八宮めぐる「一緒にここから」
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11: ◆U.8lOt6xMsuG
2020/03/25(水) 00:51:53.13 ID:mSH+Qrk60

◆◇◆

私の鼻に、プロデューサーの匂いが飛び込んでくる。いつも心地良いと感じていた香りに包まれて、安心と緊張を覚えた

プロデューサーの後に付いて部屋まで行く。汚い、って言ってたけど全然そんなことはなかった。改めて見渡してみた。私達のCD、私達が取材を受けた雑誌、私の写真集、事務所のみんなが映ったポスター……お家なのに、お仕事の部屋みたいになっちゃってる

「適当にくつろいでてくれ」

冷蔵庫が開く音がして、ボーッとしてたのが引き戻される。適当に……と言われても、どうすればいいんだろう。男の人の家に来るのは初めてだし……とりあえずソファに座ってみた。プロデューサーが飲み物を持ってきてくれた。オレンジジュースだった。常備しているのかな

プロデューサーは隣に腰を下ろす。肌が触れるくらいの距離でコーヒーを啜ってる。私もオレンジジュースに口をつけた。

横目でプロデューサーを見る。スーツの上着もネクタイも脱いでいて、リラックスしているみたい。お家だといつもこんな感じなのかな。マグカップを握る手、プロデューサーのゴツゴツとした男らしい指に見とれた

「なぁ、めぐる」

「……なに?」

プロデューサーはリモコンを手に取る。口の辺りをモゴモゴとして、何かを言いあぐねていた。ついたテレビの音は全然聞こえない。ただ、プロデューサーに注目しちゃう

何を言おうとしているんだろう。待つ時間が長くなると、ドキドキしちゃう。もしかしたら「今日はやめよう」なんて言われるかもしれない。ピル飲んでるの嘘だって思われたのかな。二人ともお休みの日になる今日に合わせて飲んできたんだけど

私が吐いた嘘は「今日、彼氏とえっちした友達の話を聞いた」ってことだけ。その友達に彼氏はいないし、もちろんえっちしたなんて話も聞いたことがない。全部私の妄想だ。でもそれだけ。ずっとプロデューサーとえっちがしたかった。

私はアイドルでプロデューサーはプロデューサー。私は高校生でプロデューサーは大人。だから、えっちどころかこういう関係になってるのも本当はダメ。

それを分かっているけど、私はプロデューサーと結ばれたいと願ってしまった。最初は好きだってことを理解して、その想いを伝えるだけで良かった。でも、結ばれると自分の中からどんどんしたいことが生まれてくる。諦めていたことをしたいと思ってしまう

手を繋ぎたい。腕に抱きついてカップルみたいに歩きたい。部屋でのんびりしながらイチャイチャしたい。キスがしたい。一緒になりたい

アイドルとプロデューサーじゃなくて、普通の人みたいに関わり合いたい。そう思うようになってきて。

でも、これは私の一方的なことで、プロデューサーはそうじゃない。プロデューサーの考えていることはわからない。けど、大人で、アイドルのプロデューサーな彼はきっと、私よりもずっと多くのことを観ている

私のわがままを聞いてくれたけど、考えが変わって「今日はやめ」って切り出すかもしれない。もちろん、そっちの方が正しい。

だけど、やっぱり嫌かも。断られるところを少し妄想しただけでも、胸の辺りが苦しくなっちゃった。ちびちびとオレンジジュースに口をつけてから、コップを置いて、祈るように膝の上で手を組む


「――めぐる」

プロデューサーがもう一度私の名前を呼んだ。「うん」って喉で慣らした。次の言葉に意識を集中させる。

と、言葉より先に感触が来た。プロデューサーに手を握られていた。組んでいた手の上に、プロデューサーの手のひらが重なってる

「……本当に、いいんだな?」

断りの言葉じゃなかった。ただ、私に尋ねてきた。いいのか、なんて答えは決まり切ってるのに。組んでいる手を外して、プロデューサーの指と絡ませる

「……うん」

それだけを言った。さっきよりもはっきりと、「うん」を告げる

横目で見ると、プロデューサーの瞳が真っ直ぐ向いているのが分かって。私も向き直して、ちょっとの勇気で近づいて、オレンジとコーヒーの味を重ねた

一瞬だけ軽く触れた。顔を離して、プロデューサーを観た。ちょっと驚いているみたい。なんだか可愛らしかった。プロデューサーの指はゴツゴツしてて、男らしかった。そんな指に力が入って、手のひらと手のひらが密着する

したいと思っていた事が、この瞬間にいくつか叶った




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