…店主がカウンターからウィスキーの瓶を出してカップに注ごうとしたとき、不意に「ひゅうっ…」と一陣の冷たい風が吹き込み、それと一緒に二人のレディが入ってきた……片方はハンチング帽にチャコールグレイのツイードで出来たコートと揃いの上下で編み上げの革長靴、もう一人はフランス風にかぶったベレー帽と黒いコートをまとい、襟元を立てている…


店主「おい、今日は貸し切りだ……帰ってくんな」

ドロシー「……なぁに、気にするな…こちとら奥の部屋にいる紳士に用があるだけなんでね」

鋭い男「なんだと…!?」

ごつい男「ふざけるんじゃねぇ……変なこと言ってねぇでとっとと帰んな」

ドロシー「おいおい、アイルランド人の同胞に対してずいぶんと冷たいじゃねぇか……古いゲール語にもあるように「幾千もの歓迎を」くらいのことは言ったらどうなんだ?」

きつい目つきの男「…こいつめ……構わねえから叩き出しちまえ!」

ドロシー「やれやれ……こんな馬鹿ども相手に繫ぎを付けようとしたのが間違いだったな、フランソワーズ?」英語に切り替えるとアンジェに向けて言った…

アンジェ「そのようですね……」

ドロシー「ああ、これじゃあアイルランドが百年もかかって未だに独立出来ないのもうなずける…ってもんだな」そう言うと眉をあげ、表情豊かにあきれかえって見せた…

ごつい男「何だと!てめえ、言わせておけば……っ!」

ドロシー「そうやって見境無く噛みつくからそう言ってるんだ……言っておくがな、私たちが来たのはお前さんたち間抜けな一味の情報がロンドンに筒抜けだって事を教えてやるためなんだぜ?」

鋭い男「何っ…そんなことがどうしてお前みたいな小娘に分かるって言うんだ!?」

ドロシー「そりゃあ図体ばかりデカいお前さんたちと違って「ここ」を使っているからさ……親分だかなんだか知らないが、話が聞きたいんならとっととそういった連中のいる場所に案内するこったな」こめかみに指を当てて「詰まっている脳みそが違う」とジェスチャーで示すと、切り捨てるように言った…

ごつい男「…」

きつい目つきの男「…」

鋭い男「……いいだろう。ただしおかしな真似はするなよ?」

ドロシー「はっ…笑わせるぜ「おかしな真似」をするつもりならとうの昔に王国情報部にタレ込んでるさ。そうしていたらお前さんたちは今ごろ蜂の巣になっているか、絞首台で仲良くゆらゆらしていただろうよ」

鋭い男「…分かった、待ってろ」廊下の奥に消えていったが、男の声だけは途切れ途切れに聞こえる……

鋭い男の声「……済みません、妙な女が二人来て「あなたに会わせろ」と……それと、何か耳寄りな……いるようです…」

ドロシー「…」

アンジェ「…」

鋭い男「……会うそうだ。来い」

…奥の部屋…

鋭い男「…入れ」

ドロシー「…」


…一瞬のうちに手際よく室内のレイアウトや脱出路、撃ち合いになった場合の射線…そして周囲の人物の様子を確認したドロシーとアンジェ……奥に座っている男は筋骨隆々といった感じではないが引き締まっていて、頬に古い傷が走っている……そしてその目つきは冷静に見えるが、奥には限りない憎悪の炎を隠している雰囲気がある…


頬に傷のある男「……どうぞ座ってくれ」

ドロシー「どうも」

頬傷の男「…それで「耳寄りな情報」というのは? …そしてどうして君らのような若い女が?」

ドロシー「そうだな…二番目の質問から先に答えようか。「アイルランドの独立は全てのアイルランド人の物だ」ってウルフ・トーンも言っていただろう?決してカトリックだけのものじゃないってな……ならおんなじように独立は男だけのものじゃなく、女のものでもいいはずだ…違うか?」


(※ウルフ・トーン…1763〜1798年。アイルランドの革命家。革命運動にありがちな内輪もめ…特にカトリックとプロテスタントの主導権争いを起こしていた独立勢力に対し、宗派や派閥にとらわれない「全アイルランド人」による独立運動を訴え、フランス軍の協力によるアイルランド解放と独立を目指した…しかしフランス海軍が英海軍に敗れたことで捕虜となり自決(一説には命令を受けた看守により暗殺)した……勇敢で高潔な礼儀正しい人物で「アイルランド独立の父」として今でも大いに尊敬されている)


頬傷の男「…確かに君の言うとおりだ」


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