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士郎「禁書目録?」 上条「サーヴァント?」 - 製作速報VIP(クリエイター) 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 20:24:36.42 ID:rg3ZMcko

今さらだし、何番煎じだよ



だけど書きます

禁書2期、UBW発売の記念とでも思ってくれれば
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久川颯「同期でしゃっふる!」 @ 2019/10/18(金) 18:58:25.94 ID:YCIhNpQ+0
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【アイマス】ある冬の日 @ 2019/10/18(金) 18:53:25.36 ID:dbp55CRJ0
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【イナイレ】充「辛い…絶望……」【安価】 @ 2019/10/18(金) 18:31:09.39 ID:gbds75Be0
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チノ「た、たすけて…」 シャロ「ごめんなさい…!」 @ 2019/10/18(金) 17:29:14.37 ID:rMmP8Nleo
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【安価】とりあえずオリロンパ【コンマ】 @ 2019/10/18(金) 10:24:56.89 ID:l0meXPYW0
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高森藍子「間違える」 @ 2019/10/18(金) 04:28:22.95 ID:wG2CyFjX0
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C&C @ 2019/10/17(木) 16:12:03.45 ID:G6Zii9qpO
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ゴルゴ13「用件を聞こうか…」 将軍さま「あの屏風の虎を倒してみせよ」 @ 2019/10/17(木) 09:59:55.07 ID:1vw7yyn40
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2 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 20:26:33.35 ID:rg3ZMcko
Oct.15_PM 05:36


―――聖杯戦争。

二週間という長くも短い時間、それが終わり半年ほど経ったある日のこと。
凛は衛宮邸を訪れると士郎にとある街の名前を告げる。

「衛宮くん。―――学園都市って知ってるわよね?」
「ん? ああ、名前くらいは聞いたことあるぞ。けどその街がどうしたんだ?」
「そうね……これから私たちが行くことになったわ」

「は? なんでさ」
「話せば長くなるけど、一言でいうなら聖杯戦争の後始末ってとこね」
「聖杯戦争と学園都市ってどう関係があるんだ?」

聖杯戦争は死者を出しはしたものの、公には無事に終わったと言える。
しかし、セイバーによって破壊されたはずの聖杯も完全に消滅したわけではなかった。
だからといってその聖杯の残骸自体はほぼ無害と言っても良い状態であり、二人とも問題視はしていなかった。

―――だが、その破壊された聖杯の残骸を悪用しようという人間がいるとのことだ。
3 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 20:27:49.44 ID:rg3ZMcko
「聖杯を悪用されるってのは衛宮くん的にも嫌でしょ?」
「そりゃその話がほんとなら放ってはおけないけどさ。そんな話どこから聞いたんだ?」
「教会よ。昨日綺礼の知り合いだって言う魔術師から連絡が来たわ」

「あの教会に? 言峰の知り合いの魔術師から? ……それ信用できるのか?」

はぁ、と凛は溜息を一つつく。

―――確かに士郎の言っていることもわかる。
正直なところ凛自身も半分くらいはデマなんじゃないかと思っている。

「それはそうなんだけどね。けど聖杯がらみとなると無視するわけにもいかないわ。何かあってからじゃ遅いし」
「む、確かに調べてみておいて損はないか。―――で、それと学園都市と何の関係があるんだ?」

「そこにあるっていう物が聖杯の残骸を完全に消滅させるために必要らしいの。名前は――――禁書目録」

4 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 20:29:48.79 ID:rg3ZMcko
Oct.16_AM XX:XX


とある窓のない建物の一室、二人の男がガラス越しに向かい合う。

「……これで満足か?」
「ああ、予定通り運んでいるようだ」

「最後までそうだといいがな、そうそうお前の思い通りにうまくいくものか?」
「いかないかもしれないな。―――いや、いかないだろうな」
「……まるでいかなくてもいいと言いたげだな」
「その通りだ。最悪の結果にでもならない限りこちらにはたいして損害はない」
「だったらその最悪の結果にならないよう祈ってるんだな」

「そうならないようにするのが君の仕事だろう」
「俺にできることなどたかが知れている。それに聖杯がからむとなるとあるいは抑止力さえも働きかねない」
5 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 20:31:31.39 ID:rg3ZMcko
「いや……抑止力の影響はない」

「―――なんだと?」
「こちらからはあくまで方向を示すに過ぎない。特に聖杯に直接何をするというわけでもないからな」
「……なるほど。聖杯自体が目的ではないということか」
「そうだ。あくまでも聖杯は材料に過ぎない。得られるならばあるにこしたことはないがな」
「チッ、それほどまでにプラン短縮とやらが大事か、アレイスター」

「他になにがあるというのだ?」
「レベル5や幻想殺しを危険にさらしては本末転倒だろう」



「だから言っているだろう。―――それが君の仕事だ、と」
6 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 20:37:32.56 ID:rg3ZMcko
Oct.16_PM 04:37


「案外すんなり入れたな。俺たちみたいな部外者が入るのって難しいって聞いてたのに」

あらかじめ連絡を受けていたとはいえ、学園都市に入るには一つや二つ問題があると士郎は覚悟していた。
同じ事を考えていたのか、凛もその言葉に頷く。

「そうね。確かにきちんと言われたとおりには行動してるけど」
「警備がずさんなのか、こいつの指示が的確なのか」
「……後者でしょうね。学園都市はそんなに甘いところじゃないわ」

「実はこいつかなりすごいやつなんじゃないか?」
「そうかもしれないわね。……ま、何も問題なく入れたんだから文句は言えないわ」
「問題なく、か。……それはどうだろうな」

そう呟いた士郎は、さりげなく辺りを見回してみる。
挙動が不審なのか、あるいは学園都市の人間とはなにかが違うのか、どうにも注目を集めているようだ。

「……確かに、目立ってるわね」
「それにしても、これみんな超能力者なのか? ちょっとすごいな」

「何言ってるの? 残念ながら半分以上はレベル0よ」
「む、そうなのか? けど逆にいうと半分近くは超能力者ってことだよな?」
7 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 20:39:44.83 ID:rg3ZMcko
「そうとも言えるけど、まぁ、能力者って言ってもピンきりだと思うわよ。それに能力ってのは一種類しか使えないらしいし」
「へぇ、となるとやっぱり魔術の方が便利なんだな」
「一概には言えないでしょうけど、基本的にはそうでしょうね。けど高位の能力者はほんとに化物らしいわよ」

「化物って……遠坂、その物言いはどうかと思うぞ」
「化物よ。なんでも第一位ってやつは核爆弾をくらっても平気って噂よ」
「―――はぁ? ……なるほど、確かにそりゃすごいな。にしても遠坂、やけに詳しくないか?」

そう何気なく言った士郎の言葉に凛は慌てて弁解する。

「べ、別にそんなことないわよ。こ、このくらい常識でしょ?」
「ははぁ……なるほどな。遠坂、お前、超能力とかに憧れてるクチだろ?」
「ち、違うって言ってるでしょ! ま、魔術と超能力は相容れないものなんだから、興味があるとかそういうんじゃ……」

などど、ごにょごにょ言っている凛を横目に士郎は荷物を取り出す。
そこから凛が受け取っていた書類を取り出し、その中から地図を広げる。

「ま、いいけどさ。……それにしてもわかりづらいな。中は広いし、同じような建物ばっかりだし」

地図と周りを見比べる士郎に対して、落ち着きを取り戻した凛は冷静に返す。

「8割が学生の学園都市だもの。そりゃ学生寮ばっかりでしょうからね」
「それでちゃんと目的の寮を見つけられるのか?」
「ここまでちゃんと来れたんならだいじょうぶでしょ」
「そりゃそうだな。なら何か起こる前に早く探そう」

「―――何かお困りでしょうか?」
8 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 20:41:53.51 ID:rg3ZMcko
そんな二人に横から声が掛かる。
士郎と凛が視線を向けると二人の少女、大きな花飾りをつけた短髪の少女と小さな花飾りをつけた長髪の少女が近づいてくる。

「あ、この子風紀委員なんですよー」
「……ジャッジメント……?」

隣の長髪の少女からのフォローにも、聞き慣れない言葉に戸惑い士郎は凛に顔を向ける。
同様に単語の意味がわからない凛は小さく首を横に振る。

「お、ということはお二人は外からの人ですか? 風紀委員っていうのは……ま、簡単に言うと学生の自警団みたいなものなんですよー」

自警団という言葉になるほど、と二人は頷く。
短髪の少女は少しだけ悩んだような躊躇うような表情を作ると、士郎と凛に尋ねる。

「外からの……申し訳ないんですが身分証明書のようなものはお持ちでしょうか?」

証明書、と言われても二人としてはどうしたらいいものかと戸惑う。
しかし、かといってここで問題を起こすわけにも行かない。
学生による自警団とはいっても見たところそれなりに大きな組織だということが窺える。
少しだけ考え込むと、凛は諦めて予め受け取っていた書類を提示してみる。

「……これしか持っていないんだけどこれでいいかしら?」
9 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 20:43:41.02 ID:rg3ZMcko
短髪の少女はそれを受け取ると高速で目を通し始める。
長髪の少女はそれを心配そうに、少し楽しそうに横から眺める。

「問題は……無いようですね。けど、いえ……」

問題は無いと言いながらも煮え切らない少女の態度に士郎も不安になる。

「何かまずいのか?」
「いえいえ、まずくはありませんが……かなり上の人が関わっているようなので少し驚いただけです」
「へぇー、そうなんだ。ひょっとしてお二人ってかなり凄い人だったりします?」

その答えに長髪の少女が興奮気味に目を輝かせる。
状況が把握しきれない士郎はその向けられる真っ直ぐな視線にうろたえる。

「いいえ、少しばかりコネがあるだけで私たちはなんでもないのよ。ちょっと人を訪ねてきただけ」

凛はその士郎を横目に笑顔で応対する。
その答えが不満だったのか、長髪の少女は少しがっかりしたような表情を浮かべる。

「そうですか、お知り合いに会いに来られたんですね?」
「ええ、そうよ。これは……どのあたりかわかるかしら?」
10 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 20:46:24.43 ID:rg3ZMcko
二人の少女に住所が記された紙を見せる。

「はい、わかりますよ。案内しましょうか?」
「いえ、ありがたいけどそれはいいわ。他にも見たいところがあるし」
「そうですか、では簡単に説明だけしますね」

そう言うと短髪の少女はその建物への道筋、近くの目印などを説明する。
凛はそれを聞きながら簡単にメモを取る。

「……そう、ありがとう。お世話になったわね」
「いえいえ、私もこれから仕事があるので失礼しますね」
「お二人さん楽しんでくださいねー」

そう言うと二人は、長髪の少女は大きく手を振りながら、短髪の少女は小さくお辞儀をして離れていく。
その姿をみて凛は小さく安堵の息を吐く。

「……ふぅ、どうなるかと思ったわ」
「だな、やっぱり不審だったのかな」
「でしょうね。あまり目立ちたくないのだけど……。まぁいいわ、行きましょう」
11 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 20:52:55.86 ID:rg3ZMcko
Oct.16_PM 04:45


「不幸だぁあああーっ」

買い物袋を片手にいつものようにお決まりのセリフを叫びながら狭い路地を器用に走り抜けていく少年。

「ちょっと待ちなさいよ!」

そしていつものようにその後ろを追いかけていく少女。

「はあっ、はあっ。……いったい上条さんが何をしたと言うんでせうか?」

埒があかないと感じた上条は観念して立ち止まり、息を切らせながらも少女に問いかける。

「ちょっと話があるって言っただけなのにアンタが逃げ出すからでしょうがっ!」
「だ、だったらいきなりビリビリはやめてくれませんかねっ!」
「そ、それはつい、というかなんと言うか……」

思わず目を逸らし、ごにょごにょと口ごもる少女の前髪のあたりにバチッと電流が流れる。
上条はそんな様子にふぅ、と大きく息をつく。

「あのなぁ御坂、用事があるなら簡潔に、ってあぁーっ! こんなことしてる間にタイムセールの卵が!」

その上条の言葉に美琴の前髪に一際大きな光が奔る。
12 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 20:55:25.75 ID:rg3ZMcko
「―――ア、アンタはっ! ……そう、私よりも卵が大事なわけね」

「いや、そんな私と仕事どっちが大事なのって話ではなくてですね」
「うっさぁぁああーい!」
「ぎゃあぁぁぁ。やっぱ不幸だぁあぁぁああ」

美琴から放たれた電撃を右手の力で打ち消すと、肩で息をする美琴を尻目に一気に走り出す。
上条が家のほうに向かいしばらくの逃走を終えたあと振り返るとすでに美琴の姿はなかった。
途中にふと遠くから聞こえた、お姉様ぁぁああああ、という叫び声のおかげだろうか。

なんとか寮にたどり着いたとき、エントランスの前に地図のようなものであろうか、紙を覗き込む一組の男女が見える。

「ふぅ。……ん? どうかしたんですか? ここの寮に用事ですか」

上条の声に二人は顔を上げ一瞬だけ顔を合わせる。

「いえ、だいじょうぶです。気にしないでください」
「せっかく言ってくれてるんだし、聞いてみた方がいいんじゃないのか」

笑顔で断りを入れる少女に顔をしかめながら少年が口を挟む。

「いいのよ、別にわからないってわけじゃないし。……それにあまり一般人を巻き込むわけにはいかないでしょ」
「あのな、遠坂。そういう思わせぶりな言葉はまずいんじゃないか」

「ま、まさかまた魔術師、なんてオチはありえないですよね」

突然出てきた魔術師という単語に驚きの顔を見せ、二人は再び顔を合わせる。
13 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 20:57:35.63 ID:rg3ZMcko
「へ? おい遠坂、どうなってるんだ」
「し、知らないわよ。けど……魔術師、ってわけではなさそうね」
「じゃあこの人が、ってわけじゃないのか」
「たぶん違うと思うわ。だったら向こうが気づくでしょ」
「そりゃそうか」

ああ、なるほどな、と上条は頷く。
魔術師という言葉への反応からいつものことかとなんとなく状況を把握する。
そして自分のことを知らないということは……。

「ひょっとして土御門の知り合いか。なら部屋まで案内しようか? いるかはわからないけど」
「知り合いというわけではないけれど。つちみかど……、ここなんだけどわかるかしら?」

凛は住所の書かれた紙を上条に見せる。
それを一目見ると上条はもう一度すぐに頷く。

「やっぱり土御門だな、間違いない」
「知り合いなの? ……ならお願いしようかしら、悪いわね」
「ああ、いいぜ、部屋は隣だしついて来てくれ」

上条はついて来るように言うと歩き始める。
二人もその後に続く。
14 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 20:59:45.03 ID:rg3ZMcko
上条はああ、と思い出したかのように呟くと、そのまま顔だけ振り返り簡単に自己紹介をする。

「俺の名前は上条当麻だ、よろしくな」
「よろしく。俺は衛宮士郎、こっちは遠坂凛」
「いちおう聞いておくけど二人とも必要悪の教会の魔術師じゃないのか?」

「……ネセサリウス? というのは知らないけど。ええ、魔術師よ。衛宮くんはまだまだ半人前だけど」
「おい遠坂、そんな紹介はやめてくれ」
「あら、事実じゃない」
「うっ、それはそうかもしれないけど」

「ここだ、着いたぞ。おーい土御門、いるかー?」

チャイムを鳴らしながら大きく声を上げる。

「おっ、カミやんか、なんか用かにゃー」
「ああ、いや俺じゃなくてだな、なんかこの人たちが用らしい」
「おーやっときたかにゃー、それは助かったぜよ」

土御門が後ろの二人に目をやると、凛は一歩踏み出し上条の隣に並ぶ。

「初めまして土御門、遠坂凛よ。こっちは衛宮士郎、私の弟子兼相棒ってとこね」
「衛宮士郎だ、よろしく」
「ああ、よろしく、土御門元春だ。カミやんわざわざ悪かったぜい、またにゃー」
「いや、気にすんな、たいしたことじゃない」
15 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 21:02:39.41 ID:rg3ZMcko
手を振りながら隣の部屋へ消えていく上条を横目に凛は土御門に尋ねる。

「……さりげなく追い払ったわね。彼も関係者みたいだけど聞かれちゃまずいわけ?」
「ああ、巻き込むにはまだ早いからな」
「……まだ早い? ふーん、どうにも怪しいわね。ま、関係ないか。それで禁書目録についてだけど」
「禁書目録の居場所ならもう知っているぞ。だが教えるにはまずやってもらいたいことがある。まぁ交換条件といったところだ」
「―――待ってくれ。居場所? 禁書目録って人なのか?」

禁書目録という言葉から完全に書物の類だと思い込んでいた士郎は驚きの声を上げる。

「そうだ。知らなかったのか? まぁそれほど重要なことでもないか」
「そうね、なら早く何をすればいいのかを聞かせてもらえるかしら」
「簡単だ、この少女をここに連れてきてほしい」

土御門は二人に一枚の写真を預ける。

(―――連れてくるだって?)
穏やかでない言葉に士郎は少し顔をしかめながら確認を取る。

「連れてくるってどういうことだ? まさか誘拐とかじゃないだろうな? そんなのはお断りだぞ」
「まぁ落ち着け、直接ではないが俺とは知り合いのようなものだ。嫌だと言われたらそこでやめてもいい」

「よくわからないな。駄目だったらそのまま帰ってくればいいっていうのか?」
「そうだ。だから誘拐なんて物騒な話じゃない。むしろ保護のためと言ってもいい」
「だったらあなたがやればいいんじゃないの?」
「俺は俺でやらなければいけないことがある。こう見えても多忙でな」
16 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 21:04:28.72 ID:rg3ZMcko
(―――明らかに怪しいわね)
凛は訝しげに土御門の顔色を窺う。しかし、無理やりというわけでもないならやりようがあるはず。
この状況ではそれよりもとりあえず話を進めるほうが先決であろう。

「どう聞いてもうさんくさいんだけど。……まぁいいわ。で、その子はどこにいるの?」
「今はこのあたりだな、いちおうここの公園内にいるはずだ」

土御門の手のなかの端末を覗き込む。
ここの地理について詳しいわけではないが、どうやらここからそう遠い場所ではないようだ。

「公園内か、なら少し探せばわかるかな」
「でしょうね、そんなに広くもなさそうだし。さっさと済ませしょ。……じゃあ行くわよ、衛宮くん」

土御門から簡単に道の説明を受け、その場を立ち去ろうと歩きかけた二人の背中に声が届く。



「ああ、言い忘れていた。その少女の名前は――――」
17 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 21:12:36.29 ID:rg3ZMcko
Oct.16_PM 05:06


「うぅ、そういえば卵買えなかったんだった。不幸だ」
「とうま。どういうことか説明してほしいかも」
「ぐわっ、やめろ。上条さんは悪くないんですよ」

家に着いてすぐにうなだれ呟く上条にインデックスが噛み付く。

「いやいやいやいや、やめろインデックス。ちゃんとセールの肉は買ってきたんだから」
「はっ、とうまも時には素晴らしいことをするんだね」
「……まったく感謝の気持ちが感じられないんですけど。だいたいお前―――」

いつものようなやりとりを繰り返しいつものようにインデックスに説教しようとしたとき、上条の家のインターホンが鳴る。

「とうま、お客さんなんだよ」
「……はぁ、みたいだな。また土御門か? はーい、どなたさまですか」

これからインデックスにしっかりと言い聞かせようというときの来客に少し気が抜ける。
軽く溜息をつくとおざなりな様子で玄関に向かう。


「き、来ちゃいました」
18 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 21:15:04.00 ID:rg3ZMcko
扉を開けるとそこには意外な人間、つい先日ここにやってきたばかりの五和の姿があった。

「へ? 五和? どうかしたのか?」
「ええっと、また学園都市のなかで魔術師の怪しい動きがあるとかで、あなたの護衛に来ました」

護衛という言葉に上条は一気に冷や汗が出るのを感じる。
先日の神の右席アックアの襲来が脳裏をよぎる。

―――あるいはさらに神の右席の襲撃だろうか。

最悪の場合アックアの再来という可能性すらあることに気づき、上条はぞっとする。
その不安の表情を見て五和は申し訳なさそうに謝罪する。

「……ごめんなさい」
「は? なんで五和が謝るんだ?」
「私じゃ不安ですよね。本当は女教皇様がくる予定だったんですけど、バッキンガムに行かなきゃいけないとかで」

「ああ、いやそうじゃないんだ。五和が居てくれるってのはほんとに心強いんだ」
「そ、そうですか。そう言ってもらえるなら嬉しいです」

「と、そうじゃなくてだな、また俺が狙われているのか?」
「あっ、いえいえ違います! そんなに危ない状況とかじゃありません。念のためで今回はあなたとは関係ないんです」
19 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 21:17:32.91 ID:rg3ZMcko
上条の真剣な顔に五和は慌てて危険を否定する。

「そっか、なら良かった。アックアのときみたいにまた天草式の人達に迷惑かけると思うと申し訳なくてな」

そういえば、と先ほど土御門のところに二人組みのどこかの魔術師が来ていたことを思い出す。
何があったかはわからないがおそらくはその二人がらみのことだろうか。

「そんな、と、とんでもないです。あなたを守るのが迷惑だなんてとんでもないです」
「まあ確かに天草式の助けがなかったら俺はアックアに殺されてただろうけどな。―――ありがとな、助かった」
「いえいえ。ただ、この間は何の力にもなれなくて、結局逆に助けてもらっちゃいましたし、それでそのお礼といいますか、なんと言いますか……」
「そうだったのか。けど気にしなくていいのに。五和も無理して俺のところにいる必要はないんだぜ」
「無理なんてとんでもないです。……むしろ私としては一緒にいたいというかなんというか……」

五和は赤くなりながら俯いてごにょごにょと言葉を呟く。
その姿に上条は不思議そうに軽く首を捻る。

「ん? まぁいいや。ご飯でも作ってくれればインデックスも喜ぶだろ」
「とうま。その言い方だと私がご飯さえあればいいみたいかも」
「いやお前はそうだろう。ってぎゃぁああ、噛み付くな」

「ふふ、じゃあ早速何か作りますね。……あの、え、ええっと、い、一緒に作ってもらっていいですか?」
「ん? ああ、そうだな。さすがにお客さんに全部やらせるのはな。手伝うぜ」
20 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 21:27:47.70 ID:rg3ZMcko
Oct.16_PM 05:24


「―――チッ、なンでオレはこンなとこブラブラしてンですかねェ」

片手に杖、片手に少女の手、一方通行は公園をゆっくりと歩く。

「ねぇねぇ、あれ買って、ってミサカはミサカは上目遣いを計算して訴えてみる」

指を差しながらの打ち止めのクレープおかわり要求に思わず舌打ちで答える。

「さっき三つも食っただろォが。まだ食いたりねェってのか?」
「ええー、甘いものは別腹なんだよ、ってミサカはミサカは女の子の秘密で攻めてみたり」
「別腹もクソもそれしか食ってねェじゃねェか。……チッ、しょうがねェなァ、ここから動くなよ」

ちょうど目に入ったベンチに打ち止めを座らせ一報通行は売り場へ向かう。

(―――ったく、似合わねェな)
溜息をつきながら歩く一方通行の携帯が震える。

「なンだお前かよ。くだらねェ仕事だったら[ピーーー]ぞ」
21 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/18(土) 21:30:06.75 ID:rg3ZMcko
すみません
>>20ミスりました



Oct.16_PM 05:24


「―――チッ、なンでオレはこンなとこブラブラしてンですかねェ」

片手に杖、片手に少女の手、一方通行は公園をゆっくりと歩く。

「ねぇねぇ、あれ買って、とミサカはミサカは上目遣いを計算して訴えてみる」

指を差しながらの打ち止めのクレープおかわり要求に思わず舌打ちで答える。

「さっき三つも食っただろォが。まだ食いたりねェってのか?」
「ええー、甘いものは別腹なんだよ、とミサカはミサカは女の子の秘密で攻めてみたり」
「別腹もクソもそれしか食ってねェじゃねェか。……チッ、しょうがねェなァ、ここから動くなよ」

ちょうど目に入ったベンチに打ち止めを座らせ一報通行は売り場へ向かう。

(―――ったく、似合わねェな)
溜息をつきながら歩く一方通行の携帯が震える。

「なンだお前かよ。くだらねェ仕事だったら殺すぞ」
22 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 21:32:34.87 ID:rg3ZMcko
その『仲間』からの情報は、学園都市に入り込んだ外部からの侵入者がいること。
その侵入者は打ち止めの身柄を狙っているということ。
そして、その人間を捕らえるようにとのことだった。

「あァ、わかったよ、殺さなきゃいいンだろ。あン、なるべく無傷でだと? ……面倒くせェ」

電話を終えると携帯電話をポケットにしまう。
そして打ち止めの方を見ると、一方通行は軽く舌打ちをする。
今電話があったばかりだというのに、すでに見知らぬ人間が打ち止めに接触していた。

「あれ、おかしいな……君がラストオーダーであってるよな?」
「そうだよ。でもつちみかどって人はわからない、ってミサカはミサカは困り顔で首を傾げてみる」
「どういうことだ? ……これってこのまま帰ってもいいってことだよな」
「そうでしょうね。ま、そんなこともあるような気はしてたけど……いったいあいつは何が目的なのかしら」

やはりというべきか、土御門の話は適当だったらしく、目の前の少女にそんな人は知らないと一蹴された。
一体何が目的だったのだろうか。
凛と士郎は首を傾げながらも一応の義務は果たし終えたはずだと無理に納得する。
それならそれで仕方ないか、と考えたところに横合いから突然声がかかる。

「―――なンなンですかねェ、オマエラは。そのクソガキになンか用ですかァ?」
23 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 21:35:34.08 ID:rg3ZMcko
まず二人に襲い掛かったのは言葉ではなく殺意。
背中に氷柱を差し込まれたような殺気に二人の体はとっさに魔術師として反応する。

「なっ――――!?」
「下がれ! 遠坂っ」

凛をかばうようにして士郎は一歩前に出て身構える。
その様子から戦意を読み取った一方通行は即座に攻撃を仕掛ける。

「―――ハッ、やるつもりか」
「なっ! がぁっ」

一瞬の移動で肉薄した一方通行は士郎を蹴り飛ばす。
鳩尾を突き刺そうかという蹴りをなんとか腕を交差し、受け止めるも、その威力で数メートル吹き飛ばされる。

「士郎っ! くっ」

声を上げながらも凛がとった判断は攻撃。
即座に魔術回路を発動させ一方通行に対してガンドを放つ。
一方通行はそれに右手を向け、凛に対して反射させる。

「ハ? そンなものが通用―――なンだと?」
「えっ? 弾かれた? ―――いえ」

―――その結果に対する二人の驚き。

正確に反射したはずなのにうまく跳ね返らず、さらに自分の体に異変があることへの驚き。
放ったガンドが右手に触れただけで防がれ、さらには全く違うものへと変わったことへの驚き。
24 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 21:37:54.50 ID:rg3ZMcko
「……なンだ今のは? ぎゃははは、もういっぺンやってみるかァ?」

言いながらも一方通行の頭には疑問がよぎる。
先ほど聞いた話によると、打ち止めを狙うのは外部の人間だという話だ。
故に、その敵が能力者だとは思っていなかった。
どこかでも感じた胸にかかる圧迫感のようなものも気に掛かる。

「だいじょうぶか、遠坂」

立ち上がった士郎はガンドを弾かれ立ち尽くす凛の元へ駆け寄る。

「……まぁ、ね。でもこれはやばいかも。話し合いは……できたらラッキーってとこね」
「待ってくれ! こっちは戦うつもりはない」

士郎が大声で呼びかけるも一方通行はそれを一蹴する。

「残念でしたァ、こっちには戦う理由があるンだよォ」
「くっ、やるしかないのか」

―――どうやら話を聞いてくれるつもりはないらしい。
二人はいつ襲いかかってくるか知れない相手に対して身構える。

「やる気になったかァ? 行くぞ」

高速で向かってくる一方通行に士郎は拳を振り下ろす。
25 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 21:41:35.09 ID:rg3ZMcko
「はぁっ!」
「ハッ、ぬるいンだよ。そらっ」

それを頭を振り簡単にかわし体を捻ると、身を守ろうとする士郎を再び蹴り飛ばす。

「が、―――はっ」
「へェ?」

今度は確実に捉えたと思った蹴りも士郎はなんとか腕で防ぐ。

「士郎っ?」
「ぐっ、まだだいじょうぶだ、遠坂」
「今のも受けるとはそこそこ戦い慣れてンのか? ……まァイイ。さァて、ここからどォしてやろうかなァ。殺しちゃまずいらしいからな」

見逃してはもらえそうにない雰囲気に慌てて対策を練る。

「さっきのスピードをみると逃げるのも難しそうね」
「とりあえず俺が囮になる。そのうちに逃げろ。いったん土御門のところへ」
「どうかしらね。あいつ逃げたほうから襲ってきそうな気がするけど」

「もォイイかァい? そろそろいくぜェ」

今にも飛び掛ってきそうな一方通行に士郎と凛は逃げるのを諦めて身構える。



「――――――いや、そこまでだ一方通行」
26 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/18(土) 21:45:53.43 ID:rg3ZMcko
その一方通行の動きを止めたのは二人が先ほど会った男の声だった。

「えっ? どうして?」
「おまえは土御門? なんでここに?」

土御門の突然の乱入に驚きを隠せない二人を横目に一方通行はなんとなく状況を悟る。

「あン? ……どォいうことですかァ? どンな茶番だ? これは」
「説明する必要はない、単なる顔合わせだ」
「オマエふざけてンのか? ぶち殺すぞ」
「そう言うな。これでも上からの指示だ。遊びでやってるわけじゃない」

「……チッ、そォかよ。で、帰ってイイか?」
「いや、紹介だけしておこう。遠坂凛と衛宮士郎、二人とも魔術師だ」

「……あン? 魔術師、だァ?」

聞きなれない単語に一方通行は思わず声を荒げる。

「まぁ海原と同じような種類の人間と思ってくれればいい」

(―――海原と同じ、だと?)
そういえば、と海原は超能力とは異なるようなよくわからない不思議な力を使っていたことを思い出す。
もちろんそれが魔術師だと言われてもピンとはこないが。
それに、どちらにしても今重要なことはそんなことではない。
27 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 21:48:38.03 ID:rg3ZMcko
「で、それがどォした」
「さっきおまえがうまく反射できなかったのはガンドと言ってな、不運の呪いだ。初体験だったろう」

反射できなかった。さっきの少女が放った力を思い出す。
完全に反射させたはずなのにうまくいかず、さらには体にも若干の違和感がある。

「へェ、呪いね。確かに完璧には反射しきれなかったが、もう覚えた。次はねェ」
「ならいい、それが目的だ。とりあえずこれを持っておけ」

土御門は文字のような模様のようなものが描かれた折り紙を差し出す。

「なンだこの紙切れは? なめてンのか」
「幸運のお守りだ、今おまえは運気が少し落ちているからな。今日の仕事料とでも思っておけ」
「はン、仕事料ねェ。嬉しくて涙が出てきそうだぜ」
「そういうな。それでも最高級品だ。それともう一つアドバイスしておいてやろう。―――打ち止めから目を離すな」

「……チッ、ありがたく聞ィとくぜ。帰るぞ、クソガキ」

一方通行は土御門からその紙を奪い取るように受け取ると、完全に話から置いてけぼりをくらっていた打ち止めに声をかけその場を立ち去る。
打ち止めは慌てて駆け寄り一方通行の空いている手をとる。

「えー、結局あれ食べてない食べたいー、ってミサカはミサカは可愛らしく駄々をこねてみたり」
「クソが。……もうメシなンだから一つだけにしとけよ」
「いえーい、おじさん、これとこれとこれください、ってミサカはミサカは隠れて三つも頼んでみる」
「てめェ、クソガキ、なにいきなり三つも頼んでやがる。ぶち殺されてェのか」
28 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 21:51:24.38 ID:rg3ZMcko
まるで何事もなかったかのような二人を見送りながら凛は恨めしげに尋ねる。

「……どういうことか説明してほしいんだけど」
「面倒なことをさせて悪かったな」

全く悪びれることもない土御門の言葉に凛は瞬時に激昂する。

「―――め、面倒ですって? 正直死ぬかと思ったわよ!」
「お、落ち着け遠坂。まずは話を聞こう。あいつは何者なんだ?」
「あいつは一方通行と言ってこの街で最強と呼ばれている人間で、ラストオーダーの保護者だ」

「最強? 噂の第一位ってやつか。……結局、土御門は俺たちとあいつを戦わせたかったわけだな?」
「理解が早くて助かる。おおむねその通りだ。もちろん他にも細かい理由はあるがな」
「何言ってんのよ、あんなのと戦わせるなんて。正直死ぬかと思ったわよ!」

「おい、遠坂。……それさっきも言ったぞ」
「あらかじめあいつには怪我をさせないよう言っておいたから問題ない」

問題ないとあっさり断言した土御門に疑問の声を上げる。

「問題ないですって? あいつはそう言われててもむかついたら[ピーーー]タイプの人間よ」
「それは確かに否定できないな。言われてみれば」
29 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 21:54:30.29 ID:M8EI6QDO
主人公、ヒロイン両方ともウザいな
30 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 21:55:03.63 ID:MCsZFuMo
ヒロインって誰よ?
31 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/18(土) 21:57:41.65 ID:rg3ZMcko
またミスった、すみません
>>28




まるで何事もなかったかのような二人を見送りながら凛は恨めしげに尋ねる。

「……どういうことか説明してほしいんだけど」
「面倒なことをさせて悪かったな」

全く悪びれることもない土御門の言葉に凛は瞬時に激昂する。

「―――め、面倒ですって? 正直死ぬかと思ったわよ!」
「お、落ち着け遠坂。まずは話を聞こう。あいつは何者なんだ?」
「あいつは一方通行と言ってこの街で最強と呼ばれている人間で、ラストオーダーの保護者だ」

「最強? 噂の第一位ってやつか。……結局、土御門は俺たちとあいつを戦わせたかったわけだな?」
「理解が早くて助かる。おおむねその通りだ。もちろん他にも細かい理由はあるがな」
「何言ってんのよ、あんなのと戦わせるなんて。正直死ぬかと思ったわよ!」

「おい、遠坂。……それさっきも言ったぞ」
「あらかじめあいつには怪我をさせないよう言っておいたから問題ない」

問題ないとあっさり断言した土御門に疑問の声を上げる。

「問題ないですって? あいつはそう言われててもむかついたら殺すタイプの人間よ」
「それは確かに否定できないな。言われてみれば」
32 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/18(土) 21:58:40.67 ID:rg3ZMcko
なるほど、とにやけながら頷く土御門に凛は再び怒りを爆発させる。

「なんですって! アンタふざけてんの?」
「落ち着けって遠坂。要するにそうはならない確信があったんだろ?」
「そういうことだ。おまえらは悪人の部類には見えなかったからな」

「……まぁ確かにこいつは正義の味方気取りだけど」
「遠坂、その言い方には多分に悪意が感じられるんだが」
「……ほう、正義の味方ね」

正義の味方という言葉に思うことがあったのか、笑みを浮かべる土御門に約束の履行を求める。

「―――で、禁書目録に会わせてもらえるんでしょうね? これで会わせないなんて言ったら暴れるわよ」

「ああ、心配するな。約束は守る、付いて来い」
33 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 22:04:10.76 ID:rg3ZMcko
Oct.16_PM 05:29


「ったく、アイツは……いっつもこっちの話も聞かないで。―――ちぇいさぁぁあああっ!!」

美琴は八つ当たりぎみに自動販売機に強烈な蹴りを繰り出す。
自動販売機からガコン、とジュースの缶が一つ吐き出されるのと同時に美琴のポケットからもゲームセンターのコインが一枚こぼれ落ちる。
黒子はやれやれ、とそれを拾いながら美琴をなだめる。

「お姉様、はい落ちましたのよ」
「……いやいや、今日のはあっちのほうがおかしいわよ。だって……」

だが、そのコインを差し出すも自分の世界でぶつぶつと呟く美琴の目には入らないようだ。
黒子ははぁ、と一つ溜息をつくとそれを自分のポケットにしまう。

「……どちらかというといつも話も聞かないのはお姉様の方だと思いますのよ?」
「ち、違うのよ、今日はなんていうか、つい……」
「つい? なんですの?」

「……なんでもない」
34 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 22:06:11.97 ID:vkf2ScSO
頑張れー支援
35 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 22:07:55.95 ID:rg3ZMcko
ごにょごにょと言葉を濁してはぁ、と元気なく溜息をつく美琴に黒子はいつものように唐突に抱きつく。

「もう、お姉様には私がいますのぎゃぁぁあああああ」
「いきなり飛びついてくるな! ばかっ」

その黒子をこれもまたいつものように電撃で迎撃する。

「はぁ。……ったく、アイツは」
「お姉様ぁぁああ、またあの殿方のことばっかり。いい加減私の気持ちを、って……はぁ、初春? なんですの?」

突然震えた携帯に黒子も同じように溜息をつく。
非番であったはずの風紀委員から仕事の連絡のようだ。
簡単に通話を終えると、黒子は肩を落として美琴に告げる。

「お姉様、申し訳ありませんが黒子は風紀委員に行ってきます」
「そう、気をつけて。……あんま無理しないのよ」
「お姉様も、変なことには首を突っ込まないでくださいませ」

テレポートで消える黒子を見送り、さてどうしようかという美琴に声がかけられる。

「―――お姉様?」
「アンタは……」
36 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 22:10:45.34 ID:rg3ZMcko
振り返るとそこには自分と同じ顔。
首から提げているネックレスには見覚えがある。
ということは確か、……ミサカ10032号だろうか。

「これはこれはお姉様、何をしているのですか、とミサカは偶然を装って世間話風に話しかけます」
「偶然を装ってって……どうしたの? 何か用事でもあるの?」

「あると言えなくもないのですが、とミサカは言葉を濁します」
「ふぅん、でもわざわざ来るなんてよっぽどのことなんじゃないの?」
「確かにそうですが、だからこそです、とミサカは迷いを口にします」

(―――ということは危険なことなのかしら)
だとするとわざわざ首を突っ込むのはよくないかもしれない。
ふと、自分のことを慕う風紀委員の少女の顔が浮かぶ。

「言いたくないことなら言わなくていいわ。一人でなんとかできるっていうんなら無理に首を突っ込むつもりもないし」
「……そうですね。もう少し考えてみます、とミサカはこの場を後にします」

振り返り、去って行こうとする御坂妹に美琴は声をかける。
37 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 22:12:58.81 ID:rg3ZMcko
「けどね、困ったことがあるなら、……アンタが一人でなんとかできないっていうことがあるなら一番に私に言いなさい」

御坂妹は足を止めて再び振り返る。

「一番にとはどういうことでしょうか、とミサカは疑問を投げかけます」

「当然でしょ。―――だって私はアンタのお姉さんなんだから」

御坂妹は少し考え込むかのようにうつむく。
美琴はそれを見つめながらじっと待つ。

「―――わかりました。お姉様にお話があります、とミサカはお姉様に助けを求めます」
「ええ、聞くわ。何が起こっているの?」

「はい。上位固体、ミサカ20001号の危機についてです、とミサカはことの始まりから話します」
38 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 22:14:49.56 ID:M8EI6QDO
>>30そりゃ……あれ? 誰だっけ? ねーちんとイリヤ?
39 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 22:21:03.04 ID:rg3ZMcko
Oct.16_PM 05:48


「さっきの御守りをみて思ったんだけど、聞いてもいいかしら?」
「ああ、何だ?」

禁書目録の居場所へと進む道すがら、凛は気になっていたことを土御門に尋ねる。

「土御門って、やっぱり陰陽師のあの土御門?」
「……あの、が何を指すのかは知らないが、おそらくはその土御門だろう」

「その土御門ならロンドンにいるって聞いてたんだけど?」
「ああ、確かにロンドンにはいた。だがまあいろいろあってな」
「……陰陽師の土御門? どこかで聞いたような……そういえば親父が昔そんな名前を言っていたような」

