1:名無しNIPPER[saga]
2019/04/30(火) 13:31:53.89 ID:fW1E/lrb0
「ビックニュースや,B組の酒井がウチのクラスの四条院さんに告白したらしいで」
机の上でせこせこと黒い消しカスとなった残骸を片付けていると,へんてこな関西弁で角刈りの男子が意気揚々と肩を叩いてきた.
彼の名は,諸星敬.噂をいち早く聞きつけ,広めることを至上の喜びとしている.
僕は手を止めて,ぐっと振り返る.
「それでどうなったんだ?」
「聞いて驚くなよ.四条院さん,OKしたんや!」
脚から力が抜けていくが,否定する口は止まらない.
「うそだろう.酒井ってすげえオタクじゃん・前なんて,美少女戦士キャアラットがプリントされたTシャツ着てたじゃん」
「そのキャラは分からんけど,曰く『真剣だったから,OKした』らしいで」
「中身重視ってやつ?」
「いや,それが今まで四条院さんと酒井が喋っているところを見た奴いないらしーねん」
「それもそうだ」
僕は首をひねる,なにせ,四条院さんはその可憐さと所作での美しさでは他に引けをとらないカーストのトップ層,反対に坂井は三度の飯よりアニメが好きないわゆるオタクでそれを隠さない層である.
そこの間にはヒマラヤより高い山が横たわっている.
「これは夏休み前にとんでもないことが起きたと思ってな.まずおまえに知らせたんや」
「はあ」
思わず仏頂面になる.数か月前にこいつに言ったことを後悔する,
「まあ,誰にでもチャンスがあるってことや工藤.美少女戦士酒井がいけたんやからな」
そう,僕は四条院さんのことが好きだ.憧れと言い換えてもいい.だからこそ,ショックだ.
「まだ気持ち的に信じたくないな」
だって,四条院のことはもっとミステリアスだと思っていた.
僕は,自分の部屋の鍵が二重に閉められた引き出しの奥にしまわれた,四条院さんの写真の数々を思い浮かべた.
ふとした髪を払う仕草や.夕陽に輝く彼女の肌,そして,僕だけが彼女から感じる暗く蠢いているナニカ.
ちょっと,調べてみるか.その彼女を射止めたB組の酒井とやらを.
それでもしふさわしくないなら,破滅させてやる.僕は鞄の中にしまっているカメラに目を落とした.こいつならできるはずだ.
僕にはその力がある.その権利がある.その義務がある.
僕は,四条院怜の守護騎士だ.
僕はこみあげてきた獰猛な笑みを隠すのに,しばらく苦労した.
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