中野四葉「まにまにりぽーと」
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13:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/29(火) 21:22:30.73 ID:gUiBlRD20
「そして、ちょうど大学卒業のあんたと入籍ね」
「おい」
「しばらくは家事育児に追われるだろうから専業主婦で」
「おい」
「子供から手が離せるようになったら、そこでようやく夢の実現に向けて頑張ろうかしら」
14:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/29(火) 21:23:02.33 ID:gUiBlRD20
「あんたとくっつくのは確定事項だもの」
「おかしいな認めた記憶がない」
「認めさせるわ、近いうちにね」
背中に鳥肌がぶわぁっと広がった。嫌な予感は、今日も休まず俺の後方数センチの至近距離に詰めてきている。
15:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/29(火) 21:23:51.07 ID:gUiBlRD20
「あれだけ色々したんだもん、責任取ってもらわなくちゃ」
「ピンポイントで俺の弱点刺すんじゃねえよ……」
そこを指摘されたら何も言い返せないのだ。だから、そればっかりは勘弁してもらわないといけない。それからその理論で行くと、俺にはあと二人ほど責任を回収しなきゃならない相手がいる。
先のことを考えてため息を吐くと、二乃との距離がいっそう縮まった。いつだかにたっぷり堪能した柔らかさが一瞬だけ呼吸を乱すが、しっかり落ち着いて「あんまりくっつくな」と冷静な返答を選択する。
16:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/29(火) 21:24:23.76 ID:gUiBlRD20
「卵が割れるだろ」
「必要経費よ」
「まだ未購入だってのに……」
それでも離れてはくれないらしくて、なおも腕をホールドされたまま、生鮮売り場やら野菜売り場やらを巡る。忘れかけていたがこれはそもそも我が家のための買い物なので、自分の目的物も手に取っていかなければならない。
17:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/29(火) 21:25:06.56 ID:gUiBlRD20
「そういえばさ」
「なんだよ?」
「私さっき、あんたが大学行く前提で話しちゃったけど、そういうのって考えてるの?」
「問題のある仮定はそっちの方じゃないだろ」
「いや、これは割と真面目な話」
18:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/29(火) 21:25:41.39 ID:gUiBlRD20
「知ってるとは思うが、ウチに俺を道楽で進学させられるほどの余裕はない」
「まあ、なんとなくはね」
借金は伏せてあるが、それにしたって切迫した懐事情については既にバレバレだ。そんな中、なんとなくで四年間も家の負担にはなれない。進学するなら、明確な理由が要る。
それが今の俺にあるかと問われれば、答えに窮する。『いつか役に立つように』は明確な理由足りえない。
19:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/29(火) 21:26:16.92 ID:gUiBlRD20
「だから、ギリギリまで考える。何をしたいかとか、何が出来るかとか」
「人の進路ばっかり気にして自分の将来設計がすっからかんなところとか、すごいあんたらしいわね」
「うっせ」
奨学金に頼ればどうにかならないこともない。だけど、それだって一応は借金の部類だし。
20:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/29(火) 21:26:50.65 ID:gUiBlRD20
「ま、最悪路頭に迷った時は私が養ってあげるから安心して」
「迷わねえからお前も安心しろ」
こういう場面での軽口は、素直にありがたかった。今までに色々あったが、そこで培われた信頼の一端を見ることが出来たように思えるから。邂逅から一年、忙しない毎日を駆け抜けてきたが、走った後にはちゃんと道が出来ている。この事実が救いになるかどうかは、今はまだそこまで分からないけれど。
21:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/29(火) 21:27:26.78 ID:gUiBlRD20
「あんた向きの仕事、私は一つ思いつくけどね」
「なんだ?」
「秘密。こういうのって、自分で気づくのが大切なんじゃない?」
「そういうもんか?」
「あんただって、最初から答えは教えないでしょ」
22:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/29(火) 21:28:01.70 ID:gUiBlRD20
「前途多難だ……」
「頑張りなさいよ。頼りにしてるんだから」
そうだった。俺の双肩には、五姉妹の未来ものしかかっている。ここでダウンするのはあまりに早すぎるだろう。
もうひと踏ん張り、だ。
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