13: ◆WEXKq961xY[saga]
2020/04/05(日) 16:38:07.92 ID:NQ0e2B3j0
「いってらっしゃいませ」
「ああ」
玄関で妻と言葉を交わすと、私は送迎のリムジンに乗り込んだ。ドアが静かに閉まり、黒塗りの高級車は音もなく走り出した。
霞ヶ関の職場に向かう車の中で、私は鞄の中の書類を広げた。中身は、未成年に対する性犯罪の検挙数を纏めたものだ。私は溜め息を吐いた。昔は良かった。幼い少女が公園で裸になろうと、草陰で放尿しようと、誰も咎めなかった。そもそも彼女らに欲情するという概念が無かったから、少女のヌードは芸術として、書店に並んでさえいた。膨らみ始めてすらいない乳房や、艷やかな股間の一本筋を、一切の気兼ねなく愉しめたものだ。
それが、今はどうだ。勘違いした人権屋どものせいで、写真や映像は徹底的に排除された。男は皆、少女に欲情する変態とみなされ、挨拶しただけで通報される。気の毒な彼らは捌け口を失った。だから、こうして犯罪に走ったのだ……
「…」
「…うん?」
ルームミラー越しに、一瞬、運転手と目が合った。すぐに彼は視線を下げ、前方に目を向けた。
「移動中なのに、お仕事ご苦労さまです」
「残業は嫌いなのでね」
薄く笑って答える。
リムジンが、警察庁の門をくぐった。
…
午後6時12分。家に帰ってきた。
「ただいま」
「おかえりなさいませ」
恭しく頭を下げる妻。官僚が出世するには、自分がその地位に足る人物だと証明する必要がある。妻と子供と一軒家は、その必須条件だ。かつての上司の娘と結婚し、2人の子を設けた。どちらも成人し、片方は公務員に、もう片方は会社役員になった。今、この家に暮らすのは、私と妻と、一人の家政婦だけだ。
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