安価で人間牧場
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150:名無しNIPPER[saga]
2021/07/12(月) 19:02:26.63 ID:AlPYWu6V0
「「楓先生さようならー!」

楓「気をつけて帰るんだぞー」

道着から着替えた子供達が和気藹々と道場をあとにする。
玄関でその背を楓は見送った。
子供達の可愛らしい後ろ姿に、普段は口を一文字に結んでいる楓も、思わず頬が緩んでしまった。

しかし、すぐに楓の表情は無表情どころか、形の良い眉を歪ませ、苦悩を浮かべる。

道場に入り、そのまま併設の事務所ーーといっても脚が一本取れている机に、どのノートも表装が剥がれていたり、指導用の教本は発行日が昭和も珍しくないガラクタしか置いていない場所で楓は一冊のノートを開き、顔を引き攣らせた。

楓「今月も赤字か…」

楓が書き付けているのは、この道場経営に関する帳簿だった。
どの数字も赤字である。それを裏付けるように、道場は丁寧に掃除がされているが、素人の補修では不可能な床や天井は壊れていたり、何枚かのガラスには新聞紙が貼り付けてあった。
防犯の観点では、何もないのも同じだが、修繕費はどこにもない。

この道場で唯一の収入源は通う子供達の月謝だが、ここに通うのは低収入の世帯が多く、何ヶ月か滞納している子供もいた。

もっと豊かな世帯をターゲットにするべきだが、そもそも金のある親は、こんなボロ道場に我が子を通わせる物好きはいないし、何人かの子供が紹介で連れてくるが、大抵は道場のボロさに驚いて帰り、来るのは他の習い事はさせてあげられず、せめてものといって、頭を下げる低収入世帯。

社会人は若い楓が師範で来る者はいない。

唯一に救いは、たまにどこかの家から貰い物をするため、食事はそれまで切迫していないぐらいだ。だが、帳簿ではあと数ヶ月で電気代や水道代も滞ると告げていた。

進むも退くもできない状況に、楓は頭を抱えた。



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