士郎が二人の間の話に昔の父との会話を思い出す。
40 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 22:25:00.91 ID:rg3ZMcko
「親父? 衛宮―――そうか、なるほど衛宮切嗣の息子か」
「切嗣を知っているのか?」
「まあな。とはいえ知っているといっても何度か会っただけだが」
「そっか」
「なるほど、それで正義の味方、か……」

「―――で、その土御門がこんなところで何をやっているのかしら?」
「何、と言われても普通に学生をやっているだけだが?」
「ふざけないで、知っているのよ。―――超能力者には魔術は使えないし、魔術師には超能力は使えない」

「なっ―――そうなのか? 超能力者でも魔術は使える人間はいるのかと思ってた」
「そっか、衛宮くんは知らないか。いい、超能力者ってのは体の回路自体が魔術師のそれとは違うのよ」
「そのとおりだ。―――だから俺は魔術を使えない」
「は!? ……どういう意味?」

てっきり魔術師として学園都市に潜り込んでいると思っていた凛は驚きの声を挙げる。
魔術が使えない、ということならば魔術師を辞めたということなのだろう。

「そのままの意味だ。簡単に言うと超能力者になれるように体をいじったんでな、魔術を使えない。それだけだ」
「それだけって。……それで済むことじゃないでしょ」
「済まないだろうな。だが今さら言ったところでどうにもならない」
「……確かに、それはそうでしょうけど、でもそんな簡単に―――」

「―――やめろ遠坂」

なんでもないことのように言う土御門に食ってかかろうとする凛を士郎が止めに入る。
41 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 22:26:32.17 ID:rg3ZMcko
「衛宮くん?」
「簡単じゃないはずだ。何があったかは知らない。けど少なくとも俺たち他人が気安く口を挟めるほどは簡単じゃないと思う」

そう諭す士郎の言葉に凛は気まずげに目を伏せる。

「……そうね。衛宮くんの言うとおりだわ。ごめんなさい、土御門」
「気にするな。―――ちなみに超能力者が魔術を使うとどうなるか知っているか?」
「いいえ。知らないわ」
「使えないんじゃないのか?」

「いや、使えるには使える。……だが、最悪の場合体が破裂して死ぬ」
「なんだって?」

その言葉の様子を想像し、二人は苦い表情を浮かべる。

「そういうことなのね。……ところで土御門、聞きたいことがもう一つ出来たんだけど?」
「なんだ?」

見覚えのある建物の前で凛が呆れたように尋ねる。
42 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 22:30:28.00 ID:rg3ZMcko
「なんで戻って来てるわけ?」
「戻ってきているわけではない。目的地に向かっているだけだ」
「いや、ここおまえの家だろ?」

ついさっき出てきたはずの建物に入りながら二人は不満の声を上げる。

「ついて来ればわかる、気にするな」
「気にするな、って言われてもね」

とはいえどうすることもできず、二人は土御門に言われるままに後ろに続く。
たどり着いた場所は先ほど訪れたのと同じ土御門の部屋。

「……着いたけど、ここアンタの部屋よね?」
「ここは、な。目的地はこっちだ」
「は? こっち、って隣の部屋?」

土御門は自分の部屋を通り過ぎて隣の部屋の扉の前に立つ。

「おーい、カーミやーん、いるかにゃー」
「なんだ、土御門? くそっ、手が離せない。おーい代わりにインぎゃぁああぁあ、不幸だぁぁあああああああーっっ!!」

中から先ほど会った上条の声と、何か大きな音、そして悲鳴が響く。
43 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 22:34:04.47 ID:rg3ZMcko
「ねえ、ここってさっきの上条って人の家よね?」
「……今の悲鳴を完全スルーとはさすがだな、遠坂」
「まあ、見ていればわかる」

「……うぅ、不幸だ。どうした土御門。―――おおそっちはさっきの魔術師の人たち」
「あがらせてもらってもいいかにゃー? こっちの人たちが用事があるってさ」
「はい? ひょっとして上条さんはまた魔術師の戦いに巻き込まれたりするのでせうか?」

「だいじょうぶだにゃー、運が良けりゃ面倒なことにはならなくて済むぜい」
「ううっ……不幸な上条さんはやっぱり巻き込まれ確定というわけですね」

土御門の言葉に上条は頭を抱えてその場にうずくまる。

「えっと、いいかしら。……禁書目録に会わせてもらえる?」


「―――――インデックスに?」
44 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 22:38:14.96 ID:L6.JQ56o
面白い支援
45 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 22:44:26.81 ID:rg3ZMcko
Oct.16_PM 06:12


「うん、今の状態ならそんなには難しくないね。そういう記録のある原典ならいくつか残ってる」

聖杯戦争について簡単に説明すると、解決方法はあっさりと見つかった。

「ほんと? じゃあその原典っていうのを見せてくれない?」
「それはちょっと無理かも。それに普通の人に原典を見せるのは危険だと思うんだよ」
「ああ、俺もそう思う。またぶっ倒れかねないしな。……あのおっさんみたいに」

夏休みの終わりに訪れた一人の魔術師について上条は思い出す。

「そっか、ならここでその方法ってのを教えてもらえるか?」
「うーんそれもちょっと難しいと思う。簡単に教えたりできる術式じゃないかも」
「じゃあどうすればいいんだ? なんとかなるんだよな?」

「うん、私がその聖杯の残骸のところまで行けば他の人の魔翌力を使って完全に消滅させられると思うよ」
「なるほど、じゃあこの子を冬木まで連れて帰ればいいわけね」


「―――あのさー、インデックスちょっといいか?」
46 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 22:47:04.21 ID:rg3ZMcko
上条はふと頭をよぎった簡単な解決策を提案する。
それにできることならインデックスにはあまり魔術とは関わってほしくないという思いも強い。

「なに? とうまどうしたの?」
「いや、それでもいいんだけど、わざわざインデックスが行かなくても俺が行けばいいんじゃないか?」

上条は右手を握り締めながら尋ねる。

「うーん、今は聖杯が実体化していない状態だからそれは無理かも」
「実体化していない? よくわからないけどそのままじゃ触れないってことか?」
「ちょっと違うけどそう思ってくれていいよ。だからとうまじゃ無理。私が行く必要があるんだよ」

「そっか、まぁとりあえず俺も付いていくよ」
「わ、私ももちろんついて行きますよっ」
「よし、で、どうする? 出発は早いほうがいいのか?」

話がまとまったところで、上条は二人に問いかける。

「そうだな、悪用しようとしているやつがいるらしいし、早いほうがいいかな」
「そうね。ま、一分一秒を争うって話じゃないと思うけど」
「なら準備が出来次第出発ってことでいいか?」

上条がそう言うと、凛と士郎は頷き合い立ち上がる。
それを見た上条とインデックスもまた顔を合わせて遅れて立ち上がる。
五和も胸の前で握りこぶしを作り気合をアピールする。
その様子をみて、思い出したかのように凛は尋ねる。

「……えっと今さらなんだけどいいかしら?」
47 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 22:50:52.14 ID:rg3ZMcko
「どうした遠坂、まだ何かあるのか?」
「ええ、そちらの人はどなたなのかしら? ――――彼女?」

凛は五和を指しながら、ニヤリと笑い上条に尋ねる。

「いやいやいや、残念ながら上条さんには彼女とかそんな素敵なものはいないのです!」

五和のことを思ってか、大慌てで否定する上条に、五和は逆にうなだれる。
そういえば、と全員が五和の方を向き、自己紹介がなかったことに気づく。

「ああ、そっか。俺たちも名乗ってなかったな。俺は衛宮士郎、こっちは遠坂凛、魔術師だ」
「あ、えっと私は新生天草式十字凄教の五和といいます」
「新生天草式? ……どこかで聞いたことあるわね」

「天草式の神裂火織、って言えば聞いたことはあるかにゃー? その天草式だぜい」
「あの神裂火織の? ……なるほど、その天草式ね」
「知っているのか? 遠坂」
「ええ、神裂火織といえば世界に二十人いないと言われてる聖人の一人よ。聖人くらいは衛宮くんも聞いたことあるでしょ?」
「む、聖人か。……確かに話にくらいは聞いたことはあるけど」
「中でも五和はその神裂火織のライバルと言われるほどなんだぜい」


「―――えっ、えぇぇええええええええええっ!?」
48 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 22:53:09.96 ID:rg3ZMcko
その土御門の発言に驚愕の声を上げたのは他でもない五和自身だった。
彼女の絶叫は悲鳴にさえ似ていた。

「……あなた、そんなに凄い人だったなんて」
「えぇぇええええええ!? いえいえいえいえ! そんな女教皇様のライバルだなんて、と、とんでもないですっ!」

「あっれー、じゃあ五和は諦めてねーちんに負けを認めるのかにゃー?」

そういって土御門はニヤニヤしながら軽く首を上条の方へ向ける。

「―――えっ……あ、諦めません。頑張ります!」

それを見て五和ははっとして上条をちらりと一瞥すると再び拳を握りしめる。

「……なんだかよくわからないけど、なんとなくわかったわ」
「遠坂、俺はお前の今の発言こそよくわからないぞ」

軽くこめかみの辺りを抑えながら納得がいったというように声を漏らす凛。
それと裏腹にさっぱり掴めないといった様子の士郎。
49 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 22:57:37.61 ID:rg3ZMcko
「ま、衛宮くんにはわからないかもしれないわね」
「む、なんでさ? なんだかそこはかとなく馬鹿にされているような気がするんだが」
「あら、わかる? 気のせいじゃないけど別に気にしないくていいわ」

凛はそう答えて士郎にニヤニヤと笑いかける。

「……まぁいいさ。じゃあ行くとするか」
「そうね、あまりゆっくりしているのもどうかと思うし。……あなたたちもそれでいい?」

凛はその場にいた他のメンバーに確認を取る。

「ああ、まぁ俺はこういういきなりってのは慣れてるしな。……それもなんだか不幸だな」
「私はいつでもだいじょぶなんだよ」
「私も行けます!」

土御門にも目を向けると、いつの間にか誰かと電話で話していた。
凛を先頭に部屋の外へ出ようと動く。



「―――おっと残念、少し遅かったみたいだにゃー」
50 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 22:58:46.59 ID:rg3ZMcko
しかし、その動きを電話をしまいながらの土御門の言葉がさえぎる。

「遅かった? どういうことだ?」
「まさか、もう聖杯の残骸に何かあったって言うの?」

凛の頭を様々な事態が駆け巡る。
今の状況ではそれほど害はないはずだが、人によっては使える物なのかもしれない。
それも聖杯に深く関わっている人間にとっては。


「ああ。―――マキリゾウケンが動き出したようだ」
51 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 23:02:52.91 ID:rg3ZMcko
Oct.16_PM 06:20


「カカカ―――――それでは始めるとするかの」

日の落ちた夕闇、とある公園、そこには二人の人間がひっそりと存在した。
―――あるいは二人とも人間ではなかったのかもしれない。

一人は年老いた老人。
そしてもう一人は少女。

「……それにしてもさすがアレイスター・クロウリーといったところか」

老人は独りごちながらアレイスターからの情報どおりに聖杯の残骸を少女に埋め込む。
それにより、少女からは大きな力が吹き荒れ、背からは巨大な翼が生えてくる。
周囲の木々や建造物を破壊し尽くした翼はやがて収束を始めると少女の体を飲み込み球体を型作っていく。
やがてそれは半径10メートルほどで安定し、そこから数体の人影が飛び出してくる。


「さてあと必要なのは……ラストオーダーといったか。―――行くがいい、サーヴァントよ」
52 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 23:06:14.41 ID:rg3ZMcko

今日はここまでにします
ちょうどきりがいいところなので。別によくないけど

たぶんこれで四分の一から五分の一くらいなんじゃないかと思います
勘だけど


いちおう基本的には原作の設定どおりにいきたいと思ってますが
若干おかしなところがどうしてもあるので、そこは勘弁してください

ちなみに禁書は原作全巻読みました。Fateはレアルタとホロウをやりました
レールガンは半分くらいしか見てません

ちゃんとss書くのは初めてで、スレも初めて立てました
至らないところは目を瞑るか、優しく忠告してもらえるとありがたいです


ここってトリ付けたりしたほうがいいのかな
53 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 23:32:20.81 ID:zFxylSUo
ネセサリウウス知らないのに天草式や聖人知ってるって凛はロンドン行ってない設定?
54 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 23:46:29.85 ID:rg3ZMcko
>>53
はい、行ってない設定です
凛っていつロンドンに行ったの?
55 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/19(日) 00:50:52.74 ID:3h2GK2Eo
三年上がる前だっけ
56 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 01:17:55.47 ID:vM8IDMDO
投下するときは基本的にメ欄に「saga」入れたほうがいいよ。

例えば「魔力」がsaga無しだと「魔翌力」になったり(>>45)するし、思わぬ変換・禁止ワードがあるもんだから。
57 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/19(日) 02:06:42.44 ID:XiDP8bko
>>55
確かそうだった希ガス
取り合えず凛√の最後にそういう話もしてるしホロウでも凛はロンドン帰り設定だし
58 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/19(日) 02:12:08.48 ID:Igk07I.o
型月のやっかいな神秘をどう処理するのか…
まあ期待
59 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/19(日) 19:50:39.64 ID:1O1gmDMo
>>56
ありがとうございます
基本的に入れておくように気をつけます

>>57
凛√ラストって卒業したら一緒にロンドン行こうね、じゃなかったけ?
そうだと思ってたんだけど違ったらすみません

ホロウはいちおうやったんだけどサーヴァントいたりイリヤいたりとかで
結局のところ元がどういう状況だったのかよくわからなかったので、基本的に考慮してないです


あれだったらロンドンには行ってイギリス清教は知ってるけど必要悪の教会っていう言葉は知らない
みたいな感じで脳内補完してもらえるとありがたいです
60 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/19(日) 19:51:36.48 ID:jfc2csSO
おk把握
61 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/19(日) 19:52:13.47 ID:1O1gmDMo
Oct.16_PM 06:22


「……なんだ?」

わずかながら地震にも似た小さな揺れを体が感じる。

「―――始まったか。となると次のマキリの狙いは打ち止めだろうな」

「ラストオーダーだって?」
「ん? どこかで聞いたような記憶が……」

「ミサカクローンの最後の一体だ。といえばわかるかにゃー? クローン達よりかなり幼いんだが」

先日会った御坂美琴に良く似た少女を思い浮かべ、その言葉に上条は頷く。
しかし、それと同時に疑問が浮かぶ、彼女のような少女がどうして。

「……あぁ、あいつか。なんであいつが狙われるんだ?」
「簡単に言うと打ち止めを使って聖杯を制御するためだぜい」
「待って。それはおかしいんだよ」
「そうね。制御どうこうの前に聖杯の残骸にはほとんど力はないはず」

土御門の答えを二人の少女が同時に否定する。
62 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 19:54:41.58 ID:1O1gmDMo
「どういうことだ遠坂?」
「言ったとおりよ。今回の聖杯戦争だって力を蓄えるのに前回から十年も待つ必要があったのよ」
「なるほど。わざわざラストオーダーを利用してまで制御するほどの力はないってことか」
「そ。だからそんな聖杯を使うことになんの意味もないわ」

「なんでさ。意味ないものなんて悪用できないだろ。要するに代わりのものでその力を補えばいいだけじゃないか?」
「あのね……そんなに簡単に手に入る程度の力じゃないのよ」
「そうは言ってもここは学園都市だろ? よくわからないけど別の何かがあるんじゃないのか?」

そう言うと士郎はこの都市の住人である上条に目を向ける。

「そんなに詳しいわけじゃないが、そんな力として使えるものなんて―――」

「―――あるぞ」

ざっと考えても思いつかなかった上条が否定しとうとするのに対して、土御門はあっさりそれを肯定する。

「えっ、嘘? ほんとに?」
「―――天使だ」

「……天使?」
63 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 19:57:23.50 ID:1O1gmDMo
天使という言葉で上条の頭に一人の少女が思い浮かんだ。

「天使、まさか……風斬まで利用しようってのか!?」
「それは違うな、カミやん。利用しようとしているんじゃない。すでに利用しているんだ」
「なんてことだ。インデックス、そんなことできるのか?」

「……うん、確実じゃないけど。その聖杯の残骸っていうのを使うのにひょうかを利用すればかなりの力が使えるかも」
「くそっ、またあんなことになってるってのかよ。早く止めなきゃ」

上条は前方のヴェントが襲ってきた日の風斬氷華の姿、そして街の混乱を思い出す。
凛と士郎には天使、という言葉についてはわからなかったが、それでもそれが巨大な力だということは感じ取れた。

「……よくわからないけどまずいことになってるみたいね」
「ああ、とにかく動いたほうがいいんじゃないか?」
「そうだにゃー、マキリゾウケンを押さえるぜい」

「―――待てよ土御門、まずは打ち止めを保護するのが先じゃないか?」
「いや、聖杯が先だにゃー、なんせ放っておくとそのまま暴走してしまうぜよ」
「な―――暴走? それってまずいのか?」

その単語に危険を感じた上条は、士郎と凛に顔を向ける。

「……ええ、あれが暴走となるとかなりまずいわね」
「下手をするとこの街にもかなりの被害が出ることになる」
64 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 19:59:52.96 ID:1O1gmDMo
一瞬、士郎の脳裏に幼い頃に体験した地獄のような光景が蘇り顔を顰める。
その二人の様子から上条も聖杯が優先なのだと一応は納得する。

「そっか、話はわかった。けど打ち止めは放っておけない。俺が向かうから他のみんなは―――」
「ああ、カミやん心配ないにゃー。打ち止めにはすでにちゃんと守ってくれるやつがついているぜよ」

「は? ……ああ、そういやあいつがついているのか」

上条は先日のヴェントの事件のとき打ち止めの保護者のような男と電話したのを思い出す。
それに対して土御門はめずらしく驚いたような表情を浮かべる。

「ん? なんだと、カミやん知り合いだったのか?」

「いや、会ったことはないんだが、電話で少しだけ話したことがある」
「へえ、それは意外だにゃー。おもしろいことになっているみたいぜよ」

上条当麻と一方通行、その絶妙なすれ違いに土御門は無意識に笑う。
65 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 20:03:18.76 ID:1O1gmDMo
「どういう意味だ? まあいいやつみたいだったけど、だいじょうぶなのか?」
「ああ、実力的には問題ないと思うぜい」

土御門の保証に上条は軽く頷く。

「……そっか、ならそっちは任せるとするか。インデックスはここで待っていろ。危険だ」
「いやだよ。私も行くんだよ。ひょうかはともだちなんだから」
「駄目だ。風斬は俺に任せろ。おまえはじっとしてるんだ。五和はインデックスを見ていてくれ」

「むっ、とうまじゃ聖杯のことなんにもわからないくせに。とうまのほうがよっぽど危険なんだよ」
「そ、そうです。せっかくここにいるのに私があなたを守らないでどうするんですか?」
「いやいや、いくら上条さんでも女の子を盾にはできませんよ」

「俺も反対だ。女の子には危険だろ」
「……衛宮くん、まさか私にも待ってろなんて言うんじゃないでしょうね?」
「いや、そんなことは……だいたい遠坂は来るなって言っても来るだろう?」
「それはそうだけど、そう言われるとなんか悔しいわね」
「遊んでいる時間はないぜい、行くぞ。心配なら自分で守ってみせろ」
66 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 20:11:30.65 ID:1O1gmDMo
Oct.16_PM 06:42


「クソッ、なンなンだ、このデカブツは? おィ、ちゃんと下がってろよ」

打ち止めを気にかけながらも突然襲い掛かってきた、人と呼ぶにはあまりに巨大な肉塊と対峙する。
おそらくは打ち止めを狙ったものだろう。

(―――これが土御門が言っていたやつってェわけか)
先ほどの土御門の忠告が頭をよぎる。

「■■■■■■■■■■」

凄まじい力で振るわれる剣をかわすと一方通行は懐に飛び込む。

最初に襲い掛かられた際には即座に銃弾を食らわせたが、まるで効果はなかった。
先ほどは巨大なコンクリートの塊をベクトルで操作し、巨人の頭部に直撃させたが、それでも全くダメージはないようだった。
となると同じように遠距離から攻撃しても効果は薄いと考えられる。

「コイツならどうだ? ……あン?」

隙のできた体に右手を突き出し、巨人の胸に触れる。
触った感覚とそのベクトルに違和感を覚えるも、なんとかベクトルを制御、血液を逆流―――心臓を破裂させる。

「■■■■■■―――」

(―――こンだけやりゃ確実に死ンだだろォ)
断末魔の雄たけびを上げながら巨体は崩れ落ちる。
67 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 20:14:12.03 ID:1O1gmDMo
そこまでして一方通行は先ほどの土御門からの電話を思い出す。

「……しまった、殺しちまったか。しかし、このバケモノはなンだったンだ? ……おィクソガキ、無事だろォなァ?」
「―――うわぁぁあ、後ろ後ろ、ってミサカはミサカは驚きをあらわにしてみる」

打ち止めの声に振り返ると、先ほどとなんら変わらない平然とした姿で巨人がそびえ立っていた。

「なンだと!? 再生能力、いや、確実に殺したはず。なら生き返った? ……となると蘇生能力? ンなバカな」
「■■■■■■■■■■■!!!」

巨人の振り回す剣によって破壊されたコンクリートの破片が砂利のように飛び散る。
一方通行は打ち止めの前に立ち、それらを吹き飛ばす。

「いつ巻き込まれないとも限らねェ。……チッ、ここは引くか」

巨人との間合いを測りながら打ち止めとの距離を詰める。
その一方通行を予想もしない場所からの別の攻撃が襲う。

「喰らいなさい。―――轟雷(ユピテル・ロック)」
「ぐっ!? なンだこりゃ? うまく跳ね返らねェ?」

「上だよ、飛んでる? ってミサカはミサカは今度は指差して驚いてみたり!」

(―――この感じ、これも魔術ってやつか?)
68 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 20:17:55.37 ID:1O1gmDMo
その一方通行の感覚は正しかった。
突然、空から降ってきた雷をそのまま返そうとしたが、それは形を変えてあらぬ方向に飛んでいってしまう。

「―――なんですって!?」
「ハッ、面倒臭ェが、それほど大変ってわけじゃねェなァ」

自分の魔術があっさりと破られたことに空の女は驚きの声をあげる。

「■■■■■■■■■■」
「にしてもクソが、こいつだけでもうっとォしいってのにもう一匹いたってのかよ―――」


「―――――いや、三対一だ」

蒼い影から放たれた赤い槍を紙一重、跳躍でかわす。

「クッ、速ェ」
「■■■■■■■■!!!!!」
「―――紫光弾(ユピテル・ロッド)」


その着地を狙い巨人が剣を振るいコンクリートの破片を吹き飛ばし、さらに魔術師の放つ光の弾も一方通行を襲う。
飛んできた破片を打ち落とすも、あらぬ方向へ弾き飛ばされた光弾はさらにコンクリート片を巻き上げる。

「チッ、クソガキ、避けろ!」
「うわあぁぁぁああ!!」

無駄だとは思いながらも打ち止めに檄を飛ばす。
避けられないと悟った打ち止めは目を瞑り体を丸める。
そして迫る打ち止めへのコンクリートの破片。




――――――オレンジの閃光がそれを薙ぎ払う。
69 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 20:21:43.24 ID:1O1gmDMo
「いったい何が起こってるってのよ」

美琴は戸惑っていた。
妹から打ち止めを狙う侵入者がいると聞いていたが、まさかこんな状況だとは思わなかった。
とてつもない巨人が一人。
全身が蒼に、朱い槍を持つ男が一人。
空に浮かぶローブの女が一人。

そして―――――。

「お姉様っ!」
「オマエは、……超電磁砲か」
「……一方通行」

美琴と一方通行の視線が交錯する。
美琴の心に様々な感情が渦巻く。―――怒りや憎しみ、その他にも。
確かに妹から聞いていた。一方通行が打ち止めを守っていると。
70 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 20:24:39.10 ID:1O1gmDMo
だがそれを聞いても美琴の頭には疑問しか浮かばなかった。
一方通行が? なぜ? 何のために? どうして今さら? 何かを企んでいるのか? 何がどうなってこんなことになっているのか。
その疑問に対する妹の答えは一言で表すならば、贖罪、だと。
だからどうだと言うのか。そうだとしても、今さらそんなことを言われても自分には一方通行を許すことなどできそうにない。
けれども妹は言った。―――お姉様が一方通行を許す必要などありません、と。

ならばそれでいいのだろう。
だいたいあれは自分にだって責任がある。
妹達を殺したのは自分でもあるはずだ。
それを今さら何がお姉さんだ。
自分で行っておきながらなんという欺瞞だろう。思わず頬が引きつりそうになる。
あるいはこれも贖罪のつもりだったのだろうか。

―――ならば皮肉なことに、一方通行と御坂美琴は似た者同士ということだろうか。

そんな言葉が頭をよぎり、思わず笑い出しそうになる。
だが、とりあえずこの場では一方通行は、打ち止めを、妹を守っているということだ。
美琴は目を閉じて一瞬気持ちを静める。
そして目を開くとわずかに身構える一方通行に尋ねる。

「……何なのよ、こいつらは? 一体何者? ―――なんで打ち止めを?」
71 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 20:26:46.91 ID:1O1gmDMo
感情を持て余していたのは一方通行も同じだった。
この場に御坂美琴が現れたこと、それは完全に想定外だった。
相手が自分にいい感情を抱いていないのは当然のことだろう。
いい感情を抱いていない―――そんな生温いことを考えた自分の愚かさが可笑しくなる。

当然だ。
御坂美琴が自分に抱く感情など決まっている。憤怒、憎悪、殺意、それに類するものしかないはずだ。
あんな出来事があってそれがないとするならば、それこそなんらかの欠陥だろう。
だとするならば、偶然か必然か、偶然であるとすればこの場での鉢合わせは最悪であると言える。
もしかしたらこの瞬間に襲い掛かられるかもしれない。―――いや、それはおかしなことでもなんでもない。
だが―――それだけは避けなければならなかった。
御坂美琴は知らないだろうが、ここで二人が戦って犠牲になるのは打ち止め、彼女の妹なのだ。

―――それだけは絶対に許されない。
しかし、それを、打ち止めが御坂美琴の妹だということ、そして自分が敵ではないことを説明できるとは思えない。

だから助かった。
美琴が打ち止めという言葉を使ったことが。少しは事情を知ってくれているということが。
そのおかげで少し肩の力を抜くことが出来た。

「……知るかよ、このクソガキを狙ってるみてェだが。こいつらに聞いてくれ」
72 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 20:28:47.25 ID:1O1gmDMo
美琴は、比較的話の通じそうな蒼い男に顔を向けると、男は笑みを浮かべて答える。

「そっちの子を渡してくれればよしだ。渡さないってんなら奪って連れて行くまでだ」
「ふざけないで。どっちもごめんよ」
「気の強い女は嫌いじゃねえが、残念だが十年早いな」
「あんたなんかこっちから願い下げよ」

「そうかい。―――なら死ね」
「ハッ、そォ簡単にやらせるかよォ!」

そういうと一方通行は拳銃を取り出し即座に発砲する。

「おっと……残念ながら当たらないな」

それを蒼い男は朱の槍でこともなげに払い落とす。

「チッ、コイツにも効かねェか」
「生まれつきでな。そういうわかりやすい飛び道具は効かないんだよ」

「ハッ、要するに近づいてぶちのめしゃイイってンだろ?」
「―――やってみろ。行くぞっ!」

蒼の男の突進に白の男も突進で応える。
73 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 20:38:06.22 ID:1O1gmDMo
Oct.16_PM 06:43


「こっちで本当にあってるのか?」

土御門の指示に従い、六人は走る。
あまりにもあっさりと道を示す土御門に上条は疑問を抱く。

「カミやんは心配性だにゃー、土御門元春は嘘のつけない正直者で有名ですぜい」

「もうその発言自体が嘘まみれなんですけどっ! ……ていうか周りに人が居なくないか?」
「それはおそらく人払いの魔術を使ってるんだと思います。ほら、あのアックアのときみたいに」
「ああ、なるほど。ということはこっちで正解ってことか」
「そのとおりだぜい。―――っと、どうやらお迎えのようだ。ということはやっぱり正解ということだにゃー」


―――向かう先には、目隠しをした、地面まで届く程長い髪の女が立っていた。

「……嘘でしょ? あれってまさかライダー?」
「そんな、サーヴァントだって?」

突如前触れもなく目の前に現れたサーヴァントに士郎と凛は驚きをあらわにする。

「サーヴァント? あれがサーヴァントか?」
「ええ、まずいことになってるわね。サーヴァントとまともに戦えるとは思えないし」
「サーヴァントってそんなにやばいのか?」
74 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 20:40:57.89 ID:1O1gmDMo
聖杯戦争について、サーヴァントについては先ほど一通り上条も説明を聞いていた。
それでも上条にはどうにもピンとこなかったが、二人の戸惑いようをみる限り相当まずい状況だということはわかった。

「そうね、たぶん説明しただけじゃわからないと思うけど」
「……弱点とかはないのか?」
「そりゃ正体がわかれば弱点もわかるかもしれないわ。死に際なんかも歴史に残ってるでしょうし」
「ということはあいつのことはわからないってことなのか?」
「そうね。残念だけどあいつの正体は知らないわ。あまり戦ってないし」

「―――正体ならわかるかもしれないんだよ」

どうにも状況が好転しそうにないところで、インデックスがその知識をもって話に割り込む。

「ほんとか? インデックス」
「うん、あの眼帯なんだけど、あれは邪眼の力を封印するものなんだよ。おそらくだけどギリシャ神話由来のものだと思う」

「……ギリシャ神話、ね」
「邪眼を封印ってことは、まさか。―――メドゥーサか?」

士郎のその呟きにも似た言葉にライダーは口の端を少しだけ上げることで答える。
75 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 20:43:58.01 ID:1O1gmDMo
「メドゥーサ? ってどんなやつだったっけ?」
「もう、とうまは何にも知らないんだから。メドゥーサって言えばゴルゴン三姉妹の末娘なんだよ」

「……いや、インデックスさん、その説明じゃ上条さんにはなんにもわからないんですけど」
「メドゥーサっていうと眼で見た者を石に変えてしまう力があるんじゃないですか?」
「石に? どうやって防ぐんだ?」
「えっと、確か神話では鏡の盾でその力を反射させたはずです」
「だったら同じようにすればいいんじゃないのか?」

「無理ね。そんな都合よく馬鹿でかい鏡が転がってるわけないじゃない。それに―――」
「普通の鏡じゃダメだと思うんだよ。ペルセウスの盾はアテナから授かったというもの凄い霊装なんだよ」
「そういうこと。だいたい今は封印してるんでしょ? 用意した盾に向かってわざわざ邪眼を使ってくれるとは思えないわ」
「ってことはどうするんだ?」
「さあね。特に策はないわ。……けどなんとかするしかないでしょ」

「そっか―――いや、まてよ。インデックス、俺の右手ならなんとかならないか?」

上条はふと思い出し、自分の右手を握り締めながらインデックスに尋ねる。

「うん、基本的にはサーヴァントっていうのは霊体みたいなものだから触れることができれば消えると思うんだよ。確実とは言えないけど」
「……どういうこと?」

「俺の右手は幻想殺しって言って、あらゆる異能を打ち消すことができるんだ。たとえば魔術なんかも」

聞いたこともない力に凛は目を丸くして驚く。
76 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 20:46:37.02 ID:1O1gmDMo
「はぁ? ―――なんてデタラメな力。……けどこの状況ではありがたいのかしら?」
「ああ、接近戦に持ち込んで触ることさえできれば」
「簡単に言うわね。それかなり難しいわよ」

上条の案には同意したいところだが、ライダーに接近するというのはそれほど容易い事ではないだろう。
実際に戦ったことのある士郎もそれに続く。

「だな。動く速さなんかも尋常じゃないからな」
「でもあいつ素手みたいだし、どっちにしろ接近戦になるんじゃないか? 混戦になればなんとか」
「いいえ。ライダーは鎖つきの馬鹿でかい釘を持っていたはずよ。……それに、アイツの場合はどうかしら?」

そういって凛が指差した先には長刀を持った侍が静かに佇んでいた。

「久しいな。セイバーのマスターよ。ふむ、そちらはアーチャーのマスターであったかな」
「侍だって? ……確かに刀相手だとちょっと厳しいな」

「そちらは初顔だな、名乗っておこう。私はアサシンのサーヴァント佐々木小次郎」
「佐々木小次郎だって? あの佐々木小次郎か?」
「正確には違う存在だが、まぁ同じようなものであろう」
77 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 20:48:52.00 ID:1O1gmDMo
次々と現れるサーヴァントに凛はふと思い出す。

「……まさかセイバーやアーチャーも出てくるのかしら。それはちょっとまずいわね」
「いや、まて遠坂。むしろ二人は味方に付けられないか? こいつらも無理やり従ってるって感じじゃなさそうだし」
「どうかしらね。そううまくいくとは思えないけど。……いえ、この状況、やってみる価値はありそうかしら」

「―――いいえ、残念ですがセイバーとアーチャーは存在しません」

少しだけ見えてきた光明をライダーはあっさり否定する。
その言葉に舌打ちをする凛に対して士郎は逆にはぁ、と息をつき笑みを浮かべる。

「……アンタ、なんで笑ってんの?」
「いや、間違ってもセイバーとは戦わなくて済みそうだからな」
「……そうね」

凛もかつての自分の相棒であった赤い騎士を思い浮かべ頷く。

「聞いていいかしら? どうしてセイバーとアーチャーはいないの?」
「聖杯がセイバーとアーチャーを取り込む前に破壊されたからです。臓硯にはセイバーとアーチャーは再現できなかったようです」

たいして期待もしていなかった質問に対して、意外にもあっさりと返ってきた答えに二人は納得する。
78 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 20:51:39.53 ID:1O1gmDMo
確かに聖杯を壊したのはセイバーだったし、そのときまだアーチャーも消えていなかった。
はっきりではないが、上条もその様子からサーヴァントが二人いないという状況をなんとなく理解した。

「そうか、それなら少しは気は楽、ってことでいいのか?」
「どうかしら? つまりサーヴァントは確実にあと三体も出てくるってことでしょ?」
「くそ、あと三体だって? インデックスは下がってろ。土御門、インデックスを……あれ土御門?」

「あ、あの、つちみかどさんならここは任せたと言って結構前に向こうに走って行きましたよ」
「なんだって? あいつこの肝心なときに―――」

「おい、来るぞ、アサシンは俺がなんとか足止めする。三人はその間にライダーを頼む。―――投影開始(トレース、オン)!」

士郎は干将・莫耶を投影し、刀を構えるアサシンと向かい合う。

「なんとかって、独りで? ちょっと無茶でしょ? ってもう仕方ない―――」

と、凛の気がそれた一瞬を狙っていたのか、あるいは宣戦の布告かライダーは釘を凛の横顔に投擲する。

「えっ、しまっ―――」

回避が間に合わない判断した凛はとっさに右手を顔の前にかざして受け止めようとする。
79 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 20:54:02.71 ID:1O1gmDMo
―――が、その凛とライダーの間に上条が割り込みその右手で受け止める。
その右手に触れるとバキン、と派手な音を立てて、釘は鎖ごと消え去る。

「ふぅ、良かった。ちゃんと消えるみたいだ。危なかったな、だいじょう―――」
「―――何やってんのよ、バカっ!!!」

釘がちゃんと消えたことに、凛が無傷であることに安心する上条に、凛はためらわず罵声をあびせる。

「……どうして上条さんは怒鳴られているのでせうか?」
「……助けてくれたことには礼を言うわ。ありがと。けど、これであなたの力がばれちゃったわよ」

「あ――――!」
「……その力で不意打ちならなんとかなったかもしれないのに……」

ライダーは目の前で起こった不可思議な現象に首を傾げる。
見たところによると魔術的な力で破壊されたようには見えなかった。
どちらかというと、ただ消えたように。

「……どういうことです?」
80 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 20:56:06.26 ID:1O1gmDMo
疑問はそのまま口からこぼれる。
しかし体で受け止めることなくわざわざ右手を使ったということは、右手でなければ使えないということだろうか。
いや、たまたま右手だっただけで、左手でも同じことができるかもしれない。
となると、あるいは四肢でならできるのかもしれない。
どちらにしろ今の現象の本質が消滅であるならば、自身の体にも同じことが起こるかもしれない。
触れるだけで消されてしまう。そんなことがあり得るのか?

