【安価・コンマ】ハーレムシミュレーター
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418: ◆WEXKq961xY[saga]
2020/07/11(土) 10:03:43.40 ID:HidKogoG0
…

 夜。教会奥の木の扉を開くと、アスラは恐る恐る中に入った。
 突然、足元で「ひんっ!?」っと声がした。見ると、膝の高さくらいの大きな丸い岩が、目の前に転がっていた。

「この娘はガンシュテナ」

「!」

 立ち並ぶ本棚の向こうで、アルが言った。彼女は小さな椅子に座って、机の上の蝋燭を頼りに何かを書いていた。

「人…なの?」

「しばらく待ったら分かるわ。…で、こんな夜に何をしに来たの」

「…バルバスの歴史、が知りたくて」

「…」

 アルは、黙ってアスラの顔を見た。それから、ふとペンを置いて立ち上がった。

「それはバルバスという、人間が勝手に作った、でたらめで差別的な分類について知りたいということ?」

「えっと…いつからいたのかとか、何で戦争になったのか、とか…」

「…そう」

 彼女はふっと息を吐くと、再び椅子に座った。そうして、本棚の側の丸椅子を指すと、アスラに座るよう促した。

「…知識は、重たい翼よ。あなたがただの種馬として生きることを良しとしないのなら…背負いなさい。そして、飛ぶ努力をなさい」

 そう言うとアルは、新しい蝋燭に火を点けた。そして、遠い目をしながら語り始めた。

…

「今から三千年くらい前…人間がこの世界に、今の10倍…或いは100倍以上は生きていた頃。その当時、種として最も力を持っていた彼らの方へと、『世界』が傾き始めた。獣、物質、自然現象…あらゆるものが、人間の姿に近づき始めた」

「それが、バルバス? 人間より先に生まれたのかと思ってた」

「正確には、人間の前にも存在した時期があって、それが一度滅びて、再び蘇ったの。…そこから千年かけて、エルフや小人みたいな様々な種族が分化してきた。でも、古来の自然現象…私たちが『精霊』と呼ぶ種族の中には、人間の姿を良しとしない者もいた。また、特に竜は人間の姿に近づくことを嫌った。何故なら、人間の前に世界を傾けるほど力を持ったのは、彼ら竜だったから」

「それで、戦争に?」

 アルは頷いた。

「天の精霊を中心に、様々な精霊や殆ど全ての竜、それに一部のバルバスが集結して人間を滅ぼし、世界における人間の重さを取り除きにかかった。そうすることで、人型の『檻』から抜け出せると信じて」

「その頃は今と比べ物にならないくらい人間がいたから、大地はもっと細かく区切られて、たくさんの国が存在していた。でも、精霊たちの働きによって、今で言うタルスムの大地は地震で砕け、サトンは日照りに枯れ果て、オリエズマは止まぬ雨に沈み、そしてクリストラでは子供が生まれなくなった。人間は、今の数まで減った」

 黙り込むアスラ。アルは、そっと目を伏せた。

「…バルバスの全てが、敵に回ったわけじゃないわ。エルフや小人は、同じ人型の民として人間と共に戦った。でも不十分だった。変わったのは、今から50年前」

「ぼくの、父…」

「シーヴァに、どんな力があったのか…何の加護があったのか…誰にも分からない。けれど、彼の力で多くの精霊が人間の側に立った。姿形を気にせず、ただ戦いで大地が荒れてゆくことを憂いた精霊たちが、勇者と共に天に刃向かった。そして、遂には勇者の剣が、天を討ち果たした」

「…」

「バルバスという区切りは、人間にとっては正しいわ。私たちだって、小人以外を纏めて『長く短き者』と呼ぶ。ただ、その中身は様々であることを覚えていて。様々なバルバスを、人間は束ねようとしている。でも、それは無理よ。話せば分かるとは限らない。ここにいる間は、私やラーラ、それにミーアたちを頼りなさい」


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