22:名無しNIPPER[saga]
2018/12/13(木) 20:41:43.59 ID:wXoZOq/r0
俺の渋るような返答を聞いた四葉は何かしらの思案を経てから、ぽんっと手を打った。いかにも、『妙案を思いつきました!』みたいな顔で。
「おい」
「じっとしててくださいねー」
23:名無しNIPPER[saga]
2018/12/13(木) 20:42:11.42 ID:wXoZOq/r0
ずずいっと顔を寄せてくる四葉。端整な顔立ちだなあなんて思っている余裕はなく、脳裏をよぎるのは、この前強引に二乃に唇を奪われた時のこと。……え? そんな素振りなんて一切見せてなかったってのに、まさか四葉もなのか……?
「そこまで変わらないので問題はなさそうです」
「…………お前の体温が高いだけだ」
24:名無しNIPPER[saga]
2018/12/13(木) 20:42:45.03 ID:wXoZOq/r0
おでこ同士をぴったりくっつけて、熱の計り合いをしているつもりらしい。正月の時と言い、こいつは他人との距離感の取り方がバグっているとしか思えなかった。やり方なんて、他にいくらでも選べそうなものなのに。
「じゃあ、体調に異常がないのが判明したところで、続きをしましょうか。あんまりお時間を取らせてもいけないですし」
「……ああ、さっさと理解してくれ」
25:名無しNIPPER[saga]
2018/12/13(木) 20:43:16.51 ID:wXoZOq/r0
どっと気疲れが押し寄せてきて、そのまま肩を落とす。勘弁してくれよ、ほんと。
しかし、朗らかに笑っている四葉の顔を見るとどうにも毒気を抜かれてしまってダメだった。ご姉妹の中で一番単純なようでいて、実のところ最も良く分からないのがこいつかもしれない。
26:名無しNIPPER[saga]
2018/12/13(木) 20:43:44.46 ID:wXoZOq/r0
その後二十分くらいの悪戦苦闘の末、なんとか四葉から「納得しました」との言葉を引き出すことに成功した。お辞儀をした後で元気よく走り去っていく彼女の後姿を脱力しながら眺めた後で、俺もようやく自分自身のテキストを開き直す。気を抜いていると、また思い出してしまいそうだ。
27:名無しNIPPER[saga]
2018/12/13(木) 20:44:14.35 ID:wXoZOq/r0
そこから二時間程度鉛筆をノートに走らせて、外が暗くなったのを理由に帰宅を決めた。重たくなった肩をぐるぐる回すと、関節がばきぼきと嫌な音を奏でた。
ここでふと、俺にしてはかなり珍しいことに、ケータイを見てみることにした。もしかしたららいはにお使いの催促をされている可能性がある。
28:名無しNIPPER[saga]
2018/12/13(木) 20:44:51.85 ID:wXoZOq/r0
「……おっと」
即座に『見なかったことにする』という選択肢が浮かんできたが、それは否定。今の俺が置かれている立場上、下手な手は打てなかった。
『六時に校門で』とのメール。送り主は三玖。現在時刻は六時半なので、間違いなく遅刻していることになる。
29:名無しNIPPER[saga]
2018/12/13(木) 20:45:17.84 ID:wXoZOq/r0
冷や汗がつーっと背中を流れた。この前の一件は三玖に協力を仰ぐことによって、一応のところは穏便に片付いた。……いや、三玖からは一ミリも穏やかじゃないお願いをされたけど。
別に、脅しをかけられたわけではない。……が、無視していいわけもないだろう。あれをバラされてしまうと、俺が半年と少しの期間をかけて積み上げた信用がパァだ。たとえ実情が『薬を使った二乃に襲われた』ってことでも、姉妹間にかなり大きな亀裂が入りかねないのは事実。
30:名無しNIPPER[saga]
2018/12/13(木) 20:45:46.09 ID:wXoZOq/r0
とにかく、行くだけ行ってみよう。待っていればそこで謝れるし、いなかったら電話をかければいい。俺がケータイに触らない人間だというのは三玖も知っているので、きちんと説明すれば温情をかけてもらうことも可能だろう。
31:名無しNIPPER[saga]
2018/12/13(木) 20:46:13.79 ID:wXoZOq/r0
そんなわけで、ガラにもなく駆け足で図書室を出る。たらたら歩いて近寄って来られても説得力に欠けるだろうから、こういうポーズをとることも大切だ。元から体力はスカスカだから、階段の上り下りで息はきちんと上がってくれるだろう。
あれこれと策略を巡らせながら、薄暗い昇降口で上靴を履き替える。照明くらいつけてくれよと思ったが、節約を掲げられては言い返す口がない。
自分の靴箱をなかなか探し当てられずに慌てる。こういう時はかえってゆっくり動いた方が上手く行くものだが、猶予も余裕も持っていない身なので、そんな楽な構えではいられなかった。この間にも言い訳を複数パターン考えて万一に備える必要があったし、そもそも三玖がまだ待っている確証もない。下手をしたら、あいつらの家を訪ねる必要性も生まれ得る。
今、どうしてもそれだけは避けたかった。流石に現場に戻って平静を装い続けられる自信はなく、光速で馬脚を露すのが目に見えている。二乃とはあれっきりまともな会話もなく、ただジトジトした視線を向けられるだけになってしまっているし、とにもかくにもあの家はまずいのだ。
32:名無しNIPPER[saga]
2018/12/13(木) 20:47:12.90 ID:wXoZOq/r0
急げ急げと指差しで下駄箱をなぞって、可能な限り早くオーダーを達成しようとするも、やっぱり靴は見つからなかった。列を間違えているのではとも考えたが、どうやらその線は薄そうだし。
「うおっ!」
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