【安価でのわゆ】久遠陽乃は勇者である【7頁目】
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689: ◆QhFDI08WfRWv[saga]
2022/10/02(日) 22:14:36.92 ID:Dj7FRa1nO

夜の病院の静けさは、深い孤独を感じられる。
煩わしかった日々から解放され、
薄暗く、話声は聞こえず、自分一人の足音だけが遠くへと延びていく。

まるで、ゲームの中に入ったかのようだ。

どちらかと言えばあまり趣味ではないけれど、
ホラーゲームの探索パート……舞台は廃病院とでも言ったところだろうか。
なんて、千景は考えながらゆっくりと奥に向かう。

以前友奈がいた病室に友奈はいなかった。
もしかしたら友奈の病室が変わっているかもしれないと千景は思ったが、
記憶が正しければ、勇者の病室はそうそう変わらない。

というのも症状が悪化した場合を除き、機密性の高い情報である勇者の所在が移るというのは、それなりにリスクがあるからだ。
国民から慕われているが、特別嫌われている者もいる。
中には殺すべきだとさえ言われている勇者だっているのだから。

万が一のことを考慮して、かなりの情報統制が行われており、
それゆえに、勇者の移動範囲は大幅に制限されるし、
病院内だってすべての場所を自由に移動できるかと言うとそういうわけでもない。

だからこそ、ほぼほぼ集中治療室から出られない久遠陽乃の所在は掴みやすい。
必要機材等の条件から移送は容易くなく、そもそも逃走の可能性がある危険人物である以上、その管理は厳しくなる。

千景は病院の中を迷わず歩く。

そうして――。

コツッ……コツッ……コツッ……っと。
足音が聞こえてきて、千景はその影のような容姿を活用して闇に潜む。
足音の聞こえる方角から段々と灯りが伸びてくる。

近付いてきた足音の主は白い衣装を身に纏った人の形をした何か――いや、人間だった。


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