4: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2018/06/03(日) 00:26:59.06 ID:M53HAJkU0
宴もたけなわ、そろそろ鍋の中身もなくなりそうな、そんなところで
「あ、プロデューサーさんちょっとちょっと」
私は立ち上がり、台所へと向かいます。プロデューサーさんは箸を止め、私の方を見ていました。そんなプロデューサーさんに見せつけるように、新しいグラスを二つと、そしてお高めのワインボトルを手に取ります
「奮発したんですよ〜」
「おお!」
グラスを二つ並べておき、私はプロデューサーさんの隣に座りました。コルクスクリューを持ってき忘れたのでもう一度台所まで戻りました。それから座り直します
並んだグラスに、同じくらいの分だけワインを注ぎます。並んで座った私達は、それを持ち上げ
「何回目かは分かりませんけど」
コツンと合わせ高い音を鳴らして、乾杯をしました
「……美味い」
「いや……本当に美味しいですね……奮発した甲斐がありました……」
私達はちびちびとワインを飲んでいきます。貧乏性ですかね、普段慣れない味で、一気に飲むのはもったいないと思ってしまうのでしょうか。ボトルにはまだまだ残っているというのに
さっきまでとは打って変わって、静かな空気が私達の間に流れます。
「菜々さん」
口元にグラスをやったままで、私の方を一切見ないまま、プロデューサーさんは私の名前を呼びました。
「俺、菜々さんをスカウト出来て、本当に良かったです」
しみじみと、絞り出すようにプロデューサーさんは言いました。耳が朱くなっているのは、お酒の所為なのでしょうか
「プロデューサーさん……」
その言葉を聞いて、目頭が熱くなりました。今までのことを思い返してしまって、胸の奥がきゅうと締め付けられるような感覚を覚えます。グラスを持った手が、ワインの冷たさでは足りないくらいに熱くなります。さっきまでプロデューサーさんに向けていた顔を、不意に背けてしまいました。
「急に変なことを言ってごめんなさい。でも、こういうときじゃないと、言えないような気がして」
ワイングラスを置く音が、遠くで聞こえた気がしました
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