412: ◆WEXKq961xY[saga]
2020/04/22(水) 21:34:45.56 ID:LKHs39Yu0
帰り道の途中から、朱音の様子がおかしいことに気付いた。助手席に座ったまま、脚をぴったりと閉じ、もじもじと膝を擦り合わせている。横目に窺うと、太腿を掌で擦りながら、時折何か言いたげに口を開いていた。
このまま、隣で漏らさないかな。そう思いながらわざと黙っていると、家の近くまで来た所でとうとう切り出してきた。
「…おしっこ」
「うん?」
朱音は、か細い声で言った。
「おしっこ、したい…」
「もうすぐ家に着く。それまで我慢できないかい」
「もう、で、出そう…ごめんなさい…」
「…」
走りながら、周囲を見回す。生憎、既に住宅街に入っており、道端でおしっこ姿を拝むことはできなさそうだ。代わりに、見慣れた公園を見つけた。
路上に車を停め、エンジンを停止させる。
「行ってきますっ」
ドアを開け、公園の公衆トイレに向かって走り出す。このまま帰りを待とうとして、私は考え直した。
車を降り、静かに朱音の後を追う。彼女は脇目も振らずに個室へ飛び込むと、鍵をかけた。
___しゅいぃぃぃ…
鋭い水音が、薄い扉の向こうから聞こえてくる。朱音の、小さな膀胱いっぱいに溜め込まれたおしっこが、あの可愛らしい割れ目を通って勢い良く便器に叩きつけられているのだ。
私は扉の前で、美しいせせらぎに耳を澄ました。
…
朱音が、トイレから出てきた。
「お、おまたせしました…」
気まずそうに俯く朱音。私は、その肩を軽く叩いた。
「少し、遊んでいこうか」
…
ブランコで遊ぶ朱音を、あずま屋のベンチに座って眺めている。
思えば、彼女との出会いがここだった。この屋根の下で、日が暮れてもなお一人で人形遊びを続けていた。きっと、彼女の時間は止まっていたのだろう。愛をくれない親が、娘に人形を買い与えた時…その時には、まだ愛があったのだろうか。
「…どうでも良いか」
過去などどうでも良い。今は、私が朱音を愛するのだ。形はどうであれ…
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