「―――どちらにしても、あなたとの接近戦は危険と思っておいたほうがいいですね」

「……ほら、完全にばれてるじゃない……」
「……す、すいませんでしたぁ。……いや、まて、任せろ……」
「……えっ、まだ何か手があるの……?」

上条は思いついたようにライダーに向き合うと大きく声を張る。

「接近戦? はっ、甘いんじゃないか? ―――まさか近づかないと使えないとでも思っているのか?」
「えっ、嘘? そうだったの?」
「ああ、お前にはまだ見せたことなかったけどな」

「……そうですか。―――それでは使ってみてはどうでしょうか」

平然とそう返すライダーの言葉に上条は気まずそうに目を逸らす。
81 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 20:58:19.38 ID:1O1gmDMo
「……くそっ、だめだったか。……まさかアウレオルスを追い詰めたこの上条さんの素敵演技力が通用しないとは……」
「ダメに決まってるでしょ!! アンタ馬鹿じゃないの」
「わ、私も今のはちょっとどうかと……」

「ううっ、こんなことなら土御門かオルソラあたりにでもハッタリの使い方を教わっておくんだった」

凛はうなだれる上条にがーっとまくし立てる。
それに横から五和も小さな声で同意する。

「だ、だいじょうぶだ。前向きに考えれば、逆にこの力であいつの動きをある程度コントロールできるかもしれない」
「……そうね」

その意見には凛も頷く。
確かにその力をわかっているということはライダーも迂闊には上条に接近できない。
凛は横目でちらりと二本の剣でアサシンと切り結ぶ士郎を窺う。

「……士郎がなんとかしてくれているうちに、勝負をつけるわよ」

その言葉に槍を構えた五和と上条がライダーに突撃する。

82 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 21:08:53.59 ID:1O1gmDMo
Oct.16_PM 06:51


「三対二でしかもこの子を守りながら、か。きついわね」

三者三様の攻撃を一方通行が一人で捌く。
その影で打ち止めに被害が及ばないよう美琴がフォローする。

「ハッ、オマエはそのクソガキ連れてさっさと消えろ。邪魔だ」
「なによ、一人で戦おうっていうの? どういうつもり?」
「どォいうもクソも足手まといだっつってンのがわかンねェのか?」
「一人で三人相手にできると思ってんの?」
「オマエら足手まといがいなくなりゃ全力が出せンだよ」
「でもそんな事言ったって―――」


「―――俺もその案に賛成だ」


突如、二人の言い争いは第三者によって遮られる。
83 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 21:10:44.77 ID:1O1gmDMo
「……あン? てめェ、何しにきやがった」

一方通行は同じグループの人間がこの場に突然現れたことに驚きの声を上げる。

「は? えっ、あなたは?」

美琴は突然現れた男が、よく知る男の知人であったことに戸惑いの声を上げる。

「決まってるだろう、お前を助けに、だ」
「ハ? そンなもンいらねェっつってンだろォが」
「そう言うな。この場では打ち止めの安全が優先だろう?」

「……チッ」
「ちょ、ちょっと、一体何がどうなってんのよ」
「え、えっと、つまりミサカはどうしたらいいんだろう、ってミサカはミサカはパニックに陥ってみる」
「つまりここは俺と一方通行に任せて、打ち止めを連れて逃げろということだ」
「いきなり逃げろって言われてもね。……それに安全なとこなんかあるの?」

「この道をまっすぐ行け。すると広場に出る、そしてそこから北に延びる道を真っ直ぐ進め」

土御門は今自分が来た方向を指差し、簡単に指示を出す。

「は? 北に? それで何があるっていうの?」
「行けばわかる。急げ。お前もそれでいいな?」

土御門が目配せをすると、それに合わせて一方通行も軽く頷く。
84 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 21:12:57.72 ID:1O1gmDMo
「……わかったわ。とりあえずここは任せる。別にあんたがどうなろうが私の知ったことじゃないしね」
「……あァ、とっとと消えろ」

「それでも、この子にとってそれが必要なら、それを望むなら……あんたは生きなきゃいけないと思うわ」
「そォだな。……わかってンだよ、ンなことは」

「そう、ならいいわ。……任せたわよ。さ、行きましょ」
「……気をつけてね、ってミサカはミサカは心配してるんだから」

気をつけるのはお前らのほうだ、という言葉をぎりぎりで飲み込む。
去っていく二人の背中を見送りながら一方通行は抱いていた疑問を口にする。

「で、オマエが言ってた場所は安全なンだろォなァ? 何があるってンだァ?」
「何を言っている、この状況で安全な場所などどこにもありはしない。―――ただ、そこにはお前が最も信頼している人間がいる」

(―――信頼している人間だと?)
思いがけない言葉に一方通行は眉を顰める。
海原のことだろうか、いや、たとえ同じグループの仲間であっても海原のことをそこまで信用などしていない。

―――そうではない。どれだけ考えてもこの状況で信頼の置けるほどの味方など自分にはいない。
85 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 21:15:28.66 ID:1O1gmDMo
「ハッ、何言ってやがる。オレは味方なンざ信頼しちゃいねェよ」
「そうだろうな。―――ならば敵ならばどうだ?」

「あァン、敵、だァ? なンで敵なンかを……チッ。―――なるほどそォいうことかよ」

信頼している敵、という言葉に一方通行は一人の少年を思い浮かべ顔を顰める。
かつて学園都市最強である自分を倒し、クローンたちを救ったヒーローの姿を。

「そういうことだ。心配は無用だ」
「……話は済んだか? 行くぞ」
「そう慌てるなランサー。―――いや、クーフーリンと呼ぶべきか?」

突然呼ばれた真名に、ランサーの表情が変わる。

「―――てめぇ」
「はァ、クーフーリンだァ?」

「そのとおりだ。こいつらは人間ではない。過去の英雄が現界したものだ。まぁ体のある幽霊とでも思っておけ」

人間ではないというとんでもない言葉にも先ほどの奇妙な感触を思い出し納得する。
86 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 21:17:44.58 ID:1O1gmDMo

「へェ、人間じゃねェときましたかァ? クーフーリンってのはケルト神話だったっけなァ? ならあの槍は―――ゲイボルグだってのか?」
「ああ、あれは呪いの槍だ、気をつけろ。そのでかいのがヘラクレス、上に居るのがメディア、どちらもギリシャ神話だったかな」

「ほう、詳しいな。―――貴様、何者だ」
「別にたいしたことはない。もう聖杯戦争からは半年以上が経っているんだからな。少し勤勉な人間なら知っていてもおかしくはない」
「そうかい。……だがそんだけ詳しけりゃ勝てねえってのもわかりそうなもんだがなぁ」
「確かに俺の力ではどう頑張ってもお前を倒すことはできないだろうな、まぁ俺の話は基本的にこいつへの説明とアドバイスだ」

「は、なるほどな。―――で? 時間稼ぎはそろそろいいか?」

不適に嗤うランサーに対してキャスターは苛立ちをあらわにする。

「あなた! わかっていながら付き合ったの?」
「ああ、その方が全力で戦えそうなんでな」
「馬鹿なことを。……追いなさい、バーサーカー」

「■■■■■■■■■■■■!!!」

咆哮と共に巨人が跳ぶ。

「チッ、行かせるかよォ」
「―――いや、悪いがお前は俺の相手をしてもらおう」

その進路を塞ごうとした一方通行をランサーが襲う。
赤い槍が一閃、肩を掠めるとそこからわずかに血がにじむ。

「グッ、これもうまく反射できねェか」
「だから気をつけろと言っただろう。伝説の槍だぞ」
87 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/19(日) 21:18:18.16 ID:hy5H3I20
原作20巻読む限り、「信頼」というより「信仰」のような気がする。
88 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 21:19:53.32 ID:1O1gmDMo
ランサーは槍を軽くくるりと回すと肩に乗せるように置き、ニヤリと笑う。

「ま、あの嬢ちゃんたちを追いたいなら先に俺たちを倒すんだな」
「ハッ、面白ェ、ぐっちゃぐちゃにしてやンよォ!」

ぶつかり合う二人を横目にキャスターはゆっくりと地面に近づき土御門に向かい合う

「さて、私の相手はあなたがしてくれるのかしら?」
「仕方ないだろう。とはいっても神代の魔女には役不足だろうがな」
「よくわかってるじゃない。今ならまだ見逃してあげることもできるわよ?」
「そうしたいところなんだがな。あいにくとそういうわけにもいかない。……それに、負けると決まったわけでもない」
「あら、あなた程度が本気で言ってるの?」

「さぁどうだろうな。とりあえず魔法名を名乗っておく、覚えておけ。―――背中刺す刃(fallere825)」
「行くわよ」

高速神言に対抗するため、キャスターが指を向けたときにはすでに土御門は折り紙を取り出し詠唱を始めていた。

「―――青キ木ノ札ヲ用イ我ガ身ヲ守レ(デクのボウどもせめてタテとしてヤクにタて)」
「―――業火(エトナ)」

二つの呪文がぶつかり轟音と共に辺りが土煙に包まれる。
89 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/19(日) 21:31:57.78 ID:1O1gmDMo
Oct.16_PM 06:59


人気のない闇の中を二人の少女が走る。
姉が妹の手を引きながら。

「えっと、ここを北って言ってたわね。……だいじょうぶ?」
「うん、まだいくらでも走れるよ、ってミサカはミサカはやんちゃをアピールしてみる」

美琴は体の小さな妹を気遣う。

「けどきついって言われても走らなきゃしょうがないか。……何が起こってるか知ってる?」
「ごめんなさい、ミサカが狙われてるってことぐらいしかわからない、ってミサカはミサカはうなだれてみる」
「そっか、まあそれならしょうがないわ。ていうかこっちに何があるかは知ってる?」
「うーん、それもわからない。なんだろうね、ってミサカはミサカは考え込んでみる」
「そりゃそうよね。あーもう、なんにもわからないわ。……信じてみるしかないか。それじゃ急ぎましょ―――」


「■■■■■■■■■!!!」


美琴がそう言いかけたとき遠くから咆哮が響き渡る。
90 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 21:34:27.38 ID:1O1gmDMo
「きゃああー、あのでかいのが追いかけてきてる、ってミサカはミサカはぶるぶると怯えてみたり」
「なんてこと。……まさかアイツ―――」

「―――お姉様。あの人は無事だよ、ってミサカはミサカは安心をお届けしてみる」
「そう、それは―――って別にあんなやつのこと心配してるわけじゃないのよ」
「うん、もちろんわかってるよ、ってミサカはミサカは意味ありげに微笑んでみる」

「ったく。……にしてもまずいわね。このままじゃすぐ追いつかれてしまうかもしれないわ」
「とりあえず行けるところまで走ってみよう、ってミサカはミサカは提案してみる」
「そうね、とりあえず行きましょうか」

そう言うと、美琴は打ち止めの手を取り、再び走り出す。

「■■■■■■■■■■■■■■■■■」

明らかに先ほどよりも距離が近くなっていることに二人は気付いていた。
目的の場所に着くのが先か、追いつかれるのが先かという時間勝負。
だったはずだが、走りながら美琴は考えていた。
たとえ追いつかれるまでに目的地に着いたからといってどうだというのか。
学園都市第三位である自分が勝てない相手だとしたら、他の人になんとかすることなどできるのか。
ならば、自分がここに残り囮となって先に打ち止めを独りで行かせ、少なくとも足止めをするべきなのではないだろうか。

―――あるいは、可能ならばここで倒してしまうべきなのではないだろうか。
91 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 21:36:21.77 ID:1O1gmDMo
「……いや、それは違うわね」

そこまで考えてその案を否定する。
もしも一方通行が敗れたのだとしたら、自分の力では食い止められないかもしれない。
もしも一方通行から簡単に逃れてきたなら、自分もすぐに突破されるかもしれない。
もしもここで食い止めることができたとして、敵は他にもいるかもしれない。

(―――やっぱり一緒に行くしかないか)
そんな美琴の思考はそこで強引に終了させられた。

「■■■■■■■■■■■■!!!」

間近に聞こえた咆哮と建物が吹き飛ばされる轟音に、二人は追いつかれたことを悟った。

「うわぁぁあ、追いつかれちゃった、どうしよー、ってミサカはミサカはパニック状態になってみる」
「まずいわね。私から離れちゃ駄目よ」
「■■■■■■■■!!!!!」

雄叫びとともに、すぐ近くの建物の入り口が吹き飛ばされる。
その土煙の中から先ほどみた巨人がゆっくりと姿を現す。

「な、なるほどー、ショートカットしたんだねー、ってミサカはミサカは落ち着いたふりで分析してみる」
「■■■■■■」
「食らいなさいっ!」

美琴は右手を突き出してそこから電撃を放つ。
92 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 21:39:03.91 ID:1O1gmDMo
巨人はそれを手に持った無骨な剣で振り払う。

「■■■■■■!!!」
「……全く効いてないみたいね」

「お姉様、あいつ不死身みたいだよ、ってミサカはミサカは驚きの真実を告げてみる」
「いやいや不死身って、さすがにそれはないでしょ」
「でも、あの人は確実に殺してやったぜ、みたいな顔してたよ、ってミサカはミサカは真似して邪悪に笑ってみたり」
「……あいつで殺せなかったとなると私にも無理かもね。あとその顔はやめなさい」

「■■■■■■■■■■■■!!!!!!!」

突進してくる巨体を、美琴は打ち止めを抱きかかえてかわす。
着地と同時にポケットに手を突っ込みコインを一枚取り出す。

「■■■■■■■■■!!!」
「―――これなら、どうよっ!」

オレンジの光が突進してくる巨人に突き刺さる。
その凄まじい威力に吹き飛ばされた巨人は、建物に激突し、粉塵を巻き上げる。

―――しかし何事もなかったかのようにそのままゆっくりと立ち上がる。
93 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 21:42:21.44 ID:1O1gmDMo
「うわー、絶対絶命だー、ってミサカはミサカは右往左往してみる」
「参ったわね。これでも効かない、か」
「■■■■■■■■」

レールガンを放っても無傷で立ち上がってくる巨人を見て、美琴は改めて逃走を決意する。
だが傷を負わせることはできなかったとはいえ、レールガンをぶつければ相手は吹き飛ぶのは確かだ。
となれば、逃走のための助けになることは間違いない。

ポケットに手を突っ込むと、残りのコインの枚数を確認する。

「このまま逃げるわよ。近づいてきたらまたこいつで吹っ飛ばしてやるわ」

そういって美琴はまた打ち止めの手を取り走り出す。
94 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 21:49:32.49 ID:1O1gmDMo
Oct.16_PM 07:01


ランサーの槍での攻撃は基本的には突きによるもののみ。
ただしそれが神速であるからそれがわかっていても回避に専念していてさえ一方通行は全てを避けきることができなかった。

「―――はぁっ!」
「ちィっ」

穂先が掠めての一方通行の出血はすでに十にも及ぼうとしていた。
しかし、対するランサーも柄での払いは一方通行に通用しないことは感じていた。
つまりランサーにとってはいかに刃部分を当てるか、というだけの戦いであった。

「なるほどな、よくはわからねぇが、この刃先でなきゃお前には効かないみたいだな」
「あァ? だからなンだ? 結局当たらねェんだろォが」
「そいつはどうか、なっ!」

ランサーによる高速の連続突き。
まさに目にも止まらないといった速度の猛攻を一方通行はかすり傷を受けながらも紙一重で回避する。
十をはるかに上回るほどの刺突の末、一方通行が魔槍を掴む。

「……なンだと?」
95 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 21:53:50.82 ID:1O1gmDMo
しかし戸惑いの声を上げたのは一方通行。
その隙をついてランサーは一方通行を振り払い、再び距離をとる。

「発想は悪くねえが、残念だったな。てめえ今この槍を壊そうとしただろ? だがそれは無理だ」
「ふざけやがって、無理なわけねェだろォが」
「いや、こいつは特別製の神秘でな、存在自体が一種の幻想のようなものだ。―――てめえにゃ幻想は壊せねえよ」

幻想は壊せない、その言葉に一方通行の頭に一人の少年がよぎる。

(―――確かに、幻想を壊すのは自分の役目じゃねェなァ)
逆に一方通行はニヤリと笑う。

「だったら、てめェをブチ殺すだけだ。そのご自慢の槍も当たらなきゃ意味ねェんだよ」
「ああ、確かにただ突いているだけじゃ長引いてしまうだけのようだな」
「ハッ、だったらどォするってンだ?」

「―――この槍を使わせてもらうとしよう」
「あン?」

一方通行にはその言葉の意味はわからなかった。
ただわかったのはその朱い槍になんらかの凄まじい力が集まっていることだけだった。
一方通行が身構えるのと、ランサーが突っ込んで来たのはほぼ同時だった。
96 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 21:57:04.31 ID:1O1gmDMo
「―――その心臓貰い受ける。……刺し穿つ(ゲイ)―――――」

「あァ? なンだってんだ?」

それは一方通行から見て何の変哲もない突きだった。
今までのものとたいして変わることのない、問題なく避けることのできるはずの突きだった。

だが、それとは裏腹にこれは危険だと何かが訴えている。

「―――――死棘の槍(ボルク)―――――」

「がァァああああああああああああああああああああああッッッ!!!!!」

しかし危険を感じ余裕をもって避けたはずの槍は一方通行に突き刺さる。
呪いの槍は必中。
命中した、という結果に原因が付き従う。

「な――――に!?」

それに対して驚きの声を上げたのはランサーの方だった。
その驚きは心臓を抉るはずだった槍が、左の肩を貫いているだけに留まったことに対して。

「が――――ハッ、てめェ。クソが! ぐっ、ンだと!? 避けたはずだってのに」

―――だが当然のことながら一方通行はその奇跡に気づかない。
97 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 22:00:04.23 ID:1O1gmDMo
「貴様……そんなツラでこの槍をかわすほどのとんでもない幸運でも持ってるとでもいうのか?」
「あァ? 幸運だァ? ンなもン持ってるわけ―――」

そこでふと思い出した一方通行はおもむろにポケットに手を突っ込む。
そこから取り出したのは土御門に渡された幸運のお守りだった。

「護符、だと? ……なるほど、よほど高等な守りのようだな。だが―――」
「……こいつがなンだってンだ」

その紙は一方通行の手の中で燃えて崩れ去る。

「―――それでもう幸運は打ち止めだ」

ランサーは笑って言い放つ。
それに対して一方通行はただ呆然とその紙くずを眺めていた。

「……どうした?」

その様子を訝しげに見ながらランサーが声を掛けるも、一方通行にはその声は届かない。
様子を見ていると突然一方通行が声を上げる。
98 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 22:04:28.88 ID:1O1gmDMo
「ククク、ぎゃはははは、そォかよ、それでかよ。ぎゃはは、あひゃははははははははっ!!」
「ああ? ……なんだ?」

まるで気がふれたかのように笑い続ける一方通行を不思議そうに眺める。
その状況を一変させたのは空からの声だった。

「―――列閃(エレ・ヘカテ)」
「ぎゃはっ、ひゃはははははははははははっ!!!!」

その上空からのレーザー光を笑ったまま棒立ち弾き飛ばす。

「……これも効かないなんて」
「てめえ。邪魔すんじゃねえよ!」

ランサーは上空に居るキャスターを睨みながら怒声を上げる。

「あら、宝具をかわされたあなたに他に手があって?」
「別にかわされたわけじゃねえし、やつに守りはもうない」
「くきゃきゃ、そォかいそォかい。―――そォいうことだったのかよ」

ランサーは再び一方通行のもとに向き直ると叫んだ。

「てめえ、やる気あんのかよ!」
「―――あァ? ……あァなンだったっけ?」
99 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 22:08:37.77 ID:1O1gmDMo
一方通行は思い出したかのようランサーの方に向き直る。
その態度にランサーは憤りを吐き捨てる。

「……ふざけやがって」

そこで初めて一方通行は上空のキャスターに気づく。

「……あン? てめェ土御門のヤロウはどうした?」
「あのボウヤ? さあ、死んだんじゃないかしら。運がよければなんとか逃げ延びてるかもしれないわね」
「そォかい。チッ、使えねェ」
「あらあら、お友達が死んだっていうのに薄情ね」
「はン、別にそンな大層なもンじゃねェよ」

「で、どうする? 続きはやんのか?」

ランサーが二人の会話に割って入る。

「あァ、もう終わるがな」
「お前の死で、か?」

「いや―――オマエらの死で、だ」
「はっ、なら止めにさせてもらうぜ」

ランサーが槍を構え、再び力を溜める。
それを援護するかのようにキャスターが呪文を紡ぐ。

「―――圧迫(アトラス)

「効かねェよ。――――――――悪ィが、こっから先は一方通行だ」
100 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 22:11:27.17 ID:1O1gmDMo
それを一方通行はこともなげに無効化する。

「ぐっ、どうして効かないの。対魔力を持ってるわけでもないようなのに」
「どうでもいい、死ね。―――刺し穿つ(ゲイ)―――――死棘の槍(ボルク)―――」

先ほどと同じようななんの変哲もない突きが一方通行を襲う。
それを先ほどの焼き直しのように回避する。

「なん―――――だと!?」

先ほどと同じようなランサーの驚愕。
しかし今度はそれが一方通行に突き刺さることはなかった。
一方通行は今度は逃がさないようにその槍をがっちり掴む。

「どォした、えらく驚いてるみてェだが」
「馬鹿な。避けられるはずがない」
「てめェさっき言ったよな? 相当の幸運がなけりゃこの槍はかわせねェンだっけなァ?」
「……ああ。だがお前にはもうさっきのような幸運の護符はないはずだ」

「そォだな。あれがなくなるまでは全く気づかなかったぜ。―――まさか幸運にもベクトルがあるなんてなァ!」
「―――どういう意味だ?」

「オマエが知る意味のねェことだ。……ところで、クーフーリンはこンな槍を持っていながらなンで死ンだンだっけなァ?」
「……何が言いたい」
101 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 22:15:37.45 ID:1O1gmDMo
「そォでしたそォでした。そォ言えば、死ぬときはこの槍を持ってなかったンだよなァ!」

「ぐっ、―――がぁぁあああああああああっ!」

そういうと一方通行はその槍を持ちランサーを振り回す。
地面や辺りの建物に力の限り叩きつけると、ランサーの手からその魔槍が離れる。

その槍を持ち直し、吹き飛んだランサーの元へ神速で突進する。

「英雄を殺すには、その英雄の武器を使うのが一番ってなァ」

そしてそのままランサーが地に墜ちるよりも早く胸を一突き。

「がぁぁああああ、ごふっ! ……くそ、が」

ランサーはそれにより崩れ落ちる。
その一部始終を眺めていたキャスターは焦りを浮かべる。

「……そんな馬鹿なこと、人間がランサーを倒すなんて」
「次はオマエの番だなァ、どうしてくれようか」

「くっ、死になさい――――ヘカティック・グライヤー!」

キャスターは空中で大きく構えその手に持つ杖を一方通行に向ける。
するとキャスターの周囲に無数の光弾が浮かび、そこから極大威力の光線が撒き散される。

―――それはまさしく光線の雨。
102 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 22:19:16.07 ID:1O1gmDMo
それを全てかわしきることは一方通行にも不可能であった。
だが一方通行はその光線を弾き続ける。

「で、どォするンだ?」
「ぐっ、どうして? どうして効かないの?」
「効かないンじゃねェよ。……さて、イイ加減演算終わるぜ?」
「そんな馬鹿なこと! ……演算?」

「―――ほら、いくぞォ」

その一方通行の言葉と同時に状況は一変する。
その光線を正確に反射することは一方通行にも出来ない。
ただし、何度も見ていれば話は別だ。
どちらの方向へ返そうとすればどちらへ飛んでいくか。
ある程度のトライアンドエラーを行えば答えを出すのはそれほど難しくない。

「受けてみやがれェ!」

今までただ弾かれていただけだった光線は反射され、正確にキャスターの元へ突き進む。

「……うそ。―――瞬来(オキュペテー)」

自分の持つ盾では防ぎきれないと判断したキャスターはそれをギリギリ回避する。
息荒く呼吸するキャスターにどこからともなく声が聞こえる。

「―――場ヲ区切ル事。紙ノ吹雪ヲ用イ現世ノ穢レヲ祓エ清メ禊ヲ通シ場ヲ制定(それではみなさん。タネもシカケもあるマジックをごたんのうあれ)」
103 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 22:23:26.91 ID:1O1gmDMo
「なんですって?」 
「―――界ヲ結ブ事。四方ヲ固メ四封ヲ配シ至宝ヲ得ン(ほんじつのステージはこちら。まずはメンドクセエしたごしらえから)」
「この声は……さっきの魔術師? 生きていた?」
「―――折紙ヲ重ネ降リ神トシ式ノ寄ル辺ト為ス(それではわがマジックいちざのナカマをごしょうかい)」

確認はしていなかったがおそらく死んだだろうとたかをくくったのが失敗だったのだろうか。

「―――四獣ニ命ヲ。北ノ黒式、西ノ白式、南ノ赤式、東ノ青式(はたらけバカども。げんぶ、びゃっこ、すざく、せいりゅう)」

「あン、あのヤロウ生きてやがったのか?」
「くっ、なんてこと……」

キャスターは二対一というこの状況にもはや焦りを隠せない。
しかも一人には自分の魔術が通じない。

「―――式打ツ場ヲ進呈。凶ツ式ヲ招キ喚ビ場ヲ安置(ピストルはかんせいした。つづいてダンガンをそうてんする)」
「で、どォするよ。降参しますかァ? まァ許さねェけどなァ。ぎゃははははははははははは!」

―――いや待て。まだ終わったわけではない。
キャスターはわずかに冷静さを取り戻す。

「―――丑ノ刻ニテ釘打ツ凶巫女、其ニ使役スル類ノ式ヲ(ダンガンにはとびっきりきょうぼうな、ふざけたぐらいのものを)」

―――確かに自分の魔術は通じないが、あっちにだってこちらをを攻撃する手段はないはず。
104 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 22:25:10.22 ID:1O1gmDMo
「―――人形ニ代ワリテ此ノ界ヲ(ピストルにはけっかいを)」
「さァて、こないならこっちから行くぜェ?」
「―――釘ニ代ワリテ式神ヲ打チ(ダンガンにはシキガミを)」

確かに、キャスターの考えには一理あった。
一方通行は確かに素早いが、そう簡単に自分が捉えられることはないだろう。
それにこの程度の魔術師の攻撃であれば自分にとってはたいして脅威にはならない。

「……そうよ、何も問題ないわ。私には通じない」

「―――鎚ニ代ワリテ我ノ拳ヲ打タン(トリガーにはテメエのてを)」

―――ならばこの状況を維持したままあいつを倒す方法を探ればいい。時間はあるはず。

「俺の言ったことを覚えているか?」
「……あら、何かしら?」

何か魔術、あるいは道具でも使っているのか。
キャスターからは相変わらず土御門の居場所を掴むことができないでいた。

「仕方ない、もう一度名乗ってやろう。―――背中刺す刃(fallere825)。それが俺の魔法名だ」

そうして土御門は最後の呪文を紡ぐ。
それと同時にキャスターは振り返り己の盾を展開する。
105 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 22:27:16.60 ID:1O1gmDMo
「後ろっ!? ―――盾(アルゴス)」

土御門が放った、視界が消え去るほどの極大火力の魔術をキャスターの盾は容易に防ぎきる。

「ほう……やはり通じないか」
「ええ、どうにもサービスが過ぎたようね。黙って放てば良かったものを。まあどちらにしてもあなた程度の魔術では通じなかったでしょうけどね」
「知っている、だからこその赤ノ式だ。所詮これは目眩ましに過ぎない」

「……どういう意味かしら?」
「今だ、一方通行。―――――下から突き刺せ!」

その言葉に一瞬で反応したキャスターは先ほどまで下にいた一方通行に腕を突き出す。
しかし、その目は人影を捉えることはなかった。

「―――残念、上でしたァ!」

「がぁぁあああ、はっ」

その瞬間、朱い槍がキャスターの背中から突き刺さり胸を貫いていた。
土御門が魔術を放った瞬間、一方通行はキャスターを仕留めるべくすでに遙か上方へと跳躍していた。

「だから言っただろう。覚えておけ、と。魔術では自分の方が上だからといって思い上がるからそうなる」
「なんて、こと。……馬鹿ね」

そういえば、とキャスターは以前も魔術では遙かに劣る少女に敗北しそうになったことを最後に思い出した。

そのまま一方通行と共に地上に落ちると、キャスターは砂となって崩れ去った。
それと同時に血塗れとなった土御門もその場に崩れ落ちる。
106 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 22:31:19.56 ID:1O1gmDMo
「―――で、それにしてもオマエはしぶてェな」

一方通行は胸を貫かれて瀕死のランサーに話しかける。
キャスターの大魔術にも巻き込まれることなくなんとか生存していた。
どうやったのか、あの状態で全ての攻撃を回避し、さらに壁に寄りかかり立っているランサーを見て一方通行はニヤリと笑う。

「は、それが売りでね」
「どォする。まだやるってェのか?」
「いや、もう無理のようだ。立っているのがやっとだ。お前こそ早く嬢ちゃん助けに行かなくていいのか?」
「そォだな……行くとするか」

土御門のほうを一瞥だけすると、二人の御坂を追って歩き出す。

「……ああ、そういえば、その傷なんだが」

ランサーが一方通行の左肩の傷を示していう。

「あァ、これか、確かに変な感じがするな。血が止まらねェ、がどォにもならねェってわけじゃねェ」
「それはこの槍の呪いのせいだろう。俺が死ねば呪いは消える。だがこの感じならじっとしてりゃあと数分程度じゃ消えねぇぞ」

「そォかよ。ならそれまでのンびり寝てやがれ」
「今すぐ殺せばすぐに血は止まるぜ? ……時間あんまりねえんだろ?」
「ハ、気付いてやがったか。ンなこと別にてめェにゃ関係ねェよ」

それだけ言うと朱い槍をランサーに放り投げ、一方通行は駆け出した。
107 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/19(日) 22:38:53.81 ID:1O1gmDMo
vsランサー、vsキャスター
ということできりがいいような気がするのでとりあえず今日はここまでにします

元々はキャスターは上条さんと戦う予定だったのを一方通行のところに強引にねじこんだので
どこか浮いてるような気がするのですが
違和感がないようなら幸いです

もちろん物理的にも浮いてますけど
108 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/19(日) 22:42:52.44 ID:gGj.eBo0
乙でしたー
サーヴァント相手に互角の一方さんチートだな
ていうか幸運にベクトルあったんかwwwwwwww

なんという…裏山 宝くじ当て放題じゃねえか…
109 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/19(日) 22:45:08.85 ID:hy5H3I20
乙でした。
110 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 01:29:17.78 ID:R5ehfAUo
このペースで倒していくと完結までそんなに長くはかからなそうだけど
1的には今どのぐらいまで終わったの?
111 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 12:24:25.39 ID:OpGlmYk0
超!支援ですッ!
112 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 18:54:17.41 ID:eNpEIL.o
乙このペースだといいな
113 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 19:24:32.75 ID:xodTbQAO
惚れるぜツッチー
114 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/20(月) 20:13:41.46 ID:XfMBkFMo
たぶんペースとしてはこんな感じでいくと思います
けどここからはあんまりサクサク倒していくって感じでもないかと

昨日までで半分はいってないです
4割弱くらいなんじゃないかと

今日でたぶん半分はいくと思います


では始めます
115 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/20(月) 20:16:40.24 ID:XfMBkFMo
Oct.16_PM 07:11


「いい加減に、しろっての!」

取り出したコインをレールガンとして巨人を吹き飛ばし、打ち止めの手を取り駆け出す。
反対の手をポケットに入れるとその手の感触に舌打ちをする。

―――残りのコインは一枚。

「はぁっ、はぁっ、もうちょっと、で、着くはず、ってミサカはミサカは、適当に願望を口に、出して、みるっ」
「だいじょうぶ? ……さすがにこれ以上はきついわね」

打ち止めの体力が尽きているのは一目瞭然だった。
むしろここまでよくもったな、と美琴は驚いていた。

「■■■■■■■■■■■」

「もう起き上がったか、ここからは私が抱えていくしかないわね」
「ご、ごめん、なさい、ってミサカはミサカは、お姉さまに頭を下げてみる」
「……もう。いいのよ、そんなことは気にしなくて」

そういって美琴は打ち止めの頭を軽くなでると、その胸に抱きかかえる。

「■■■■■■■■■■■■!!!」
「いけるところまで行くわよ」
116 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/20(月) 20:19:05.25 ID:XfMBkFMo
美琴は追いかけてくる巨人を見て、ビルの側面に飛びつく。
鉄筋に磁力を通して地面と平行になりながら壁を駆ける。
巨人は少し戸惑った様子を見せるが、すぐに凄まじい跳躍で美琴に襲い掛かる。

「■■■■■■■■■■!!!!!!」
「ったく、でかいくせになんて身軽なのよっ!」

巨人の動きは速い。それは身軽というよりも俊敏とさえ言えるほどだ。
あわてて美琴が飛び降りると、巨人もそれに続き、手に持った斧剣を一閃する。

「■■■■■■■!!!!!」
「うわぁっ、危ないわね」
「はぁっ、はぁっ」

それを打ち止めを抱きかかえながらもなんとかかわす。
打ち止めにはすでに言葉を発する余裕もない。

「これなら、どうよ?」

美琴は周囲にあった鉄くずを集め巨人と自分たちの間に盾として配置する。
しかし、それを巨人は一瞬でなぎ払う。
それを予測していた美琴はそれには目もくれず一心駆け出す。
一瞬遅れて巨人も二人の後を追う。

「■■■■■■■■■■■■」

すぐにまた追いついた巨人の巨大な剣が美琴に向かって振り下ろされる。
117 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/20(月) 20:22:08.73 ID:XfMBkFMo
その剣をかわしながらも美琴は気付いていた。
この巨人の動きは荒々しくも正確、この剣の軌道も確実に美琴だけを狙っていた。

(―――やっぱり。打ち止めは殺さないようにしてる?)

だからといってすでに打ち止めには体力が残っていないため、ここでできることはあまりに少なかった。
せめてもう一人いれば、と、他力本願のあまりにも愚かな考えが浮かんだとき、事態は一変した。

「……お姉様?」

声のしたほうに顔を向けると、そこには先ほど別れた少女の姿があった。

「黒子!? なんでここに?」
「もちろん風紀委員のお仕事ですのよ。ささっ、お姉さまここはこの黒子に任せて」
「助かったわ、黒子。この子をお願い」

「お、お姉様? ですからそちらの大きな方は私が―――」
「無理よ、こいつ私でも倒せないもの。―――お願い、黒子」

その美琴の言葉に黒子は驚く。
美琴が勝てないということもだが、それ以上にあっさりと美琴が負けを認めるなど聞いたことがなかった。
ひょっとすると想像を超えるような事態でも起こっているのだろうか。
118 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/20(月) 20:25:11.46 ID:XfMBkFMo
「……不本意ですが、わかりましたわ。この子は風紀委員の本部にお連れします」

「―――待って。この子はこの道、あっちに連れて行って」

そう言って美琴は今まで進んでいた道の先を指差す。

「はぁ、それでどこへ行けばいいんですの?」
「わからない、けど行けばわかるわ。……たぶん」
「お姉様、それでは全然わかりませんのよ?」

「ごめん、私にもうまく説明できないの。……けどお願い、黒子」

そう言われても黒子は簡単に頷くことはできなかった。
ほとんど状況がわからなかったからだ。

この少女は何者なのか。
そこにいる巨大な男は何者なのか。
この道の先に何があるのか。
一体ここで何が起こっているのか。
ならば自分は何を信じれば良いのだろうか?

一瞬だけ目を閉じる。

―――そんなものは最初から決まっている。
119 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/20(月) 20:27:56.62 ID:XfMBkFMo
「……はぁ、まったく。わかりましたわ。こちらのお嬢さんは任せてください。けど……」

そういって黒子は巨人に目を向ける。

「私は少しだけ時間を稼ぐわ。そうしたらすぐに追いかけるわ」
「絶対ですのよ。何かあったら許しませんのよ」
「ええ、だいじょうぶよ。私の力もこいつの力もわかってる。無理はしないわ」

そういって微笑む美琴に若干不安を感じながらも黒子は打ち止めを抱きかかえテレポートする。
二人が消えるのを見送った美琴は咆哮する巨人の方へと向き直る。

「■■■■■■■■■!!」
「……ありがとう、黒子。―――さて、じゃあ時間稼ぎのためにちょっとだけ付き合ってもらいましょうか」

美琴は周囲の砂鉄を集めると、巨大な剣を作り上げる。
巨人の大剣と見比べると、はぁっ、と小さく溜息を吐く。

「まぁ、まともに打ち合わなけりゃこれでいけるでしょ」
「■■■■■■■■■■■■■」

巨人が振り下ろした剛剣に、横から高速で振動する美琴の剣がぶつかり合う。
お互いの剣が擦れ合うことで凄まじい音が発生する。
だが巨人の剣は切れることもなくほんのわずかだけ軌道をずらし、美琴をかすめ地面に突き刺さる。

「ったく、なんて馬鹿力よ。……これで、どうっ?」
120 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/20(月) 20:29:53.66 ID:XfMBkFMo
そう零しながら、美琴は素早く後ろへ跳ぶと、その剣を鞭のようにしならせながら巨人の方へと伸ばす。
それを防ぐように振り回された剣を避けるように曲がりながら巨人の胸に到達する。

「……そんな気はしてたけどね。効かないか。ったく」

しかしその剣は巨人の胸にぶつかると擦れ合うような甲高い音をあげながらも突き刺さることはなく止まっていた。
その結果を予測はしていたものの、実際に目の当たりのした美琴は肩を落とす。
その様子を見て勝ち誇ったかのように、巨人は咆哮し、突撃する。

「■■■■■■■■■■■■■■!!!」
「……仕方ない、あんまり使いたくはなかったんだけどね。ラストの一枚」

飛び掛ってくる巨人をかわすと、美琴は再び壁に取り付き、駆け上る。
そして、ポケットに手を突っ込むと、ポケットに残る最後の一枚を取り出す。
通常の力で打ち出せば、音速の三倍程度の速度でもたった50メートルで燃え尽きてしまう。
より速いスピードで撃ち出したのであればなおさらだ。

―――だが、至近距離で打ち出したならば距離は問題とならない。


「本気でぶちかましてあげるわ」
121 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/20(月) 20:33:49.46 ID:XfMBkFMo
そこで美琴は一瞬ためらう。

(―――不死身って言ってたけど、そんなことありえるのかしら?)
通常のレールガンでさえ、直撃すれば有り余るほどの殺傷力。
それをさらに大きな力で放てばどうなるか。
今から自分が手にしている一撃は間違いなく殺すための攻撃。
敵とはいえ人を殺すということの意味。

しかし、打ち止めが言っていたことが事実であるなら、果たして自分程度の攻撃で死に至るだろうか?
うまくいけばダメージを与える程度に留まるかもしれない。

「……信じるわよ一方通行」

呟いてすぐに首を振る。
―――いや、ここにきて一方通行に罪をなすりつけるのは話が違う。
今からやることは自分の責任だ。もちろんその結果も。

ただ、願いだけはする。死なないことを。

「これが全開の超電磁砲よ、食らいなさい!」
「■■■■■■■■■■■■■!!!!!!」

予想通り凄まじい勢いで地面から跳躍し、美琴に襲い掛かってくる巨人に右手を突き出し構える。
ギリギリまで引き付けて、その胸目掛けて手加減無しでレールガンを解き放つ。

「―――――吹っ飛べぇぇぇええええええええええええええっっっ!!!」
「■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!」
122 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/20(月) 20:37:33.87 ID:XfMBkFMo
ビルの壁から下方に向かって放たれたそれは巨人を巻き込み地面に激突すると爆音を上げ地面を吹き飛ばす。
その轟音と煙から逃げるように美琴は先に行った二人を追いかける。
少しの疑問を抱いて。
走りながら一度だけ美琴は振り返る。

しかし、舞い上がった土煙で巨人の様子は一切確認できなかった。

「―――やりすぎ、た? ……ほんとにこれで死んでないのかしら?」

しばらくの時が経ちその場を覆っていた土煙が晴れる。
そこに残っていたのは、まるで爆心地のようなクレーター。

―――そして胸に風穴を開けて横たわる巨人の骸だけだった。
123 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/20(月) 20:42:49.68 ID:XfMBkFMo
Oct.16_PM 07:18


「―――はぁっ!!」
「ふっ!」

二人の気勢とともに三本の剣による剣戟の音が響く。

「く、そっ!」
「どうした? そうらっ!」
「―――があぁぁああああっ!」

アサシンの刀に胸を切り裂かれるも、士郎は後方に大きく転がることでなんとか致命傷は免れる。
純粋な剣技の勝負ともなればセイバーに勝るとも劣らないその剣舞に士郎は追い詰められる。
一つ目の太刀を片手の武器でなんとか受け止めるも体勢は簡単に崩される。
さらに襲い掛かる二つ目の太刀をもう片方の武器で受け止める。
両の武器を弾かれたまま無防備での三つ目の太刀から命からがら逃げ延びる。

防戦一方、先ほどからこれを繰り返すだけである。

「ふむ、どうした。もう終わりか?」
「ぐっ、はぁ、は、あ――――まだだ。そう簡単には終われない」
「だいじょうぶ!? 士郎」

慌てて駆け寄った凛が視界からライダーから外さないようにしながら声を掛ける。
同じように士郎はアサシンに視線を向けたまま立ち上がり答える。
124 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/20(月) 20:45:10.93 ID:XfMBkFMo
「……ああ、だいじょうぶだ、遠坂。まだやれる」
「そうか。それにしてもその剣、剣技、まさかアーチャーと同じものとはな。……だが、まだアーチャーには届いておらぬな」
「そうだな、俺はまだあいつには及ばない。けどできることはあるはずだ」

「それは先ほどからの時間稼ぎのことでしょうか?」

上条に近づかないようにしながら、かつ五和のフリウリスピアを巨大な釘一本で完全に防いでいたライダーが一気に距離をとり、なんでもないことのように言う。
確かに士郎はアサシンを独りで引き付けることを第一として剣を交えていた。

「なんだ、ばれてたか。……けどアサシンだってまだ本気じゃないんだろ? 前に見たときはもっと鋭かったはずだ」
「残念ながらそうではない。いや、全力でないといういうことは否定できぬがな」
「ん? どういう意味だ?」

「さて、理由はわからぬがな。おそらく原因は聖杯の起動の元となっている人間だろう」

聖杯の元の人間、という言葉に上条が反応する。

「なんだって。風斬がどうしたっていうんだ?」
「我らが復元されたときにおそらくは力があまり流れぬよう抵抗したのであろうな。つまりこちらの力は万全ではないということだ」
「なるほど、そういうことだったのか」

士郎はかつてアーチャーと戦っていたときに見たアサシンの凄まじいまでの斬撃を思い出す。
それと比べると今のアサシンはほんの少し動きが重く感じる。
上条は、その状況を確認するためにインデックスの方へと顔を向ける。
125 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/20(月) 20:48:22.35 ID:XfMBkFMo
「うん、確かにそういうこともあるかも。ひょうかが抵抗できる状態にあるなら」
「……そっか、あいつも一緒に戦ってくれてるんだな」

「……なるほどね。それで、ならあなたもそうなの?」

凛は静かに佇むライダーに尋ねる。
冷静になって考えれば、確かに以前に見たライダーは体捌きはもう少し俊敏だったような気もする。

「そうですね。アサシンの言っていることは真実です。私も万全ではない。が、それだけでもありません」
「それだけじゃないってどういうこと?」
「簡単に言ってしまえば……あまり気乗りがしていません」

「……はぁ?」

ライダーのあまりにも突拍子もない言葉に凛は思わず気の抜けた声を上げる。

「やる気がないってことよね? ……それってサーヴァントとしてどうなの?」
「さて、そうでしょうか? ―――それでは仮にここにあなたのサーヴァントや、セイバーがいたらどうしたと思いますか?」

