30: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2019/03/07(木) 22:59:10.45 ID:WMT08hs/0
「私が付喪神って事は言ってないよね?」
「言ってませんよ、安心してください」
900年前、ほら貝の付喪神に「ヨダヨシノ」と名前が与えられた。以来その付喪神はヨリタ家の所有物として、人に害をなす付喪神の選定を行った
ヨリタの人間のそばには、いつもこのヨダがあった
付喪神という存在が物語の中の存在となり、現在のヨリタの人間が付喪神という存在を忘却の彼方へと追いやっても、彼女と同じ名の女の子がアイドルとして活動するようになっても、ヨダヨシノは与えられた仕事を忘れることはなかった
なぜならば、それが「ヨダヨシノ」として与えられた存在理由だったからだ
彼女がプロデューサーくんの発生を予知出来たのも、彼女がプロデューサーくんお前でアイドルである「依田芳乃」の姿と佇まいを借りても名は借りなかったのは、己の存在を揺らさないためである
「……うさぎもさぁ、私の手伝いばっかしないで、もっと自由に生きて良いのに」
その彼女は、今プロデューサーくんに対しある試験のような事をしている。それは「無害な付喪神に成れるか」という試験。100年を経ていない付喪神は、意識を持ってから徐々に「成る」。その間に人に害意を持つ事も多い。プロデューサーくんはその見極めを今受けている最中なのだ
「自由に、と言われてもやることが見つからないんですよ」
「そんな就活前の学生みたいな」
「就活前の学生こんな事言うんですか」
数ヶ月前にこの試験を受けたうさぎは、ヨダの助手として付喪神の観察をしている。彼の存在理由は「存在理由を探すため」という、「卵が先か鶏が先か」に似たものだった
「俺は俺のやりたいことを見つけるまで、ヨダさんの手伝いをするって決めてるんですよ」
そう言ってから、うさぎは人間態になった。短髪で大柄な男の姿に変貌する。
「なんで人間になれるのに、ぬいぐるみのままプロデューサーくんの所に行ったの?」
「まぁ『付喪神は君一柱だけじゃないんだ』って言いたかっただけですよ。それに、というかこっちが主な理由ですけど、女子寮の監視カメラに写ったらやばいんですよ、ヨダさんと違ってこの姿以外にはまだ変われないですし」
そう言いながら、せんべいを手に取る。二枚を重ねてつまんでから、口に入れた
「言ってくれれば教えるのに」
「まひっふか、じゃバリボリおねはいしはいバリっふ」
「せんべい飲み込んでから喋りなよ」
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