【可愛そうにね、元気くん】「進まない」【SS】
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56:名無しNIPPER[saga]
2021/08/14(土) 03:09:56.45 ID:JzXNw/sm0
スリッパを履いた鷺沢が、ぱた、ぱたと俺に近づく。
舌舐めずりのような、既に賞味しているような、俺を咀嚼する目線。見えない歯が食らい付いたかのように心臓が痛む。
その痛みの出所は――弾けるほどに鼓動が跳ねる理由は――期待と、興奮だった。
57:名無しNIPPER[saga]
2021/08/14(土) 03:10:47.02 ID:JzXNw/sm0
鷺沢がベッドに膝をつく。俺に向かってしなだれるようにかがみ込む。眩むような美貌が目と鼻の先にあった。垂れた髪は俺を食いちぎるかのように、顔の両側へと迫る。
漆黒の牙のように房になった髪は――そのまま、やさしく俺の頬をくすぐった。
58:名無しNIPPER[saga]
2021/08/14(土) 03:11:16.16 ID:JzXNw/sm0
「〜〜〜〜っ……!!」
首筋を刃物が撫でるような危険なくすぐったさに、思わず身を竦ませる。
59:名無しNIPPER[saga]
2021/08/14(土) 03:11:42.68 ID:JzXNw/sm0
******
60:名無しNIPPER[saga]
2021/08/14(土) 03:12:40.60 ID:JzXNw/sm0
「……がちがち、だね♡」
「おいこら」
61:名無しNIPPER[saga]
2021/08/14(土) 03:13:19.44 ID:JzXNw/sm0
けれど、そんな俺を見つめるとき。
鷺沢はだいたいいつも、笑顔でいてくれるのだ。
62:名無しNIPPER[saga]
2021/08/14(土) 03:14:05.78 ID:JzXNw/sm0
「…………ね」
不意に、鷺沢が俺のあごに手を添えた。
63:名無しNIPPER[saga]
2021/08/14(土) 03:15:08.06 ID:JzXNw/sm0
俺が何か言うより早く、鷺沢が手を振り下ろした。
64:名無しNIPPER[saga]
2021/08/14(土) 03:15:57.51 ID:JzXNw/sm0
――ばちん!
「いっ……!!」
65:名無しNIPPER[saga]
2021/08/14(土) 03:17:23.26 ID:JzXNw/sm0
「うぁっ」
情けない声を上げる。けれど彼女はそんな俺に失望しない。俺の弱いところを飲み干して、より激しく、より熱く、俺に痛みを注いでくれる。
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