【ミリマスR-18】馬場このみさんと映画を見ていたら盛り上がっちゃった話
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2:ベッドシーン 1/12[sage saga]
2020/11/21(土) 00:07:14.83 ID:XGQrdtYN0
 仕事帰りのラッシュに揉まれて電車に乗るのは、今年に入ってからまだ十回を数えていない。日が落ちてはいるものの、こんなに意識明瞭な時間帯に退勤することができたのは久しぶりに思えた。酒を飲む予定があるからと車では出勤せず、明日は休みだから、思い切って仕事は全部置いてきてしまった。今日は鞄が軽い。

 最寄り駅とは反対側に位置するこの駅の周辺も、歩き回るのにもう地図アプリに頼る必要は無かった。最短距離はあえて通らずに駅から目的地のマンションへと向かう途中、不審な者も特にいなかった。部屋の主からは二つの言伝があった。牛乳が無くなったから買って来て欲しい。エントランスで郵便受けを見ておいて欲しい。両方とももう済んでいる。左手に提げたレジ袋には1リットルの牛乳パックが二本、注文通りだった。こんなに頻繁に牛乳を飲んで、お腹を下したりしていなければいいんだけど、と要らぬ心配をしていると、程無くして、十階建マンションの静かなエントランスに到着した。部屋番号を押して呼び出すと、インターホンからの返事は無いままで、目の前の扉がスッと道を開けてくれた。

「お帰りなさい。プロデューサー」

 ロックを外されたドアを開くと、小柄な彼女は玄関口で俺を待ち構えていた。料理をしている最中だったのか、紺のエプロンをまだつけたままだ。そのすぐ近くで、オーブンが唸り声をあげている。

「ただいま……って、ちょっと違いますよね。ここ、俺の家じゃないですし」
「ふふ……じゃあ、いらっしゃい」

 お邪魔します、と告げながら靴を脱いで、まだ新しさの抜けないスリッパに足を通す。少し屈んでオーブンを覗き込んでみると、中でグラタンがグツグツと煮えている。いいワインを買ってきたから、それを肴に飲みましょう、と彼女は、エプロンを外しながら言った。

 身長差は、軽く三〇センチ以上はある。立ったままでハグしようとすると、どうしても大人が子供を抱っこしてあやす構図になってしまう。今回もやっぱり、小さな体は腕の中にすっぽり収まった。

「このみさん」
「……どうしたの?」
「待ち遠しかったです」
「今日だって劇場で会ったじゃない」
「それとこれとは別なんです」

 しょうがない人ね、と言いながら、このみさんは俺の胸に顔を埋め、上目遣いになって見上げてくる。言動の主従関係と体格差が、あべこべだった。

 目を閉じたこのみさんが精一杯爪先立ちになろうとした所へ水を差すように、オーブンから甲高い電子音が鳴り響いた。少し面白くなさそうな顔をしながら、このみさんはミトンを手に取った。

 莉緒といる所に混じって宅飲みをする時よりも、一回り豪勢な食卓だった。俺と同じようにこのみさんもお腹を空かせているらしい。トマトとモッツァレラチーズが綺麗に並べられたカプレーゼに、二人分のポトフ。その近くに、まだグツグツと熱を放つグラタンが登場した。出てくるお酒が日本酒でないのも、納得できる気がした。ワインのボトルを手に取って、注いであげよう、と思ったら、このみさんに先回りされてしまった。

「はい、お仕事お疲れ様」
「ははっ、これ、ビールのノリですよね」
「細かいこと言わないの。ほら、私の分も注いでちょうだい」

 グラスを鳴らして乾杯して、美味しい料理に思わず唸り声があがる。このみさんの家を訪れた時は酒のつまみを作っていることが多かったから、今日みたいにボリュームのある料理を作ってくれたことには素直に感激した。ただ、今度はそっちが作ってね、とニコニコしていたこのみさんには妙な圧力があって、俺はつい目をそらしてしまった。



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