「それは――――」

凛は言葉に詰まる。

確かに単に聖杯を悪用しようとしているならアーチャーが協力するとは思えない。
ましてやセイバーならなおさらだろう。
126 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/20(月) 20:50:56.08 ID:XfMBkFMo
「わかりましたか? 私のようにやる気のないサーヴァントがいてもおかしくはないでしょう」
「まぁ話はわかったわ。どうりで最初からべらべら喋ってくれるわけよね。……で、そういうことなら見逃してもらうってわけにはいかないのかしら?」
「そうするとあなたたちは聖杯を破壊するのでしょう? 自分が消えてしまうのを黙って見過ごすのもどうかと思いませんか?」
「そう、ならなんとか倒すしかないってわけね。……あなたは? アサシン」

「そうだな。私としてはせっかくこうしてここに呼ばれたからには、せめて楽しく果し合う、というのもまた一興であろう」

そう言うとアサシンは士郎へと刀を向ける。
対する士郎も双剣を構える。

「それでは、再び戦闘開始としましょうか」

硬直状態から口火を切ったのはライダー、地を這うような動きで凛に襲い掛かる。

「くっ―――このっ!」

一瞬で放った凛のガンドをこともなげに避けるとランサーは凛に蹴りを放つ。

「させませんっ!」

五和は瞬時に凛とライダーの間に割り込むと槍を盾にしてランサーの蹴りを受け止める。

「―――飛びなさい」
「きゃぁぁあああああっ!」
127 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/20(月) 20:53:03.21 ID:XfMBkFMo
しかし、それでもその蹴りの威力に吹き飛ばされる。
ライダーはその反動を利用して後方へ飛翔すると空中で凛に向かって釘を投擲する。

「なっ――――?」

その一連の流れるような動作に驚愕の声を上げながらも凛は地面に転がりなんとか回避する。
その横で士郎は再びアサシンへ突撃する。

「よし、いくぞっ!」
「ふむ、来るがいい」

その士郎の双剣を一つの刀で簡単にいなす。
幾度かの剣戟の後、一瞬できた隙をついてアサシンが刀を振るう。

「く―――そっ」

しかし士郎はそれをぎりぎりで避わすことに成功する。

「ほう、少し慣れてきたか。いや、成長したと言うべきかな」
「……ふぅ、間一髪か。だけどこのまま同じ事を続けたんじゃ分が悪いな」

「ならば、こういうのはどうだ? ―――ぬぅうんっ!」
128 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/20(月) 20:55:44.69 ID:XfMBkFMo
そういうとアサシンは一瞬で間合いを詰め、大きく刀を振りかぶり、力任せに一閃する。

「なっ―――がぁぁああっ!」

その衝撃に士郎は吹き飛ばされ数メートルほど地面を転がる。
力任せに叩き付けたせいか、アサシンの刀には多少の歪みが生まれ、一方、士郎の双剣は砕かれて消滅していた。

「くっ。なら―――投影開始(トレース、オン)」

距離が開いてしまったことを好機と判断した士郎は、瞬時に弓矢を投影する。
だが、それを構えるよりも早くアサシンが刀を振るおうと距離を縮める。

「ふっ、遅いな」
「―――衛宮さん下がってください!」

今まさにアサシンが切りかかろうというときに、五和が士郎に向かって叫ぶ。

「ぬっ?」
「―――七教七刃っ!!」

その場から急いで飛び退いた士郎を追おうとしたアサシンに七方向からの刃が迫る。



「―――――秘剣―――――燕返し」
129 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/20(月) 20:59:00.67 ID:XfMBkFMo
それをほぼ同時といっていい速度で発生した三つの太刀が切り払う。

「なっ―――!?」
「なんだ今のは?」
「まさか、今の――――多重次元屈折現象? だとしたらそんなの魔法の域じゃない」

「……そのような大層なものではない、アーチャーのマスターよ」

その現象に驚きの声を上げる一同を前に、アサシンは極めて穏やかに告げる。

「……じゃあ一体何だって言うのよ」

「昔、戯れに燕を斬ろうと思いついたことがあってな。だがあいつらは思いのほか素早く、刀など所詮一本線にすぎぬ。空を自由に舞う燕を捉えられぬは道理よ」
「燕? で、それがどうしたって言うの?」

「―――生憎と、他にやる事もなかったのでな。一念鬼神に通じると言うが、気が付けばこの通りよ。燕を断つという下らぬ戯れはかような剣の牢獄を生み出すことと成った」

「……信じられない。魔術でもなんでもないなんて」
「とまあ私の切り札は今の秘剣なのだが、セイバーのマスターよ。そなたにも切り札があるのであろう?」

アサシンは見透かしたかのように士郎を見る。
士郎は一瞬だけ顔を顰めるとアサシンの問いに答える。
130 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/20(月) 21:02:03.97 ID:XfMBkFMo
「……確かにお前の言う切り札にあたるものはある」
「ふむ、であろうな。ならば出すがよい」
「だけど多分これはお前には通じない。相性の問題で力の浪費にしかならないと思う。それに今この場では使えない」

「……そうか、それは残念だ」

アサシンは心底残念そうに言う。

「切り札? 衛宮にはそんなのがあるのか?」
「……ええ、あるわ。けど士郎の言ったとおりアサシンにはあまり効果がないでしょうね」
「相性って言ってたな。ならどうにもならないか」
「それに、これは予想だけど、あなたが傍にいると使えないと思うわ」

「……この右手、か」

その言葉に凛は頷く。
上条はその様子から広域に干渉する魔術なのではないかと推測して納得する。


「―――では、次は私が切り札を見せましょう」

そういうとライダーは唐突に、手に持っていた釘を自分の首に突き刺す。
131 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/20(月) 21:05:43.34 ID:XfMBkFMo
「なっ!?」
「な――――に?」

そのあまりに異常な光景に一同は声を失う。
ライダーの首元から撒き散らされた血は、ライダーの前面に展開される。
それはやがて魔方陣として形を成していく。

「―――あ、あれは召喚なんだよっ!」

その状況にいち早く気が付いたのは少し離れた場所から見ていたインデックスだった。
その言葉にライダーが妖しく嗤うと、魔方陣が激しく輝く。

「みんな伏せたほうがいいかも!」

次に起こる光景を予測したインデックスが叫び、全員が咄嗟に地に伏せると辺りは光に包まれる。

―――爆音と閃光。
凄まじい衝撃が過ぎ去ったあと、空を見上げるとそこには真っ白な天馬にまたがるライダーの姿があった。

「あ、れは―――」
「天――――馬!?」

「―――さて、あなたたちにこの仔の疾駆を止められるでしょうか?」
132 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/20(月) 21:09:21.84 ID:XfMBkFMo
ライダーがそう言うと、ペガサスは凄まじい速度で天を舞うと急降下する。
そして地面すれすれをまるで光の線と見まがうような速度で駆け抜ける。
なんとかその直撃は免れるものの、その風圧に一同は吹き飛ばされ、地面を数メートル転がる。

「がぁぁぁぁあああああああっ」
「きゃぁぁぁぁあああああぁぁあ!」

しばらくの時間が経ち、巻き起こった土煙が収まる。
そして再び立ち上がり、身構えたときにはすでにライダーは先ほどと同じように空に留まっていた。
次の急襲に備えようとしたとき、ライダーが驚きの声を上げる。

「……まさか、対象の方から来るとは」
「ふっ、いつの世もままならぬものよな」

アサシンもそのライダーの驚きに同意する。
その意味を誰もが量りかねていると、後ろから声が上がる。


「―――いったい、なにがなんなんですの?」

どこかで聞いたような声に上条が振り返る。
そこには美琴の友人であり風紀委員の白井黒子の姿、そしてその胸に抱かれる打ち止めの姿があった。
133 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/20(月) 21:16:41.41 ID:XfMBkFMo
Oct.16_PM 07:25


一方通行は、闇の中を駆けていた。
能力使用モードは解除してあるために、その速度はとても速いとは言えないだろう。

この先もどの程度の敵が待ち受けているかわからない。
取り逃がした巨人を再び相手にしなければならないかもしれないし、先ほど倒したような敵がまだ他に居るかもしれない。
ただし、胸の内からは不安が消えなかった。

―――打ち止めは無事にあの男のもとへたどり着いただろうか。
あるいは自分が今からでも駆けつけるべきなのかもしれない。
そんな考えも頭をよぎる。
しかし、負傷して動けないという土御門の指示に従い聖杯を目指す。
聖杯さえなんとかすれば打ち止めが狙われる理由はなくなる、と。

簡単には説明を受けたが、一方通行には聖杯というものがいまいち掴めなかった。

―――聖杯。
確かに物語の中で、くらいであれば一方通行にも聞いたことがあった。
結局のところ、夢物語のような願望を実現する力、それが聖杯だ。
それは一方通行がどこかで聞いたことのあるイメージとそれほどかけ離れてはいない。
134 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/20(月) 21:20:10.34 ID:XfMBkFMo
だがそれを土御門は破壊しなければならないと言った。
それに対する一方通行の疑問ももっともだった。
そんなものが悪の手に渡るならば一大事だろう。だが、それを善人が手に入れてしまえばどうだ?
確かにそれを私利私欲ではなく、世の為人の為に使える人間は少ないだろう。だが、居るのだ。
一方通行はそれを、善人を知っている。
ならば、その権利は悪用されないようにそんな善人に渡してしまえばいい。

だが、そんな一方通行の疑問に対する答えは否定だった。
土御門は答えた。―――聖杯が悪用されるのが問題なのではなく、聖杯が悪なのだ、と。
初め、一方通行はそれを聞いて倫理的、道徳的な話をしているのかと思った。
努力をするでもなく、そんな力に頼って容易く願いを実現する。それが悪だと。

―――そんなはずはない。
どんな風に手に入れた力だろうと、悪人が使えば悪になり、善人が使えば善になる。一方通行はそれも知っている。

しかし、土御門はそれも否定する。言うには、聖杯は既に狂っており、聖杯自体が悪用しかできない物だ、故に聖杯が悪なのだ、と。

悪用しか出来ない力、そんなものが存在するのだろうか?
言葉だけでは到底納得などできはしない。

そう言うと土御門は嗤いながら―――見ればわかる、とだけ言った。

「―――で、これが聖杯ってやつでイイのかな? じィさン?」
135 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/20(月) 21:24:53.07 ID:XfMBkFMo
土御門の言ったとおりだった。
一目でわかる。これが良いもののはずがない。
一見して禍々しいその聖杯に眉を顰めながら、一方通行はその隣に静かに佇む老人に話しかける。

「そうじゃの、これが聖杯だ。……ふむ、先に辿り着かれてしまったか」

臓硯はその問いを穏やかに肯定する。

「そォいや、こっからどォすりゃイイか聞いてなかったぜ。とりあえず悪だっていうその聖杯ぶっ壊しゃイイのかァ?」
「ふむ、聖杯が悪、か。お主これがどういうものか知っておるのか?」

「―――あン? 詳しくは知らねェよ。なンだ? 一から説明でもしてくれンのか?」
「聞かせてやろうか? 話は六十年ほど遡ることになるが―――」
「はァ? オイオイ、いくらじじィが昔の長話が好きだっつったってそいつはさすがに度が過ぎンじゃねェか?」

「そうかそうか、ならば簡単に説明するとするかの。お主サーヴァントは知っておるか?」
「サーヴァント? あの英雄っつうやつらかァ? あァ、二匹ほどぶち殺してやったぜ」

威圧するために一方通行が吐いた言葉に、臓硯は一瞬反応するが、何事もないかのように話を続ける。

「遙か昔にな、至って普通の青年がその英雄になったことがあってな。その名をアンリマユと言う」

「―――アンリマユ? そりゃゾロアスターの悪神じゃねェか」
136 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/20(月) 21:27:22.90 ID:XfMBkFMo
「いやいや、名前こそ同じじゃが全くの別物。わしの言うアンリマユは英雄に祭り上げられたごく普通の人間に過ぎぬ」
「なンだって普通の人間が英雄になンだよ。結局なンかご立派なことでもやらかしたンじゃねェのか?」
「そうじゃ、アンリマユは反英雄という形で悪を引き受けることで英雄となった」

「……あン、反英雄だァ?」
「いわゆる悪をなす英雄のことよ。アンリマユこそが、アンリマユのみが悪、そうして悪を押し付けることで、であるならば他の者は悪ではないということが確立される」
「なるほどなァ、存在自体が悪であるくせに、存在することで他の全ての者を救ってるっつゥわけか」
「そういうことだ。故に聖杯は狂ってしまったということだ」

「話が見えねェぞ、それと聖杯がどう関係あンだよ」
「聖杯が願望機だということは知っておるか。この中に入っているのだ。そのサーヴァント、アンリマユが。―――この世全ての悪であれという願いが」

「……そォいうことか。つまりその願いを叶えちまってるわけだから、その聖杯こそが―――」
「―――そう、この聖杯こそがアンリマユ、この世全ての悪だ」

そこまで聞くと一方通行はチョーカーのスイッチに手をかける。


「ハッ、イイぜ。要するに、だ。これはこの世全ての悪と―――――クソったれの悪党との戦いってわけだ」

137 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/20(月) 21:43:16.76 ID:XfMBkFMo
Oct.16_PM 07:28


「つまり白井は御坂に頼まれて打ち止めをここまで連れてきてくれたってことなんだよな?」

上条は黒子から簡単に説明を受ける。

「ええ、そうですわ。お姉様は足止めをするといって馬鹿でかい巨人の前に一人残られましたわ」

その言葉に士郎と凛が反応する。

「―――まさか、バーサーカー?」
「おいおい、一人であれを足止めなんて無茶に決まってる」

その二人の様子に黒子の顔にも少しの焦りが生まれる。

「……そんなにやばいやつなんですの?」
「ああ、バーサーカーの正体はあのヘラクレスだ」

「な―――ヘラクレスってまさかあのヘラクレスか?」
「む、とうまメドゥーサは知らないのにヘラクレスは知ってるっていうの?」
「いやいや、上条さんだってヘラクレスくらいはさすがに聞いたことあるぞ」
「ほんと? じゃあヘラクレスって何した人? 十二の試練は全部言える?」

「……すみません、実は名前くらいしか知りません」
138 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/20(月) 21:45:57.22 ID:XfMBkFMo
声を荒げる一同に対して自体を飲み込めずあっけにとられる黒子と打ち止め。

「はぁ、なんなんですの? ヘラクレス? メドゥーサ?」
「ヘラクレスもメドゥーサもギリシャ神話の登場人物なんだよ、ってミサカはミサカは博識ぶりを得意げに披露してみたり」
「いえ、そのくらいは有名ですので私も知っていますの。問題はそれが何を意味するのかということですの」

明らかに話しについて来れないであろう打ち止めと黒子に上条は説明を試みる。

「えっと簡単に言うとだな、御坂が戦ってたのがヘラクレスで、あの空の上でペガサスに跨ってるのがメドゥーサ、であそこの侍は佐々木小次郎ってことだ」

「……ますます意味がわかりませんの。変わったお名前ですこと」
「だからそうじゃなくて、本物なんだよ。マジもんの昔の英雄たちなの!」

「……はぁ、本物の? 昔の?」

「……とうま、魔術を知らない人には説明してもわかってもらえないと思うんだよ……」
「……そりゃそうだよな。いきなりそんなこと言われてもわけわからねえよな。悪ぃ白井、とりあえず敵だ」

上条は頭を掻きながら苦笑いすると、説明をあきらめ、ごく簡単にだけ述べる。
一方の黒子も、この場で即座に状況を完全に把握するのは無理だと悟り、溜息をつくと同意する。
139 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/20(月) 21:48:38.18 ID:XfMBkFMo
「……そうですわね、とりあえずお姉様に襲い掛かっていた時点で私にとっては敵ですわ。もちろん風紀委員としてもすでに敵でしたけど」
「まあそりゃそうか。……ところで御坂は大丈夫なのか?」
「少し足止めをしたら追いかけると言っていましたし、そろそろ追いついてくるんじゃないかと思いますの」
「そっか、無事だといいんだけどな。それにしても―――」

「―――また来るわよ。気をつけて」

ライダーはペガサスに空を旋回させると、再び急下降し、突撃してくる。

「―――やれやれ、無茶をする。これでは私も巻き込まれかねないな」

そういうと、アサシンはその場から離れる。
上条は、まだ状況を把握しきれていない黒子に指示を出す。

「白井、打ち止めをそのまま守っていてくれ。けど見えない所には行かないほうがいい、危険だ」
「ええ、わかりましたわ」

打ち止めを抱えた白井はそこから少し離れた全員の様子が見える場所にテレポートする。
それを見た士郎は驚きの声を上げる。

「消えた?」
「あれはあいつの能力で空間移動だ。―――伏せろ!」

突風を身に纏いながら、天馬が再び地面すれすれを疾空する。
直撃こそ避けられるものの、その威力に辺りの瓦礫などと同様に全員が吹き飛ばされ、地を転がる。

140 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/20(月) 21:51:50.29 ID:XfMBkFMo
風が収まるのを見計らい、黒子はその荒果てた地面に戻ってくる。

「……なんて威力ですの」
「も、もの凄い風だったね、ってミサカはミサカは同意してみたり」

その様子を再び昇った空から見ていたライダーは不思議そうに考え込む。

「空間転移? ……いえ、まさか。魔術を使った形跡はないはず」
「……テレポート、空間転移ってことよね。―――なんてデタラメなの。超能力って」

離れた場所で凛も同じようにその事実に驚く。
ライダーは逆に標的の安全を確信して決心する。


「なるほど、とにかく捕獲対象は安全ということですね。―――では余興は終わりにします」

その言葉に上条は一瞬声を失う。

「なっ――――余興? あれで全力じゃないっていうのか?」
「……そうね。まだライダーは宝具を使っていないもの」

「そのとおりです。ですが標的には死なれては困ります。―――そこのお嬢さん、うまくよけてくださいね」

打ち止めを抱きかかえる黒子にそう言うと、ライダーは輝く手綱を形成し、さらに高く上昇する。


「ま、まずいかも! ―――あれは天馬の力を限界まで引き出すことができるんだよっ!」
141 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/20(月) 21:54:23.26 ID:XfMBkFMo
インデックスは焦りから声を荒げる。
その慌てように上条もまた焦りを感じる。

「そ、それってどのくらいやばいんだ?」
「……どうでしょう。ま、さっきまでみたいには優しくないでしょうね」

「私はもう一人程度まででしたら運べますのよ?」
「そっか、ならインデックスを頼む。……何か手はあるか?」

黒子は頷くとインデックスの手をとり、その場から姿を消す。
上条は五和、士郎、凛に尋ねる。

「すいません。今の装備では難しいです」
「俺は……成功率の限りなく低そうな案ならないことはないが、難しいな。遠坂はどうだ?」

天馬は遙か上空で停止する。

「残念だけど私には無理ね。手持ちの宝石じゃたいしたことはできないわ。……仕方ないわ、なら士郎の―――」


「―――いや、俺に任せてみてくれないか?」

上条は右手を突き出して握り締める。
142 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/20(月) 21:57:06.15 ID:XfMBkFMo
「……まさか、それで天馬を消そうって言うの?」
「―――ああ」

凛の独り言のような疑問に上条は頷く。

「そんなの無茶ですよ。実際にその右手が効くかどうかもわからないじゃないですか!」
「そうよ。だいたいあのスピードにうまく当てられるわけ―――」

「―――五和、遠坂、時間がない。上条、一瞬ならなんとか動きを抑えられるかもしれない。うまく合わせてくれ」
「ほんとか? よし、二人は後ろに下がっててくれ」

上条と士郎の決意に二人はしぶしぶ同意する。

「……ったく、わかった。任せるわ」
「……わかりました、お願いします。信じてますから」

タイミングはほぼ同時だった。

ライダーが動き始めると同じくして、士郎は自分の世界に没入する。
143 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/20(月) 22:02:09.74 ID:XfMBkFMo
「では行きますよ。―――騎英の(ベルレ)―――――」
「―――体は剣で出来ている(I am the bone of my sword.)」


「―――――手綱(フォーン)!!」
「うおぉぉおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!」

白い光の線となって天から流星が降ってくる。
それに向かい上条は叫びながら突撃する。

「―――熾天覆う七つの円環(ローアイアス)」

上条の前方に花弁の壁が発生する。

七枚の花弁で形成される衛宮士郎の中にある丘から引きずり出された最強の守り。
その盾にいち早く流星が激突する。

「―――残念ですが、こんなものでは止められません」

一枚、二枚と花弁を散らしながらも、わずかにスピードを削り取る。

「ぐうぅぅう。―――あぁぁああああああああああああああああああああっっっ!!!」

士郎が裂帛の気合をこめるも、威力ではライダーが上回る。
全ての花弁を削られ、今にも霧散しそうになる。

「うおおォォおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!!」

その攻防の地点に上条は右手を突き出す。
144 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/20(月) 22:05:01.45 ID:XfMBkFMo
―――それはライダーの力が盾を上回るのが早かったか、あるいは上条の右手が触れたのが早かったか。

花弁が完全に消滅するとライダーの天馬と上条の右手が激突する。
その衝撃とあまりの輝きに、視界は完全に消え、轟音により世界から音が消える。

「があぁぁああああああああああああああっっ」

その光の中心から巻き起こる暴風に上条は吹き飛ばされると、そのまま地面をバウンドし、壁に激突して停止する。

「上条っ! ―――う、ぐぅっ」
「だ、だいじょうぶですかっ!?」

士郎はその光景に叫び声を上げるも、投影の反動から膝をつく。
五和は焦りに満ちた声を上げ、慌てて上条に飛びつく。

「が――――はっ。……ああ。ぐっ、なんとか、な」
「良かった……」

その二人とは裏腹に、凛はその光から目を離さなかった。

「―――まさか、本当にそこまでの力があるとは思いませんでした」
「……そうね、私も正直驚いてる」

光と音が消え、土煙が晴れると、そこには平然と佇むライダーの姿のみがあった。



「―――■■■■■■■■■■■■■■■■!!!」

そしてもうすぐそこには、獣の咆哮が迫っていた。
145 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/20(月) 22:18:33.09 ID:XfMBkFMo
Oct.16_PM 07:35


全く状況は同じだった。
美琴は先ほどと同じように駆けていた。
変わっているのはもうコインがないこと、打ち止めがいないこと、それだけだった。
一刻も早く目的の場所へたどり着こうとしているのも―――巨人から逃げているのも。

「■■■■■■■■■■■■■■■■」
「ったく、ほんとにあれでも無傷だなんて。……喜んでいいのかしら」

そうしてしばらくの鬼ごっこを続けた先に、人溜まりが見えてくる。

「……あれ、誰かいる?」

そう呟いてから美琴は今の自分の言葉から状況がおかしいことに初めて気が付いた。
(―――えっ、人がいない?)

そういえばここまでそれなりの距離を走ってきたが、誰にも出会わなかった。
風紀委員の仕事でやってきた黒子だけだ。
何かよほど大きなことが起こっているのか?
そこまで考えて、美琴は首を振る。
今はそんなことを考えても意味がない。しかし、このまま進むとそこにいる人達を巻き込むことになる。

―――あるいは、味方だろうか。
146 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/20(月) 22:21:13.69 ID:XfMBkFMo
あの金髪の少年は行けばわかると言った。ならば行けばよいのだろう。
そう決心した美琴の目に飛び込んできたのは、荒果てた街の姿だった。

「……なんでこんなボロボロなの?」

ある程度近づくとそこにいた人影もおぼろげながら、どんな人達かが掴めてきた。
悪趣味な眼帯をした、地面につくほど長い髪をした女。
着物のような服を着た、とてつもなく長い刀を持つ侍のような男。
地面に膝を突く男と、その横に並ぶ、赤い服を着たツインテールの女。
壁際で何かをしようと屈みこむどこかで見たような女。

その女に介抱されている、壁にもたれかかり倒れている良く知っている少年。

「――――えっ!? ……なんで?」

言ってから美琴は自分の迂闊さに気づく。
そうだ、あの金髪の男はこの少年の友人だったはず。
ならば、この結果は当然推測してしかるべきもののはずだ。

「■■■■■■■■■■■■■■■■」

ほんの一瞬だけ、少年と目が合う。
その瞬間に覚悟を決める。

(―――まずい、こいつはここで止めないと)
147 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/20(月) 22:25:54.37 ID:XfMBkFMo
美琴は足を止め、振り返り巨人と相対する。
もはや有効な手段はないように思える。

しかし、これ以上この巨人をあの少年に近づけさせるわけにはいかない。

「―――お姉様っ!」

後ろから聞こえた聞き慣れた声に首だけ振り返る。
その黒子の隣には、シスターの姿、そして胸には強く抱きしめられた打ち止めの姿があった。

「……黒子。そう、良かっ―――!?」

二人の無事を確かめ安堵の声を上げようとした瞬間、美琴は声を失う。

いや―――呼吸することさえ忘れてしまった。
その視界の端で、ふらふらになりながらも―――あの少年が叫びながらこちらに駆けてくる。
その目に映っているのは自分ではないだろう。おそらくはその背後に迫る巨人。


「御坂ァァァああああああああああああああッッ! あいつの、武器を―――!」
「―――黒子っ!」

その叫び声を聞いた美琴は、黒子に声を飛ばし、目配せする。

「はいですの、お姉様」
148 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/20(月) 22:30:02.41 ID:XfMBkFMo
それに応えた黒子は自分のポケットに手を突っ込むと、美琴のコインを握り締める。
美琴は一瞬にしてテレポートされた、眼前に浮かぶそのコインを手に取ると、右腕を突き出す。

「■■■■■■■■■■■■■■」
「もうほとんど電池切れだけど、その剣くらいならなんとかなるでしょ。―――食らいなさいっ!」

数メートルまで迫るその巨人の剣を狙いレールガンを発射する。
その狙いは正確無比。
振りかぶった剣の柄の部分に命中すると、その衝撃に巨人はのけぞり、手から剣を放す。
その瞬間美琴のすぐ脇を少年が右手を握り締めながら走り抜ける。

美琴から見てもその足取りは軽快とは言えなかった。
それでも、ときおりふらつきながらも、しかし、決して倒れない力強さを感じた。
美琴はただじっとその背中を見送った。

「う、おおォォォおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!」

少年はその拳を無防備になった巨人の胸に叩きつける。
その右手が触れると、ドゴン、と何かが弾け飛ぶような音が轟く。

「■■■■■■■■■■■―――」

何をしても倒れることのなかったその不死身の幻想は、少年のその右手によってあっけなくも消え去った。
149 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/20(月) 22:32:59.19 ID:XfMBkFMo
「とうまっ!」

上条はそこで力尽き、大地に膝をつく。
そこに一番に駆け寄ったのはインデックスだった。

「ぐっ、が――――はぁ。……いや、だいじょうぶだ、インデックス。それよりまだ―――」

立ち上がることもままらなない上条はライダーとランサーに目を向ける。
現状のまずさにいち早く気づいていたのは凛と五和だった。

「……これはまずいわね」
「そうですね。こちらはもう戦力が……」

切り札であった上条はおそらくもう戦えないだろう。
士郎も先ほどの投影でかなりのダメージを負っているようだ。
自分たち二人ではまず勝ち目はないだろう。

だが、テレポートの少女には打ち止めを守ってもらわなければならない。
新しくやってきた少女も今まであのバーサーカーと交戦していたのか、疲労の色が濃そうだ。
それに引き換え、向こうはアサシンは無傷。
そしてライダーはかなりの魔力を失ったとはいえ、こちらも怪我一つない。
150 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/20(月) 22:37:48.64 ID:XfMBkFMo
「それにしても、あのバーサーカーがあっさりと倒されたっていうのにたいして驚いてないみたいね」

凛は先ほどから様子を窺っているようにこちらを見ていたライダーに話しかける。

「私の宝具を簡単に凌ぐくらいですから、そういうこともあるでしょう。……しかし、驚いてはいます」
「そうだな。確かに見事なものだ。ふむ、となるとある意味私のような者こそがあの少年にとっての天敵なのかもしれぬな」

アサシンもそれに同意し、続ける。

「しかし、どうだ。あの少年はもはや戦えぬのではないか? まだそちらに我らを倒す手はあるのか?」

ちょうど懸念していたことを指摘され、凛は唇を噛み締める。
おそらくは士郎もしばらくは戦えないだろう。そう思い、横目で士郎の様子を確認する。

「……いや、俺はまだ戦えるぞ」

凛と目が合うと、そう言い士郎は二人の傍に歩み寄ってくる。

「本気? けど、無理はしないで……なんて言える状況じゃないわね」
「ああ、そのとおりだ。まだ負けられない」
151 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/20(月) 22:41:59.62 ID:XfMBkFMo
「ああもう、なんとかこっちでサーヴァントを操れないかしら」
「いや、遠坂、さすがにそれはちょっと無茶なんじゃないか?」
「でも、あっちはどうやってサーヴァントを制御しているんでしょう?」
「む、そりゃ令呪を使ってるんじゃないのか?」

「そうかしら? そういう様子じゃなかったけど」
「じゃあ聖杯の力で呼び出しただけってことなのか?」
「逆にこっちで聖杯の力を利用したり……なんてことはできません、よね?」
「いや、いくら聖杯が出現しているっていってもそれは―――」

「―――待って士郎」

はっ、と思いついたように凛は顔を上げる。

「禁書目録、ちょっと聞きたいことがあるの」

そう言うと凛はインデックスのそばに駆け寄りそのアイデアを話す。
それを聞いたインデックスはじっと考え込む。
152 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/20(月) 22:44:48.04 ID:XfMBkFMo
「……うん、たぶん万全に、は無理。けど不完全でもいいならそれ自体はできないことはないと思うんだよ」
「良かったわ。やってみる価値はありそうね。―――五和さん、来てくれる? 協力して」
「えっ、私ですか? はい、やってみます」
「うん、それじゃあね、とうまは―――短髪、ちょっととうまと離れててくれると助かるかも」

「えっ、うん。わかったわ。……立てる?」

状況はよくわからないながらも、美琴は上条をその場から放すために肩を貸して立ち上がらせる。

「が―――はぁ。……ああ、すまん御坂、助かる」
「べ、別にいいわよ。気にしないで」

美琴の肩を借りながら、上条はなんとか歩き出す。
凛は士郎の方を向き、一度目を閉じると、感情を抑えてなんでもないことのように言う。

「士郎、少しの間あの二人を足止めしてもらえる?」
「そ、そんなの無理ですよっ!」

「―――ああ、わかった」

その言葉に即座に反応して五和は否定する。
しかし、士郎は極めて冷静にそれを承諾する。
153 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/20(月) 22:50:44.35 ID:XfMBkFMo
「だめです。そんなのあまりに危険すぎ―――」
「―――お願い、時間がないの」

凛の表情を見て、五和は唇を噛む。
無茶だということは凛だって承知の上のことなのだ。
何も思わないはずは無い。

ちらりと士郎の顔を窺うと、士郎は力強く頷く。

「……わかりました。急ぎましょう」

「ああ、こっちは任せろ。―――投影開始(トレース、オン)」
「ありがとう。―――禁書目録」

士郎は再び双剣を投影すると、二人のサーヴァントに向かっていく。

「――――いや、よい」
「な――――?」

アサシンの発した言葉に士郎の足が止まる。
その意図は全く掴めなかった。

154 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/20(月) 22:53:09.77 ID:XfMBkFMo
「……どういう意味だ?」
「なに、たいしたことではない。何かしらの策があるなら待ってやろうというのだ」

「な、本気で言って―――」
「―――そう、助かるわ」

その士郎の尤もな疑問を凛が遮る。

待ってくれるというのならばそれに越したことはない。
下手なことを言って刺激するのは逆効果にもなりかねない。

「なら少しだけ待っててもらえるかしら。―――士郎は念のため注意してて」
「ああ、わかった」

士郎は頷くと、油断なく二人を見据える。
五和はインデックスから話しを聞き、凛の補助をする準備を整える。
凛はその五和の助けとインデックスの知識を借り、詠唱を始める。


「――――告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」
155 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/20(月) 22:55:57.39 ID:XfMBkFMo
サーヴァントたちが聖杯から生み出されたのなら、その力をうまく利用すれば、もう一人くらいのサーヴァントの召喚が可能なのではないか?
インデックスの答えは半分肯定。
かつてマスターであった自分であれば、原典の力を他の魔術師の補助を得て利用すれば完全ではないにしろ不可能ではない。

凛を中心に光輝き、魔方陣が展開される。

「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

詠唱が終わると、辺りは目も眩むような光に包まれる。
激しい轟音とともに、凛の正面に赤い影がかすかに浮かぶ。
その光が消えると、凛に向き合う赤い外套を纏った男は決まりごとのように皮肉を言う。


「……やれやれ、相変わらず君の召喚は乱暴だな。――――凛」

様々な想いが凛の頭を駆け巡る。

―――アーチャー。
その声を聞いただけで目からは涙がこぼれそうになった。
だが、今はそのときではない。
一度ぎゅっと目を瞑ると力強く開き、命令する。

「アーチャー、サーヴァントを倒して」
「了解した。―――――投影、開始(トレース、オン)」

両の手に、士郎と全く同じ剣を投影すると、赤い騎士は戦場へと駆け出した。
156 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/20(月) 23:06:50.56 ID:XfMBkFMo
今日はここまでにします
vsバーサーカーが終わったということで
だいたいこれで半分、あるいはちょっと過ぎたくらいだと思います

当初はサーヴァントは5体だけのつもりだったんだけど
気が付いたら勝てる要素がなくなってたのでご都合主義だけどアーチャーに出てきてもらいました

元々はその役は神裂さんがやる予定だったんだけどね…
157 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 23:17:04.68 ID:G5iskoco
両陣営の主役側に頑張って欲しい心情からはアーチャーの登場は嬉しい限り
乙!
158 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 23:32:16.93 ID:pJtRS0oo
>>126で突然ランサーが出てきてるのはライダーの間違い?
159 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 23:46:50.26 ID:XfMBkFMo
>>158
> >>126で突然ランサーが出てきてるのはライダーの間違い?


ほんとだ…すみません
全く気が付かなかった
何回も見直ししたはずなのに…

しかもこのレスだけで2回も…

なんか他のとこでも同じことしてそうなので見直してみます
160 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 23:51:04.76 ID:CiGjx1Y0
そういえば、禁書的に解釈するとアサシンって原石なんだろうか?

