過去ログ - 【オリジナル】「治療完了、目をさますよ」【長編小説】
1- 20
33:天音 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2017/05/06(土) 15:33:02.69 ID:gCTWDI1i0
「自殺病の第五段階まで進んでいますね。きわめて難しいと思います」

柔和な表情を崩さずに、彼はなんでもないことのようにサラリと言った。
母親は絶句すると、口元に手を当てて、そして大粒の涙をこぼし始めた。

以下略



34:天音 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2017/05/06(土) 15:33:51.46 ID:gCTWDI1i0
「ぜ……絶望的なんですか!」

母親が悲鳴のような声をあげる。

「はい」
以下略



35:天音 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2017/05/06(土) 15:34:43.71 ID:gCTWDI1i0
「担当は赤十字病院の大河内先生からの紹介ですね。知っています。どうして入院させなかったんですか?」
「そ、それは……娘が入院だけは嫌だと言い張って……」
「その結果命を落とすことになる自殺病の患者は、全国で一日に平均十五人と言われています」

柔和な表情のまま圭介は続けた。
以下略



36:天音 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2017/05/06(土) 15:35:30.48 ID:gCTWDI1i0
穏やかに問いかけられ、母親は血相を変えて叫んだ。

「どうって……ここは病院でしょう? 娘を助けてください!」
「それは、どのような意味合いで?」

以下略



37:天音 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2017/05/06(土) 15:36:15.00 ID:gCTWDI1i0
「それじゃ……」
「しかし」

一旦そこで言葉を切って、圭介は眼鏡を中指でクイッと上げた。

以下略



38:天音 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2017/05/06(土) 15:37:30.81 ID:gCTWDI1i0
「言ったとおりのことです。植物状態になるかもしれませんし、歩けなくなるかもしれない。しゃべれなくなるかもしれないし、記憶がなくなって、貴女のことも思い出せなくなるかもしれない。具体的にどうとはいえませんが」
「……そんな……どうしてですか?」
「娘さんの心の中にあるトラウマを、物理的な介入によって消し去ります。その副作用です」

端的にそう答え、圭介はデスクから束のような書類を取り出した。
以下略



39:天音 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2017/05/06(土) 15:38:06.84 ID:gCTWDI1i0
「はい。ここで見聞きしたことについては他言無用でお願いします。その他、法律関係のいくつか結ばなければいけない契約があります」
「…………」
「それと」

母親に微笑みかけて、圭介は言った。
以下略



40:天音 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2017/05/06(土) 15:39:45.50 ID:gCTWDI1i0


「急患だ。即ダイブが必要だ」

車椅子を押しながら、圭介が言う。
以下略



41:天音 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2017/05/06(土) 15:40:30.89 ID:gCTWDI1i0
母親が、真っ赤に目を泣き腫らしながら、立ち尽くしている。
彼女は車椅子の上で3DSを握り締めている小さな女の子を見ると、怪訝そうに圭介に聞いた。

「この子は……」
「当医院のマインドスイーパーです」
以下略



42:天音 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2017/05/06(土) 15:41:06.93 ID:gCTWDI1i0
「娘の命がかかっているんですよ! それを……それをこんな……こんな小娘に!」

汀が肩をすぼめ小さくなる。
怯えた様子の彼女を見て、圭介は白衣を直しながら、淡々と言った。

以下略



43:天音 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2017/05/06(土) 15:41:44.95 ID:gCTWDI1i0
彼を押しのけ、母親は施術室に入ろうとした。

「私も同席するわ。娘を妙な実験の実験台に……」
「入るな」

以下略



1002Res/675.20 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice