316: ◆WEXKq961xY[saga]
2020/04/19(日) 14:51:03.49 ID:Kh3sFDp50
1台の姿見が目に入った。ここなら良さそうだ。朱音は毎日、この前で身だしなみを整えるだろうし、家具を買い換えるとなっても、この姿見までお役御免になることはないだろう。
まずは、部屋全体を見渡すうに、姿見の上の方へ。隅にあるネジを1本抜き、ネジ穴から覗けるよう枠の中に仕込んでおく。次は、下から見上げるように。姿見は、車輪の付いた台で立っているので、その脚の1つに仕掛けておこう。筒状になっている脚の、樹脂製のカバーを外し、小さな穴を開けてカメラを嵌め込む。カメラ付きのカバーを再び脚に付け直すと、良い具合に姿見の前に立った朱音を、足元から見上げる形になるはずだ。
最後に盗聴器を支柱の中に収めると、私は部屋を出た。
「!」
「あ…」
廊下で、朱音に出くわした。
「もう終わったのかい」
「うん…宿題しないと」
そう言うと彼女は、自室の扉と私を交互に見て、それから尋ねた。
「わたしの部屋、来たの?」
「いや…」
一瞬詰まったが、すぐに考え直した。
「…今の部屋は、家具とかが古いだろう。新しい棚とか、欲しくないかい」
「! うん…」
「今度見に行こうか。父さんもそう思って、寸法など測ってたんだよ」
「そうなんだ…」
「どんなのが良いか、考えておくんだよ」
私はそこまで言うと、書斎に引っ込んだ。
…
肘掛け椅子に座り、ほっと一息。危ない危ない…
コンピュータを立ち上げ、ソフトを開く。スマートフォンと一緒に設定を済ませていたカメラと盗聴器は、すぐに映像と音声をパソコンに送ってきた。
”…”
どうやら、宣言通り机に向かって勉強中のようだ。姿見が机の真横に置いてあるために、どちらのカメラからも朱音の姿が見えない。ただ、微かに鉛筆の音が聞こえてくる。
しばらく見ていると、朱音は机を離れて人形を取りに行った。人形を持ったまま机に戻り、しばらく勉強を続けていたが、やがて飽きたのか、人形を床に置いて自分もその前に座り込んだ。
”…ん、おと…”
「?」
ぼそぼそと呟く声。耳を澄ますと、何を言っているのか、辛うじて聞き取れた。
”…さん、おかあ…さん……お父さん…パパ…お、おとう…お母さん…マ、マ……”
「…っ」
私は、手で顔を覆った。年甲斐もなく目頭が熱い。
朱音は今も、新しい家族を受け入れようと、懸命に頑張っているのだ……
安価下1〜3でコンマ最大 夜の行動
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