14: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2020/03/25(水) 01:20:18.24 ID:mSH+Qrk60
◆◇◆
冷水を浴び、頭の熱を取る。めぐるがシャワーを浴びる前、彼女にかけた言葉を後悔していた。『本当にいいのか』なんて、責任を彼女に被せる言葉であるだろうに
結局俺は、たいそう偉そうなことを吐いているクセに、まだめぐるを抱くという事に対して抵抗があるのだろう。
シャワーを止めた。髪の毛の先から水滴が落ちる。鏡を見る。一日経って、髭が少し伸びかけていた。剃った。そのまま両手で頬を叩く
ここから先、俺はどう転んでもクソ野郎だ。それは絶対に変わらないことだ。だったらせめて、めぐるのためにならないといけないと思う。俺はどうなっても、めぐるの心に影は落とさせない。それが、少女の想いの応えた俺の責任だと、そう思う。心にぶれない芯を一本通すように、決意をした
……どうして俺は、めぐるがここまで大切だと思うのだろうか。自分の思考範囲の内、めぐるが占める割合が日に日に増えていっている気がする。俺だってプロデューサーだ。アイドルからどれほど大きな愛を述べられても、断らなければいけないと十二分に理解している
しかし、俺はめぐるの手をとった。めぐるのわがままを聞いた。嘘を見逃した。自分の事が、自分で全く理解出来ない。
どうしてだと考え始めて、すぐに彼女と初めて出会ったときの事を思い出した。友達とバスケをしていた彼女の姿が浮かぶ。
俺と彼女が始まったあの日、あの瞬間。その時の匂いも、景色と一緒に思い出せるようで
「……一目惚れかよ」
言葉が口を突いた。瞬間、全てが腑に落ちた。楽しい事が待っていると、俺の手を引いた彼女の笑顔が忘れられない。俺が彼女に抱いていた感情の始まりが顕わになって、ようやく理解が出来た。俺はめぐるに恋をしていたんだ。彼女の為に何かしたいと思うのは、俺がプロデューサーってだけじゃなかった。彼女が八宮めぐるだからなんだ
「…………はっ」
得心行った後、短く吐いて自嘲する。いよいよ、『本当にいいのか』とセリフのクソらしさが上がっていく。好いている女性に、好いてくれる彼女に、俺はなんてことを言っているんだ。無自覚と言えど、自分の駄目さ加減にほとほと呆れる。だからこそ、としたばかりの決意をより強めた
シャワーを再び出す。まだ冷たいままだった。構わず浴びた
口にはもう、オレンジジュースの味なんて残っていない。さっきのには本当に驚いた。めぐるは顔を真っ赤にしていた。年甲斐もなくときめいた
「甘酸っぱかったな」
いきなりキスをしてきた彼女は、こんな駄目な俺のどこを好きになったんだろうか。……そんなことは、どうでもいいか。いやどうでもってそりゃ言い過ぎたけれど。そう言ってやりたい。どこが好きだろうと、好きになってくれたんだから。彼女にもらったものを、これから俺の分を上乗せして返していこう
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