ツバメ切ろうとしているうちに、刀が分裂する「自分だけの現実」を手に入れたとか……
161 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/21(火) 07:09:34.78 ID:uIOfz6DO
ああそういや原石っぽいな
162 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/21(火) 11:23:53.74 ID:qd95dCM0
どっちかというと原石は型月的超能力者だろ
小次郎はあくまで鍛えただけ。技術だから
163 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/21(火) 12:11:55.06 ID:rJYtpMDO
小次郎と書文先生は異能じゃなく、技術の延長線だからな。
チートにも程がある。
164 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/21(火) 22:07:36.87 ID:MOYqZWMo
そういう現象を起こす能力とも考えられると思いますが
個人的には燕返しはあくまで技だと考えています

技で同時斬りできるのか?
といわれると正直疑問な部分もありますけど


ではちょろーっと投下しますね
165 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/21(火) 22:09:37.10 ID:MOYqZWMo
Oct.16_PM 07:42


一方通行はすでに能力使用を解き、回避に専念して様子を窺っていた。
初めは一気に勝負をつけようと思ったがそうもいかなかった。

理由の一つは、聖杯から溢れてくる泥のような暗い闇。
これがなんなのか、一方通行には理解できなかった。
先ほどその泥が怪我で動かしにくい左手を掠めたとき、反射に設定していたはずなのに鈍い痛みがあった。

もう一つは聖杯の中身。
うっすらとだが、微かに聖杯の中に、少女のような人影がいるのがわかる。
何者かはわからないが、この老人に利用されているだけの可能性もある。
もちろん敵である可能性もあるのだが。

「おいじじィ。そン中にいる女はどこのどいつだァ?」
「ん? この少女はヒューズカザキリと言ったか。それがどうかしたか?」

その言葉にやはり、と一方通行は舌打ちをする。
どうやら思ったとおり老人の仲間というわけではないようだ。
だとすれば聖杯ごと全てを破壊してしまうのは少し考えなければならないかもしれない。
166 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/21(火) 22:11:52.44 ID:MOYqZWMo
「ふむそうじゃな。この少女が離れれば聖杯は機能しなくなるだろうな」

それが挑発なのは一方通行にも明らかだった。
かといって他に手があるかというのも疑問だった。

先ほどから老人は何もしていない。
であるなら、老人を殺しても聖杯が止まるとは限らない。
逆にヒントを失うことで選択肢を狭めかねない。

「……チッ、なら一か八か突っ込ンでみるしかねェか?」

一方通行は覚悟を決めるともはや残り少ないスイッチに手をかける。
ベクトルを操作して周囲の空気を操り、爆発的な風を生み出す。
今まさに一方通行に襲い掛からんとしていた泥はそれによってすべて吹き飛ばされる。

「―――なんと!」

その光景に臓硯が驚きの声を上げるよりも早く、一方通行は聖杯に飛び込む。

「―――ンだとォ!?」

次に驚きの声を上げたのは一方通行。
聖杯の中に入ってそこから少女を確保し、すぐに離脱する。それだけのはずだった。

―――だが、中の少女は体のほとんどを聖杯に同化させていた。
167 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/21(火) 22:14:41.48 ID:MOYqZWMo
「―――引き剥がせねェだと?」

その動揺がほんの一瞬次の行動を遅らせる。

「クソッ、まじィ!」

慌てて聖杯の中から飛び出すも再び溢れ出した聖杯の泥が一方通行の左足を絡めとる。

「ぐ、がァァあああああああああああああああああッッッ!!」

その瞬間に振り払うも足には凄まじい痛みが残る。
だが聖杯に終わりはない。
それに飽き足らず、溢れ出てくる泥は途切れることなく襲い掛かる。
いくら吹き飛ばしても溢れ出てくる泥を前に、先に尽きたのは一方通行の電池だった。
もはや立つこともかなわず倒れる一方通行にできることはなかった。

「カ―――、終わりのようだの。いくがよい――――この世、全ての悪(アンリマユ)」

横たわる一方通行に、この世全ての悪は静かにのしかかる。
168 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/21(火) 22:21:43.37 ID:MOYqZWMo
Oct.16_PM 07:46


剣戟が続く。
先ほどまでとは違い、アーチャーの剣は、アサシンにも打ち負けることはない。
息つく暇もないないほどの攻防。

「ぐっ。……すげぇ、あれがサーヴァント同士の戦いってやつか」

上条は体を起こしながら、目の前の光景に感嘆の声を上げる。

「……サーヴァント?」

美琴はだいじょうぶ? と声を掛けながらその上条を支えながら、聞きなれない単語を口にする。

「あ、ああ。そういやお前は知らなかったか。サーヴァントってのは英霊で、実在の過去の英雄達が魔術で召喚されたものらしい」
「英霊? 過去の英雄? 魔術? 召喚? ……なにそれ」

「……いやまあそういう反応すると思ったよ」
169 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/21(火) 22:24:24.23 ID:MOYqZWMo
上条ははぁ、っと溜息を一つつくと、士郎、五和と戦うライダー、アーチャーと戦うアサシンを順に指差す。

「あの髪の長いのがメドゥーサ、あの侍みたいなのが佐々木小次郎、で、さっきまでお前が戦ってたのがヘラクレスだってさ」
「メドゥーサ、佐々木小次郎、ヘラクレス、ね。……アンタそれマジで言ってんの?」

「悪いが大マジだ。つーか、確かにお前が今まで戦ってたのはヘラクレスです、っていきなり言われてもどうかと思うけど」
「召喚、ってあんたマンガじゃあるまいし」

そう言いながらも、確かに、と美琴は考え込んだ。
上条の話ははっきり言ってよくわからない。
よくわからないが、確かに今目の前でみた光景は、漫画や小説で読んだ召喚と呼ぶにふさわしいものだ。
漫画のようなことが起こっている、と単純に納得してしまえばわからないでもない。

「……マンガじゃあるまいし」

美琴はもう一度そうつぶやく。自分を納得させるために。

「ってことは、あの赤い男もサーヴァントってやつでそういう英雄なわけ?」
「あー、今出てきた赤いサーヴァントはちょっとわからない。けど有名な英雄なのは間違いないと思うぞ。たぶん」

そう言われて美琴は赤い男を見る。
170 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/21(火) 22:26:33.28 ID:MOYqZWMo
中国風の二つの剣を持っているが、パッと思い当たる英雄はいない。
それと打ち合う佐々木小次郎と呼ばれた侍を見る。あの長い刀は有名な物干し竿という刀だろうか。
さらにメドゥーサと呼ばれた女性に目を移す。言われてみればなんとなくメドゥーサという気がしないでもない。

そこで気が付く。

「メ、メドゥーサって目が合うと石にされちゃうんじゃない?」

慌てた美琴が尋ねると上条はなんでもないことのように答える。

「お、知ってたか。そうらしいな。けど今は眼帯してるからだいじょうぶだってさ」

そういう問題なのだろうか、と美琴は首をひねる。
まぁそう言われてみれば、さっきまで戦っていた巨人の頑丈さは異常だった。
能力者には見えなかったし、レールガンを食らっても無傷なんて硬いなんてものじゃない。
ヘラクレスには不死身の伝説もあったような気がする。

ということは、一方通行達と戦っていた蒼い男と、魔女のような女もそうなのだろうか。
そこまで考えて、大事なことを思い出した。
171 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/21(火) 22:29:04.67 ID:MOYqZWMo
「そんなやつらがなんで打ち止めを狙うのよ」
「簡単に言うと、こいつらを呼び出した力の元の聖杯ってやつをコントロールするためらしい。ちなみにこいつらはその力を悪用しようとする悪い魔術師が呼び出したんだとさ」

「じゃあその悪い魔術師ってやつをなんとかすればいいんじゃないの?」
「ああ、そのためにこっちに向かってたんだが、サーヴァントが出てきて先には行けなくなっちまった」

なるほど、と美琴は頷いた。
あの金髪の男の意図がなんとなくわかる。
ここに打ち止めを連れてくれば上条達が守ってくれる。
さらには、あわよくば自分をここを突破するための戦力として使おうとしたのだろう。

だが、今の自分ではそのサーヴァントを突破することはできないだろう。
それに全てのサーヴァントがさっきのヘラクレスのような化物だとしたら、万全でも倒すのは難しい。

美琴はそこで考えをやめ、顔をサーヴァント達に向ける。剣戟の音が止んだからだ。

「ふむ、このままでは埒があかぬな」
「そのようだな。さて、どうするか」

二人の剣技は互角とは言えなかった。
だが、それでもアサシンはアーチャーを仕留めるには至らない。
このまま打ち合いを続けてもしばらくは決着がつくことはないだろう。
172 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/21(火) 22:34:23.10 ID:MOYqZWMo
「お主も次の手を出したらどうだ? どれ、斬り合いをするだけが能ではあるまい」
「ああ、それはそうなのだが、な。―――では付き合ってもらおうか」

そういうとアーチャーは持っていた双剣をアサシンへと放り投げる。

「むっ―――」

いかにアーチャーといえどまさか剣を投擲してくるとは考えていなかったアサシンは、それでも冷静に剣で受け流す。

「――――鶴翼、欠落ヲ不ラズ(しんぎむけつにしてばんじゃく)」

その後ろに過ぎ去って行く双剣の行く末を見届けさせる隙すら与えぬうちに、アーチャーはアサシンへと突進する。
その空になったはずの両の手には、既に投擲したものと同じ双剣が握られていた。

「来るか。――――なに?」

アサシンの一瞬の動揺。
かわした筈の剣が後ろから戻ってくる。

―――前後からの同時攻撃。
173 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/21(火) 22:37:27.12 ID:MOYqZWMo
しかし、なおアサシンの剣技はそれを上回る。
背後からの剣を一瞬で切り落とし、さらに切りかかる剣を打ち落とす。
そのあまりの速度に、アーチャーはうめき声を上げる。

「ぬっ!」
「む――――もう一つか」

アーチャーはもう片方の手にある剣で切りかかる
さらに投げられたもう一つの剣も、再びアサシンの背後から襲い掛かる。
アサシンは、切りかかってきたアーチャーの剣を手から払い落とす。
そして、後ろから襲い掛かる剣を、同時とも思える速度で叩き落とす。

―――そこで違和感の正体に気が付いた。

「――――わざとであったか!?」

アサシンの周囲には四本の剣が落とされている。
宙を飛んでいる剣を切り落とすのは容易い。
だが、手に持つ剣を地に落とすのはそう簡単なことではない。
にもかかわらず、アーチャーはあっさりと手の中にある剣を手放した。
それは剣を手放すことで、激突による隙を作らないため。

その証拠に、アーチャーの両の手には既に同じ剣が握られていた。
アーチャーはその剣をもって隙だらけのアサシンを切りつける。
174 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/21(火) 22:41:12.74 ID:MOYqZWMo
「終わりだ!」
「く―――不覚」

それでいてアサシンの剣はなお神速。

双剣のうち一つを刀で受け止める。
もう片方の剣で胸を大きく切り裂かれるも、なんとか致命傷を免れる。

「ぐ――――ふ」
「ちぃ!」

舌打ちをしたのはアーチャー。
必勝の手応えがあったはずなのに仕留めるには至らなかった。

少しの距離を得たアサシンは即座に秘剣の構えをとる。
それを不可避と悟ったアーチャーもまた勝負に出る。

「―――I am the bone of my sword.(体は剣で出来ている)」
「む――――なに?」

アサシンの驚きは尤もなことだろう。
アーチャーの手に握られているのは巨大な斧剣。

―――バーサーカーの手にあったはずの剣だ。
175 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/21(火) 22:44:19.91 ID:MOYqZWMo
「秘剣―――――燕返し―――――」
「―――――是、射殺す百頭(ナインライブズブレイドワークス)―――――」

その一瞬に数え切れぬほどの剣閃が宙を踊る。

「がぁぁああああああああっっ!!!」

静寂にドスン、と鈍い音が響く。
脇腹を大きく切り裂かれ、血を吐きながら、膝をついたのはアーチャー。
少し遅れてカラン、と硬い音が鳴る。

「―――ふむ、どうやらお主の勝ちか」

アサシンは鍔元から折れてしまった自分の愛刀を目を細めて眺める。

「まさか、武器破壊が狙いであったとはな。―――さすがに刀がなくては戦えぬか」
「そのとおり。―――それが貴様の弱点だ。……まだ続けるか?」

アーチャーはまるで傷など無いように立ち上がりそう言い放つ。

「よい、それなりに満足した。―――お主こそ不完全な召喚でもうたいした力は残っておるまい? それに傷も深かろう」
「なに、この程度傷のうちに入らぬさ。――――む?」
176 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/21(火) 22:47:30.83 ID:MOYqZWMo
そこで、異変に気づく。
少し離れた場所に目をやる。
すでに暗闇に覆われている空にどす黒い光が迸る。
そのアーチャーの様子に、凛はその方向に目を向ける。

「え、なに? これってまさか―――」
「聖杯の光なんだよ」

インデックスが即座に正解を告げる。

「聖杯? 聖杯ってもっと、なんていうか華やかなもんじゃないのか? あれじゃ邪悪っていうか……」

その言葉に上条は疑問を抱く。
願いを何でも叶えてくれるもの、そう聞いていたが、その雰囲気はあまりにも禍々しい。

「もともとはそうかも。……けど今の聖杯はもう狂ってしまってるんだよ」
「狂ってる? どういうことだ?」

「簡単に言うと、聖杯はすでに悪い願いに染まってしまってるんだよ。それにしてもこのままじゃ暴走するかも」
「じゃあ、早くなんとかしなくちゃいけな―――」

上条はその視界の隅に、駆け出していく少女の姿を見つける。
ふらふらする足取りで立ち上がりながら上条は叫ぶ。
177 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/21(火) 22:51:37.71 ID:MOYqZWMo
「―――打ち止め、やめろ、危険だ!」
「ダメなの、それでもミサカが行かないと、ってミサカはミサカは決心を伝えてみる」
「くそっ、追わないと」

打ち止めの後ろ姿を見ながら、上条は少女を追おうと歩きだす。
その上条の道をインデックスが塞ぐ。

「とうまはダメなんだよ。私が行く」
「なんでだ。俺の力があれば聖杯を―――」

インデックスはその上条の言葉に慌てて首を横に振る。

「だからダメなんだよ。今聖杯はひょうかと半分同化しているはず、だからとうまが触っちゃうと……」

「……まさか、消えちまうっていうのか?」
「そうかも。……とうまの力ではっきりどうなるかは断言できないけど」
「くそっ、じゃあどうすれば」

そのとおりだと上条は思った。
記憶のない上条にとって自分の力の効果ははっきりとわかっているわけではない。
風斬が消えるかどうかは触ってみなければわからない。

―――しかし触ってみて消えてしまいました、では笑い話にもならない。

「だいじょうぶなんだよ、そのために私が行くんだから。―――短髪はとうまをみてて」
178 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/21(火) 22:54:22.20 ID:MOYqZWMo
インデックスは笑って言う。

「でも、お前だけじゃ―――」
「―――わたしも一緒に行くわ」

横から声を掛けたのは凛だった。

「もともと聖杯はわたしがなんとかしなきゃいけないものだもの。彼女も任せて」

少しの間二人は見つめ合い、折れた上条が頷く。

「……わかった。打ち止めとインデックス、それから聖杯は任せた」
「任されたわ。―――行くわよ、禁書目録」
「うん。とうまはここで休んでて」

そう言うと、二人は打ち止めの後を追って駆け出す。



―――が、すぐに二人は突如横合いから突き飛ばされる。
179 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/21(火) 22:56:41.81 ID:MOYqZWMo
「えっ―――――」

「ぐ――――が、は」

その苦悶の声は突き飛ばされ地面に転がる二人のものではなかった。
地を転がる凛は見上げながら呟く。

「うそ――――アーチャー……」

二人を突き飛ばしたアーチャーの体は数本の剣に貫かれていた。
それがなんでもないことのように顔を上げたアーチャーは檄を飛ばす。

「行け、凛。―――聖杯を止めるんだ」
「……アーチャー」

おそらくそれは致命傷。それほど長くはもたないだろう。
凛は言葉を失う。

―――まただ、肝心なときに自分は何も言えない。

「……ありがとう、アーチャー」
180 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/21(火) 22:59:56.86 ID:MOYqZWMo
口から出たのは、そんなつまらない言葉。
それでも少しは伝わっただろうか。

だが、赤い騎士はそれだけで満足だった。
その少女がそういう人間だと知っていたから。
その不器用さが懐かしく、そして嬉しくもあった。
思わずその顔には小さな笑みが浮かぶ。

「―――ああ、わかってるよ、遠坂……」

そう呟いた瞬間、アーチャーの元に剣の雨が降り注ぐ。
凛はインデックスの手を取ると再び走り出す。


―――視界の端に最悪のものを捉えながら。


「無駄なことを。今の聖杯はたかが魔術師にどうこうできるものではないわ。一思いに殺してやろうという我の慈悲がわからぬか」
181 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/21(火) 23:02:38.42 ID:MOYqZWMo
その男の登場にその場にいた全ての人間が動きを止める。
本来味方の立場であるはずのサーヴァントでさえ。

いや、サーヴァントこそがその男の殺意に敏感に反応した。

「お主は……?」
「……サーヴァント? いえ、少し異なるようですが」

その黄金の鎧を纏った男はその二者をまるで存在すら認識していないかのように黙殺する。
そして王は驚愕で声を失う士郎へと目を向ける。


「―――久しいな、贋作者」

「……そんな馬鹿な、どうしてお前が。―――――英雄王」
182 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/21(火) 23:09:51.75 ID:MOYqZWMo
Oct.16_PM 07:54


―――死ね。

―――死ね。死ね。

―――死ね。死ね。死ね。死ね。

―――死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。

「が、あァァあああああああああああああああああああああ――――――――」

一方通行覆い尽くす、この世全ての悪、アンリマユ。

闇に飲まれた瞬間、脳裏によぎるのはただ憎悪。
その五感から、ありとあらゆる悪意が流れ込んでくる。
さらにはそれのみではなく、呪いは、その地獄は直接に心を溶かす。心を壊す。

闇は全てを塗りつぶす。―――故にそれを防ぐすべはない。

「が、がァァ、は―――がが、ぐ―――――」
183 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/21(火) 23:12:57.88 ID:MOYqZWMo
―――死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。

―――死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。

―――死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。

―――死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。

もはや、一方通行には言葉さえ届かない。
だが、その言葉の意味はわからなくとも、その悪意は確実に染み渡る。
その脳に、その心に。

六十億にも及ぶ憎悪、しかし、それは問題ではなかった。
一方通行にとって、たった六十億に過ぎなかった。
真に恐ろしかったのはその中の一万、その一万もの悪意が一方通行の全てを侵す。

―――超電磁砲の、妹達の、そして―――打ち止めの憎悪が一方通行を攻め立てる。

「ぐ、ががぎ、ぎゃは、ぎゃはぎゃはああはあはははあはははああはあはあはははははは」
184 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/21(火) 23:15:24.78 ID:MOYqZWMo
そうだった。
自分は何も許されてはいない。
忘れていたわけではない、だが勘違いしてしまっていた。

打ち止めと接するうちに―――まるで自分でも生きていて良いかのように。

そんなはずはない。
今までも、そして今も、そしてこれからも自分の罪は尽きることはない。
増え続けていく罪に、終わることのない償い。

いや―――償いにさえなっていないのかもしれない。
あるいはそれすらもただの自己満足なのかもしれない。
もしも彼女らの憎しみを少しでも取り除く方法があるならば、それは一つしかないはずだ。
その憎悪を受けておいて自分に生きる価値も意味もあるはずもない。

ならば、もういいのではないか。
もういい、いや―――――最初から最後まで何も良くはなかった。

ただそれだけのこと。
185 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/21(火) 23:18:25.73 ID:MOYqZWMo
「あ―――あァ――――――が、あ」

そこまで考えて瞳をとじる。心を閉じる。命を―――――。



―――――だが、そこでかすかに、何かが耳に届く。

聞き慣れた声、最も聞きたくない声、そして最も聞きたい声。
こんな危険な戦場にはそぐわない筈の声。

―――それは一方通行にとっての最後の希望。
もはや言っている意味など読み取れず、その言葉さえ聞き取れない。
ただその声には感情があった。
わかったのは―――その声が決して悪意などには染まっていないということ。


―――思い出した。
たとえどれほど憎まれようとも恨まれようとも、これは投げ出してはいけなかったはずだ。
ここで投げ出しては、もう一万のミサカが、今まで殺してきたミサカが全て無駄になってしまう。
それだけは決して許されない。
自分にそんなことをする権利などあるはずもない。
186 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/21(火) 23:21:58.38 ID:MOYqZWMo
だから、自分を殺すことができるのはミサカだけ。
そして、自分はミサカを守るためにのみ生きればいい。
その先、自分になにも残らなかったとしても。

たとえ、自分がこの世全ての悪となったとしても。

「が。あァァあああああああああああああああああああああああああああああああ――――――」
「む―――――」

臓硯は声を漏らす。
一方通行の背からは聖杯の闇を逆に多い尽くすほどの巨大な漆黒の翼が展開される。
その翼は一方通行を覆っていた闇を吹き飛ばしたには留まらず、聖杯の周囲の泥をもそぎ落とす。

「よ、よかったぁー、ってミサカはミサカはほっと胸を撫で下ろしてみたり」
「あ、があァァ、あああああああああああああああああああああ――――――」
「なんと! ――――グ」

その翼が振るわれると、軽くなでられただけで、聖杯の半分が消し飛び、臓硯の体はバラバラに飛び散った。
宙を舞った臓硯は、ボトボトっと濁った音を立てて地に叩きつけられる。
187 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/21(火) 23:24:23.76 ID:MOYqZWMo
「もういいんだよ、だいじょうぶだよ、ってミサカはミサカはあなたを宥めてみる」
「ぐ、が、ごォォおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおォォおおおおおォおおおおおおおおおおお」

しかし、その勢いは留まることはない。
慌てて駆け寄ろうとした打ち止めの体が、突然後ろから引き止められる。

「―――なんてデタラメ」

―――これが第一位の力だというのか?
凛は打ち止めの体を抱き止めながら、その光景に唖然とする。
この黒い翼は並の宝具を遙かに凌駕する威力を放っているのではないか?

「行かないと、離してー、ってミサカはミサカはじたばたと暴れてみる」
「無茶よ、あんなのに近づいたら一瞬でバラバラにされるわよ!」
「でもミサカならだいじょうぶ、ミサカじゃないとだめなんだよ、ってミサカはミサカはなんとか説得してみる」
「ならなおさらダメよ、貴女がいなくなったら誰が彼を―――」

「―――行かせてあげて欲しいんだよ」

そこに助け舟を出したのはインデックスだった。
188 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/21(火) 23:27:57.83 ID:MOYqZWMo
「この子なら止められるんだよ。―――私はそれを信じられる」

インデックスは力強く頷く。
凛は一瞬だけ躊躇するもすぐに手の力を緩める。

「ありがとー、ってミサカはミサカはお礼を言ってみる」

打ち止めはそういって笑いながら軽く凛に頭を下げる。
そして地獄とも言える光景の中心に嬉しそうに駆けて行く。

「おおォォおおおおおおおおおおおおおがああァァああああああああああああああああああああ――――――」
「もうだいじょうぶだよ、もう全部おわったよ! ミサカは無事だよ! あなたのおかげだよ、ありがとう、ってミサカはミサカはあなたに感謝してみる」

「お、おォ―――――おあ、あ―――」

打ち止めが一方通行に手が届くほど目前まで顔を近づけると、荒れ狂うように暴れていた一方通行の動きがピタリと止まる。
やがて、黒い翼が薄れていき、完全に消えると、意識を失ったのか、打ち止めを抱き寄せるようにもたれかかる。

打ち止めはふらつきながらもその一方通行を受け止め、力強く抱きしめる。
189 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/21(火) 23:30:24.70 ID:MOYqZWMo
「―――うそ、ほんとに止まった!?」
「だから言ったんだよ、だいじょうぶだって」

驚きで目を丸くする凛に対して、インデックスは自慢げに胸を張って言う。
それにしても、と、凛は臓硯を一瞥すると聖杯を見る。

「半分程吹き飛んでるけど、その、ひょうかって子はだいじょうぶなの?」
「……見てみないとわからないかも」

そう言うと二人は聖杯に近づく。

先ほどの一方通行の攻撃で一時的に攻撃が停止しているのか、あるいはその機能そのものが死んだのか、攻撃はなかった。
凛にはパッと見てもどういう状況なのかはっきりわからなかったが、インデックスはすぐに理解できたようだ。

「―――よかった、これならきっとだいじょうぶなんだよ」

インデックスのその言葉に、ほうっと一息つくと、凛は頷く。
190 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/21(火) 23:34:19.82 ID:MOYqZWMo
「それで、聖杯の破壊の方はできそう?」
「たぶん……けど少し暴走が始まってるからちょっと大変かも」
「でしょうね―――ま、そんな気はしてたわ」
「だいじょうぶだよ、そのために私がいるんだから。うん、やらなきゃいけないのは、停止、分離、消滅かな。―――りん、力を貸して」

じっと目を見つめてくるインデックスに凛も力強く頷く。


「―――いやー、相変わらず派手にやったにゃー」

その後ろから、音もなく近づいてきた男が独り言のように声をかける。
それに凛は振り向いて一瞬身構える。

「っ! ―――土御門? アンタどこに、って―――」

凛はそれを土御門だと認識すると緊張を解き、今までどこにいたのか責め立てようとする。
だが、その血塗れの姿を見て停止する。
191 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/21(火) 23:36:58.03 ID:MOYqZWMo
「……アンタ、それどうしたの?」
「いや、少しばかり魔女とやりあってな」
「魔女? ―――まさか、キャスター?」
「ああ、そうだにゃー。おっと、もう心配はいらないぜい」

その心配という言葉がキャスターのことなのか、土御門の体のことなのかは凛にはわからなかった。
いや、もともと土御門の心配などしていなかったのだからおそらくは前者だろう、と凛は勝手に結論付けた。

「そう、で? あなたはどうしてここに?」
「いちおう聖杯をなんとかしようと思って来たんだが、そっちはお前らにまかせるぜい。俺はゾウケンの居場所を探る」

「……臓硯? そのあたりに転がってるけど」

そういって凛は首だけ動かしてそのあたりを示す。

「いやいや、残念ながらこいつは本体じゃないんだにゃー」
「は? 本体じゃないってどういうこと?」
192 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/21(火) 23:40:45.27 ID:MOYqZWMo
「こいつは虫使いでな、この体は借り物の肉体で本体はどっか別のところにいるんだぜい」
「うーん、虫使いだったら他の人間か動物に潜んでる可能性があるかも」
「そのとおり、ってことで俺はその居場所をこれから探る」
「探るっていったってこの有様じゃ、ね……」

そういって凛は再びそのあたりに散らばる破片を一瞥する。
しかし、インデックスはそれを否定する。

「これが仮の体だとしたらこのぐらいばらばらでも生きてると思うんだよ」
「え――――そうなの?」

その凛の問いに土御門は頷く。

「そうだぜい。まったく、一方通行に殺すなと言っておいてよかったぜ。なるべく無傷で捕えるように言ったのににゃー」
「……いや、アイツそんなことこれっぽっちも気にしてたとは思えないんだけど」
「まぁそんなことはどうでもいいにゃー。とりあえず聖杯は頼んだぜよ」

その言葉に従いインデックスは聖杯の解析に入る。
そして土御門は折り紙を取り出し、詠唱を始める。

―――凛もその一連の滑らかな動作に一瞬違和感を忘れる。
193 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/21(火) 23:43:57.84 ID:MOYqZWMo
「―――え? ちょっと待って、あなた魔術使えないんじゃ……」
「ああ、そうだぜい。……カミやんがここにいなくて助かったぜよ」

そういうと、土御門はゴポッと血の塊を吐き出す。
今の魔術の弊害か、体中の傷も開いて血が溢れてくるのもわかる。

凛が唖然として見ていると、しばらくして土御門はほうっと一息つく。

「……若干面倒なことになったな」

そしてそう呟くと、その場に倒れた。

「ちょ、ちょっと! だいじょうぶなの?」
「ああ、心配はいらない。このくらい寝てれば治る。とりあえず聖杯と禁書目録、あと、コイツの始末を任せた」

土御門は横になったまま臓硯の肉片を指差す。

凛は何か言おうとするが、それは無駄なことだと考え、一つ溜息をつくとポケットから宝石を一つ取り出す。
それを詠唱と共に投げつけると巨大な炎が生まれ、臓硯は一瞬で灰に帰す。
炎が消えるのを見届けると、凛はインデックスの元へ向かう。

そして土御門は倒れたまま首だけ捻ると、一方通行とそれを支えて歩く打ち止めの姿を最後に目を閉じた。
194 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/21(火) 23:50:35.24 ID:MOYqZWMo
今日はここまでにします

本来は聖杯に対して、ルールブレイカー→イマジンブレイカー
のコンボで破壊する予定だったんだけど全然違う話になってしまった…

ライダーに対しての姫神の吸血殺しうんぬんもやりたかったんだけど
姫神を戦場に引っ張り出すのが難しくて断念したのもちょっと悲しい


それにしてもやっぱり土御門は血塗れにしてなんぼだな
195 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/21(火) 23:51:31.05 ID:0.2P1sAO
乙!
196 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/21(火) 23:52:54.36 ID:DzITl7Mo
姫神出すなら真祖のアレも、ついでに七夜
乙した
197 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 04:56:30.86 ID:RTuFbyIo

英雄王キター
そのうち騎士王もでてくるんかなー
198 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/22(水) 21:54:45.95 ID:swzgqLAo
予想外の英雄王の登場に戸惑ったのは自分自身でした
普通に戦ったら倒せそうにないし


というわけで投下します
199 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/22(水) 21:55:54.08 ID:swzgqLAo
Oct.16_PM 07:58


「―――どうしてお前がここにいるんだ? お前は聖杯が消えたときにはまだ俺と戦っていたはず」

士郎は、英雄王に問う。

「たわけ、もう忘れたか。我が最後に聖杯の孔に呑まれたのを」
「あ――――」

そうだった、と士郎はすぐに自分の考えを改めた。
あれが聖杯の孔だったのだから、英雄王がここにいることは必然。
いや―――むしろ今まで出てこなかったことの方が不自然と言えた。

「なら、なんで今まで出てこなかった。お前が他のサーヴァントと協力していれば俺たちはもう全滅しているはずだ」
「―――く、ククク、くははははは、はははははははははははははははははは!!」

今の士郎の発言がそれほどおかしかったのか、英雄王の笑い声があたりに響き渡る。
200 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/22(水) 21:58:20.74 ID:swzgqLAo
「どうした、何がおかしい」
「何が、だと? 笑わせるな雑種。くく、なぜこの我がこんな雑魚どもと協力せねばならん。貴様らがまだ生き残っているのはこいつらが弱すぎるせいであろう」

「―――――ぬ」
「どこの誰か知りませんが、それは聞き捨てなりませんね。私たちが雑魚?」

その英雄王の発言に反応したのは二人のサーヴァント。
侮辱を受け、ライダーは特に強く反発する。

「ああそうだ。どれ、あとは我がやっておく、貴様は巣穴にでも引っ込んでいろ、蛇女」


「―――その発言、死をもって償いなさい」

そういうと、ライダーは眼帯に手を掛ける。
その様子に戦闘に入ろうとしたことを悟った士郎は慌てて叫ぶ。

「やめろ、ライダァァアアアアアアアアアアア―――」
201 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/22(水) 22:01:18.80 ID:swzgqLAo
そのあまりの必死な咆哮にその場にいた全てが止まる。

上条達は、士郎がなんのためにライダーを止めようとしたのかわからない。
サーヴァント達は、士郎がなぜ挑発されたライダーを止めようとしたのかわからない。
英雄王は、士郎がどうして敵のはずのライダーに慈悲をかけて止めようとしたのかわからない。

いや―――とっさに叫んだ士郎ですらわかっていなかったかもしれない。

「―――いえ、この男は殺します」

しかし、ライダーは冷たく言い放つ。

「我を殺す、だと? ―――蛇風情がふざけたことを」

英雄王は怒り、虚空へと腕を突き出す。
それに遅れてライダー眼帯を解き放つ。


「――――――自己封印・暗黒神殿(ブレイカーゴルゴーン)――――――」
202 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/22(水) 22:05:08.40 ID:swzgqLAo
ライダーの石化の魔眼キュベレイ、いかに英雄王といえどその魔力では本来それを耐えきることはできない。
もちろん―――何もしなければ、だが。

「―――ク、愚かな」

そういうと、英雄王は中空から盾を取り出し、ライダーの方へ向ける。
それは美しいほどに磨きぬかれた鏡の盾だった。

「そん―――――――――な」

その鏡により魔眼の効力は己へ返る。
それでもライダー自身がそれによって石化することはない。
―――故にライダーの動きが止まったのは驚愕から、そしてその時間は一瞬。

しかし、その一瞬はサーヴァントにとっては致命の時間。
その一瞬でライダーに肉薄した英雄王の手には、首刈りの鎌―――ハルペーが握られていた。

「ライダァァアアアアアアアアアアアアアッ!!」

再び士郎が吼える。
無駄だとはわかっていながらも。
ざんっ、という音がして―――ライダーの首はそれだけで刎ね飛ばされる。
203 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/22(水) 22:08:01.62 ID:swzgqLAo
「……ライ、ダー……」

静寂に士郎の呟きだけが響く。
すぐにライダーは光の粒となって消え去る。

その静けさのなか、一同の心を恐怖が蝕む。
今までの戦いの中でも、もしかしたら命を落とすかもしれない。そう感じることはあった。
だが、今襲われている恐怖はそれとは質の異なるものだ。

「……な、なんなんだ、あいつは? サーヴァントがあんなにあっさり……」

沈黙を破り、上条は士郎に尋ねる。

「あいつは古代メソポタミア、ウルクの王―――最古の英雄王ギルガメッシュだ」
「ギルガメッシュ? というとギルガメッシュ叙事詩の、ですか?」
「ああ、とにかく最古の王であるあいつはあらゆるものの原典となる物を持っている。だから、サーヴァントじゃあいつには勝てない」
「それって、サーヴァントは弱点を突かれちゃうってことですよね? ……さっきのライダーみたいに」

士郎は五和のその問いに頷く。
とは言っても生き残っているのは、傷を負い武器を失ったアサシン、それに―――。
204 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/22(水) 22:11:34.21 ID:swzgqLAo
「……アーチャー、無事だったか」
「ぐっ、とても無事、とは言い難いな。―――数分もつかどうか、といったところか」

体中を串刺しにされながらもはや死に体といった状態ながらも、アーチャーはなんとか生き延びていた。

「ふ、ははははははは!! 相変わらず生き汚いな、贋作者よ」

その今にも消え果てそうなアーチャーを見ながらギルガメッシュは笑う。

「―――ふっ、どうやらまた私に殺されたいようだな、英雄王よ」

それに対してアーチャーも余裕ある笑みをもって返す。
その言葉にギルガメッシュは表情を凍らせる。


「……死ね。―――――――――王の財宝(ゲートオブバビロン)」

その言葉と同時、ギルガメッシュは指をパチンと弾く。
それを合図にギルガメッシュの背後に多数の武器が浮かぶ。

その宝具の蔵に対するため、二人もまた剣を複製する。

「―――I am the bone of my sword.(体は剣で出来ている)」
「投影、開始(トレース、オン)」
205 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/22(水) 22:15:37.81 ID:swzgqLAo
音の嵐。
誰も手に持つことのない剣によって激しい剣戟が繰り返される。
ギルガメッシュの宝具の雨に、士郎とアーチャー、二人の投影による剣製で対抗する。

「ぐっ、なんだこりゃ。……すげぇな」
「な、何が起こってるのか全然わからないわ」
「……あの剣はどこから出て来て? テレポートの一種ですの?」

「あれは、投影魔術といって、二人はその場で剣を複製しているんです。あの、ギルガメッシュのはちょっとわかりません」

現在の状況を魔術師である五和が簡単に解説する。
しかし、上条はともかく、魔術に疎い二人にはほとんどわからない。

「で、状況的にはどうなんだ?」
「今は均衡していますけど……そのうち追いつかなくなるかもしれません」
「そっか、良くはないってわけだな」

そういって上条は右手を強く握り締める。
おそらくは自分の手なら触れば剣を消すことはできるだろう。
だが、この嵐のように剣が飛び交う中に入っていくことは自殺行為でしかない。
206 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/22(水) 22:18:36.09 ID:swzgqLAo
「……くそっ、何も出来ないっていうのか」
「いえ、そんなことありませんよ。―――状況は必ず動きます」

そう言って五和は軽く微笑みながら、上条の拳にそっと手を添える。

「……そうだな、二人を信じよう」

上条もそれに力強く頷く。
ちらりと美琴と黒子の方を窺い見ると、二人はその光景に呆然と見入っていた。

「御坂、お前はまだ余裕あるのか?」
「えっ、そうね……けどあれを打ち落とし続けるほどの電池はもうないわ」
「そっか、悪いけどもしかしたらまだ力を借りるかもしれない。準備だけはしといてくれ。―――白井も頼む」
「あ、はい、わかりましたの」

美琴と黒子が了承するのを見届けると、再び剣戟に目を移す。
途切れることない剣戟は先ほどまでと同じく、まるで終わりなどないように続く。
だが、そうではないのはその場にいる全員がわかっていた。

士郎とアーチャーに苦悶の表情が浮かんでいるのと対照的に、ギルガメッシュの顔には笑みが浮かんでいる。
207 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/22(水) 22:21:04.31 ID:swzgqLAo
「くくく、そら、どうした。反応が遅れてきているのではないか?」

このままではいずれ押し潰される、二人は同時にそう感じていた。
なんとかこの均衡を崩さなければならない。

「アーチャー、俺が時間を稼ぐ。お前は―――」
「逆だ、残念ながら私にはもうほとんど魔力がない。―――お前が倒せ、衛宮士郎」

士郎は自分で言っておきながら無理だと思った。
今はギルガメッシュに余裕があり、遊んでいるのはあきらかだ。
だが、こちらが次の手を打とうとしたならば全力で潰しにかかるかもしれない。

「ダメだ、余裕がない」
「ないのならば作るしかないだろう」
「ぐ、わかってる。けどどうすれば―――」

そう尋ねながら士郎はアーチャーの視線の先を追う。

そこにいたのは状況を静観していたサーヴァントだった。

「な―――それは無茶じゃないか?」
「やってみなくてはわかるまい。―――アサシンよ」
208 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/22(水) 22:24:56.55 ID:swzgqLAo
そう呼びかけたアーチャーの手には並外れて長い日本刀が投影されていた。

「ふむ、私に一仕事しろと言うか。―――まぁ良いであろう」

そう言うとアサシンは一瞬で二人のいる場所へ駆けて来る。
そのアサシンにアーチャーは刀を放って渡すと士郎に合図する。
一瞬だけ二人は見つめあうと、士郎は一歩後ろに下がり、アーチャーは前に出る。
士郎は投影をアーチャーに任せ、詠唱を開始する。

「―――体は剣で出来ている(I am the born of my sword) 」
「ぬ――――」

その詠唱にギルガメッシュの顔色が変わる。
それだけで、ギルガメッシュの背後には先ほどまでと比べられない数の武具が浮かぶ。

「死ね、雑種―――」
「そうはさせん」

とっさに狙いを士郎に定めるもそれをアーチャーが妨害する。
しかし、そのあまりの物量に全てを防ぐことは叶わない。
そのアーチャーの守りからこぼれたものを、士郎の前に立つアサシンがその剣技で叩き落す。
209 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/22(水) 22:29:07.97 ID:swzgqLAo
「せやっ――――」
「―――血潮は鉄で、心は硝子(steel is my body, and fire is my blood.) 」

一つチッ、と舌打ちをするちギルガメッシュの顔から表情が消える。
そして宙に手を突き出すとそこから―――自身の剣を取り出す。

「出番だ、起きるがいい――――エア」

「ぬ――――いかん」
「ま、ずい」

その状況に焦りを感じたのは士郎もまた同じだった。
あの剣は自分には読み取れない―――おそらくアーチャーにも。
そして、あの剣を防ぐ術はない。

「―――やれやれ、ここまでか」
「……アーチャー?」

平然と呟くようなアーチャーの声に士郎は疑問の声を上げる。


「―――I am the bone of my sword.(体は剣で出来ている)」
210 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/22(水) 22:32:17.95 ID:swzgqLAo
「な―――――」
「―――――に?」
「ほう……」

アーチャーの投影に二人は一瞬息を呑む。
そしてそれはアサシンにとっても見覚えのあるものだった。
英雄王の剣に対抗するためにアーチャーが選んだのは黄金の剣。

―――かつて、衛宮士郎のサーヴァントであった騎士王の聖剣だった。

「貴様――――セイバーの剣を持ち出したか!」
「ふっ、その剣に対抗できる物が咄嗟には思いつかなくてな」

そう言ったアーチャーの体は、聖剣を投影した反動か、もはや消えかけていた。

「く―――ははは、当然よ。我の剣に対抗できるものなど存在せん」
「―――衛宮士郎」

最後にアーチャーは士郎に顔を向ける。
士郎はそれにああ、と呟き頷く。


「約束された(エクス)――――――勝利の剣(カリバー)―――――」

「――――――天地乖離す、開闢の星(エヌマエリシュ)――――――」
211 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/22(水) 22:35:48.97 ID:swzgqLAo
アーチャーが黄金の剣を振り下ろすと、ギルガメッシュも乖離剣を一閃する。
黄金の輝きと、巨大な竜巻が激突する。
その衝撃に全ての音と光がかき消される。

だが、その拮抗も僅かのこと。
その激突の天秤は少しづつ傾きが大きくなる。

「はははははは――――その剣では我には勝てぬわ」
「ぐ、む。―――ぬぁぁあああああああああああ」

英雄王の放つ破壊の渦に呑み込まれ、アーチャーの姿は消えていく。
さらにはその竜巻はアサシン、そして士郎をも巻き込む。

「ふむ、不本意ではあるが仕方あるまい」
「アサシン? がぁ、は――――」

アサシンは最期に、少しでも士郎を守るようにと思い切り突き飛ばす。
それによって士郎は直撃自体は免れることができたにせよ、その威力は強大。
吹き飛ばされた士郎は意識をも呑まれ、宙を舞う。
その光景を少し離れたところで見ていた上条達は、ただ呆然と見過ごすことしか出来なかった。

―――このときまでは。
212 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/22(水) 22:38:55.34 ID:swzgqLAo
「白井っ、衛宮を頼む!」
「えっ、はいですの」

了解すると黒子は落下地点にテレポートで移動し、士郎を受け止める。
上条はそういうと目で五和に合図を送る。
五和もそれに頷き、二人はいまだ晴れない土煙のなかに突撃していく。

「はっ!」

微かに見える黄金の影に五和は槍を突き出す。

「ぬ―――女、死にたいようだな」

その突きを中空にある剣で受け止めると、剣を取り出し、即座に五和の首を薙ぎにかかる。

「―――させるかよ!」

その剣を上条は右手で受け止める。
上条の右手に触れた剣はパリン、と硬い音を立てて消滅する。
213 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/22(水) 22:41:36.44 ID:swzgqLAo
「――――な!?」
「食らえェェえええええええええええええええ」

その現象に驚愕の表情を浮かべるギルガメッシュに、上条は拳を突き出す。

「くっ――――貴様」

上条の拳は咄嗟にその場から離れようとしたギルガメッシュの黄金の鎧に激突する。

「な――――――に?」

ギルガメッシュは再度驚きの声を上げる。
先ほどの剣と同じように、バキン、と音をたてて金色の鎧は崩れ落ちる。

「雑種―――ふざけた真似を!」

次に浮かぶのは驚きではなく憤怒の表情。
ギルガメッシュは即座に上条に向かって剣を放つ。

「くっ――――」

上条はそれを再び右手で消滅させる。
214 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/22(水) 22:47:46.44 ID:swzgqLAo
「ほう、やはり右手だけしか使えぬようだな」

ギルガメッシュが手を天に掲げると剣が浮かび上がる。
―――ただし、今度の剣は五本。

「―――かわしてみるがよい」
「く、そ――――」

(―――かわしきれない!?)
だが、剣が射出された瞬間光が走る。
その五本の剣は美琴が放つ雷撃の槍によって全て打ち落とされる。

「そう簡単にやらせるかっての」
「チィッ―――――まだあがくか、雑種ども! ならば――――――なんだと?」

唐突に、ギルガメッシュの意識がそれる。
その突然の異変にギルガメッシュは慌てて遠くに目を向ける。


「馬鹿な、聖杯が消えた―――だと?」
215 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/22(水) 22:51:44.66 ID:swzgqLAo
その言葉に全員が同じ方を向く。
確かにいままであった禍々しい光が完全に消えている。

「ははっ、インデックスと遠坂か、やってくれたぜ」
「くっ、おのれ―――我の聖杯を破壊するとは!」

その言葉に違和感を覚えた上条は問う。

「なんだって? 聖杯がお前の物ってどういうことだ?」
「たわけ。―――この世にある全ての財は王たる我のものに決まっておるだろうが」

上条は初めそういうもののたとえなのかと思った。
だが、ギルガメッシュの様子から本気でそういう意味で、本気でそう思っているのだと感じた。

「お前、本気でそんなこと言ってるのか?」
「はっ、それが事実であろう。国も民も、全てはこの王たる我にとっては己の物に過ぎない」

「ふざけるな! そんなものが王であってたまるか」
「ほざくな、雑種。―――それこそが王だ。我こそが王だ」
216 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/22(水) 22:56:26.03 ID:swzgqLAo
決して噛み合うはずのない二人の会話。

「俺は認めない。そりゃ確かにいただろう。お前みたいなやつも。そんな王も。だけど本当の王っていうのはそんなものじゃないはずだ」

目の前にいる男、ギルガメッシュは王なのだろう。
上条にもそれはわかる。
その風格は上に立つにふさわしいものかもしれない。

「王として、国のために敵と戦い続け、国のために味方からも恨まれて、それでも国のために自分自身を犠牲にし続け、そして国のために尽くし死んでいった」

だが、それは別の話だ。
この男が王であるならば、そうでない王だってまた存在したはず。

「そんな誇り高く、立派な王だっていたはずだ。それでもお前が、王だからって国も民も、そして全てが自分のものだって言うなら――――――」

その上条の叫びは士郎にも届いていた。



「――――――――――――まずはそのふざけた幻想をぶち殺す」
217 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/22(水) 23:00:33.97 ID:swzgqLAo
そのとおりだ。
いたはずだ。
そんな王が。
それを知っている。覚えている。
国のために自分を殺し、全てを犠牲にし、国に尽くし、最後には国にさえ裏切られた。
それでもなお、王としての誓いを守り続け、国のために戦い死んだ。
それが誰にも理解されることがなかったとしても。

―――そんな誇り高き騎士王が。

それが間違いだったはずがない。
だから認められる筈がない。
こんなやつが、こんなものこそが王だとは。
ならば、戦わなければならない。

「が、ああァァあああああああああああああああああ―――!!」

士郎は震える体を起こし立ち上がる。

「な―――――に?」

「―――幾たびの戦場を越えて不敗(I have created over a thousand blades. )」
218 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/22(水) 23:03:50.68 ID:swzgqLAo
ギルガメッシュはその声に咄嗟に反応する。
その位置を見やると、士郎は立ち上がり、再び詠唱を続けていた。

「―――ただ一度の敗走もなく、ただ一度の勝利もなし(Unaware of loss.Nor aware of gain.)」
「雑種―――させると思うか?」

ギルガメッシュはその場から飛び退くと、再び自らの剣―――乖離剣エアを取り出す。
その素早い対応に士郎は焦りを覚える。

―――あの剣を防ぐことはできない。
先ほどのアーチャーのように武器を作るべきだろうか。
あるいは盾で受け止めるべきだろうか。

―――そのとき、走り出す上条と目が合う。
その目をみて、士郎は頷く。

「―――担い手はここに孤り、剣の丘で鉄を鍛つ(Withstood pain to create weapons,waiting for one's arrival.) 」

士郎はそれを信じて詠唱を続ける。


「死ね―――――天地乖離す、開闢の星(エヌマエリシュ)――――――」
219 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/22(水) 23:06:57.85 ID:swzgqLAo
再び振り払われたその剣に空間の断層が発生する。
その全てを呑み込まんとする暴風の渦は、極光と爆音を撒き散らしながら士郎へと突き進む。

その風と士郎の間に一人の影が割り込む。

「おお、あァァァああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!」

上条は右手を振りかぶると破壊の渦に突っ込んでいく。
目も、耳も潰れてしまいそうな中、その暴風に向けて正確に拳を突き出す。
風の断層とその右手が音を立てて激突する。

その光景にギルガメッシュも驚愕する。
上条もまた驚きの声を上げる。

「な――――に? 我のエアを?」
「なっ―――――?」

「―――ならば、我が生涯に意味は要らず(I have no regrets. This is the only path.) 」
220 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/22(水) 23:09:56.48 ID:swzgqLAo
(―――消えない?)

