【可愛そうにね、元気くん】「進まない」【SS】
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19:名無しNIPPER
2021/08/14(土) 02:38:05.92 ID:JzXNw/sm0
道行く人々が怪訝そうに俺たちを見ては通り過ぎる。耳も顔も焼けただれるように熱い。だけど鷺沢の指は止まることなく俺をくすぐり続ける。
「……っ!! ……さぎ、さわっ……や、めっ……」
情けなさを重ねるような弱々しい声で、必死に鷺沢へと懇願する。
「――あははっ!」
あっという間に屈服しそうになる俺を見て、鷺沢は今にも躍り出しそうな調子で笑った。ガラスの破片のように、きらきらと光って胸を刺す笑い声。
全部、あの頃のままだ。抗えない痛みも、恐怖も……それでもなお快感を覚えてしまう、自分自身も。
今この瞬間だけ、足元が、10年前に戻ってしまったかのような錯覚すら覚えた。
過去から這い出た感覚の洪水に囚われて突っ立っていると、不意にするり、と手が解ける。
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