お兄ちゃん、一緒にバカになろ?
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58: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/02/16(日) 11:49:36.57 ID:+TuNy4pnO
1年前。高校1年になった私の前に、お兄ちゃんは突然現れた。
「よお」
「お兄ちゃん!!?やっと会え……」
飛びつこうとした私を、お兄ちゃんは制した。
「ここじゃ目立つだろ。静かな場所に行こう」
場所は学校の校門前。校則がやたらと厳しいので有名なうちの学校だ。この程度のことでも校則違反に当たりかねない。
久々に見るお兄ちゃんは、随分精悍になっていた。聞くと「長野の洋菓子店で修業した後、フランスに行っていたんだ」という。
「……辛い思いをさせて、すまない。やっと準備ができた」
「……準備?」
「ああ。つてができた。これなら多分、大丈夫だ」
連れていかれたのは、表参道の裏通りだった。「プティ・アンジュ」と看板が掲げられている。まだ開店前なのか、中は随分暗い。
「ここは?」
「俺の先輩が独立して作ったパティシエールだ。俺もオープニングスタッフとして入る。
開店は1週間後。今日は誰も来ないはずだ」
出来たばかりの建物特有の匂いが鼻を突いた。そして、お兄ちゃんはキッチンの流しに腰を掛ける。
「大学の友人に、ある薬が手に入るという話を聞いたんだ。まだ誰も知らない薬で、検死でも検出されないと聞いている」
「え……そんな都合のいい薬なんて」
「ある。使用量によって効果は違うらしいけど、その効能は見せてもらった。
オーダーによって、多少アレンジを利かせることもできるらしい。これが、その説明書だ」
お兄ちゃんは紙を取り出した。「GATE」というエンブレムが押されている。
「……こんなの、信用していいの?」
「正直、その友人は虫が好かない。恐らく、相当ヤバいことをやろうとしている。
だが、俺に惚れているらしいのを使って『落とした』。大丈夫、外には漏れてない」
心がズキンと痛んだ。友人って、女の人なのか……
暗い感情が、私の胸に広がっていく。
私の様子を見て察したのか、お兄ちゃんは私を抱いた。
「……すまない。俺にとって女はしずくだけなんだが……これしか方法がなかった」
「……うん……分かった。で、どうするの」
「準備ができたら薬を渡す。量は多めに作るよう言っておくさ。
そして、その他の準備ができたら決行だ。あいつらを殺して、2人で生きよう」
そう、お兄ちゃんは約束を忘れていなかった。
5年前、お兄ちゃんは……両親を「完全に」殺す手段を探しに出たのだった。
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