しかし、その上条の驚きは正確ではない。
その右手は確実にその力を打ち消している。

―――だが、その速度が追いついていない。

(―――これじゃまるであのときみたいだ……)
一瞬そんな言葉が脳裏をよぎるが、それがいつのことだったかは思い出せない。

「うおォォおおおおォォおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお――――――!!!」

その暴風が全て打ち消されるとほぼ同時に、上条の体はその衝撃に吹き飛ばされる。
そのままノーバウンドで壁に打ち付けられると、ゴフッと肺の空気を全て吐き出し意識を失う。
その様子にあわてて駆け寄って行こうとする三人の姿がちらりと映る。

士郎はその光景を横目で見ながら、心の中でだけ感謝を述べる。
221 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/22(水) 23:11:10.94 ID:swzgqLAo
―――そして詠唱を完了させる。


「―――――――この体は、無限の剣で出来ていた(My whole life was "Unlimited blade works")」

その瞬間世界に炎が奔る。
一瞬のち、世界は荒野に塗り替える。
そこは剣の世界。

「いくぞ、英雄王―――――剣戟の極致、もう一度受けてみろ」
「チィ――――」

剣を構えると、士郎はギルガメッシュへと突進する。
222 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/22(水) 23:19:23.81 ID:swzgqLAo
Oct.16_PM 08:24


「ごめんね……また、迷惑をかけちゃったみたいで」
「ううん、そんなことないんだよ。ひょうかが無事で良かったんだよ」

凛とインデックスは聖杯の解体に成功した。
聖杯が消えた今、残されたのは風斬氷華だけだった。
だが、風斬は浮かない表情を浮かべる。

「でも……他の人にも……そっちの人にも迷惑だったし……もしかしたらとんでもないことになってたかもしれないし」

風斬はそう言っておそるおそるといった風にちらりと凛の方を見る。
しかし、凛はそれを笑って否定する。

「そんなことないわ。どちらかというと聖杯はわたしたちのせいだし。あなたは巻き込まれただけでしょ」
「けど……私がいなければこんなことにはならなかったと思うし」
「それも違うわ。あなたがいなければ、そのときは違うところで違うものを使って行われたかもしれない」
「そうなんだよ。それにとうまも喜んでたんだよ」

「……えっ?」
223 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/22(水) 23:22:43.38 ID:swzgqLAo
その言葉の意味がわからず、風斬は首を傾げる。

「ひょうかも一緒に戦ってくれてるんだ、って。ひょうかが聖杯の力を抑えてくれてたんでしょ?」
「あ……うん。あんまり役には立たなかったかもしれないけど」
「いえ、とても助かったわ。あなたの言うとおり聖杯が暴走してたらとんでもないことになってただろうし。わたしからもお礼を言うわ」

凛にも感謝の言葉を述べられ、風斬は少し畏まる。
少し俯いた後、思い出したように顔を上げて告げる。

「あの……聖杯から出てきた人達なんだけど……」
「聖杯から? ああ、サーヴァントのこと?」
「うん、たぶん。……聖杯は消えたけど、その人達はしばらく消えないと思う」

その言葉に凛は思い出す。
士郎たちはまだ戦いの渦中にあることを。
聖杯さえ消してしまえば、終わりかと思っていた凛は焦りを覚える。

ほとんど見えなかったが、最後にアーチャーを貫いた攻撃は、あの英雄王のものだったのだから。
224 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/22(水) 23:25:39.59 ID:swzgqLAo
「……まずいわね。急いで戻りましょ」
「うん、そうだね。それじゃひょうか、またなんだよ」
「うん……またね。気をつけて」

そういうと風斬の体はノイズがかかったようにぶれ始める。
笑ってインデックスに手を振ると、その姿はやがて消える。
まるで映像が消えていくかのようなその様子を凛は呆然と見つめる。

「……え? どういうこと?」
「ん? 私もよくわからないんだよ。けどこれでいいんだよ」

結局凛にはわからなかった。それでも彼女がいいと言うならばいいのであろう。

―――そういえば、彼女のことを天使と呼んでいたな、なんてことを思い出す。
凛は頷くと、インデックスとともに走り出す。
225 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/22(水) 23:28:25.76 ID:swzgqLAo
Oct.16_PM 08:32


剣戟は士郎が優勢だった。
結局のところ、ギルガメッシュは剣の使い手ではない。
かつての戦いのときと同じように、この場では士郎が一手速かった。

「す、すごい……」
「これって何なの?」
「よくはわかりませんが、何かすごいってことはわかりますの」

倒れた上条に駆け寄った三人は、その光景を見て声を上げる。
魔術に疎い二人からすれば何が起こっているのかなどわかるはずもない。
ただ、周囲の風景が一変したことに驚きの声を漏らすだけだ。
そしてその現象を知る五和もまた呆然としていた。

「こ、これは固有結界といって、心象を世界に侵食させるもので、もはや魔法に近い魔術なんです」
「……魔法に近い魔術、ですの?」
「っていうか魔法と魔術って違うの?」

「ああ、えっと……」
226 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/22(水) 23:31:02.94 ID:swzgqLAo
そこで五和は言葉に詰まる。
魔術と魔法の違いを魔術も知らない人に伝えるのは難しい。

五和はすぐに説明を諦め、話を続ける。

「と、とにかくですね、簡単に言うと、これが衛宮さんの心の世界なんです」

「これが―――」
「心の世界、ですの?」

自分で言いながらも、五和は感じていた。
初めて見る固有結界というもの。
けれどこれが心象世界と言われたならそれは少し寂しい気がする。
ただ広がる荒野に、墓標のように突き刺さる剣。
こんなものが衛宮士郎という人間の心に広がっているというのだろうか?
その五和の想いが伝わってしまったのか、美琴と黒子も訝しげに五和の様子を窺う。

―――だとしても、やはり自分たちが口出しできるようなことではないのだろう。
227 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/22(水) 23:33:37.22 ID:swzgqLAo
「よくはわからないけど、これって優勢なのよね?」
「ええ、そう思います。このままならじきに勝負はつくと思います」
「このままなら、ね―――」

その言葉に若干不安は覚えるも、確かに言っていることに間違いはなさそうだ、と美琴は感じていた。
素人目にみてもやはりギルガメッシュが押されているというのは間違いないだろう。

「ぐ――――おのれおのれおのれっ」
「はぁっ!」

そうしてギルガメッシュも焦ってはいた。
だが、防戦一方ながらも隙を窺い続ける。
そして、果てしなく続くと思われた剣戟の末、一瞬できた隙を見逃さず、ギルガメッシュは切り札を切る。


「―――――天の鎖よ!」

その瞬間、虚空から出現した鎖によって、士郎の体はその場に縫い止められる。
228 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/22(水) 23:36:34.79 ID:swzgqLAo
「な――――く、そっ」
「ふはははは―――雑種、これで終わりだ。くくっ、せめて最後はこれで葬ってやろう―――」

そう高らかに笑うと、ギルガメッシュは門に手を差し入れる。
そこから取り出されたのは、またしても乖離剣エアであった。

「―――ま、ずい」

士郎の顔に焦燥が浮かぶ。
なんとか鎖を振りほどこうともがくも、一向に外れる気配はない。

「くく、元々は神の雄牛を捕らえるためのものではあるが、人間の力でどうにかできるものではないわ」


「――――――だったらこの右手ならどうだよ」
229 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/22(水) 23:41:36.41 ID:swzgqLAo
突如、パキンと軽い音を立てて鎖はもろくも崩れ去る。
ふらふらになりながらも、上条は力強く手を突き出す。

「な――――に?」

ギルガメッシュの顔に浮かぶ困惑。
それは己の鎖が破壊されたことに対して、ではない。
おそらくこの少年の右手は全ての力を無に帰すのだろう。
乖離剣エアの一撃さえ防いだ右手だ、鎖が破壊されることもまた道理であろう。

しかし……ならば、なぜ―――。


「当たり前だ。そんなこともわからねぇのか。――――――この世界はそんなちっぽけな幻想なんかじゃねぇんだよっ!」

その瞬間、己の不利を悟ったギルガメッシュは慌てて飛び退く。
そして、同時に、二人を吹き飛ばすためにエアを構える。
230 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/22(水) 23:44:29.87 ID:swzgqLAo
「させるかよ。―――御坂ァァあああああああああああああッッ」
「わかってるっての。―――黒子」
「了解ですの、お姉様」

上条の声に反応して美琴はその手を自分の顔の前に翳す。
そしてその美琴の声に反応して、黒子は美琴に触れ、ギルガメッシュの死角へと転送する。

「これで今日は打ち止めよ。―――行っけぇぇええええっ!」

突き出された腕から放たれるのは雷撃の槍。
その威力と精度はまさにエレクトロマスターの名にふさわしいものだった。
それは死角からギルガメッシュの剣を正確に打ち抜き、軽々と弾き飛ばす。

「な、ば―――かな」
「うおォォおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

ギルガメッシュがそう漏らすと同時に上条は咆哮し、地を駆ける。

「たわけ、まだだ」

その上条を迎え撃とうと、ギルガメッシュは逆の手をもって再び虚空に伸ばす。
231 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/22(水) 23:48:54.58 ID:swzgqLAo
「―――七教七刃っ!」

その腕を五和の放つ七つの刃が襲う。

「ぐっ――――」

ギルガメッシュが掴み取ろうとした剣は、それによって地に落とされる。
その隙をつき、咆哮とともにその右手を叩きつける。

「おォォおおおおおおおおおおおおあああァァああああああああああああああああああああっ!!」
「が―――――ぁ」

上条の拳を顔面にまともに食らい、ギルガメッシュはその衝撃にたたらを踏む。

「―――――終わりだ、英雄王」

すでにその瞬間には士郎はギルガメッシュに肉薄していた。
232 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/22(水) 23:52:51.75 ID:swzgqLAo
そしてそのまま剣を握り締めるとそれを勢い良く振り下ろす。
奇しくも、その剣はかつてのパートナーの剣―――――勝利すべき黄金の剣(カリバーン)であった。

「が―――――は。……おの、れ」

胸を切り裂かれ、ギルガメッシュは力なく膝を落とす。
そこに上条は追い討ちをかけるように再び拳を構えて突進する。


「食らえギルガメッシュ。――――――もう一度神話の時代からやり直してきやがれ」

突き刺さった拳はドゴン、と鈍い音をさせ、ギルガメッシュは地を転がる。
それを見届けると士郎は膝を落とす。
それと同時に、世界は一変し、闇を取り戻す。
上条もまたふらつきながらその場に踏みとどまっていた。


「―――とうま!」

その声が聞こえた方に反応する。
すべきことが終わったのであろう、笑顔でこちらに駆けて来るインデックスの姿と、その横に凛の姿も見える。

「ふう、これで全部終わっ―――――な!?」
233 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/22(水) 23:56:14.79 ID:swzgqLAo
その二人を迎えようとした瞬間、血に塗れながらも憤怒の表情で立ち上がろうとするギルガメッシュの姿が映る。

「が、は。……許さぬ、ぞ。―――我、の聖杯、を」

最後の力を振り絞るように揺れながらも手を翳したギルガメッシュは、その腕をインデックスと凛に向けて振り下ろす。

「逃げろ! インデックス!」

その声とほぼ同時、虚空から数本の剣が射出される。
その声に危険に気づくインデックスと凛。

―――間に合わない。

上条はそう感じた。
数本とはいえ、一本一本が必殺の威力。
インデックスに耐えられるはずもない。


「―――は、念のため来てみりゃこんなことになってるとはな」

「な――――に? 貴様ぁぁあああああ!」
234 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/22(水) 23:59:21.04 ID:swzgqLAo
だが、その魔弾は届かなかった。
突如割り込んできた朱い槍によって払い落とされる。

「―――えっ、ランサー?」

「よう、久しぶりだな、嬢ちゃん」

そう気軽に言うランサー。
だが、その姿は血塗れ。蒼い体は半分以上血の赤で染まっている。
間違いなく致命傷。凛の目にもインデックスの目にもそう見えた。

「……ランサー」

凛はもう一度呟く。
それには特に返事もせず、ランサーはギルガメッシュのほうに向き直る。

「状況はよくわからねぇが、美味しいとこもらっていくとするか。聖杯のほうは破壊されちまったようだし」

―――それに、と続けランサーはクルリと槍を回転させる。

「―――まだこいつも不発だしな」
「く―――おの、れ」
235 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 00:02:10.75 ID:GXUoEx.o
勝負は一瞬。
ギルガメッシュが最後の力をもって射出した剣弾をランサーは避けることなく体で受ける。
その代わりに距離を稼ぐ。
そこはすでにランサーの間合い。

「刺し穿つ(ゲイ)―――――死棘の槍(ボルク)―――――」

ギルガメッシュが次の動きをしようとしたときにはすでにその心臓は槍に貫かれていた。

「が、は―――――あ……」

最後に血を吐くと、ギルガメッシュは光となって消え去った。
ランサーもふぅ、と一息つくと凛の方を向いて言う。

「どうやら俺のほうもここまでだな。じゃあな、嬢ちゃん」
「ランサー。……ありがとう」

「へっ……」

最後に吐き捨てるように笑うと、ランサーもまた光となって消え去った。
236 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 00:04:39.47 ID:GXUoEx.o
訪れたのは静寂。
そこには何も残っていない。
ただ、戦いの戦禍だけが街に刻み込まれていた。
その街を見回しながら上条は呟く。

「終わった……のか?」
「ああ―――全部終わりだ」

その士郎の言葉に、そっか、とだけもう一度呟く。
そして駆け寄ってくるインデックス。

「とうまー!」
「ああ、インデックスもよくやってくれた。……風斬は? 打ち止めはどうした?」
「ひょうかは無事なんだよ。またどこかいっちゃったけど。あの子は白い人といるんだよ」

「白い人? ……ああ、あの人ってやつか? ならみんな無事ってことだな」
「む、無事って言ってもとうまの怪我はけっこうひどいかも」
「いやいやそんなことありませんよ。この程度なら入院しなくても済みそうだぜ?」

「……とうま、入院が前提っておかしいかも」
「……不幸だ」
237 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 00:07:28.09 ID:GXUoEx.o
頭を抱えていつもの言葉を吐くと、思い出したように顔を上げる。

「お前らは大丈夫か? ―――って美琴どうしたんだ?」
「だいじょうぶですの。ただの電池切れですの」

力を使い果たして動けない美琴に代わり、黒子が返事をする。
ただ抱きつかれて延々と頬ずりを繰り返されている美琴は平気そうではなかった。

「あー、えっとなんだ。元気そうで何よりだ……ほどほどにな」
「もちろんですの」

巻き込まれるのもどうかと思い、上条は適当に言葉を濁す。
五和のほうに視線を移すも、こちらも問題なさそうで、笑顔を浮かべている。

「五和は怪我とかしてないか?」
「え、えっと軽い傷は少し出来てますけど……」

そういって血の滲む腕を押さえる。
その手を上条は何気なく取る。

「どれ、ちょっと見せてみろ」
「って、え、えぇぇええええええええええええっっ」
238 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 00:11:25.00 ID:GXUoEx.o
突然の上条の行動に五和は慌てて距離をとる。
その様子を少しの間不思議そうに眺めた後に頭を軽く下げて言う。

「あー、痛かったか? そりゃそうか、悪い五和」
「い、いえいえいえいえ、平気です。問題ないです」

「―――むー、とうまがまたとうまなんだよ」

その様子に不服そうなインデックスが口を挟む。

「いや、あのですねインデックスさん? なぜに今にも噛み付きそうな構えをしていらっしゃるのでせうか? ってぎゃぁぁあああ」

その発言にインデックスは上条の頭に噛み付く。
ぎゃぁぁあああ、と叫び声をあげる上条を横目に凛は士郎に声を掛ける。

「……だいじょうぶ?」
「ああ、少し休めば問題ない。これで全部終わったんだよな」
「ええ、聖杯は完全に消滅したわ」
「そっか……」

士郎は最後に聖杯があった方に目を向けると誰にも聞こえないように呟く。

「おやすみ。ゆっくり休め――――イリヤ」
239 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 00:17:32.10 ID:GXUoEx.o
ということで今日はここまでです
これでバトルパートは終わりになります、たぶん

残りは事後処理の部分が少しとエピローグ部分になります
ここまで出てきてないあの人やこの人もちょい役で無理やり出てきたりします、たぶん
まだ完成してないのでわかりませんけど


…途中誤爆して死んだかと思った
やっぱり眠い状態で余計なことするもんじゃないね
不幸だ…
240 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 00:19:16.49 ID:sVv/76AO
乙です
241 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 00:20:31.23 ID:gDXRui2o
242 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 00:23:00.43 ID:AFOhOb2o
上条が吹っ飛ぶ前提の作戦とか流石士朗さんおにちく
って思ったら消えなくて安心した
243 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 00:27:33.57 ID:TCZbXKso


士郎とアーチャーのW投影は燃えるシチュだな
244 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 00:31:30.52 ID:04S4iX6o
両陣営の共闘によるラスボス撃破はマジ熱くて手に汗握った
いいなぁかっけぇなぁ
245 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 00:36:11.01 ID:qponCOAo
実に禁書っぽい展開だった
まあ乙
246 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 00:43:48.67 ID:oMaoszco
サーバントとはいえ禁書連中ためらいもなく[ピーーー]のに驚いた
247 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 03:40:42.49 ID:wxkqC2AO
一気に読ませて貰った
土御門が頑張りすぎで死ぬかとオモタ

バーサーカーは一通さんが反射だけしてたら勝手に自滅しそうww
248 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 08:57:50.76 ID:JsjSVpoo
>>246
サー"ヴァ"ントな
249 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 16:39:14.69 ID:Oq4Jiogo
禁書の雰囲気出てるな戦闘が特に
腹抱えて笑えた乙でした
250 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 20:17:09.81 ID:FGN3kVg0
相手が悪かったにしろ、ほとんど見せ場の無かったキャスター哀れ……
251 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/23(木) 21:02:14.18 ID:QuFTiV.o
戦闘描写は初めてだったからどうなるかと思ったけど
楽しんでもらえてるようなのでありがたいです

キャスターについては自分でも若干そう思いました
いちおう、土御門くらいでは相手にならない、みたいな感じはだしてみたんですけど

ここからはもう戦闘はないのでちょっとだらだらした感じにならないか不安ですが
それでは投下します
252 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 21:04:42.21 ID:QuFTiV.o
Oct.16_PM 09:13



戦闘は終わり、疲労からか、一同は座り込んでいた。
ひとまずこれで終わりということで、黒子だけは報告のため本部へと帰還していた。

「聖杯は消えたわけだけどお前らはどうするんだ?」

上条は聖杯のためにこの街にやってきた二人に尋ねる。

「どう、って言われても帰るしかないわよね」
「ああ、全部無事に終わったからな」

「……えっと、今から帰るのか?」

確かに帰れないことはないだろう。
まだ深夜というほどの時間でもない。
交通手段だってまだ余裕さえあるだろう。

「む、そう言われるとちょっと困るな」
「そうね、どこかホテルにでも泊まって明日帰ることにしましょうか」
「そうだな、さすがにこれは疲れた」


「――――いやいや、そうはいかないんだにゃー」
253 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 21:07:05.87 ID:QuFTiV.o
明るく話しかけてきたのは血塗れの土御門だった。

「ていうかお前今までどこ――――って、うおっ血だらけじゃねぇかよ」
「またちょっとばかしやっちまったぜい」

「……にしてもお前、って今さら言ってもしょうがないか。で、何がだ?」
「これから二人には、いや、正確には遠坂には冬木でやってもらわないといけないことがあるぜよ」

「ん? 冬木ってなんだ?」

上条は突然出てきた単語に疑問を抱く。

「冬木ってのは俺たちの住んでる街だ」
「ああ……ってまさかまだ聖杯がなんとかってことか?」
「いやいや、その心配はないから安心していいぜい。問題はゾウケンだにゃー」
「臓硯? 本体がなんとかって言ってたことかしら?」

凛は先ほど土御門が魔術を使っていたことを思い出す。

「そうだ。さすがに管理人として放っては置けないと思うんだぜい」
「そうね。またこんなことやられたんじゃたまらないわね」
「で、うちの教会としてはきちんと始末して欲しいってことだにゃー」
254 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 21:10:36.12 ID:QuFTiV.o
臓硯の本体は冬木にいるということ。
どこにいるか、正確な居場所までは捕捉できなかったこと。
その他について、土御門は凛に説明する。

「ま、話はわかったわ。―――で、今すぐ帰れって?」
「いやいや、俺もさすがにそこまで鬼じゃないぜよ。ちゃんと足は用意させてもらったぜい」

「……それすぐに行けって意味じゃない……」

頭を抱える凛に上条はさすがに気の毒になる。

「なぁ土御門、詳しくはわからないけどそんなに急ぐことなのか?」
「いやー、俺もそうしてやりたいところなんだが、生憎と次の予定が入ってるぜよ」

「ん? なんだ。ってことはお前も一緒に行くのか」

その言葉に土御門は大げさに驚いた風な表情を浮かべる。

「いやいや、何を言ってるんだ? 次の予定があるのは俺じゃないぜい。―――――――カミやんだにゃー」



「…………………………………………………………………………………………はい?」
255 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 21:13:09.54 ID:QuFTiV.o
上条は完全に停止する。
そして一拍置いて絶叫。


「はぁぁあああああああああああああああああああああああああああああ!? なんで?」
「いやだから、カミやんが一緒に行くってことだぜい」

「―――だからなんで?」

土御門は視線を一度上条から外し、インデックスに向ける。

「正確にはインデックスに行ってもらうってことだ。―――だからカミやんも付いて行く。それだけだぜい」

そう言われると上条も弱い。
確かにインデックスが行くならば自分が付いて行かなければならないだろう。

「……うう、わかったよ。というか最初から逆らう余地はなさそうだけどな」
「話が早くて助かるぜい」

そこで上条は少し離れた場所から座って様子を窺っていた五和に顔を向ける。
その隣には力尽きた美琴が疲労困憊といった様相で座り込んでいる。
256 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 21:16:03.14 ID:QuFTiV.o
「えっと、五和はこれからどうするんだ? さすがに一緒に来てくれっていうのは悪いし」
「あ、私もイギリスの方に飛ばないといけないみたいなので、ここでお別れです」

「そっか、あーそういえば神裂も今はイギリスなんだっけ? すぐ行くのか?」
「いえ、建宮さんが近くにいるようで、迎えに来てくれるらしいです」
「ああ、あいつが来てくれるなら安心かな」

その五和の言葉に安堵の息を漏らす。
次に美琴に声を掛ける。

「あー、御坂はどうするんだ? ってしばらくは動けなさそうだけど」
「……んー、ちょっと休めばなんとかなると思うわ」
「そうは言っても放ってはおけないよな。―――あっ、そういえば」

上条は隣に血塗れの土御門がいることを思い出す。
257 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 21:22:03.24 ID:QuFTiV.o
「お前どうせ病院行くんだろ? なら御坂も一緒に連れて行ってくれないか?」
「えっ、私は病院はいいわよ。怪我とかはないし」
「ということらしいぜい。それにこっちも迎えが来ることになってるぜよ」

「そうなのか?」
「そうなの?」

予想外の迎えという言葉に、二人同時に疑問を発する。

「ああ、今はちょっと後始末をしているが、そっちはすぐに来るだろう。―――おっとこっちが先に来たようだな」
「ん? あれか?」

土御門の来た方に目を向けると、大きなキャンピングカーのようなものが見える。
どうやら先ほど言っていた足、とはこれのことのようで、こちらに真っ直ぐ向かってくる。
その車はやがて近くまで来ると、土御門たちと五和たちの間に視線を遮るように停止する。

その扉が開くと、中からは上条の知った顔が覗く。

「は? お前、う―――」

そこで上条は言葉を切る。
中にいたその男が人差し指を立てて唇に当てているのが見えたからだ。
どうやら自分がここに来たことを知られたくはないということなのだろう。

上条が土御門に視線を送るも、素知らぬ顔で無視を決め込んでいる。
258 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 21:26:19.74 ID:QuFTiV.o
「これに乗って行けってことかしら?」
「ああ、そうだ。まぁ快適とは言えないとは思うけどにゃー」

凛の質問に土御門は肯定する。
その答えを聞くと凛は士郎に目で合図する。
それに気づいた士郎は一つ頷くと車へと向かう。

「迷惑をかけたな。けど感謝してる。そっちの五和と、えっとみさかさんだったっけ? ありがとう、助かったよ」
「いえ、無事に終わってよかったです」
「気にしなくていいわよ。……たいして役に立てなかった気もするし」

「む、そんなことないぞ、御坂さんがいなかったらどうなってたかわからないし。とにかくありがとう」
「そうね、わたしからも礼を言うわ、ありがとう」

二人は簡単に礼を述べると、車に乗り込んでいく。
インデックスも五和と美琴に少し目をやった後、土御門をちらりと一瞥すると車に乗り込む。
上条も車に乗ろうとする前に土御門に軽く頼む。

「じゃあ後のことは任せるぞ。……五和、わざわざありがとうな。御坂も」

右手を上げて簡単に礼の言葉を述べると車に乗り込む。
扉を閉めるとすぐに車は出発する。
259 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 21:29:32.54 ID:QuFTiV.o
三人はその様子を無言で見送る。

「……ねぇ」

しばらくの沈黙を破ったのは美琴だった。
となりに座る五和に話しかける。

「あ、は、はい。どうかしましたか?」
「一応聞いておきたいんだけど、あなたもアイツに命を助けられたりしたクチ?」

「えーっと、そう、なりますね。……何度か」

―――何度か。その言葉に美琴の表情が硬くなる。
上条が色々なところで、色々な人間の、色々な問題に首を突っ込んでいるのはなんとなくわかる。
自分もそのうちの一つなのだろう。
けど、それに加えて何度も、とは。あの少年はどんな頻度で巻き込まれているのだろうか。
この間など、暴動が起こっているというアビニョンに居たというではないか。
260 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 21:32:38.34 ID:QuFTiV.o
それに―――と考えたところで思い出す。

「あなたとこの間会ったわよね? お風呂で、覚えてる?」
「あ、そうですね。覚えてますよ」
「あの日か、次の日くらいだったかな、アイツがボロボロのまま、病院を抜け出したみたいな感じで歩いてたんだけど……知ってる?」

「……はい、知ってます」
「……そう」

五和は先日のアックアとの戦いによる上条の負傷、自分の無力さを思い出し、うなだれる。
美琴もひょっとして、とは思ったが、どうやらあの日はやはりこの五和という少女が絡んでいたようだ。
詳しく聞きたいとは思うが、この少女の表情を見るにそれは無粋だろう。
それと同時にもう一つ疑問がわいてくる。

―――記憶喪失。

知っているのだろうか。
261 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 21:35:06.86 ID:QuFTiV.o
何度も助けられたというならひょっとして知っているかもしれない。
だが、おそらく上条は周りの人間に隠そうとしているはずだ。
自分もそれには気づかなかった。
だとするとなんとなく知らない可能性のほうが高いように感じる。

結局、聞く事はできないという結論に至った美琴は溜息をついてもう一度呟く。

「……そう」

再び訪れる暫しの沈黙。
それを破ったのは新たに現れた男だった。

「―――五和、無事か? 迎えに来たのよな」
「あ、建宮さん。わざわざすいません」

その五和の言葉に建宮はいや、と首を横に振る。
土御門のほうを向くと、簡単に挨拶をする。
262 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 21:38:26.01 ID:QuFTiV.o
「うちの五和が世話になったみたいなのよな。……そっちのお嬢ちゃんも」
「いや、特に俺が何かしたわけでない。それに、ま、お互い様ってことだろう」
「私も。別に何もしてないわ。っていうかあなたは……」

その美琴の言葉は、どこかで会ったことが、と続くはずのものだったが、建宮は先に自己紹介をする。

「俺は建宮斎字といって……ま、五和の上司ってとこなのよ」
「はぁどうも……って思い出した。あなたあのときサッカーボール蹴ってた」

「ごはっ、し、しまった。……あ、あーそういえばあれ見られていたのよな」

慌てて視線を逸らす建宮に美琴はまくし立てる。
その横で五和はサッカーボール? と首を捻っている。

「ま、まぁというわけで出発するのよな、五和」
「は、はい。それではみなさんお世話になりました」

そう言うと五和は立ち上がり深々と頭を下げると、足早に去っていく建宮の後を追う。

美琴が一瞬目を離すと、次の瞬間には二人の姿は消えていた。
263 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 21:44:44.00 ID:QuFTiV.o
Oct.16_PM 09:36


「それにしてもなんでお前がいるんだ? ―――海原」

先ほどは咄嗟に口止めされて出せなかった名前を出す。
その質問に対しても海原は爽やかに笑う。

「それは自分が土御門さんとお友達だからですよ」

確かに言っていることには一理ある。
あの夏休みの最後の日、行き場をなくした海原を土御門に任せた。
同じ魔術師同士仲良くなるなんてことはないとは言えないだろう。

だが、それにしてもお友達とはあまりに胡散臭い。

「おや、疑っていますか?」
「疑っているっていうか……まぁ敵じゃないんだろうけど」
「そう思って頂けるならなによりです」
264 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 21:48:39.95 ID:QuFTiV.o
そこで上条は先ほどのことについて尋ねる。

「そういや、さっき喋るなってやってたけど、御坂にばれるとまずいのか?」
「まずいということはないと思いますけど、なるべくこういうことには関わらないでほしいというのが自分の心境です」
「ふーん、悪いとは言わねぇけどさ、こうやって影で御坂を守ってるって知ってほしいとは思わないのか?」

「いいえ、思いません。あの人にはこんな世界は似合いませんから」

そうはっきりと言い切る海原に、上条は思わず笑みを零す。

「そっか、お前がそう言うんならそれでいいんだろうな」
「―――とうま、その人知り合いなの?」

話が一段落したところでインデックスが尋ねる。
士郎と凛も興味あるようなそぶりを見せている。

「えーっと、なんだっけ、こいつは海原って言って、あれ、偽名だっけ? ていうか海原じゃないのか。ま、いいや。……えっとアステカの魔術師だ」
「アステカ? とうまが戦ったトラウィスカルパンテクウトリの槍の人?」
「そうそう、そのトラなんとかの人」

その紹介に士郎と凛もアステカの魔術師が珍しいのか、へぇ、などと漏らしている。
265 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 21:53:29.56 ID:QuFTiV.o
「さっき御坂って名前が出てたけど、それって一緒に戦ってた電気の子のことよね?」
「ああ、そうだ。えっとこいつと御坂はなんていうか、その、つまりだな」

「……いや、もうだいたいわかったからいいわ」
「む、遠坂、今ので何がわかったんだ?」

士郎のその発言に凛は呆れたような目を向ける。
海原はそのまま無言で微笑んでいる。
上条は苦笑いしながらなんとなく頭を手で掻く。

「えーっと、結局このまま目的地まで行くのか?」

上条は多少強引かとは思いながらも話を転換する。

「そうですね、その予定です。……何か問題ありますか?」
「まぁそうだな、俺たちが学園都市から出るのってけっこう大変じゃないか?」
「それですか、問題ないですよ。コネのようなものもありますし」

「えっ、そうなのか? もしかして海原ってすごいのか?」
「いえ、すごくはありませんよ。ただ仕事柄そういうのが必要になるもので」
266 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 21:56:26.01 ID:QuFTiV.o
上条はへぇー、と感心したような声を上げる。
だったら何も問題はないかな、と言いかけたところで思い出す。

「あ―――」
「何か問題でも?」

はっきり言って問題はある。
だが、それを言ってしまうと間違いなく面倒なことになる、と思い、慌てて上条は口を噤む。

「いや、何もない」
「―――とうま、お腹すいたんだよ」

「ってお前、俺が今せっかくそれを言わなかったのになんでわかるんだよ!」

「とうま、お腹すいたんだよ!」
267 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 21:59:37.48 ID:QuFTiV.o
―――知っている。

こうなったらインデックスは生半可なことでは引き下がらない。
上条は助けを求めるため、海原にヘルプの合図を送る。
しかし、海原はそれに取り合わない。
相変わらずこちらをみてにこやかに笑っている。

「えっ、なんで? なんで助けてくれないの?」
「禁書目録の扱いについてはあなたに全て任せればよいと土御門さんに言われてますので」
「いや、これキャンピングカーだろ? 食べ物くらい出してくれてもぎゃぁぁああああ。不幸だー!」

空腹のあまり噛み付くインデックス。
ただ上条の悲鳴だけが狭い車内に響いていた。
268 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 22:02:49.76 ID:QuFTiV.o
Oct.16_PM 09:41


「ね、聞いてもいい?」

美琴は尋ねるも土御門は答えない。
それを無言の肯定と受け取った美琴は続ける。

「アイツは知ってるの? アンタと……その―――」
「―――ああ、俺と一方通行との関係のことか?」

美琴は頷く。

「いや、カミやんは俺と一方通行が知り合いなのは知らないはずだ。ただ、俺がどういう人間かは知っている」
「それって、どういう意味?」
「そのままの意味だ。だからたとえ一方通行と俺のことを知っても割と簡単に受け入れると思うぞ。―――お前とは違ってな」

その言葉に美琴は土御門を睨みつける。
だがすぐに思い直し、一つ深呼吸する。
269 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 22:05:48.37 ID:QuFTiV.o
「……そんなに簡単に割り切れないわよ」
「それが普通だ。ま、普通の人間はこんな事態にはならないがな」

その土御門の言葉に美琴はハハッ、と乾いた笑いを浮かべる

「それにしても……うちのグループは俺以外全員が御坂美琴の元敵とはな。何か因果でもあるのか? ―――なぁ?」


「―――うふふ、さぁ、どうでしょうね」

その新しく聞こえた聞き覚えのある笑い声に、美琴は慌てて立ち上がる。
そこにいたのは結標淡希。

かつて樹形図の設計者の残骸をめぐって美琴と敵対していた人間である。

「どうして……アンタが」
270 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 22:08:16.45 ID:QuFTiV.o
「とりあえずこいつがお前が無事に帰るまでの護衛だ」
「はぁ? そんなの信用できるわけないでしょう!?」
「まぁ、そう言うと思ったが。ここは俺を信用してもらえるか?」

その言葉に美琴は次の言葉を飲み込む。
結標淡希は信用できない。だが、この男は信用出来ると言えるだろう。
さっきの口ぶりからすると、自分と結標の関係も当然把握しているはずだ。

「……わかったわ。けど私の視界からは外れないで」
「意外ね。そんなにあっさりと承諾するなんて。……信用されているのね」

本当に驚いたかのように土御門に視線を向ける。

「ああ、俺も少し驚いている」
「それにしてもあなた以外全員が御坂美琴の元敵ってどういうこと? 私と一方通行はわかるとして、あいつは?」
「知らなかったのか? 正確には御坂美琴個人の、ではないがな。状況によっては御坂美琴の殺害なんかもありえない話ではなかったな」

「は? 殺害? なにそれ、笑えるわね」
271 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 22:11:06.46 ID:QuFTiV.o
突然出てきた聞き慣れない言葉に美琴は身構える。

「……どういうこと? 私を殺す、って?」
「まぁその可能性は低かっただろうがな。―――どちらにしろそいつの幻想はもう殺された」

そう言って土御門は笑う。
詳しくはわからなかったが、その口ぶりからするにおそらくは上条がなんとかしたのだろうか。

―――また、自分の知らないところで何か起こっていたのか?
気持ちの悪い感覚が美琴の体に奔る。
緊張ゆえか美琴はわずかに眼前の二人に対して身構える。

「気にすることはない。今からすれば笑い話にしかならないような話だ」
「そう。けど今そんなこと言われて信用できると思うの?」
「お前は信用するだろう。今のお前では俺たちに勝つ力はないのだから」

そのとおりだった。
少しは体力が戻ったが、戦えるほどの電撃を放つことは出来ないだろう。
そんな自分を殺したいならば二人ががりなら今すぐにでも殺せるはずだ。
272 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 22:14:29.16 ID:QuFTiV.o
結標淡希は大能力者であり、同じく大能力者である白井黒子を上回るテレポーター。
この金髪の男もこんな戦場に平然といるということはそれに準ずる高位の能力者かもしれない。

「……そうね。わざわざ私を護衛なんかする意味ないものね」
「そういうことね、理解が早くて助かるわ。―――あなたはどうするの?」
「俺はこれから病院にでも行かせてもらう。さすがに傷が酷くてな」

「あら、どうしたの? 血塗れじゃない?」

まるで今気付いたかのように振舞う結標に土御門も笑う。

「ハッ、後は任せたぞ」

そう言うと二人に背を向け、歩き出す。
残されたのは二人、かつての敵同士。

「身構えなくて大丈夫よ、敵意はないから。さ、行きましょ」

言うだけ言って結標は歩き出す。
273 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 22:18:22.71 ID:QuFTiV.o
美琴は答えずほんのわずかにだけ頷いてふらつきながらその後に続く。
常盤台の寮への道を静寂とともに歩く。
響くのは四つの足音だけ。
沈黙を破ったのは美琴だった。

