中野五月「あいまいでぃすたんす」
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322:名無しNIPPER[saga]
2019/03/30(土) 19:23:26.38 ID:ybCgTbmS0
「変なことはしないで、ずっと自慢の先生でいてくださいよ」
だからきっと、今のが一番の本音。素直に感謝できるような人のままでいてほしかった。私たちを教え導いてくれた恩人として。たまたま出会えた無二の友人として。それを余計な何かで穢されてしまったことが、何よりも悔しい。
こんなことさえなければ、いつまでだって恩義を抱えたままいられたのに。
323:名無しNIPPER[saga]
2019/03/30(土) 19:23:57.61 ID:ybCgTbmS0
「あなたは、私たちの家庭教師でしょう……?」
言いたいことは他にもいくらだって残っていた。けれど、力を出し尽くしてしまったかのように体は重いし、声帯は震えない。どういう感情なのか自分でもさっぱり分からない涙が後から後から零れ出てくるし、膝はがくがくと安定しないしで、体中が不安定になっている。
相手がこの人でなければここまで心乱されることはなかっただろうというのが直感的に理解できるのが、まず何よりも腹立たしかった。こんな酷い人に深く依存してしまっている自分をどうしても嫌いになれなくて、そのもどかしさも相まって、溢れる涙はとめどなく敷石を濡らしていく。
324:名無しNIPPER[saga]
2019/03/30(土) 19:24:24.93 ID:ybCgTbmS0
「…………悪い」
ふいに彼の手が、頭におかれた。
ようやく引き出せた謝罪のような言葉だが、それを得たところで何が満たされるわけでもない。だから涙で崩れた顔で必死に睨んで、赦す気なんて欠片もないことを訴えかける。
それについては彼も承知しているのか、諦めたような顔で二度三度と私の頭を軽く撫でつけて、ゆっくりその手を下におろした。
325:名無しNIPPER[saga]
2019/03/30(土) 19:25:37.23 ID:ybCgTbmS0
「きらいです。上杉君なんて、だいっきらい……」
「だろうな」
「世界で一番、きらい……」
「知ってる」
「きらい。きらいきらいきらいきらいだいっきらい!」
326:名無しNIPPER[saga]
2019/03/30(土) 19:26:24.90 ID:ybCgTbmS0
「もう、それでいい。そう思われて仕方ないだけのことをした。取り返しがつくなんて考えてもいない。……けど、せめて、姉妹のことだけは赦してやってくれよ。俺と違って、死ぬまでの長い付き合いなんだから」
「そういう、ところが……」
その先は言葉にならなかった。いや、言葉に出来なかった。そういう不器用な優しさに惹かれてしまったなんて、言えなかった。
327:名無しNIPPER[saga]
2019/03/30(土) 19:27:10.33 ID:ybCgTbmS0
「ほら、帰るぞ。冷えたし疲れたろ。暖まって、休んで、元気になったら、またいくらでもなじってくれていいから。だから今は、最初に自分のことを考えてくれ」
やっぱり、自己完結だ。彼の中ではもうこの話は終わったことになってしまっている。失った信用は取り戻せないし、私からはずっと憎まれたままだということで全てを片付けてしまっている。
それが、なんでかものすごく癪に障った。
328:名無しNIPPER[saga]
2019/03/30(土) 19:27:39.20 ID:ybCgTbmS0
「帰りません」
数歩先に進んでいた彼の手を、握りつぶすような勢いで引っ張り寄せる。もう、目の届かないところで後ろめたいことをさせないように、強く引っ張る。
329:名無しNIPPER[saga]
2019/03/30(土) 19:28:07.27 ID:ybCgTbmS0
「まだ、言い足りません」
「後からいくらでも……」
「口ごたえする権利があるとでも?」
「…………」
330:名無しNIPPER[saga]
2019/03/30(土) 19:28:49.05 ID:ybCgTbmS0
「これは、あなたが負うべき責任です」
残るであろう禍根とか、軋轢とか、そういうことについての考えを巡らせるのはやめにした。
私は、ここで全てを終わらせる。
331:名無しNIPPER[saga]
2019/03/30(土) 19:30:25.45 ID:ybCgTbmS0
ここまで。たぶん次が最終更新です。ぜってー三月中には終わらないことから目を逸らしてカリカリ書いてきます。
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