お兄ちゃん、一緒にバカになろ?
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88: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/02/18(火) 20:03:23.33 ID:9jbONNUiO
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「CLOSED」との札を無視して、俺は扉を開けた。鍵は当然かかってない。
カウンターには蝶ネクタイに眼鏡の少年が座っている。マスターがサイフォンからコーヒーを淹れた。

「仁か。悪いな、先客ありだ」

少年はチラリとこちらを見て苦笑する。

「……一番会いたくない相手だな」

「相変わらず辛気臭い面だな。育児ノイローゼか?」

「生憎手のかからない子でね。仁さんの所はどうなんだ?」

「どやされっぱなしさ。美和だけならまだいいが、亜衣にまでやられてる」

「それは『6歳』の?それとも『26歳』の?」

「どっちもさ。どうにも女はうるさい生き物らしい」

肩をすくめておどけると、藤原は「はは」と笑った。

「それは仁さんがただだらしないだけじゃないか?」

「俺はお前ほど几帳面にはできてねえもんでな。兵さん、マンデリンを」

「了解だ」

マスターの白田兵次郎……「兵さん」がサイフォンを操作し始めた。

「……磯崎しずくの件だが」

藤原の表情が曇った。

「やはりそれか」

「まあな。お前の望み通りになったな。兄妹は自然死扱いになったらしいじゃないか」

「……当然だ」

「2階のドラム缶もこっそり運び出し、『特葬係』が処理と。ただ、『アイスキャンディ』の流出ルートは不明のままだ」

「……そんなことを言いに僕の所に来たのか。埼玉県警の仁さんには直接の関わりがないだろう」

藤原が渋い顔になった。俺は構わず続ける。

「まあ、な。ただ、1つ報告だ。所沢にある長谷川里奈名義のトランクルームに、誰かが最近入ったらしい」

「……!!?本当か」

「ああ。長谷川は随分前に死んでいるが、誰かがまだ噛んでいる。
んで、そこから微量だが『アイスキャンディ』の反応があった」

「……そういうことか。長谷川が死んでも、磯崎しずくが『痴呆薬』を入手できていたのは」

「ああ。彼女をもう少し生かしておくべきだったな」

コーヒーを一杯口にすると、藤原が溜め息をついた。

「……そうだったかもな。ただ、彼女の症状は既に進行していた。入手ルートを正確に追えたかは分からない」

「だとしてもだ。……どうして心中みたいな真似をさせた」

藤原が目を閉じる。

「仁さんも知っているだろう。あの2人が、『本来』どうなるはずだったか」

「……ああ」


そうだ。俺たちは……精神と記憶だけ、20年前から飛ばされた「帰還者」だ。





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