「……アンタは、なんのために私を護衛するわけ? あいつに頼まれたから?」

俯きながら前を歩く結標に話しかける。
結標はそのまま歩きながら答える。

「それもあるわ。けど御坂美琴ってのは私たちのグループでは少し特殊なのよ」
「私が……特殊?」

返ってきたのは予想外の言葉。
自分はそんなものとは無関係の人間だと思っていた。
あるいは、またあのときのように、妹達のように何かが起きているのだろうか?
274 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 22:21:26.25 ID:QuFTiV.o
「心配しなくても悪い意味じゃないわ。……あなたはどうしてあの一方通行が仲間ごっこなんてものをやっているか疑問に思わない?」

「―――えっ?」

言われてみればそうだ。
とてもじゃないが仲間と仲良くなんて柄じゃない。
仮に自分独りでは出来ないことがあったとして、仲間を頼るなんてことをするだろうか。

いや―――そもそも出来ないことなどあるのだろうか。

「私たちのグループには各々弱点があるのよ。―――守らなきゃいけないものが、ね」
「弱点? 守らないと? ――――打ち止め?」
「ただ敵を倒すなんてそう難しいことじゃないわ。特に一方通行には。けど何かを独りで守りながらとなると、そう簡単にはいかないわ」

確かに誰かを守りながらの戦いは難しい。
今日の戦いで美琴も痛感した。
ただ打ち止めが傍にいるというだけで全力を出すことが叶わない。
さらに物理的にではなく策略、謀略を駆使されたなら難易度は跳ね上がるだろう。
275 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 22:25:06.59 ID:QuFTiV.o
「わかる? それでも、どんな手段をとっても守らなきゃいけないものがあるのよ」

「……わからないわ」

それに対する美琴の答えは否定。

「……何がわからないのかしら」

それを聞いて結標は少し苛立ったような低い声を出す。

「だったら、私が特殊ってどういう意味よ」
「あら、そういうこと? ふふっ、なんだ、わかってるんじゃない。そういうことよ」

確かに結標の言うとおりだった。
美琴自身薄々ではあるが気付いていた。
それを結標がはっきりと今肯定した。

一方通行にとっては打ち止め。
結標にとっては自分の知らない誰か。
結標の話が事実なら、あの金髪サングラスの男にもそれがあるのだろう。
先ほどの話を聞く限り、おそらく結標らのグループにはもう一人いるのだろう。


そして、もう一人の誰かにとってのそれが――――御坂美琴。
276 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 22:28:12.82 ID:QuFTiV.o
「どうして、私が?」
「それは今さらあなたが知ってもしょうがないことでしょう?」
「……そうね」

今さら自分がその理由を知ったとしてどうすることもできないだろう。

「でも……だったら―――知るべきなんじゃないの?」
「あら、そうかしら? 知らないでいて欲しいことって結構多いものよ?」

これも結標の言うとおりだった。
自分だって巻き込みたくない、なんて勝手な理由で自分を慕うルームメイトに隠し事をして色々やってきた。
きっと黒子はそれでつらい思いもしてきただろう。
それを自分だけは知りたいというのはわがままと言われても仕方ないだろう。

「そっか、私が詳しくは聞いちゃいけないことなのね」
「そういうことよ。―――着いたわ」
277 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 22:30:51.37 ID:QuFTiV.o
話に夢中になっていたからか気付かなかったが、顔を上げるとそこには見慣れた常盤台の寮があった。

「……わざわざありがとう」
「別にいいわ。本当にたいしたことはしてないし。ただ歩いただけよ」

そう言うと軽く右手をひらりと上げ、今来た道を引き返していく。

「……もう一つだけ聞いてもいいかしら?」

その背中に尋ねる。

「何かしら?」
「アンタは守らなきゃいけないものがあるって言ったけど、それってそんなに大事なもの?」

「そう、大事なもの。―――なんとしても守らなきゃいけないものよ」
278 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 22:32:41.00 ID:QuFTiV.o
「……そっか」

―――ならば、彼にとっても。
一方通行にとっても打ち止めはそれほどまでに大事なものということなのだろうか。

「大事なものよ」

結標は今度は笑って、もう一度言った。
美琴も笑って返す。

「そう、ありがとう」


Oct.16_PM 10:17
279 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 22:38:01.18 ID:QuFTiV.o
Oct.17_AM XX:XX


「どうやら着いたようですよ」

疲れからか、いつの間にか四人は車内で眠ってしまっていた。
海原に起こされた上条が外を見ると、外には屋敷のような大きな塀があるのがわかる。

「―――悪い、海原。寝ちまってた」
「いえ、気にすることはありません。寝るくらいの権利はあるんじゃないですか?」
「ははっ、そうかもな。―――おい、インデックス、起きろ」

上条は眠っているインデックスを起こすために声を掛ける。
士郎はすでに目覚めて凛を起こしに掛かっているようだった。

「……んー、もう食べられないんだよー……」
「べったべたな寝言かましてんじゃねぇよ。起きやがれ」
280 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 22:42:37.31 ID:QuFTiV.o
今にもよだれをたらしそうなインデックスの頬をぺちぺちと軽く叩く。

「んー、もうちょっと優しく起こしてほしかったかも。お腹すいたー」
「ぐあっ、起きて即さっきの続きですか。ていうか今お腹いっぱいの夢見てたんじゃねぇのかよ。……もうちょっと耐えてくださいインデックスさん」

つまり困ったときは寝かせておけばいいのか、なんて邪な考えが上条の頭をよぎる。

「む、その顔は悪いことを考えている顔かも」
「いえいえいえいえいえそんなことありませんよ、上条さんが悪いことなんか考えるわけないじゃないですか」

ふてくされたインデックスが凛たちの様子を窺うもそちらはそちらで大変そうだった。

「……うー、士郎。何よ……」
「何よ、じゃない、遠坂。もう着いたぞ、起きろ」
「……わかってるわよ……」

それを眺めていた上条と士郎の目が合う。
281 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 22:45:21.91 ID:QuFTiV.o
「そっちも大変そうだな……」
「ああ、こいつちょっと朝に弱くてな……」
「ならこんな時間は厳しそうだな」
「りんは召喚も使ってるしね」

時計は間違いなく深夜。
それも先ほどまで激闘を繰り広げておいてのすぐの移動だ。
疲労は凄まじいものがあるだろう。
結局、凛がはっきりと目を覚ましたのはそれからしばらくしてだった。


「―――さて、じゃあわたしたちはこれから臓硯のところに向かうわ」
「ああ」

衛宮邸の門の前で、凛がこれからについて話す。
士郎はそう頷く。
それに続いて上条も頷く。

「ああ、悪いけど衛宮くんはここで留守番ね」

しかし、それを凛は否定する。
282 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 22:48:22.66 ID:QuFTiV.o
「……は? なんでさ」
「簡単に言うと衛宮くんに来られると困るから。それ以上は説明できないわ」
「けどそれじゃさすがに納得できないぞ?」
「ええ、納得してもらわなくても結構よ。けど理不尽だと思われてもそれは譲れないわ」

凛のまるで睨みつけるような視線に士郎も折れる。
一つ溜息をつくと首を縦に振る。

「……わかったよ。聞きたいけど教えてもらえそうにないみたいだしな。遠坂けっこう頑固だし」
「ありがとう、けど衛宮くんに頑固とか言われたくないわね」
「む、そうか? そんなこともないと思うぞ?」

「まぁとにかく衛宮はここで待ってるってことだな?」

士郎は肩をすくめるようにして頷く。

「うん、けどとうまもここで留守番なんだよ」

「………………………………はい?」
283 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 22:53:15.85 ID:QuFTiV.o
インデックスの言葉に今度は上条が目を丸くする。

「は? なんでだよ、ここまで来て留守番とかわけわかんねぇ」
「んー、とうまがいると術式の邪魔になったりするからしょうがないんだよ」
「いやいやいやいや、だったら上条さんがここまで来た意味がないんじゃないでしょうか?」
「はっきり言っちゃうとそうなるかも」

「……うぅ、不幸だ。……けど、二人でだいじょうぶなのか?」
「ええ、問題ないわ。臓硯にはもう攻撃するような力は残ってないわ」

凛ははっきりと頷く。
既に自分が持っていた情報。
それから土御門から聞いた話。
それらを基にしてインデックスの知識と照らし合わせると、それは明らかだった。

「じゃあ任せていいんだな?」

上条が改めて確認を取ると、二人は同時に頷く。
284 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 22:57:04.79 ID:QuFTiV.o
「そもそもこれは私たちの問題だから、わざわざあなたが何かしなきゃいけないなんてことはないのよ?」
「いやまぁ、そう言われたらそうなのかもしれないけど、ここまで関わっちまったら放っておけないだろ」

「……もう、とうまはいっつもこうなんだよ。なんにでもすぐ首を突っ込みたがるんだから」
「ならおせっかいさんが首を突っ込みたがらないうちに行きましょうか」

凛はインデックスの頭をポンと叩くと、闇の中へ歩いていく。
上条達に何度か手を振ると、行ってくるね、と笑ってインデックスもその後を追う。
その様子を二人の姿が見えなくなるまで見送る。
残されたのは二人。

「ひょっとすると気を使わせたかな……」

士郎が尋ねるように呟く。

「そうかもしれないな」
285 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 22:59:42.19 ID:QuFTiV.o
上条もそれに頷く。

インデックスの言ったことは嘘ではないだろう。
だが、だとしても途中までなら上条がついていってはいけない理由にはならない。

「……なんか、悪いな。せっかくここまで来てもらっておいて」
「いや、気にしなくていいぜ。それに……あいつもあれでシスターだしな」

「そうか、なら中で二人を待とう」

士郎は上条に中に入るように促す。
しかし、上条は首を横に振る。

「む、なんでさ?」
「いや、ここって魔術師の家だろ? 上条さんが迂闊に入っちまうと……」
286 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 23:00:41.34 ID:QuFTiV.o
上条は右手を前に出し、開いては閉じる。
その仕草を見て士郎もああ、と頷く。

「あー、そんなに気にすることもないと思うんだけどな……」
「いやいや、上条さんは不幸だから必ずハプニングが起こると断言しておきます」

「ま、そこまで言うなら無理にとは言わないけどさ。……じゃ、お茶くらい淹れてくるよ。……何か茶菓子はあったかな……」

そう言いながら士郎は屋敷の中へと姿を消す。

手持ち無沙汰になった上条は、もう一度二人が向かったほうに目をやった。
287 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 23:05:17.22 ID:QuFTiV.o
Oct.17_AM XX:XX


凛とインデックスはとある洋館の前に立つ。

「……ここにいるの?」

インデックスの静かな質問に凛は無言で肯定する。
土御門の魔術では結局、臓硯の居場所をはっきり特定することはできなかった。
けれど、土御門は言った。臓硯は身近な誰かに寄生しているだろう、と。
だとするならば、それは一人しかいないだろう。

魔術回路の枯れ果てた間桐慎二ではなく、その継承者である―――。

「―――りん? どうかした?」
288 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 23:09:22.76 ID:QuFTiV.o
どうやら自分でも気付かないうちに、力が入りすぎていたようだ。

少し落ち着くために一つ大きく息をつく。

「なんでもないわ。行きましょ」

本当に何でもない声でいうと、凛は洋館に侵入する。
インデックスも置いて行かれないように必死で後を追う。

凛はまるで我が家を進むかのように真っ直ぐにある部屋を目指す。
耳に響くほどの無音に圧迫されているかのように、インデックスは縮こまりながらピタリとついていく。

やがて、一つの扉の前で凛は立ち止まると、インデックスの方へ振り返り頷く。
インデックスも了解、と答えるようにそれに合わせて頷く。
凛は一つゆっくり息をつくと、ノックをすることもなく、静かに扉を開く。

「……起きてるわよね?」
289 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 23:14:39.67 ID:QuFTiV.o
時間は深夜。
普通の人間ならば眠りについていて当然。
それは魔術師であっても同じであろう。

ただ、自分の陣にここまで侵入されれば、魔術師として気付かないはずはない。

「……はい、起きてます。何か用でしょうか?」

その暗闇の中で少女は答える。

「ま、用がなきゃさすがにこんな時間に勝手に入ったりはしないわね」
「そうですね。一体何をしに来たんですか?」

「何をって言うか―――臓硯を殺しに、かしら」

何でもないように言い放った凛の言葉に少女の息が止まる。

「あ、勘違いしないように言っておくわ。別にあなたに頼みに来たわけでもないの。ただ、殺しに来ただけ。……意味わかるかしら」
「……はい。言っていることはわかります……」
290 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 23:18:38.84 ID:QuFTiV.o
凛の言っていることは事実であろう。
自分が納得しようがしまいがきっとこの人は殺すのだろう、と理解した。
何が起こったのかはわからない。
けど、何もないのにこんなことにはならない。
ならば、おそらく臓硯は殺される事態になるようなことをしたのだろう。
そう考えればこの状況も理解はできる。

だとすればこの人がすることは正しいのだろう。
この人は、そういう人だから。
ただ、臓硯を殺すことはできない。

いや、正確に言うならば―――。

「つまり―――私を殺すってことですね」
「いいえ、あなたは殺さないわ。―――桜」

はっきりと断言する凛。
しかし、桜は首を横に振る。
291 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 23:21:14.00 ID:QuFTiV.o
「無理です。私の体からお爺さまを取り除くなんてことはできません」
「そうね、私一人では無理かもしれないわ」

凛は自分の近くにインデックスを引き寄せる。

「……その人は?」
「この子は禁書目録って言って、ま、簡単に言うなら魔術のエキスパートよ」
「けど、その人の力で何か出来るとは……」

桜は言い淀む。
この少女には無理だろう。
いや、―――誰であってもなんとかできるようなものだとは思えない。

「だいじょうぶよ。この子の頭の中には十万三千冊もの魔道書の原典があるんだから」
「十万さん、ぜん? ……原典?」
「そうよ。説明はしてあげる。けどどちらにしてもあなたに拒否権はないわ。できることは、このまま任せるか―――私を倒すか」
292 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 23:23:44.59 ID:QuFTiV.o
その凛の言葉でその場の空気が一瞬にして剣呑としたものに変わる。

張り詰めた気配の中、桜はゆっくりと首を横に振る。

「戦いません。―――ね……遠坂先輩に任せます」
「……ありがとう、桜」

その言葉に凛は安堵し、肺の中の空気を出し尽くすほど大きく息をつく。

どうやら気付かないうちにかなり気を張り詰めていたようだ。
その事実に気付き、苦笑いがこぼれる。

「禁書目録、お願いね」
「うん、だいじょうぶなんだよ。もう準備は出来てるから」

そのインデックスの頼もしい言葉に、凛は笑って、ありがとう、ともう一度呟いた。

293 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 23:27:57.84 ID:QuFTiV.o
Oct.17_AM 02;07


「……あァ、どこだァ?」
「おや、起きたかい?」

一方通行が目を開けるとそこは病室だった。
見慣れた風景と、見慣れた医者がいた。

「治療はもう終わったよ。ま、それほど酷い怪我じゃなかったけどね」

槍で刺された肩を見ると包帯が巻かれていて、確かに治療の跡がある。
それにしても、どうなっているのか?
戦闘の途中からの記憶があまりはっきりしない。
結局どうなったのか。
自分はどうやってここに来たのか。

―――いや、そんなことは今はどうでもいい。
今重要なのは―――。
294 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 23:30:56.44 ID:QuFTiV.o
「おィ、クソガキはどうした!」
「ここは病院だ。あまり大きな声を出すものじゃないね?」
「チッ、ンなことどォでもいいンだよ。おィ―――」

「心配しなくても僕は患者の望むものはなんでもそろえる医者だよ?」

そういうとカエル顔の医者は一方通行の腰の辺りを顎で示す。

「あァン? なに―――チッ」

一方通行がその辺りに目をやると、ベッドに突っ伏して眠っている打ち止めの姿があった。

「だから大きい声を出さないよう言っただろう?」
「チッ、ンなとこで寝てンじゃねェよ、クソガキ……」

口から出てきたのはただただ安堵。

「ああ、先に言っておくけど、戦闘は無事終わったと妹達が言っていたよ」
「……そォかい」
295 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 23:34:28.69 ID:QuFTiV.o
―――無事に終わった。

はっきりとは覚えていないが終わらせたのは自分ではないだろう。
だとするならば―――。
一方通行の脳裏をとある少年がよぎる。
おそらくは間違いない。
ならば自分をここまで運んだのはあの少年だろうか?

「俺の他に運ばれてきたヤツはいンのか?」
「いや、今のところは君だけだね」
「そォかい。そりゃ良かったぜ」

「―――ああ、君をここまで運んだのは19090号だよ。それが聞きたかったんだろう?」
「チッ……」

あるいはグループの誰かかとも思ったが、まさか妹達だったとは。
助けようとしておいて結局助けられたのではたまったものではない。
296 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 23:37:10.49 ID:QuFTiV.o
「いいと思うけどね、ただ運んでもらっただけだろう?」
「そうもいかねェだろ……」

「……ふむ、君はどうにも極端なところがあるね。いや、勘違いしているというべきかな?」
「どォいう意味だ?」
「例えるなら君はプラスかマイナスかで物事を考えすぎるということだよ。プラスマイナスとゼロかな? そして自分はマイナスだと」
「それが悪ィってのかよ」

「悪いとは言わないよ。ただ善や悪は結局他人から評価されるもので、実際にそういうものであるとは限らないということだよ?」
「全然意味がわからねェンですけど」
「だろうね。今の話はどこか記憶の片隅においておく程度でいいよ」

そのとき一方通行の腰の辺りでもぞもぞと何かが動くのを感じる。

「おや、お姫様が目覚めるみたいだよ?」
「はァ、お姫様ってガラかよ、このクソガキが」
297 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 23:40:17.45 ID:QuFTiV.o
「……んー、何かよくわからないけど罵られてる気がするー、ってミサカはミサカは目が覚めたんだね!」
「あァ、ついさっきな―――がァ」

目を覚ました打ち止めは立ち上がり一方通行に飛び掛る。
一方通行はその衝撃に呻き声をあげる。

「一応怪我人だからあまり激しくしてはいけないよ?」
「もっちろんわかってるよ、ってミサカはミサカは二回目に挑戦―――」
「してンじゃねェよ、クソガキが」

もう一度飛び掛るために距離を取ろうとした打ち止めを抱きかかえるようにして捕まえる。

「きゃあぁあぁあああ、抱きしめられてるー、ってミサカはミサカは悶絶してみたり」
「ったく、クソが……」
「ま、ゆっくり休むといい。けどあまりうるさくしないようにね」
298 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 23:41:32.30 ID:QuFTiV.o
打ち止めもまた、一方通行の体を力強く抱きしめる。

「……うん、おやすみ」
「あァ……」

そのまま二人はつかの間の眠りに落ちる。


―――次に打ち止めが目を覚ましたとき、一方通行の姿はすでにそこにはなかった。


Oct.17_AM 02:21
299 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 23:47:04.05 ID:QuFTiV.o
Oct.17_AM XX:XX


上条と士郎はしばらくお茶を手にして、塀に寄りかかりながら昨日の出来事について話していた。

「にしても、サーヴァントってほんとすげぇんだな」
「そうだな。やっぱり英雄って呼ばれるだけのことはあるんじゃないか?」

サーヴァントの話になったことで、上条はふと思い出す。

「そういえば、結局サーヴァントって五人しか見てないけど、いや、最後に蒼いやつがいたか?」
「ああ、あれはランサーで、真名はクーフーリン。もう一体はキャスターだな。コルキスの魔女メディアだ」
「ふーん、じゃあサーヴァントってのはその七人だったんだな」

「―――いや、それは違う」
「……どういうことだ?」

士郎は首を横に振る。
その意味を量りかねる上条は尋ねる。
300 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 23:49:36.66 ID:QuFTiV.o
「簡単に言うとギルガメッシュはイレギュラーなサーヴァントなんだ。だからサーヴァントは全部で八体いるってことになる」
「え? そうなのか? ……ああ、そういえば衛宮のサーヴァントがいないのか」

「ああ、だからもともとの俺の、セイバーのサーヴァントを入れて七体だ」
「へぇ、そうだったのか。ま、詳しいことを聞いてもたぶん上条さんにはわからないんだろうけど」
「確かに、説明する分には構わないけど少し複雑になると思うぞ?」
「だろうな。ならいいよ、そんなに詳しいところは」

そう言って、上条は一旦話を打ち切る。
そういえば、とサーヴァントでもう一つ気になっていたことがあったのを思い出す。

―――衛宮士郎と同じ双剣を手に持っていた赤いサーヴァントを。

「サーヴァントだけどさ、あいつ―――あの赤い―――」
「―――お、帰って来たみたいだぞ」
301 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 23:52:23.50 ID:QuFTiV.o
そのことについて尋ねようとしたとき、士郎が暗闇に目をやる。
上条もつられてそちらの方を注視するが、そこにはただ闇があるだけだった。

「は? 見えねぇぞ?」
「ん? ああ、もう少しすればわかると思うぞ?」

その言葉に従い、しばらく様子を窺っていると、暗闇に、白い影が見えてくるのがわかった。
そのとなりにも人影があるのがわかる。

「あの白いのは……インデックス、か? ……にしてもよくわかったな。目いいんだな?」
「そうだな、普通の人よりはいいみたいだ」

そんなことを話していると、近づいてくる二つの影は、次第に輪郭をはっきりさせていく。
お互いが認識できる距離まで近づくと、インデックスは上条に向けてバタバタと大きく手を振る。

「とうまー」
302 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 23:56:08.27 ID:QuFTiV.o
叫ぶと周りの迷惑になってしまうことを気遣ったのか、大きくはなかったが、それでもその声は上条に届く。
それに応え、上条も右手を上げ、インデックスに手を振る。
インデックスはそのまま上条のところまで駆けて来ると、目を輝かせる。

「とうま、私のことを外で待っててくれたんだね?」
「……いや、そういうわけでもなく、上条さんが中に入るとまずいかなーって」

そういって上条はインデックスの前に右手を突き出す。

「とうま、私のことを外で待っててくれたんだね!」
「だー、もういいよそれで。お前の機嫌がいいならそれでいいです」

「ま、でも正解かもしれないわね。あなたが入るとたぶん結界くらいは壊れてたでしょうから」
「……うぅ、やっぱりそうか。入らなくて良かったぜ」

凛の言葉に上条はうなだれる。
303 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/23(木) 23:58:55.37 ID:QuFTiV.o
「……けどこれからどうするかな、どっちにしろ入れないってことだろうし」

そういってインデックスに尋ねようとする。

「―――いえいえ、あなたの行く場所は決まっています」
「げっ、海原……?」
「はい、それでは学園都市までお送りしますよ」

突然上条の背後に気配なく現れた海原は、先ほどまでとなんら変わらない笑顔で言う。

「えっと……今から?」
「はい、今からです」

上条は恐る恐るインデックスのほうを振り返る。
もちろんインデックスはすでに噛み付く一歩手前だ。

「とうま、お腹すいたんだよ」
304 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/24(金) 00:01:57.14 ID:4tb/J2.o
そのインデックスを手で制し、はっはっは、と高らかに笑う。

「いやいや、インデックスさん、そのパターンはすでに上条さんは予想済みですよ。何も用意していないとお思いですか?」

その自信満々の言葉にインデックスの顔が輝く。

「とうま! お腹すいたんだよ!」
「ふふっ、衛宮、例のやつを頼む」

「ああ、少し待っていてくれ」

そう言い残すと士郎は家の中に入ると、すぐに大きな箱のようなものを持って出てくる。

「たいした材料がなかったから、おかずが少しと、ほとんどはおむすびだな」

「お、おおぉぉぉおおおおおおおおおぉおぉおおおおおおおおおおおおおおおおぉ!! ありがとうなんだよ!!」
305 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/24(金) 00:04:49.72 ID:4tb/J2.o
狂喜するインデックスを尻目に、上条は海原に確認を取る。

「えっと、車の中で食べても構わないか?」
「ええ、もちろんです。なにせキャンピングカーですから」

―――にもかかわらず食べるものが何もなかったというのはどういうことだ?
そう言いたい気持ちを上条はぐっと我慢する。

「じゃあ、行くか、インデックス。衛宮ありがとうな。……遠坂も世話になったな」
「いや、それくらいたいしたことじゃない。こっちこそ助かった」
「そうね。だいたい、世話になったのは完全にこっちでしょ。本当にありがとう」

士郎と凛はそう言って笑う。
上条も、そうかもな、と笑う。
インデックスもありがとう、と士郎に深く礼をする。
そして二人に軽く手を振ると車に歩き出す。
306 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/24(金) 00:07:15.41 ID:4tb/J2.o
「ねぇとうま、これ全部食べていいの」
「おお、いいぞいいぞ、好きなだけ食べてもいいぞ」
「ほんと!? けどとうまの分無くなっちゃうかも」

「いいぞいいぞ、俺ならもう食べさせてもらったから―――」

ピタリ、とインデックスの足が止まる。

「―――とうま、先に食べたの?」

―――しまった。
上条は慌てて口を押さえる。
たとえそれが無駄だとわかっていたとしても。

「とうま! 先に食べたの?」
「ええっとですね、あの……少し……だけ」
307 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/24(金) 00:11:23.77 ID:4tb/J2.o
「私が空腹と必死で戦ってるときにとうまは一人だけご馳走食べてたんだね?」
「いやいや、ご馳走なんか食ってねぇよ。っていうと失礼か? けど俺だっておむすびしか食べてねぇよ」
「でも食べたんだね? 私がこんなにも苦しんでいたというのに」
「つーか何? お前はゾウケン倒しにいったんじゃないの? 戦ってたのは空腹なの?」
「そうだよ」
「って断言しやがった。……ああ、とにかく悪かった。反省してます。……ダメ?」

「うん、ダメだね」
「うぅ……不幸だぁああぎゃぁぁああああああ」

いつものように上条に噛み付くインデックス。
暗闇の中、近所迷惑な上条の声だけが響く。


Oct.17_AM XX:XX
308 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/24(金) 00:20:33.18 ID:4tb/J2.o
自分的にはいちおう16日の、というか本編はここまでのつもりです
あとはエピローグをちょろっとやって終わり

のつもりだったんだけど、いろいろ足していったら意外と長くなってしまったので
その部分はまたにします

309 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/24(金) 00:24:56.29 ID:cEq7mMAO
乙です
310 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/24(金) 00:30:17.96 ID:TwojjDYo
311 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/24(金) 00:33:34.11 ID:WkCAEeY0
乙です。

10/17ということは、学園都市まで送られて、さらにイギリス行きか……
ハイジャックにクーデターと次々起こって、ほとんど休む暇もなさそうだ。
グループも次の夜にはフラフープを始めいろいろあって、最後にエイワスにボコられるわけか。
ハードスケジュールの中、お疲れ様でした。
312 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/24(金) 18:20:29.21 ID:moz64JY0
ハードすぎ吹いたwwwwww
流石禁書、安定の過密スケジュール
313 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/24(金) 21:29:30.19 ID:4aE7XZoo
>>281
しかし、それを凛は否定する。
ってどうなんだろう?まあ乙面白い
314 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/24(金) 23:13:17.34 ID:4tb/J2.o
もちろんハードスケジュールなのはわざとです
この後、当然のように上条さんはイギリスに飛びます
ええ、とてもかわいそうですね

今さらですが、時系列としては17巻の直前になります
FateはUBWルート終了から約半年後です

>>313
凛「ゾウケンのとこに行く」
士郎「ああ」
 →士郎、当然のようについて行こうとする
しかし、それを凛は否定する

っていうニュアンスで書きたかったんだけど
ちょっと微妙ですね、すみません


エピローグ部分ですが、ちょっと忙しかったので今日は投下できません、すみません
明日も飲み会とかあったりでちょっと無理です
二日酔いが酷くなければ明後日に投下したいです
315 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 12:33:29.89 ID:XpbsN3Eo
頑張れ〜
316 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/27(月) 20:17:25.82 ID:gY/6VmAo
それでは何事もなかったかのように投下しますね

たぶん今日でラストまでいきます
317 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/27(月) 20:19:43.19 ID:gY/6VmAo
Oct.17_AM 07:41


「着きましたよ」

冬木の街を出発してから学園都市へ帰る車中、再び二人は眠りに落ちていた。
海原に起こされた上条が車の窓から外を見ると、時間は既に朝のようだった。

「あぁ。もう朝……はぁ? っていうかここどこだ? ―――っていうか学校じゃねぇか」

一瞬、予想していた風景が見えず混乱するが、冷静になり状況を把握する。
そこは上条がよく見知る自分の学校の校門前だった。

「え? ……まさかこのまま学校に行けとおっしゃるのでせうか?」
「はい、そうですね。なんとか時間も間に合ったようですし。それに制服も着てるじゃないですか」

確かに、時間には余裕がある。
いや、むしろ早過ぎるといってもいいだろう。
そして、制服もきちんと身に着けている。

―――多少汚れているのは否めないが。
318 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/27(月) 20:21:51.64 ID:gY/6VmAo
「って―――え?」

戸惑っている上条を海原は車のドアを開け、強引に外に放り出す。
上条が慌てて振り返るも、すでに海原はドアに手を掛けていた。

―――もちろん笑顔で。

「大丈夫です。禁書目録のことは心配しないでください。きちんと送り届けますから」
「え、いやちょっと待っ―――」

その上条の言葉を聞く前にドアは無情にも閉じられ、車は去っていく。
右手を前に突き出し、呼びかけようとしたポーズのまま呆然と上条は固まる。

「何をやってるんですー? 上条ちゃん?」

そこへやってきた車の窓から上条に声が掛かる。
その体制のまま顔だけ向けると、そこにはどこから見ても子供にしか見えない担任の姿があった。

「えっと……小萌、先生?」
「はい、そうですよー、先生がそれ以外の何かに見えますかー? 朝っぱらから寝ぼけちゃってますか? むしろ朝だからですかー?」

突然の状況に頭が全くついていかない上条。
319 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/27(月) 20:23:58.12 ID:gY/6VmAo
「……朝早いんですね」

口から出たのはそんなどうでもいい言葉。

「そうですねー、ちょっとやることがあったので早めに来ました。あ、上条ちゃんとは関係ない事なので安心していいですよー」
「そ、そうですか。ええとそれはがんばってください」
「はい、ところで上条ちゃんはこんなところで何をやってるんですかー?」

「……上条さんはこんなところで何をやっているんでせうか?」
「もう、それは今先生が聞いてるんですよ。……あれ、上条ちゃん鞄はどうしたんですかー?」

そこで上条は気付く。
よく考えてみると、今自分は何も持っていない。
当然だ。戦闘後、やっと解放されたところなのだ。
鞄など持っているはずもない。
それどころか、財布すら持っていない。

「……ふ、ふっふ、ふ……」

上条の顔が引きつり、失笑のような悲鳴が漏れる。
320 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/27(月) 20:26:17.58 ID:LVm2VvYo
「どうしましたかー? ついにおかしくなっちゃいましたか?」
「……不幸だ……もういいです……全部家にあります」
「……全く上条ちゃんは何をやってるんですかー? とりあえず先生と一緒に職員室に来ましょう」

そう言うと小萌は駐車場に車を停め、まだ止まっている上条のところへ向かってくる。

「―――あっれー、月詠センセのとこの少年じゃん?」

そこに現れたのは、緑のジャージ姿の先生。
アンチスキルとして上条も知っている黄泉川だった。
再び合流した小萌もそれに加わる。

「あらー、黄泉川先生ですか、おはようございます。どうしたんですか、早いですねー」
「ああ、月詠センセ、おはようじゃん。いやー昨日ちょっとアンチスキルの方で一騒動あったじゃん?」
「あ、それ私も聞きましたよー。高位の能力者の仕業じゃないかってやつですよねー」
「そうじゃん。それがさー―――ってそういえば」

そう言うと黄泉川は上条の顔を覗き込む。

「よく知らないけどツンツン頭の少年がいたって報告があったじゃんよ? あと金髪でグラサンのやつも」
321 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/27(月) 20:30:59.60 ID:LVm2VvYo
上条は迂闊にもピクリと反応する。
反応してしまったからにはどうすることも出来ない。
背中に嫌な汗が伝うのを感じる。

「ほっほーう、心当たりありって顔じゃん?」

「ま、ままままさか、上条ちゃん? ……金髪ってもしや土御門ちゃんなのですかー?」
「いやいやいやいや、そんなまさか! 上条さんは何も夕べのことは何も知らないのことですよ!?」

「……へぇー、だれも夕べとは言ってないのに詳しいじゃん?」

しまった、と慌てて口を押さえるももう遅い。
一瞬で黄泉川に接近されると肩をぐっと掴まれる。
ちらりと小萌の顔を窺うとすでに半泣きになっている。
いや、たぶんもう泣くだろう。

「か、上条ちゃん……う、うぅ」
「ち、違います。上条さんは何もやってません。冤罪だ。冤罪です。冤罪なんです!」
「ま、時間はあるし、話はたっぷり聞くじゃん?」

黄泉川はそのまま離さないようにぐっと掴んだまま上条を引っ張って歩き出す。
その様子を涙目で小萌はしばらく呆然と見送る。

「あ、あれ? これってほんとにまずい? ……不幸だぁぁああああああ」
322 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/27(月) 20:33:43.30 ID:LVm2VvYo
Oct.17_PM 00:48


「……遠坂、眠そうだな」

昼休みの屋上、士郎と凛は屋上で食事をとる。

「……ま、昨日あんなことがあればしょうがないでしょ。夜遅かったし」

士郎もまさか一日であんなことになるとは予想していなかった。
むしろ、最悪の場合は一週間程度は学園都市の逗留することになるのでは、と覚悟していた。
それが昨日一日だけでサーヴァントと戦い、聖杯を破壊し、そのまま帰ってきて臓硯をも倒した。
それで疲れがないはずもない。
少し気分を変えるために、士郎は話題を変える。

「それにしても超能力って凄かったな」
「そうね。わたしも驚いたわ」

凛もそれに同意する。

「実際見たのは、上条の力と、テレポート、それからあの電気の力か」
「……そっか、衛宮くんはあれ見てないのよね……」
「ん? あれってなんだ?」
323 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/27(月) 20:35:05.68 ID:LVm2VvYo
すみません>>322ミス


Oct.17_PM 00:48


「……遠坂、眠そうだな」

昼休みの屋上、士郎と凛は食事をとる。

「……ま、昨日あんなことがあればしょうがないでしょ。夜遅かったし」

士郎もまさか一日であんなことになるとは予想していなかった。
むしろ、最悪の場合は一週間程度は学園都市の逗留することになるのでは、と覚悟していた。
それが昨日一日だけでサーヴァントと戦い、聖杯を破壊し、そのまま帰ってきて臓硯をも倒した。
それで疲れがないはずもない。
少し気分を変えるために、士郎は話題を変える。

「それにしても超能力って凄かったな」
「そうね。わたしも驚いたわ」

凛もそれに同意する。

「実際見たのは、上条の力と、テレポート、それからあの電気の力か」
「……そっか、衛宮くんはあれ見てないのよね……」
「ん? あれってなんだ?」
324 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/27(月) 20:38:06.08 ID:LVm2VvYo
凛は思い出す。
学園都市第一位と言われていた少年が出した黒い翼。

―――あれは魔術的視点からでも見ることが出来るものではなかったか?
超能力者には魔術は使えない。
魔術師には超能力は使えない。
それでも、ひょっとすると―――。

「遠坂? どうかしたか」
「……なんでもないわ。あれ、っていうのは第一位ってやつの力よ。……凄かったわ」
「へぇ、それはもったいないことしたかもな」

あの黒い翼を見てから凛の頭にはある疑問があった。
いや―――もしかしたら気付かなかっただけでそれ以前にも考えていたのかもしれない。

―――魔術と超能力の関係。
この二つには何か関係があるのではないか。
そして、そもそも―――その二つしかないと言えるのか。

「ね、衛宮くん」
「……なんだ?」

思いのほか真剣な響きのある凛の言葉に士郎は少し身構える。
325 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/27(月) 20:40:15.16 ID:LVm2VvYo
「超能力ってなにかしらね」
「む、それを俺に聞かれてもさすがにわからないぞ?」
「禁書目録が言ってたんだけどね……あの彼、上条くんの力、ただの超能力じゃないかもしれないらしいわ」
「超能力じゃない? ……それってどういう意味だ?」

意外な言葉に疑問をそのまま返す。
凛はそれにわからない、と首を振る。

「士郎の魔術って変わってるわよね?」
「なんだ、突然? そりゃ遠坂から見れば変わっているようにも見えるかもな」
「固有結界。要するに、士郎の魔術ってのは士郎の心の世界を具現化させることでしょ?」
「ああ、そうだ。投影魔術はその結果ってことになる」

「……それって、ほんとに投影魔術なのかしら……」
「……遠坂?」

士郎には凛が何を言おうとしているのかがわからない。
あるいは凛もはっきりとはわからないのかもしれない。
どういう形の言葉にすればいいのか考え込んでいるように見える。
326 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/27(月) 20:43:08.58 ID:LVm2VvYo
「超能力者ってのは独自の感覚を持つらしいのよ。それを『自分だけの現実』、と呼ぶらしいわ」
「パーソナル、リアリティー?」
「つまり超能力ってのは現実の常識とはズレた世界を観測、その自分だけの現実を具現化することなのよ」

「それって、まさか俺の……」
「ええ、似てるわね。それは偶然かもしれない。―――けど偶然じゃないのかもしれない」
「でも俺は魔術師だし、それは魔術だろ? 魔力だってあるし、魔術回路もある」
「そうね。きっと衛宮くんが使っているものは魔術なんだと思う。魔力を使っている、だから魔術」

「使っているものが違うだけ、ってことなのか?」

士郎の言葉にも凛はあいまいに首を振る。

「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。それを判断できるほどの材料はないわ」
「そうだな、けどひょっとしたら魔術と超能力ってそんなに違うものじゃないのかもしれないな」

その士郎の言葉には凛も首を縦に振る。
327 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/27(月) 20:45:59.30 ID:LVm2VvYo
「……いや、もしかして土御門ならもう少しはわかるかもしれないな」
「土御門? どうしてかしら?」
「だって、あいつ魔術師で超能力者なんだろ? そんなやつあんまりいないだろ」

凛は思い出したように頷く。

「ああそっか、両方に詳しい人間だったら仕組みも少しくらいはわかるかもしれないわね」
「けど土御門も超能力はほとんど使えないみたいだったし、難しいか……」
「そうね、でもどこかにはいるんじゃない? 両方を熟知した化物が」
「……遠坂、化物って言い方はどうかと思うぞ」

「いえ、そうでもないわ。きっとそんなやつならすでに人間かどうかも怪しいと思うわよ」

凛はふとどこか遠くの空をぼんやりと見上げる。
それにつられて士郎も同じ空を眺める。


Oct.17_PM 00:59
328 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/27(月) 20:48:56.32 ID:LVm2VvYo
Oct.17_PM XX:XX


窓のない部屋、二人の人間が向かい合う。
ただし、一人は上下逆さまで、円筒器の中に浮かんでいる。

「……結果として何事もなく終わったな。アレイスター、これで満足か?」
「そうだ、全て予測の範囲内だ。プランは大幅に短縮された」

アレイスターは薄く笑う。
土御門はそれを見てチッ、と舌打ちをする。

「プラン、か。五行機関、虚数学区に聖杯を取り込ませでもしたのか? ……いや、聖杯は消滅したはずだ」
「そうだ、聖杯の消滅はこちらでも確認させてもらった」
「ならば結局何にもならなかったのではないか?」
「そうでもない。消えはしたが聖杯との関わりが無へと帰すわけではない」
「……どういう意味だ?」

「―――――三人だ」
329 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/27(月) 20:51:37.52 ID:LVm2VvYo
「……何のことだ?」
「今回の件において直接聖杯に触れたものが、だ」

「三人。……一方通行、ヒューズ=カザキリ、それに―――」
「―――禁書目録、だ。何も影響がないと思うか?」

その問いに土御門は口を噤む。
確かに何も影響がないなどと言い切ることは出来ない。

「それでも、だ。下手をするとレベル5や幻想殺しを失いかねなかったというのに」
「……それはないだろう」
「なんだと?」

「―――超能力者、レベル5というのはなんだかわかるか?」
「おかしなことを聞く。この都市の頂点だろう」
「では、レベル4とレベル5、この二つを分かつ明確な差はなんだ?」
330 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/27(月) 20:54:31.38 ID:LVm2VvYo
そう言われて土御門は再び閉口する。
確かにレベル4とレベル5の間には能力に差がある。
ではレベル4はどこまで行けばレベル5になれるのか。
―――その基準は?

「それは能力では測れない何かがあるという意味か?」
「そうだ。簡単に言うとな、レベル5というのは英雄の資格なのだ」

「なるほど、確かに一理ある。―――だがそうとは限らないだろう?」
「どういうことだ?」

「言わなくてもわかるだろうアレイスター、レベル5でなくとも英雄の資格を持つものは存在する。―――レベル0でもな」
「幻想殺し、か。あれは英雄ではない。―――反英雄だ」
「なんだと、何故そう言える?」

「あの右手は全てを打ち消す。魔術も超能力も、神の奇跡も。―――それで誰が喜ぶ? 何も知らない一般人か?」

その言葉に土御門は一つ舌打ちをする。
331 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/27(月) 20:57:31.74 ID:LVm2VvYo
―――確かにそのとおりだろう。

一般人は魔術の存在など知りはしない。
そして幻想殺しは魔術師の天敵といってもよい存在だ。
しかもその行動は悪く言ってしまえば自分本位であり、正義のために戦うわけでもない。
何の知識もなくただ一方的に魔術を破壊する。

―――この世界からの嫌われ者に過ぎない。

アレイスターはさらに言葉を続ける。

「君ならわかっているだろう。イギリス清教、ローマ正教、ロシア成教、そしてこの学園都市、その現状を。上条勢力とも呼ばれる存在を」
「そうだな、下手をするとそのまま戦争だ。第三次世界大戦にもなりかねん。―――いや下手をするまでもなくこのままならそうなるか」
「そのとおりだ。だがうまくすればたった一人が死ぬだけで全てが丸く収まる可能性がある」

「―――貴様、幻想殺しを生贄とする気か!」
332 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/27(月) 21:00:34.84 ID:LVm2VvYo
脳裏をよぎったその可能性に土御門は吼える。
その言葉にアレイスターは微かに笑う。

「たかが戦争を回避するために幻想殺しを無駄になどできない」
「―――たかが、だと? まさかそれすらもお前の予定のうちだというのか」
「いや、戦争を起こしたいという意味ではない。……ただ、起こるだけだ」

その言葉に土御門は顔を歪める。
ただ起こるだけ、そうだろう。
土御門の知る限りであれば、近いうちに戦争は起こる。
それは今さらアレイスターがどうこうするということに起因しない。

ただ、アレイスターであれば止めることも出来るのでは?
どこかそんな甘い考えも土御門の中にはあった。

「……そう何もかもうまくいくと思うなよ」

そう。
だからこれはまぎれもない負け惜しみ。
わかっていても口に出さずにはいられない。
333 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/27(月) 21:03:15.63 ID:LVm2VvYo
「―――英雄、と言ったなアレイスター」
「そうだが、どれがどうかしたか?」


「もしこの時代に英雄と呼べるものが現れるならば、それは―――――お前を倒す者の名前だ」

アレイスターは静かに嗤う。

―――それは楽しみだ。
その姿はまるでそんな風にそれを待ち焦がれているようにさえ見えた。


Oct.17_PM XX:XX
334 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/27(月) 21:08:33.12 ID:LVm2VvYo
Oct.17_PM 02:51


暗い路地裏を進む白い影。
一方通行がそちらに向けて歩いていたのはほんの気まぐれだった。

―――魔術。
昨日見たその力は明らかに超能力などといった自分の知る力とは別物だった。
だが、いまだにその力の本質は掴めていない。

だから、だろうか。
今、一方通行が向かう先にはその力に関わる何かがある。
そんな気がした。
あるいはその得体の知れないものに意識過剰になっているのかもしれない。

そうして少し広い通りに出ようというときに一方通行の足が止まる。

「……あァン? アイツは……」

そこには意外な人間。
一方通行の視線の先には、いつか会ったシスターの姿があった。

一つ舌打ちをする。
こんなところでたまたまとはいえ知っている人間と出会うとなれば少しばかり面倒だ。
ならばここまで、引き返すしかない。
335 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/27(月) 21:12:22.95 ID:LVm2VvYo
一瞬、考える。
―――本当にたまたまだろうか。
ひょっとしたら自分が探していたのはこのシスターなのではないか。
ならばここで彼女に尋ねてみるべきなのかもしれない。

「……チッ、何を必死になってやがる……」

そうかもしれない。
自分がここに来たのはただの気まぐれ。
確かに得体の知れないものなのは間違いないが、だからといってそこまでして求めるものではないはずだ。

一方通行は踵を返す。

最後にもう一度だけ振り返りシスターへと目をやる。

そう思っていた。
結局、一方通行は最後まで気付くことはなかった。

―――本当に自分が見ていたのはそのシスターの隣にいた人間だということに。


Oct.17_PM 03:01
336 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/27(月) 21:15:32.79 ID:LVm2VvYo
Oct.17_PM 04:39


「で、黒子はどうするの?」

学校からの帰りの道すがら、横に並ぶ黒子に尋ねる。

「これから風紀委員ですの。昨日の後始末がありますの」
「昨日の、ね。なんだったのかしら」
「魔術師とかいってましたけど……それってほんとですの?」

黒子がそう思うのも当然だろう。
美琴自身もいまだ魔術師というものの存在を完全には信じ切れなかった。

「どうかしら。けど私たちみたいな能力者とは確実に違ったでしょ?」
「そうですの。なにせ死体も残ってませんものね」

サーヴァントと呼ばれた者たちが光の粒になって消えていくのを思い出す。
その話が本当ならば、あれは本当に神話に出てくる英雄なのだろうか。

「―――では、お姉様、黒子はここで」
「ん、気をつけるのよ」
337 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/27(月) 21:20:09.46 ID:LVm2VvYo
美琴は軽く手を振り、去っていく黒子を見送る。
その後ろから、またいつかのように声が掛かる。

「―――お姉様」
「……またアンタか」

振り返るとそこには先日と同じように自分と瓜二つな妹の姿があった。

「これはお姉様今日もいい天気ですね、とミサカはまた偶然を装って話しかけます」
「はいはい、いい天気ね。で、どうしたの? また襲われるとか言わないわよね?」

「いえいえ、今日は昨日の件でお礼と謝罪に来ました、とミサカはきちんと頭を下げてみます」
「お礼、と謝罪? なんで?」
「お姉様を危険な戦いに巻き込んだ挙句、ミサカは戦闘には参加しなかったからです、とミサカは申し訳ない気持ちを抱いています」

「あー、けど色々情報を集めてくれてたんでしょ?」

美琴が聞いた話によると、妹達は直接には戦闘に参加しなかったが、ミサカネットワークというものを介して情報をやりとりしていたようだ。
それによって少なくとも打ち止めは離れながらにして様々な状況を理解していたらしい。
338 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/27(月) 21:23:13.08 ID:LVm2VvYo
「それにこういう言い方はどうかと思うけど、戦ってもあいつらには勝てなかったと思うわよ。……私でも全然無理だったし」

超能力者、レベル5である自分ですらあのヘラクレスと呼ばれた巨人には全く歯が立たなかった。

「たしかにミサカではあれを倒す術はなかったでしょうが、一つ訂正しておきます、とミサカはお姉様の間違いを指摘します」
「間違い? どういうこと?」
「お姉様は一度あれをきちんと殺しました、とミサカは衝撃の事実を告げます」

「え、殺した?」
「はい、実はヘラクレスには三つの能力があったのです、とミサカは解説します」

御坂妹は頷いて指を三本立てる。

「一つは一定以下の攻撃を完全に無効化する能力です、ミサカは指を一つ曲げます」

一定以下の攻撃を無効化、その言葉に美琴はああ、と納得する。
電撃にしろレールガンにしろ、ダメージが全くゼロだったのはそういうわけだったのか。
339 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/27(月) 21:27:10.81 ID:LVm2VvYo
「もう一つは一度受けた攻撃は効かなくなるという能力です、とミサカはもう一本指を曲げます」

それはやっかいな能力だと美琴は思った。
つまりダメージが通る攻撃であるとしても、必殺のつもりで撃たなければ次はないということだ。
多少手加減しながら騙し騙しやっていた自分の判断は間違いだったということだろう。
結論から言えばダメージは通っていなかったため問題にはならなかったが。

「そして最後に蘇生能力です。ヘラクレスは十二回殺されないと死にません、とミサカは恐ろしい事実を述べます」
「はぁ? 蘇生能力?」
「そうです。お姉様も一方通行も殺しはしましたが、まだ命のストックが残っていたのです、とミサカは説明します」
「ってことは私の攻撃も一応は通じてたってこと?」
「そうです、お姉様は立派に殺しました、とミサカはお姉様を褒め称えます」

「それ、褒めてんの? ……まぁいいわ、少し自信は回復したわ」

言いながらも少し微妙な気分だな、と美琴は感じていた。
340 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/27(月) 21:30:26.93 ID:LVm2VvYo
「とにかくみんな無事だったんだから良かったわ。アンタたちも良くやったと思ってるわよ」
「そうですか、それはなんとも言えない気持ちです、とミサカは言葉を濁します」

それにしても、と話を区切り、美琴は打ち止めのことを思い浮かべる。

「……またこんなことになるのかしら」
「その可能性はあります。上位個体はなにかと特別なようですから、とミサカは危険性を述べます」
「そっか、じゃあ色々と気を配っておかないとね」

そう言って美琴は視線を落とす。

「いえ、上位個体が危険なのはお姉様とは関係ないことですから、気に病む必要はありません、とミサカはあらかじめ言っておきます」
「そんなことはないわ、わたしの妹のことだもの。なんであれ見過ごすことはできない」
「……そうですか、とミサカはほっととしたような不安なような複雑な気持ちになります」

今度は逆に御坂妹が視線を逸らす。
話を切り替えるように、美琴は一つその場で伸びをすると明るい声で話しかける。

「で、あんたは今からどうするの? 暇ならどっか行く?」
「その申し出は非常に魅力的なのですが、今から調整があります、とミサカは悲しみに肩を落とします」
「そっか、それじゃ―――またね」
341 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/27(月) 21:33:27.89 ID:LVm2VvYo
そう言って軽く手を振ると美琴は歩き出す。
その後ろ姿を少し見送った後、御坂妹もまた、と呟いて反対方向に歩き出す。
美琴は妹が去っていく気配を感じると立ち止まり振り返る。
その背中を見送りながら、最後まで聞けなかった言葉を飲み込む。

―――あなたは一方通行のことをどう思っているの?
―――自分のことを恨みはしないの?

やがて妹の姿が見えなくなると、美琴は再び歩き始めた。

「―――あ、御坂さんだ」

その先には笑顔で軽くお辞儀をする風紀委員の初春飾利の姿。

「おーい、御坂さぁーんっ!」

そしてその隣には大きく手を振る佐天涙子の姿があった。

いつもと同じ日常の匂いに美琴もそれに笑って手を振り返す。


Oct.17_PM 04:54
342 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/27(月) 21:38:09.99 ID:LVm2VvYo
Oct.17_PM 05:02


夕暮れに赤く染まっていく町並み。
上条は一人帰路についていた。
その足取りはとぼとぼと言うべきものだろうか。

「……はぁ、不幸だ……」

溜息とともに一人呟く。
それも当然。
財布も携帯も家に置いてある上条には、学校から家まで歩いて帰るという選択肢しかなかった。
そのうえ、昼休みは黄泉川からの事情聴取という形で潰されてしまい、食事を摂る時間もなかった。
とはいえもともとお金を持っていなかったわけで昼食は諦めていたのだが。

ただ、後ほど姫神から言えば弁当を分けてあげたのに、という言葉を聞いたたときは絶望しそうになった。
結局、放課後も黄泉川に捕まりそうになり、なんとか逃げ切ったもののうっかり激突してしまった吹寄に頭突きを食らうことになった。

さらには帰り道でも小さな女の子に激突しそうになった。
避けようとよろけた女の子に「だいじょうぶか? お嬢ちゃん」と声を掛けたらなぜか「超失礼です」と殴られた。
343 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/27(月) 21:41:35.39 ID:LVm2VvYo
昨日の疲れもあってか、ふらふらになりながらもなんとか家に辿り着いた頃にはすでに日が沈みかけていた。

「……ただいま」

玄関の扉を開けながら、家で待っているであろうインデックスに声をかける。

「お帰り、とうま。なんだか元気がないんだよ?」
「ああ、今日もいろいろと大変だったんだよ……って、どなたさま?」

そこで初めて上条はインデックスの隣で正座している少女に気が付いた。
背筋をピンと伸ばした凛とした佇まい。
強い意志を窺わせる自身に満ちた眼。

何よりもインデックスの銀髪とは対照的な美しい金髪が目を引いた。

「うん、街中で困ってるみたいだからとりあえず連れてきたんだよ」

「は? ……あのなぁ、猫じゃあるまいし」
「そんなこと言ったって、迷える子羊を救うのはシスターとして当然のことなんだよ」
「はぁ……突っ込みどころはたくさんあるけどまぁいい。……で、どなたさま?」
「さぁ? まだ何も聞いてないからわからないんだよ」
「はぁ? なんでだよ?」
344 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/27(月) 21:44:46.17 ID:LVm2VvYo
「どうせならとうまが帰ってきてからの方がいいと思ったんだよ。とうまだって私が勝手に何かしたら困るでしょ?」
「それは、確かにそうだけどさ。ていうかそもそもこの人ほんとに困ってたのか?」

「―――確かに、困っていたというのは事実です」

二人の言い争いに痺れを切らしたのか、少女が凛とした声で横から口を挟む。
それを聞いてインデックスは自慢げに胸を反らす。

「ほらね、だから言ったんだよ」
「正確には困っていた、というよりは途方に暮れていた、と言うべきでしょうか」

「……どういうことだ?」

申し訳なさそうに話す少女の様子を見て、上条もなんとなくではあるが本当に困っているということを察した。

「はい、どう説明すればよいのか難しいところなのですが……突然この街に喚び出されたということ以外何もわからないのです」
「呼び出された? って誰に?」
「申し訳ありませんが、それもわからないのです……」

少女は気まずげに視線を逸らす。
345 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/27(月) 21:47:32.77 ID:LVm2VvYo
「ひょっとして……記憶喪失なのか?」

その様子をみて上条は一つの仮説を口に出す。
自身のこともあり、なるべくその単語は使いたくなかったが、そうも言ってはいられない。
だが、少女はそれをあっさりと否定する。

「いいえ、記憶はあります。……信じてもらえないかもしれませんが、私は人間ではありません」
「人間じゃ……ない?」

「はい、私は、いえ私たちはサーヴァントと呼ばれる存在なのです」

「サーヴァント? ―――サーヴァントだって!?」

その言葉に上条は思わず驚きの声を上げる。
少女もまた、その上条の様子に目を丸くする。

「まさか……ご存知なのですか?」
346 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/27(月) 21:50:31.43 ID:LVm2VvYo
「ああ、なんて言ったらいいか。昨日いろいろあってな。……えっと、どう説明したらいいか」
「ふふん、ここで私の出番なんだよ。どうせとうまには魔術のことわからないんだし」
「ぐっ、悔しいが一理ある。正直言って上条さんには聖杯のことなんて今でもさっぱりだし」

「聖杯!? 聖杯がここにあるのですか?」
「うん、もうなくなっちゃたんだけどね。そのあたりも説明するんだよ。実は―――」

インデックスは昨日の出来事を順を追って少女に話し始める。
所々に挟む少女の疑問に答えながらも、一通りの説明を終えると、少女は感嘆の息を吐く。

「……そんなことがあったのですね」
「そうなんだよ、とっても大変だったんだよ」
「それにしても、シロウと凛までここに来ていたとは驚きです」

その言葉に上条は目の前の少女が、あと一人現れなかったサーヴァントだということを思い出す。

「そっか、あんたはセイバーのサーヴァントってやつでいいのか?」
「はい、私は聖杯戦争ではシロウに召喚されたセイバーのサーヴァントです」
「やっぱそうか。これでサーヴァントは全員出てきたってことになるな」
「そのようですね。まさか英雄王まで出てきていたとは……」
347 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/27(月) 21:54:10.66 ID:LVm2VvYo
「たしかに。よくはわからないがあいつは普通のサーヴァントとは違う感じがしたな」
「そうですね。あの男はなにかと規格外ですから。―――とりあえず、聖杯はもう消滅したのですね?」

その質問に簡単には答えられない上条は視線をインデックスの方に向ける。
インデックスもその目線を受けて軽く頷く。

「うん、りんと二人で確認したから間違いないと思うんだよ」
「そうですか。……それでは私はどうしてここにいるのでしょうか?」
「どうだろうな。今の自分の状態とかで何かわからないか?」

「そうですね、敢えて言うならば、この土地に縛られているような感覚はあります」
「土地? っていうとこの辺りってことか?」
「いえ、もっと広い範囲です。―――この街と言った方が正確でしょうか」

「もしかすると―――ひょうか?」
「ひょうか? 風斬に関係あるっていうのか」
「うん、前に言ってたよね。ひょうかはえーあいえむの集まりみたいなものだって」
「ああそうだ。この街にいる超能力者たちが発するAIMの……なるほど、そういうことか。だからこの街ってわけか」

「詳しい原理はわからないけどひょうかは聖杯と半分融合してたようなものだから、その辺りが関係していると思うんだよ」
「だとするとセイバーはこのままってことなのか?」
「うん、元はひょうかなんだろうけど、たぶん今はひょうかだけじゃなくて界にも依っていると思うから」
「界? ってなんだ?」
348 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/27(月) 21:58:18.11 ID:LVm2VvYo
聞き慣れない言葉が突然出てきたことに上条は戸惑う。

「うーん、どういえばいいかな。……とうまは天界とか魔界って言葉はわかる?」
「わかる、とは言えないが、ああ、そういえば天国や地獄はすぐそばにあるとかなんとか」
「うん、そういう世界はすぐそばにあるんだよ。私たちのすぐとなり、だけど人間には見えない、手の届かない場所に」
「ああ、そうだった。紫外線や赤外線に似たようなものだって言ってたような……」

そういえば、と上条は御使堕しの時に似たような話を聞いたことを思い出す。

「しがいせん? はよくわからないけど」
「つまりこの街にそういう俺たちには見えない世界が重なりあってて、セイバーはそこと繋がってるってことだろ?」

「おぉぉおおおおぉお! なんだかとうまがものすごくものわかりがいいんだよ!」
「馬鹿で悪かったな。……ということはどうにもできないってことなのか?」
「うん、この街から能力者がいなくなればその界も消滅するとは思うけど」
「さすがにそれは無理だな。……ってことだけどセイバーはわかったか?」

とりあえずの結論が出たということで、上条は黙って話を窺っていたセイバーに話を振る。
それを受けてセイバーは罰が悪そうに、軽く首を横に振る。
349 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/27(月) 22:01:08.24 ID:LVm2VvYo
「申し訳ありませんが。とりあえず現状を維持するしかないということぐらいしか」
「そんだけわかってりゃ十分だ。実際俺だってよくわかってないし」
「はぁ、そうですか」
「うん、そうなんだよ、とりあえず何かわかるまでここで暮らせばいいんだよ」

「は? よろしいのですか?」
「うん、もちろんなんだよ、迷える子羊を救うのは教会の役目なんだよ。なんたってこの服は―――」
「また歩く教会なんだよ、とかいうんだろ……」

「―――歩く教会なんだよ」

「ほんとに言うのかよ。……ダメだ、っていいたいところだけど仕方ないよな。小萌先生のとこにも今は姫神とは別の居候がいるって話だし」
「ありがとうございます。お世話になります」
「ああ、ここまで関わっておいて放り出すなんてさすがにできないからな。とりあえずは俺を頼ってくれればいいぜ」

「―――はっ、しまった。いつのまにか私がとうまがとうまであるための手伝いをさせられてるんだよ」
「何言ってんだ? ……ああ、そうそう自己紹介が遅れたな、俺は上条当麻、こっちはインデックスだ」
「インデックス……はい、トウマ。私はセイバーのサーヴァントです。よろしくお願いします」
「ああ、よろしくな。―――と、そういえば」
350 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/27(月) 22:04:19.01 ID:LVm2VvYo
上条はサーヴァントと名乗られたときから気になっていたことを尋ねる。

「セイバーもサーヴァントってことは英雄なんだよな?」
「はい、そうですね。他のサーヴァント達と同様です」
「名前聞いてもいいか? ……それとも名乗っちゃいけなかったりするのか?」
「そうですね。確かに本来はマスター以外には真名を教えるものではありませんが、この状況では問題ないでしょう」

そういうとセイバーは姿勢を正して、上条に向き直る。

「申し遅れました。私の真名はアルトリア。ブリテンの英霊です」
「……アルトリア……」

上条はその名前を口の中で何度か呟く。

―――上条の背を冷たい汗が伝う。
眼前の少女には明らかに風格がある。
これだけの女の騎士が無名であることはありえないだろう。
となると間違いなく有名な英雄であろう。
しかし、上条の頭をどれだけ探ってみてもアルトリアという女の騎士などは見当たらない。
かといって誤魔化しなどが聞きそうな相手でもなかった。
351 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/27(月) 22:07:57.17 ID:LVm2VvYo
「……うぅ、すいませんアルトリアさん。バカな上条さんを許してください……」
「えっと、トウマ? どうかしましたか?」
「ごめんなさい、非常に言いづらいのですが……上条さんはアルトリアさんのことは聞いたことありません」

「そ、そうでしたか。いえ、謝っていただかなくとも結構です」
「……とうま」

結構です、という言葉とは裏腹に見るからに肩を落とすセイバー。
それを見て罪悪感から同じように肩を落とす上条。
そんな上条を横目でじとっとした目で見つめるインデックス。

「とうま……馬鹿だ馬鹿だとは思ってたけど、まさかアーサー王を知らないなんて馬鹿にもほどがあるんだよ」
「……はい? アーサー王?」

「そうだよ、アーサー・ペンドラゴン。聞いたことないなんてどうかしてるとかしか思えないんだよ」
「ア、アーサー王だって? 知ってる知ってた知っていますとも。アーサー王ならもちろん知ってるぜ。超有名」
「そうでしたか、それは良かったです」

軽く微笑みながら安堵したかのように息を吐くセイバー。
352 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/27(月) 22:11:13.50 ID:LVm2VvYo
「いや、悪い。まさかアーサー王がこんな可愛い女の子だとは知らなかったからさ」
「イギリスではアーサー王女性説なんてのもわりと有名なんだよ」

「……そういうの全部でたらめだと思ってた。日本にも源義経女性説とかあるし」
「うん、基本的にはでたらめだね。そんなのいくらでもあるけど、中には本物もあるんだよ」
「だよな、まぁいいか。……えっとそれじゃあアーサー、いや、アルトリアの方がいいか?」
「好きな呼び方で構いませんが、私としてはセイバーと呼ばれるのが良いかと」

「そっか。じゃあ改めてこれからよろしくなセイバー」
「よろしくなんだよ」
「はい、よろしくお願いします。トウマ、インデックス」

セイバー微笑み軽く頷くとその右手を差し出す。
上条はそのセイバーの手を取ろうとして、動きを停止させる。

「……トウマ?」
「悪い、セイバー。そういえば俺の能力について説明してなかった」
「能力、ですか?」
353 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/27(月) 22:11:14.17 ID:k7CyUAo0
>>351
インテリジェンスさん、女性が「アルトリア」と名乗ってアーサー王を連想する人なんていませんよ。
354 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/27(月) 22:13:45.69 ID:LVm2VvYo
上条は自分の右手の力、―――幻想殺しについて説明する。

「……幻想殺し、ですか? なるほどそれは特異な力ですね」
「ああ、だから悪いんだけどセイバーには触れないんだ」
「なるほど、承知しました。そういうことなら私も気をつけることにします」
「―――いや、ちょっと待てよ?」

上条は少し考えるように視線を落とす。

「よく考えりゃ右手意外なら普通にセイバーにも触れるんだった」

「―――そんなに触りたいのかな?」
「……………………え?」


「―――とうまは、そんなに、触りたいのかな!?」
355 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/27(月) 22:16:38.14 ID:LVm2VvYo
上条はゆっくりと顔をインデックスの方に向ける。
その先には怒りに燃えるインデックスの笑顔があった。

「とうまはやっぱりとうまなんだね」
「いやいやいやいや、上条さんにやましい気持ちはこれっぽっちもありませんのことよ」

そんな上条の言い分は当然のように聞き入れられない。
待っていたのはいつもと同じインデックスの噛み付き。

「ぎゃあぁぁぁああああああっっ、不幸だあぁぁぁああああーっ」

居候の増えた上条の家に、いつもと同じ平和な叫びが響き渡る。


Oct.17_PM 05:31
                             FIN.
356 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 22:17:57.19 ID:A.xvJ3w0
居候が増えた……
食費も増えた……
357 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/27(月) 22:20:31.81 ID:LVm2VvYo
Oct.17_EXTRA


「……サーヴァントについてどれだけ知ってるかって?」

お互いの紹介が終わり少し落ち着いたところでセイバーが上条に尋ねる。
インデックスは疲れからか胸に抱いたスフィンクスと共にベッドで薄く寝息を立てている。

「はい。正確には聖杯戦争について、ということですが」

セイバーは軽く微笑みながら横目でその姿を見ながら、力強く頷く。

「そう言われてもな……聖杯戦争か。一通りは説明を聞いたけど魔術の仕組みなんかについてはほとんどわからないしな」
「そうですか……ではサーヴァントの数や種類については?」

「ああ、それならわかるぜ。七人いるんだろ? セイバーにアーチャー、ライダー、アサシン、バーサーカー……えっと、後は……」
「ランサーとキャスターですね」
「そうそう、聖杯戦争ってのはその七人のサーヴァントの戦いなんだろ?」
「はい、おおよそはその通りです。ですが例外もあります」

「……あのギルガメッシュってやつとかか?」
「そうですね。それもその一つと言えます。彼については?」
「なんだっけ? 前回の生き残りだとかなんとか」
358 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/27(月) 22:23:41.97 ID:LVm2VvYo
「はい、彼は前回、約十年前に行われた第四次聖杯戦争の生き残りであり、そのため例外である八体目のサーヴァントとして現れました」
「前回が第四次? ってことは聖杯戦争は今まで五回あったってことか。で、セイバー達は第五次聖杯戦争のサーヴァントってわけか」
「そうです。……正確に言うならば私はその両方に参加しましたが」
「両方? 第四次と第五次の両方ってことか?」
「はい。他には聞いたことありませんので、それもかなり特異な事態なのでしょう」
「そっか。まぁそう言われてもあまりピンとこないんだけどな」

「そうでしょうね。では、サーヴァントが英雄と呼ばれる存在というのはご存知ですよね?」
「ああ、それも聞いた。なんでも神話に残ってるような昔の英雄たちなんだろ?」

その上条の答えにセイバーは首を横に振ると、少し間を空ける。

「えっ? ……違うのか?」

「はい。……トウマはアーチャーについてはご存知でしょうか?」
「アーチャー、ってあの赤いやつだよな? そういえば結局あいつの名前は聞きそびれちまったな」

「やはりそうですか。……彼の様子はどうだったでしょうか?」
「どう、と言われてもな……こっちの味方だったとしか」

漠然としたセイバーの質問に上条は渋い顔で答える。
セイバーもうまく言葉が出てこず、視線を落として考え込む。
359 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/27(月) 22:26:24.72 ID:LVm2VvYo
「……では、シロウとはどうしていましたか?」
「んー、それもどう言えばいいのか、普通に一緒に戦っていたとしか……」

「……そうですか」

その上条の答えにセイバーは一つ息を吐き安堵したかのように少し表情を緩める。

「……あいつと衛宮と何かあったのか?」

「簡潔に言うならば……アーチャーの真名はエミヤ、やがて英雄となった衛宮士郎の未来の姿です」
「―――なっ?」

驚きのあまり上条の思考は一瞬停止する。

「あれが……衛宮?」

「はい、ですので聖杯戦争においては二人はお互いに認められず激しい戦いとなりました。……ですがそれについては別の話です」
「別の話? というと?」
「この話で重要なのは過去の、ではなく未来の英雄でさえサーヴァントとして召喚されるということです」

「あ、そういうことか。……それがなにか問題があるのか?」
「問題、というほどのことではないかもしれません。ですがトウマにとっては重大な話になるかもしれません」
「重大? これ以上?」
360 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/27(月) 22:29:27.45 ID:LVm2VvYo
正直に言うならば上条の意識は少し上の空となっていた。

―――サーヴァントと呼ばれる並外れた存在。
常識では考えられなかったが、それが歴史に残るような英雄だということで逆に納得していた。
それが身近な――魔術師ではあるが、普通の人間である衛宮士郎がサーヴァントという話を聞いてそれを身近に感じ混乱をきたす。
その様子をセイバーも察したのか言葉を止め、上条の様子を窺う。

「……悪い。少しばかりびっくりし過ぎてたみたいだ」

「いえ、構いません。当然のことかと思います」
「続けてくれ、大事な話なんだろ?」

上条の落ち着いた様子を見届けるとセイバーは頷いて続きを話す。

「先ほどの七体のサーヴァントの話ですが、さらに例外があり、以前の聖杯戦争では特殊なクラスのサーヴァントが呼ばれたとのことです」
「特殊なクラス、っていうとさっきの七つの種別に当てはまらないってことか」

「はい、私も話に聞いただけではありますが、第三次聖杯戦争でのことです。今からはおよそ六十年ほど前になるでしょうか」
「六十年、そんなに昔になるのか」

「そのとき呼ばれた例外のサーヴァント、その一つがアヴェンジャーのサーヴァント。そしてもう一つが―――」
361 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/27(月) 22:32:40.35 ID:LVm2VvYo
そこで言葉を区切るとセイバーは視線を横へずらす。
上条も釣られてそちらへ視線を流す。


「―――――もう一つがインデックスのサーヴァントです」

「……イン、デックス?」

その言葉に上条の目はベッドの上で眠るインデックスに釘付けになる。
視線はそのままでセイバーに疑問を発する。

「……インデックスのサーヴァントってインデックスのことなのか?」
「それは私にはわかりません。彼女自身なのか、それともインデックスと呼ばれる役割を担う過去、あるいは未来の別人なのか」

上条はそのまま考え込む。
インデックス――Index-Librorum-Prohibitorum――というのはおそらく偽名だろう。
本当の名前は聞いたのかもしれないし、そうではないかもしれない。
記憶のない上条にそれを確かめるすべはない。

だがインデックスというのが役割の名前ならば過去にも、そして未来にもインデックスと呼ばれる人間がいるのかもしれない。
ならば別人である可能性は高いはずだ。

そう考えてあまりにも楽観的過ぎる自分の考えに首を振る。
状況を考えればわかる。土御門からも聞いている。
362 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/27(月) 22:36:41.66 ID:LVm2VvYo
―――戦争。
科学と魔術の入り乱れた戦争が始まれば魔術側にとってインデックスが重要な鍵にならないはずがない。
だとすればインデックスが一気に英雄へと祀り立てられることもおかしな事態ではない。

「必ず、ということではありませんが……」

横から掛けられた声に、上条は一旦思考を中断させる。

「英雄の物語というものは悲劇で終わりを迎えることになります」
「そんなこと―――」

―――悲劇。
セイバーのその言葉に一瞬で上条の頭は熱くなる。
インデックスにこれ以上の不幸がのしかかるというのだろうか。

「―――それはあなたがすべきことです」

「俺が?」
「彼女を守ってあげてください」

セイバーはそこまで口に出すと立ち上がりインデックスの傍へ足を進める。
気持ち良さそうな寝顔に笑顔を浮かべるとその頬を軽く撫でる。
363 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/27(月) 22:39:58.17 ID:LVm2VvYo
上条はその様子を見届けると、目を瞑り大きく深呼吸する。


「ああ。―――インデックスは俺が守ってみせる」

自分に言い聞かせるようにその言葉を吐き出すと右手を強く握り締める。

「……もう一つ、その当時の話ですが」

セイバーはインデックスから手を離し、改めて上条に向き直る。

「まだなにかあるのか?」
「いえ、たいしたことではありませんが……第三次聖杯戦争、インデックスのサーヴァントを召喚し聖杯戦争に参加した魔術師についてです」

「知っているのか?」
「いえ、名前だけですが。有名な魔術師のようなので……」
「聞かせてくれ。インデックスに関わることかもしれないんだろ?」


「その魔術師はこう呼ばれているようです。―――――――――二十世紀最大の魔術師アレイスター=クロウリー、と」


Oct.17_EXTRA  終了
364 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/27(月) 22:43:39.91 ID:LVm2VvYo
おまけ

――――――――――――――――――



「あァ? てめェらは、あンときの……魔術師? なンの用だ?」

「日本から来た、魔術師? ……滝壺は聞いたことあるか?」

「―――ウィリアム・オルウェル。……士郎、これが聖人の力よ」

「あれってこの間の魔術師って人? なんでまたアイツと?」

「ぶっひゃひゃひゃひゃ、なんだよ魔術師って、そんなものミサカ初めて聞いたよ」

「遠坂、あれを見てみろ。―――セイバーだ」

「……いかにサーヴァントとはいえども天使には勝てないのである」

「はまづら、だいじょうぶだよ。―――こっちは任せて、えみや、とおさか」

「―――第四の質問ですが、サーヴァントとは何ですか?」

『ようこそ、俺様の城「ベツレヘムの星」へ。―――サーヴァント、セイバー』

「お久しぶりです、シロウ。―――私は再びあなたの剣となります」

「はい、確かにあれはサーヴァントです、とミサカはお姉様の質問に答えます」

「行こう、衛宮。―――セイバーも力を貸してくれ」



科学と魔術が交差するとき、物語は始まる―――――!!
365 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/27(月) 22:48:02.07 ID:LVm2VvYo
以上で終わりです

型月設定がいまいち掴みきれてないな、と書いていて感じました
若干誤魔化し切れてない気がしますが許してください


なんというか、全て投下し終えたらここからどうしたらいいのかわからなくて
正直、途方に暮れています
366 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 22:48:34.32 ID:aso2QMAO
乙です
面白かった
367 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/27(月) 22:49:44.00 ID:k7CyUAo0
お疲れ様でした。
368 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 22:50:10.56 ID:XpbsN3Eo
乙ちょっと聞きたいんだが、アーチャーがシロウの英雄ってのは本当のこと?
漫画しか読んで無い私は分かりません。
まあすごいペースで楽しかった乙
369 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 22:52:35.77 ID:9nXbAJ2o
>>368
本当の事です

続きかいてほしいな
370 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 22:53:34.92 ID:XpbsN3Eo
そうだったのかfate SS面白い
371 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 22:58:20.56 ID:REC6SN2o
結局セイバーだしたのね。出ないのも原作を考えれば有りだったけど。
しかし、二人の大食いを養えるのか?
372 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 22:58:49.84 ID:A.xvJ3w0
イギリス編はAIMがないからセイバーはぶられるのか……
イギリスの王様なのに……

士郎たちがセイバーのこと知らなかったのは、上条が電話番号知らなかったか、伝える暇も無いままイギリスにいくことになったのか……
373 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 23:09:15.58 ID:LVm2VvYo
セイバーはもともと出さない予定でしたけど
エピローグのおまけ、って感じで割り切って出しました
インデックスと並べると意外としっくりくるかな、と

自分的な設定ではイギリスにはセイバーは行けません
上に出ているように、AIMがないので
ただロシアへは行けます
風斬に乗っていく感じで

もちろん上条さんはこの後即イギリス行きです
374 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/28(火) 01:07:40.34 ID:vyJjRsDO
ところで、琥珀さんはいつ出てきますか?
375 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/28(火) 02:15:37.02 ID:F7dKxtM0
インデックスとセイバーの食費で、上条さんついに破産!?
って展開にならなくて安心した
376 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/28(火) 15:21:37.51 ID:zhYg3UAO
俺「――続編を切望する(hayaku kake beam.)」
377 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/28(火) 17:55:20.01 ID:5hfptjM0
えっ、もうセイバーしかサーヴァントでないの?
378 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/29(水) 02:29:49.32 ID:p68k1WI0
投影とかレベル5が英雄とか上手いなって思った
すげえー
続編希望しちゃうぜこれは
379 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/29(水) 14:13:56.43 ID:h3nOlLw0
幻想を創り全てを救おうとした「偽者(フェイカー)」と、
幻想を殺し全てを救おうとする「偽善者」
二つの正義が交差するとき、物語は始まる――――。

凛の言葉見てなんか思いついた
380 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/29(水) 19:20:03.78 ID:NBrWHigo
超能力って話なら空の境界と絡めてもおもしろそうだな
吸血鬼関連で月姫も悪くない
381 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/30(木) 00:40:38.50 ID:ak2Niw.0
>>380
上条さんが幻想殺しで魔眼殺し壊しちゃうとか
っていうかやっぱり上条さんの右手は線も点も見えないのかな
382 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/30(木) 09:40:42.72 ID:k2MYYbgo
>>381
線が見えなくても普通に刺されるんじゃね?
383 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/30(木) 10:28:53.96 ID:PHc4LADO
たぶん、右手が全身に作用して点も線も見えないと思う
あと、普通に刺さりはすると思うが点も線も見えないから、あくまで普通に傷付けるだけで、見えてる時の様にあっさりと[ピーーー]事は出来ないと思う
384 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/30(木) 10:46:32.00 ID:iZDMSNko
議論になると荒れるけどさ
無効化は右手だけなんだから右手が見えないだけだろ
385 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/30(木) 14:50:18.30 ID:USS2ows0
式の魔眼は目にあるの?式全体?
ちょっと何言ってるかわからんと思うが
上条さんの右手で式の体触れば線はみえなくなるの?
それとも眼球に触れなきゃ駄目?
志貴はともかく式は常時根源とつながってるから
体触るとやはり影響あるのかな?
386 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/30(木) 16:55:31.60 ID:GnoR7dso
幻想殺しで式の体もみもみしてる上条さんを連想した
志貴?野郎なんてどうでもいいです
387 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/30(木) 20:10:16.54 ID:172jGgDO
魔眼は眼球と脳に宿るらしい。
あと、上条さんが無効化出来るのは体全体に影響を及ぼす物だけだぞ。
388 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/01(金) 00:09:20.11 ID:AQwVSwDO
直死の魔眼で見える死の線は体全体に影響を及ぼしていると思うが
389 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/01(金) 09:32:34.83 ID:A9YWEJso
直視の魔眼は死の線を作ってる訳じゃなくて“視てる”だけだから、上条さんの体に何か影響を及ぼしてる訳じゃないだろ。なにより死の線は元から万物全てにアルヨー、て設定だったし。

そろそろスレチだから上条家の今後の食費を心配しようぜ!
390 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/01(金) 10:25:42.08 ID:EYX6V2I0
締めがいいね 面白かった
391 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/01(金) 16:37:00.41 ID:H.95hO.o
>>389
たしかケルト神話に無限にお粥の出る鍋があったから士郎に投影してもらおうぜ
392 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/01(金) 20:52:30.04 ID:fuM5V3o0
>>389
「5切れのパンと2匹の魚で5000人の腹を満たした伝承」を基にした魔術をインデックスがセイバーに教えればOK
393 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/02(土) 13:55:08.58 ID:9Lk9Weso
となると、上条さんの嫁には士郎が相応しいということになるのか……
394 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/02(土) 21:03:23.06 ID:bVqrljso
シロウ――――お前を、愛している


誰得
395 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/02(土) 23:08:23.56 ID:PfSHm6DO
TSする→マジカルエィミィー爆誕
琥珀さん召還→寮がサイコガーデン化
式召還→幹也さんがいないので、動作率10%以下に。

一番上以外がデメリットが大きすぎるな
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